プロ雀士インタビュー

第222回:第21回モンド杯優勝特別インタビュー 柴田吉和  インタビュアー:奈良圭純

『逆転の柴田』とはよく言ったものである。
またもや少なくないビハインドを背負ってからの逆転劇で、2度目のモンド杯優勝を飾った。
言わずもがな、柴田吉和プロの経歴を振り返ってみよう。

2012 プロ連盟入り(28期生)
2014 28期新人王戦優勝
2015 32期十段位
2016 第1回モンド杯チャレンジマッチ勝ち上がり、第17回モンド杯出場
2019 第19回モンド杯優勝
2020 37期十段位
2021 第21回モンド杯優勝2度目new!
(ほぼ毎年なにかしら勝ってるやん、、、)

ちなみに、モンド杯を複数回獲得しているのは、第8回からの現行のシステムに変更してからは、現鳳凰位の佐々木と柴田の2人だけである。
インタビュアーは、『MONDO麻雀プロリーグ』の裏方に携わって5年、MONDOデビュー同級生?の、奈良がお送りします。

 

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奈良『2度目のモンド杯優勝、おめでとうございます。ご自身で勝因となった局とか、印象に残ってる局ってありますか?』

柴田『ありがとう!予選、準決勝、決勝と1度ずつ、ドラを切る切らないの選択する時があったんだけど。』

奈良『お聞かせください。』

柴田『1つめが予選4試合目かな?』

モンド杯は予選を各自6試合行い、上位2名は準決勝をパスして決勝へとジャンプアップ。
3位~10位で準決勝1試合を行い、上位2名が決勝に進出。
各自予選4試合を終えての上位者のポイントが、

平賀 +143.1P
小林 +64.9P
石橋 +54.4P
鈴木 +30.7P
森下 +16.4P
柴田 +1.5P

準決勝での直対があるとはいえ、ポイント的にはまだまだ欲しいところ。
柴田にとって予選5戦目のトップ目でむかえたオーラス。
リーチを受けた一発目にドラを掴むも、ノータイムで勝負。

 

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柴田『役なしカン八万から絶好のドラをツモって手変わりしたんだけど、リーチ受けてからまた(ドラを)持ってきちゃって』

奈良『ごーにん(森下)からリーチが入ったので、オリを選択してもトップになるパターンがありそうだし、ドラで放銃すると3着まで着落ちしそうですね。』

柴田『平賀さんは予選通過はほぼ確定のポイントなので、打点は読みづらいっていうのはあったんだけど。』

奈良『リーチの選択肢はなかったですか?』

柴田『ドラ打ったからあまり変わらないのかも知れないけど、少しでもアガリ率が高いようにヤミテンにしたんだよね。』

 

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憶測になるが、リーチをしていたならばアガリはなかったように思える。
2着目からの直撃で、満貫ツモ圏外に。
次局も連荘し、トップで半荘を終える。
こういった微妙な局面の時、正解を選択できる勝負感のようなものが、柴田の強さの一つであるのは間違いない。

 

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(対局を振り返る柴田)

柴田『2度目が準決勝で、親リーチをかけられた時なんだけど。』
予選1位の平賀、2位の鈴木は決勝進出確定。別卓も終了し残り1戦、上位2名が決勝進出。

石橋 105.3P
柴田 25.2P
堀 22.6P
小林 ▲9.7P

 

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奈良『石橋さんがほぼ決勝進出ポイントをもってるので、コバゴー(小林)さんにトップを取らせないかつ、別卓で半荘を終えた堀さんよりポイントを下回らないようにするのが目標ですね。』

ここもリーチ一発目にドラ切り勝負!

