戦術の系譜

戦術の系譜39 菊田 政俊

「対応と進化」

今月で3回目となります『戦術の系譜』を担当させていただいております、東北本部所属・菊田政俊です。

まずは簡単に自己紹介をさせてください。
・東北本部所属・32期生(2016~)
・東北プロリーグ参戦、現東北天翔位
・鳳凰戦B2所属
・41歳
・血液型不明
・生まれも育ちも宮城県
・仙台市在住
・麻雀店勤務20余年
仙台市を中心に、私設リーグやイベント運営等をおこない、競技麻雀の普及活動をしています。
ほぼ毎日牌に触れ、多い時期は年間5,000半荘ほどリアル麻雀を打ってきました。

1回目、2回目と、私が麻雀プロになる前の経験からお話しさせていただきました。3回目となる今回は、日本プロ麻雀連盟に入り、一発裏ドラのない連盟公式ルールに触れ、どう感じ、どう麻雀を変化、進化させてきたのかをお話ししたいと思います。

まず公式ルールを打つうえで、セオリーと言われている事があります。
・ピンフのみはヤミテン
・リーチのみはかけない方が良い
・速度よりも打点
・ドラを大事に
・東の扱い方
・親番維持
・3万点を超えるのが偉い
・2翻役をつくる
・テンパイ料大事

他にもあると思いますが、パッと思いついたのがこちら。

【ピンフのみはヤミテン】

これを最初に教えていただいた際の感想。

「本当に??一発裏ドラなくても、両面でリーチかけてツモった方がお得でしょう!!裏ドラ無い分ちょっとでも高くしようよ!」

そう思い、メンピンリーチを使いまくってみました。
出れば1,000点が2,000点、ツモアガると400・700が700・1,300、少しかもしれないが打点は間違いなく増えている。しかしこれが理由でメンピンのみはヤミテンと言われているのでは?と思うことが。
相手3人の動向です。それまで一発裏ドラアリの麻雀しか打ったことのなかった自分が経験してこなかった事態に、自分のリーチに真っ向勝負してくる相手の手牌が必ずと言っていいほど高打点なのです。自分はMAX2,000点、相手は5,200以上。毎度毎度こんな勝負をさせられる。なるほどなと。高い手を作ることが簡単ではないルール、ドラを複数枚持っていたり、手役があり、高打点の手牌の時は真っ直ぐ勝負される。逆に安い手牌ではなかなか勝負してこない。これではメンピンリーチは分が悪い。
同じ理由で、リーチのみも分の悪い勝負が多くなる。

 

【速度よりも打点】

ドラを大事にしなさい。手役を作りなさい。速さよりも高さだよ。
これに対しても天邪鬼な私は、
「いやいやいや、たとえ安くても先に全部アガってしまえば勝ちでしょう!」と。

◆1◆東1局 西家 ドラ九筒

一万一万一万四万五万五索七索九索二筒三筒四筒九筒南南

以前、打九筒
役ナシの手牌も形優先で、ドラを切り飛ばす。
現在、打五索or九索
どうせリーチのみはかけないので、ドラにくっつくのを待ちます。

◆2◆東1局 西家 ドラ九筒

一万三万四万四万五万六万七万八万九万二索二索四筒五筒六筒

以前、打一万
アガリやすさ優先で、両面受けに。
現在、打四万
一通確定でリーチ。ツモって2,000・3,900だ。

◆3◆東1局 西家 ドラ四索

一万二万七万九万一索一索八索九索一筒一筒四筒五筒六筒九筒

以前、打九筒
テンパイ効率で、孤立牌切ります。
現在、打四筒五筒六筒
ジュンチャン三色を狙って、1メンツ落とし。

 

【浮き沈みの順位点】

着順よりも、30,000点を基準に浮く事が大事。
そしてトップよりも素点が大事。
赤アリ、順位点30-10-▲10-▲30(トップには順位点の他に20)
このルールに馴染んでいた私は、着順を最重要視していました。トップを確定させる為には、他への振り込みも辞さない。トップ目に立ったら無理に親で連荘しなくてもいいと。

しかし公式ルールの順位点は最大でも1着で12P。
マイナスしない事が大切、ベクトルをプラスにし、積み重ねる。
ただトップを取ればいいのではなく、大きな大きなトップが必要。高打点はそう簡単には作れない、ポイントを稼ぐには親番維持が重要。と頑張るポイントが違う。

これまでリーチ至上主義、速度重視だった私は、速さ優先のテンパイ効率重視の選択をしていましたが、実体験を含め、後ろ見、配信対局や解説などをお手本とし、公式ルールのセオリーと言われる基礎が、血となり肉となりました。

ところがです。鳳凰戦A1リーグの対局を観戦していると、要所要所でセオリーに反する選択が多々見られる事に気付きました。
きっとこれは応用編。13人前後の決まった相手と年間を通して戦う。全員が百戦錬磨の猛者。お互いの癖や打ち筋を研究しての勝負。強靭な足腰があってこそ自由自在に動き回れる。基礎がちゃんとしてるからこそ、セオリー一辺倒ではない崩す選択が生まれるのだと思います。

こうして連盟公式ルールと出会い、基礎を身につけ、応用に触れた事により、Mリーグルールの麻雀でも、速度優先のテンパイ即リーチ戦法だけではなく、手役をはじめとする打点の意識を持つようになり、成績の向上につながりました。
また、何切る問題のように難しい選択をせまられた際、
公式ルールならこれ
Mリーグルールならこれ
WRCルールならこれ
と、ひとつの問題でたくさん考えを巡らせるようにしています。

今は一発裏ドラの有り無しだけじゃなく、赤あり、オカあり、4人麻雀に3人麻雀と、多種多様なルールがあります。その全てで選択が変わり、様々な麻雀に触れる事により、必ず自身の雀力向上につながります。
たくさん麻雀を打ち、先人の知恵を知り、自身を、相手を研究する。
難しい戦術のお話はできませんでしたが、このコラムが基礎を見直すきっかけになれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。