戦術の系譜

戦術の系譜5 前田 直哉

今回は所作と視線からのよみの話をしようと思う。人にはそれぞれある程度決まった所作をする特徴がある。

 

配牌時の所作

例えば配牌を取っている時にドラドラだったとしよう。人によってはまずそのドラを左端に持っていくのをけっこう見かけることがある。もちろんドラを間違えて切らないようにするのも大事だが、見ている人にとってはドラを持っているのを教えているようなものだ。例えば配牌の取り出しでこのように4枚ずつ持って来たとしよう。

五索七索一万三万    南六索八索九万    六索二筒四筒八索    西白  ドラ五万

皆さんはこのような配牌を持って来た時にまずどこから理牌して行くだろうか?
ほとんどの人が1番好形なソーズから揃えていく人が多いのではないだろうか?この所作の特徴から1番好形なのはソーズなのだという情報を得ることが出来るのである。ただ人によっては全く違った所作もいるので、人それぞれどういう所作をしやすい傾向があるのかを情報として前もって得ておくことが大事になる。

では今度の配牌ではどうだろうか

一万五万三万白    中七筒九筒二索    六索白中七索    西一万  ドラ白

配牌はドラドラで役牌2つの勝負手だ。この時まずドラの白中から揃えたくなるのが人というものである。すぐに出た時に間違いなく素早く反応出来るように揃えてしまうのが本能なのかもしれない。こういった役牌がどうなっているかを確認する意味でも配牌を取る時の所作にも注目しておくと、普段よりも多い情報を得られるかもしれない。更に言うとこの2枚を揃える時の上下の向きを直す動作にも注目したい。クルっと上下を直せば白ではないということになるからだ。
ただこれはあくまでも1つの情報であって他の役牌かもしれないし、ただのトイツなのかもしれない。これを気にしすぎて誤情報を入れてしまうと無駄に警戒をしたり押さなければいけないところで押せなくなったりしてしまう。この点だけには十分気を付けなければならない。

 

捨て牌時の所作

普段通りしているつもりでも、メンタルから違う所作になってしまうことがある。例えば相手のテンパイ時の捨て牌が早く感じることがある。これはほんの0コンマ何秒の違いだが、明らかにいつもと違うと感じることがある。テンパイしたことを気付かれまいと思った時、人は通常時よりも早く切ってしまったりする。または牌を河に置くときにいつもより若干音が高くなったりする。これはプロならば上のリーグに行けばいくほどこの所作にはブレも無いし、相手の違和感にも敏感に気付く人が多いように思う。
あなたは盲牌するだろうか?私はする。だがリーチ後はしないようにしている。何故かと言うとリーチ後に盲牌する人は待っている種類がわかったりするからである。
以前対局の時に対面からリーチが来た。私のよみではソーズは完成しており、マンズなら一万四万六万九万、ピンズは全般わからないな…そう感じていた。そのリーチをした対局者はリーチ後でも盲牌をする人だった。盲牌されツモ切られる五筒、それを見てピンズは全て通るとわかってしまうのだ。どうしてそう感じたか、もし待ちの近い待ちならばピンズを盲牌するときにほんの少しだが盲牌する指が深く入るはずなのだ。これがピンズでも一筒二筒三筒あたりだと軽く盲牌しただけでもわかるのでそうとも言い切れなくなる。この時はそれが五筒だったので確信に至ったのだ。これでピンズを押し、私にも跳満のテンパイが入る。そして持ってくる九万…。私の中では2分の1でアタリ牌だが、ここは勝負と押してロンと言われてしまう(笑)よみがあたるのは嬉しいが、牌があたるのは全く気分のいいものではない。
このように所作からも情報というものは得られるのである。常に所作がブレない人は盲牌しようと構わないが、自信の無い人にはお勧めできない。常に見られているという意識は大切なことなのだ。

 

視線

次に視線からも情報は十分得ることが出来る。
例えばあなたが六万八万と手牌にあって、場に3枚目の七万が切られた時どういう顔つきをしているだろうか?顔には出ていなくても目はどうだろう?少しだけ見つめる時間と目力が違ってはいないだろうか?そしてその七万を見た後、自分の手牌に目をやってはいないだろうか?無関係なら手牌に目もやらないが、かなり重要な関連牌の時にはついつい無意識に目を向けてしまったりするものなのだ。人によってはリーチ後にも見てしまったりすることもある。
私は以前、荒正義プロと同卓した時に、リーチしてからずっと全く関係ない牌を見ていたことがある。何故かというと、荒プロは視線を意識しているプロの1人だと思っていたからだ。
五索八索待ちでリーチしたら、関係ないマンズにさりげなく視線を注いでみた。
だが結局1度も成功した試しは無い(笑)さすがである!
常に情報を得ようとする人は、この人はこんな事もしてくると常に情報をアップデートしている。

今回所作や視線からの情報やよみを書いたが、実際にはもっとたくさん情報は転がっている。後は個人個人が発見したことやデータを積み上げて自分のものにして欲しいと思っている。