プロ雀士インタビュー

第223回:プロ雀士インタビュー 小林正和  インタビュアー:中川基輝

小林正和 31期後期1986年生まれの35歳。
筆者中川基輝の同期であり、親友であり、最大のライバルだ。

小林との出会いはプロテストの時、同い年ということもありすぐに仲良くなったのだが、小林は優等生、私は劣等生であった。
筆記テストも実技も常に高得点の小林、どちらも及第点の自分。プロテストの時に私が褒められたのは実況ぐらいだったが、小林は所作や内容、筆記テストなど常に褒められていた。
研修期間を終え小林がD3リーグ、私がEリーグ。当時はライバルというより、追いつかなきゃいけない目標だった。

そんな関係が、あくまで私から見た関係だが、プロに入って少し変わる。
1年目に私が十段戦で五段戦、新人王で決勝まで残り、2年目にはリーグ戦で小林のD3リーグに追いついた。さらに第2期のWRCで優勝。3年目に特別昇級リーグで優勝してついに追い抜いたと思った。目標だった小林の前に初めて立ったと。
しかしそんな喜びは束の間、小林はやはり凄かった。3年目で私と直接対決の第3期WRC決勝で逆転からの国士無双で完勝すると、その勢いのままにマスターズでも準決勝まで勝ち進んでみせた。4年目には特別昇級リーグでも優勝。まるで私の取ったタイトルを塗り替えるように、次は必ず小林が獲っていく。

5年目でも勢いは止まらない。王位戦でも準決勝に残り、北関東リーグで優勝から地方リーグチャンピオンシップでも優勝。6年目には特別昇級リーグ準優勝。他にも毎年のようにリーグ戦で昇級争いに食い込み、そして今期は第9期WRCで2度目の優勝を果たした。8月にはC1リーグ最終節で一気に2位まで浮上して初のBリーグへ昇級と圧倒的パフォーマンスを見せ続けている。

プロになって数年、偉大な先輩達によくアドバイスされたのは「若手選手の多くは練習量が圧倒的に足りていない」ということだった。実際先輩達の練習量は私を含めたほとんどの若手の何倍から何十倍もの量であり、実力も努力も足りていない若手が結果を残せていないのは至極当然であった。
その点小林は普段の練習量はもちろん、連盟の公式大会にすべて出場、ロン2レーティング2327(プロの中でもほぼトップ)、勉強会の参加回数も多く、地方リーグの出場量(今期は北関東リーグの他に静岡リーグにも参戦中)、他団体の大会など圧倒的な出場回数を誇っている。しかも全てで結果を出しており、負けた時も敗因からしっかり反省し、次にいかし続け、さらに結果が良くなってきている。
諸先輩方も小林の成長を認識しており「さらに強くなった」とよく耳にするほどである。

 

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最早ライバルと呼ぶにはおこがましいレベルの活躍を続けている小林に話を聞いてみた。

中川「あらためてWRC優勝おめでとう」

小林「ありがとう」

中川「準決勝では心配したけど、決勝は文句のつけようのない完勝だったと思う。本人的にはどうだった?」

小林「準決勝での内容は自分でもダメだと思った。見ている人たちを悲しませてしまったので、決勝では勝つだけじゃなく、楽しませないとダメだと思った」

中川「なるほど、内容にもこだわったからこその圧倒的な勝ちだったと思う。本当に強かったもん」

小林「ありがとう。それも最近色々な人から影響受けていたこともあってだと思う」

中川「へぇ、例えば誰に?」

小林「麻雀グランプリを連覇した本田さんや、マスターズや王位戦で準優勝、特別昇級リーグで逆転負けを喫した菊田さんとかかな。周りの活躍がとても刺激になって、今の自分があると思う」

中川「確かに凄い活躍だよね。俺も影響受けてる」

小林「あとはもっと若手の阿久津くんや伊達さんの活躍も負けてられないなって気持ちになったわ」

中川「正直お互い若手の中では活躍できている方だと思ってたけどどんどん強い人がでてくると自分ももっと頑張らないとってなるよね」

小林「新しい若手のタイトルもたくさんでてきたし、これからも負けないように、楽しませる麻雀が見せられるようにしていきたいね」

中川「楽しませる麻雀かぁ、広いな。具体的に聞かせて」

小林「攻撃、守備、門前、仕掛けなど色々なタイプの打ち方があると思うけど、自分自身はそういう型に合わせることはしないかな。あえていうならストーリー型wたぶんね見てて一番下手に思われる打牌が多いと思うんだけど、一打一打には自分なりの意味があって、最後にはあっと思わせるそんな麻雀を打ちたいと思っている」

