プロ雀士インタビュー

第224回:プロ雀士インタビュー 藤崎智  インタビュアー:大和

「ロン、8,000は8,300」
やはり決め手になったのは藤崎の十八番「ヤミテン」だった。
追いすがる前原雄大プロの「はい」の言葉と表情からは、これまで幾度となく名勝負を繰り広げてきた者同士だからこそわかる納得感のようなものを感じた。

モンド名人戦4年連続出場3回目の決勝進出での初優勝を飾った「麻雀忍者」こと藤崎智プロ。同郷、秋田県出身の大和のインタビューでお送りします。

都内某所のおしゃれなカフェで待ち合わせ。
女性ファンからは「藤様」と呼ばれる藤崎プロ、炎天下の中歩いてきてもニコニコの笑顔。

 

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藤崎「暑いなぁ、とりあえずなんか飲みなよ。ここのカフェオレ自分で豆とか選ぶんだよ。」

大和「ありがとうございます。」(なるほど・・こういう優しさがファンに愛されるんだな)

火照る身体をカフェオレでうるおしながら

大和「まずはモンド名人戦優勝おめでとうございます!今回の名人戦、7戦5トップはもう完勝と言っても良いのではないでしょうか?」

少し微笑みながら

藤崎「ありがとう。展開もそうだけど全体的にツキが自分に味方してくれているのは感じていたんだ。だから決勝もしっかりとやることさえ出来れば最後まで優勝狙えるなとは思っていたよ。前回の決勝(第13回)では沢崎プロにオーラス、アガれば優勝の競り合いに負けてしまったので今回こその思いも強かった。」

大和「そうだったのですね。確かに映像観て守備的雀風の藤崎さんが、凄い積極的だし何か意図があるんだなと思っていました。」

対局を振り返ってみる。
なお決勝は2回戦行い、トータルポイントトップが優勝となる。

小場で始まった決勝1回戦、最初のぶつかり合いは東3局。
藤崎は役牌3種のところからピンズのホンイツへ向かう。
親の前原のリーチ宣言牌の五筒をポンして全面対決の構え。
無筋をガンガン切り飛ばしていく。

大和「ピンズの形もそこまで悪くないですし、藤崎さんならゆったり構えてチャンスを伺うかと思っていたら真っ向勝負でしたね。」

藤崎「最初の勝負所だからね。まだ東場だしこの手組した以上、真っすぐいこうとは思っていたよ。勿論、精神面の充実による後押しはあったよね。短期決戦だし、こういうぶつかり合いを制さないと勝てないのは解っているから。」

ほどなくして藤崎がしっかりと3,000・6,000を引きアガる。

 

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大和「南場に入るとより一層攻撃的な藤崎さんになってびっくりしたのですが。」

南2局 親 前原 ドラ五筒
前原がマンズのホンイツへ激しく仕掛けていきテンパイでもおかしくない様子。
1シャンテンの藤崎はそこへ生牌の中をぶつける。

 

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ロンと言われたら12,000の牌。
観ている私も思わず「えっ?」と声が出た。
前原は一万四万のテンパイから中をポン、打点も上げてしっかりと4,000オールを引きアガる。

大和「この局は本当にびっくりしました。前原さんは親で、打中はリスクが高いし自分も1シャンテン。藤崎さんだからというのもありますけど、まさか打ち抜くとはおもいませんでした。」

藤崎「やっぱり東場でめくり合って勝てていて、点数にも余裕があったからいけたよね。勿論いつも打つわけじゃないよ(笑)こういう時は土俵から降りちゃいけないんだ。前原さんに俺は「消えた」と思わせたら一気に持っていかれるのは解っているからね。」

決勝1回戦は攻めの姿勢を貫いて見事トップで終える。

大和「決定打みたいな局はありますか?」

藤崎「やっぱり三色の局かな!」

冒頭でも書いた1局。
決勝2回戦 東3局 ドラ七筒 親 前原
ライバルの前原がトップ目、今局も先制の出アガリ5,800のテンパイを入れヤミテンを選択。
藤崎は1シャンテンでドラの七筒が浮いているが、上手くドラターツが出来て三色へ渡る。

 

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終盤、高め三色の六索九索テンパイを入れヤミテン。
安めの九索だと打点的にも物足りないし決勝の戦い方からもリーチか?と思った。
ほどなくして前原が高めの六索を掴み、やや長考するも打ち抜き大きな大きな8,000の直撃を取る。

 

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大和「あそこはヤミテンなのですね?」

藤崎「前原さんがテンパイなのは解っていたよ。だからこそヤミテンなんだ。自分も本手だし、ここまでの向き合い方もあるけど、少しでも隙を見せないように。結果は最高になったね。前原さんもこの局がポイントだったって言っていたよ。」

ライバルからの直撃を取り、その後も展開に恵まれ(勿論、藤崎のゲーム回しは流石の一言ではあるが)オーラスは他3者とも厳しい条件となり2回戦もトップで見事「第14回モンド名人戦」は藤崎の優勝で幕を閉じた。

大和「本当に完勝という感じでしたね!」

藤崎「モンドの試合にはこれまで何回も出してもらっているのだけど優勝は無かったからね。」

大和「えっ?意外です。ところで今は映像対局も沢山ありますが、藤崎さんにとって「モンド」の対局とはどういう印象ですか?またモンドに出場したい若手にアドバイスみたいなものはありますか?」

藤崎「モンドの対局ってあまり勝ち負け比重をかけて打ってはダメなんだよ。強さは当たり前で損や得じゃなく、それよりもプロとしての個性をいかに麻雀や見た目に乗せて打ち抜くのかの方が大事なんだ。これは今まで灘さん、小島先生、森山会長、優孝さん、荒さん、安藤さんらが築いていってくれた伝統であり系譜なんだ。視聴者の方にモンドじゃないと観る事ができない、至高の対局を届けるのがプロとしての義務だと思うよ。」

大和「かっこいいです。ありがとうございます!それでは最後に今後の目標とかってありますか?」

藤崎「正直、望むものってあんまりないんだよね。でもここまでプロ雀士として生きていけたのは、やっぱりプロ連盟にいたからって事が本当に大きいよね。だからまだまだ大きくなっていくだろう連盟に、少しずつでもしっかりと恩返ししていきたいよね。あとはG1タイトルを9回勝っているんだけど、これはキリが悪いから早く10回にしたいかな(笑)」

大和「すぐ取っちゃいそうですけどね!藤崎さん本当にありがとうございました!」

藤崎「えっ?もう終わりなの?あんまり面白いこと言ってないけどいいの?」

 

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藤崎智
「麻雀忍者」と呼ばれ実力は折り紙付きのトッププロでありレジェンドと呼ばれる事も多くなったと言う。しかし本人にレジェンドという気持ちは無いようだ。
それはまだまだ一線で戦っていくのだという言葉の裏返しにも聞こえた。
モンド王座の出場権を得て、10個目のG1タイトル奪取もそう遠くないのかも知れない。

 

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