奈良『サブルームで見てたんですが、周りの制作スタッフから、うおっ!て声が漏れてましたよ笑』

柴田『ここはもう、戦う気持ちが入ってた!』

奈良『通ってない筋がまだ多いですけど、直接対決の親リーチだし、めっちゃくちゃ怖いんですけど。笑 胆力ないと、なかなか切れる牌ではないかと。』

柴田『中の暗刻もあるので、オリるのは難しくなさそうだったけどね。』

 

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手代わりしての追っかけリーチをするも、アガリまでには至らず。
この半荘は2着目とはいえ、トータルでは逆転されてしまう。

奈良『微差とはいえ逆転されたわけですけど、まだ焦りとかはなかったですか?』

柴田『内心めっちゃ焦ってたよ、負けた~って笑』

奈良『あまり焦ってた感じはなかったですけどね笑』
一度は逆転を許すものの、再度まくり返し、決勝進出を決める。

 

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(映像を振り返って観ております)

柴田『3度目が、決勝2戦目の南場の親の時なんだけど』

決勝は予選ポイントをリセットしての2半荘勝負。
決勝1戦目終了時のポイントが、

鈴木 +55.0P
平賀 +15.8P
柴田 ▲28.8P
石橋 ▲42.0P

トップは必須条件。
柴田の南場の親番、ライバルの平賀から2巡目リーチが入る。

 

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1シャンテンで11巡目。

 

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奈良『ドラの八筒をスパッとノータイムで切ってたんで、この局はインパクトありました。』

柴田『ここはもう、アガられたら負けみたいなイメージかな?ドラでも切らなきゃダメって言い聞かせてた。』

奈良『七対子でも粘れそうな手牌ですし、難しい、、、』

柴田『昨年も決勝戦を戦ったけど、殆ど何もできなくて。成長した姿を魅せたかったって言う気持ちが強くあったから。攻めてアガりきれたのがよかった!』

 

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このアガリが決めてとなり、第21回モンド杯を制した。

 

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優勝する為に、ドラも切るべき時はしっかり勝負する。
ある程度経験を積んでくると、リスクをとるよりも、リスクを避けて勝つ道を探り、なるべく危ない橋は渡りたくなくなってくるものだが、柴田は優勝する為にはどこでリスクを取るかを、たとえリーチ一発目であろうと、躊躇わずに切れる。柴田の勝ちっぷりの秘訣は、そんなところにあるのではないのかと思った。

奈良『モンド杯も2回目、現十段でもありますが、今後直近での目標はなんでしょう?』

柴田『鳳凰戦が3年B1で残留してるので、早くAリーグに昇級したい、G1タイトル2冠でB1は情けないよ。あ、ならちゃんも2冠か。笑』

奈良『笑。デビュー時からめっちゃ勝ってますけど、何か意識して普段からやってる事って何かありますか?』

柴田『稽古量だけはかなりやってるから。それが結果につながってるのかも。』
柴田さんが以前担当された観戦記で、胸を打った言葉があるので、一部抜粋。

(話が脱線してしまい申し訳ないが、最近の後輩・新人を見ていると、男女問わず稽古不足で麻雀への努力を疎かにしている者が多すぎる。連日欲に負け遊び呆け、いつ稽古をしているかも分からない者が、堂々と麻雀プロを名乗っている者がいるのも事実だ。そのくせ試合で結果が出ないと一丁前に悔しいなんて言い出す始末。稽古努力を疎かにして、自分の欲に負け遊び散らかしておいて、挙げ句の果てには口先だけで鳳凰位になりたい女流桜花獲ります、なんじゃそりゃである。~中略~努力しないものは圧倒的に置いて行かれるし、実績は明白に差が付いていく世界だとも思う。何故自身が麻雀のプロフェッショナルをやっているのか、負けて悔し涙を流せる資格がある程努力をしているのかをもう一度真剣に考えて欲しい。)

柴田さんらしい、熱い思いが伝わる文章だと思う。

奈良『最後に、何か一言ありましたらお願いします。』

柴田『ウィーンでの第3回世界リーチ麻雀選手権が延期?になっているので、コロナ禍が落ち着いたらまた世界大会をやってほしいな。色んな国で大会やってほしい。』

 

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次回の第17回モンド王座決定戦、38期十段戦決勝、麻雀日本シリーズ2021の出場が決まっている。
柴田プロの更なる活躍に注目しましょう!