中川「いいね。小林くんらしいわ。やっぱり小林くんの麻雀への情熱には頭が下がるわ。どんなに古くても内容や場面を覚えているし、疑問に思ったことをそのままにしない。時間がなくても練習量が下がることもないし、いつも見習わないとと思ってるけど到底真似できるものじゃないよ」

小林「そんな風に思っていたとか意外だけど、ありがとう」

中川「本当にいい意味で麻雀バカだと思うわ、凄い。それもあってか俺らって仲良いとは思うけど麻雀の話しかしないよねw」

小林「確かにw」

中川「あと共通の趣味というか好きなものとして認識してるのサッカーぐらいだよね。ほかに何かある?」

小林「えぇと、これっていう趣味はないんだけど、一応建築学部出身だから暇なときに都内の現代建築を探索したりするかな」

中川「へぇ全然知らなかったわ。最近だとどこ見たの?」

小林「最近は流石にご時世的に見てないけど、オススメは最近世界遺産に登録された上野の国立西洋美術館。あとは錦江荘で対局ある時は東京国際フォーラムに立ち寄ってからいくかな。あとは仙台にあるせんだいメディアテークってところに行きたいと思っているかな」

(スマホで画像検索)

中川「なるほど、これは綺麗だし生で見てみたい。普通に意外な一面を知れたわ」

小林「でしょ?まあ麻雀をやるのと観るのが結局一番好きだけどね」

中川「それは知ってるわwあっだいぶ遅くなったけどB2リーグへの昇級もおめでとう」

小林「ありがとう、次は中川くんと同じリーグだね」

中川「あぁ本当にふがいないけど酷い内容で降級してしまったから次こそは頑張るよ」

小林「次のB2リーグも強いし楽しそうな人がそろっているから楽しみだわ」

中川「リーグ戦はもちろん最後の新人王戦や30代~40代のトップを決める鸞和戦も頑張ろう」

小林「そうだね、でもやっぱりメインはリーグ戦だと思ってる。連盟にいるならやっぱり鳳凰位を目指したいから」

中川「おぉ、大きくでたな。でもかっこいいし今なら少し現実味あるわ」

小林「そのためにはまだまだ超えなきゃいけない壁はたくさんあるけど少しずつ進んでいけるように頑張るしかないね。前回のWRCの優勝の時と違って今回の優勝は成長を見せられたんじゃないかと思うよ。自分自身準決勝の内容を踏まえて学ぶこともあったし、その思いを決勝では見せられたんじゃないかな?」

中川「うん、そう思う。今までの小林くんの放送対局の中で一番完璧だったと思う。あの強さを続けられたら勝てる気しないよ」

小林「続けられるようにこれからもやっていくしかないね」

中川「頼もしい決意も聞けたし、最後に今後プロとしての展望があれば教えて」

小林「今はMリーグの影響もあって、少しずつ麻雀のイメージも変わってきていて、新しく麻雀を始める人達も増えてきてると思うから自分自身も麻雀の良さを伝えられるようになりたい。そのためになるべく早くAリーグに昇級して多くの人達に自分の麻雀を見てもらいたい。あとは今出てる北関東リーグや静岡リーグでも多くの人達と触れ合えてるから今後も続けていきたいし、他にも積極的に色んな人達と交流できるようなことを増やしていきたいと思っている」

 

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インタビューにもあるが小林との会話は9割麻雀だ。それはプロテストを受けた当初から変わらない。
それだけ小林は麻雀に真摯に向き合っている。私が知っている誰よりも。
一番近くで見てきた私が言うのだから間違いないがここ1、2年の成長には目を見張るものがある。
正直最初はオーソドックスな打ち方じゃないと思ったし、それで結果を出すのは難しいと思っていた。
それでも、若手の中では圧倒的な実績を残してきた。ここまで結果を出していたら最早そのオーソドックスとは少し違う打ち方は小林の麻雀である。オーソドックスかどうかではない。
小林が麻雀の良さを伝えるために見てもらいたいというオリジナルの麻雀だ。

言葉足らずで誤解を招くことはあるが、根は良いやつだし、最高に麻雀を愛している。
近すぎる存在が故に今回のインタビューまで全く気づいていなかったけど私にとって小林は、ライバルというよりいつのまにか尊敬の念でいっぱいの存在になってしまった。
今後はプロ1年目同様全力で追いかけていくしかない、そして彼の背中をもう一度追い抜こうと思う。
とりあえず今は、第9期WRC優勝おめでとう。