戦術の系譜

戦術の系譜11 猿川 真寿

前回は心構えを書かせていただいたが、今回は戦術である。
しかし、手合い、システム等によっては、全く意味のない自己満足で終わる。また、それなりの雀力が必要になる。
基本は使わない(使う必要がない)ことをお薦めする。

●大局観
今回の戦術を一言で表すなら大局観になるだろう。
確率的に麻雀は、4局に1局しかアガれない競技だ。4分の1を4分の1.5にするのもすごい技術。だが今回は残りの4分の3の戦い方の話をしたいと思う。
アガれない局なら、失点しないのが最善。それも1つの戦術であって、それだけが正解とは思っていない。

 

●1局消化の価値
戦術にいく前に、この話を書いておかなくてはならないだろう。多分私は、この価値を他の競技者より高く捉えていると思う。
麻雀は東1局から始まり南4局で終わる。最短8局で1試合。
東2局、親で連荘でき持ち点が、55,000点になったとする。オーラス終了時、大体トップが45,000点ぐらいだとしたら、7局で10,000点ぐらいは放出してもいい計算になる。
誰かに連荘されてかわされたとしたら?という意見もあるだろう。当然そういうこともある。ただ、そうさせないようにする戦術の話になる。
もっというと、そうなっても構わない。ただ、さすがにこれだけのビハインドがあったら2着には最低なりたい。
これが南2局の親番で55,000なら、残り3局で10,000点も使える計算になる。

ではここから具体的に話していくことにしよう。

 

●どの展開を望むか
例えばこんな牌姿
東3局 南家 41,700点持ち 4巡目

三万五万二索五索六索七索八索五筒東東西北白白  ドラ六筒

3巡目までの捨て牌が、九万 上向き八万 上向き一万 上向きだったとしよう。さて何を切るのが正解だろうか?
ホンイツもみながらアガリの早そうな西北もある。ホンイツ一直線だが色を絞らせない三万切りもある。どちらも悪くない発想だと思う。
ただここで五筒切りを選択する人も多いだろう。

問題は親が何着目か、手の進行具合は?
2着目の手の進行具合は?2着目との席順は?
などが本当は大事なことだと思っている。

 

●ターツ落とし
手出しツモ切りを見るときに、見逃してはいけないのが、ターツ落としだ。
捨て牌に五索三索とあったとする。これが、ツモ切りツモ切りと、手出し手出しでは相手の手牌構成を読むときに大きな違いが生まれる。

もう1つ大事なことは、ターツ落としが続けて切っているか?離して切っているか?を見ておくことだ。
全て手出しだとして、五索西三索と切られていたら、五索三索と切られたときより、よりいっそう残っている形が絞られてくる。
パッと出てくる形は、二索三索三索五索一索一索三索五索
あとはテンパイ外しからのくっつき狙いなどがある。
上記の牌姿をもう一度見てみよう。

東3局 南家 41,700点持ち 4巡目

三万五万二索五索六索七索八索五筒東東西北白白  ドラ六筒

捨て牌が九万 上向き八万 上向き一万 上向き(全て手出しだとする。)
三万を切ったら、相手はカンチャンターツ落としでターツオーバーか、ホンイツの可能性は否定できないと読むだろう。
西を切ったら、ピンフ系で少しまとまってきた感じがする。河としては1番おとなしい。(目立たない)
少しひねって五万を切って、数巡後に三万を切ると、できメンツからの空切りもあるが、字牌も切れていないし七対子の匂いを出すこともできる。

このように、手出しの順番で相手に考えさせミスリードや切りにくい牌を変えることができる。
トップ目のときに、親番にアガられるのは誰でも嫌だろう。だったら、先に五筒を切ってホンイツをみせて、親に字牌を早めに絞らせる手もある。
自分のアガリも遠退くが、親のアガリも遠退くなら価値は低くない。ホンイツを見せたからといって、ホンイツがアガれないわけではない。
ただ、相手がみていなければなんの意味もないので、注意が必要である。

 

●場の重さ
私はかなりドラを切るタイミングが早い方の打ち手だと思う。
それによってよく失敗することもあるが、今のところ切るタイミングを変更するつもりはない。(連盟公式ルールは思考中)
理由はいくつかあるが、全員がじっくり構えての所謂、重い場が苦手だからである。ハイリスクハイリターンになりやすい。字牌の扱いについても同様で、なるべく早めにリリースしたい。

トップ目のときは、通常時より更に1巡早くなる。
場を軽くする意味もあるが、こちらの手牌進行の速度を読ませづらくするのが、大きなメリットだ。
それに対応して、安手で局を進めてくれれば終了時の着落ちリスクが減っていくことになる。

ドラを切って鳴かれて、アガられてトップ目を捲られたら?そうなっても仕方ない。
切らなかったとしても捲られるかも知れないし、前回書いたが、選んだ道以外の結果は分からないのだから。

ただ、そこに放銃したりするのはいただけない。あとは、2着目に手が入っていそうなのに、それを助けるドラ切りなどは避けたいところである。
ドラを切って子方の4着目が鳴いて満貫をツモアガったとする。この場合は点差にもよるが、鳴かれなかった場合より成功と言えるのではないかと思う。
自分は2,000点の失点で1局消化できたのも悪くないのではと考える。

例えばその次局の各々の持ち点がこうなったとする。

トップ目(自分)38,000
2着目 28,000
3着目 18,000
4着目 16,000

2着目は、そこまでトップしか見てなかったところを、4着まで考慮しなければならない。自分の4着になる可能性も上がってしまったが、これが南3局だとしたら連荘だけされなければ、2着で踏みとどめられそうな気がする。
点差が近くなれば、手牌進行が打点より速度を優先する割合が増え、痛手を負う可能性が低くなるのは、トップ目にとって有利な状況と言えるのではないだろうか。

 

●5分の1
前にも書いたが、1局でアガれる人は1人。流局もあるので実際は5分の1弱ではないだろうか?
よって2人が攻めているときは、押し返しにくい状況になる。(通常2人がアガれる確率が高いから押している)

先程の状況の続きで、南3局で子方の16,000点の4着目が8巡目にドラ切りリーチときたとしよう。ラス親が自分だとしたら、ツモアガリされても、オーラスに放銃さえしなければ2着には最低残る。
ということは、このリーチがアガられるかどうかより、まずは2着目が押すか引くかの動向が気になる。
2着目にアガられても、2着までには残りそうだが、トップを捲られてしまう可能性の差は大きい。

仮に、ラス目が満貫ツモしたときは、オーラスに2着まで2,000点。トップまで満貫ツモ(同点)なので、配牌次第だが2着狙いになるかも知れない。
2着目はオーラス、満貫ツモか跳満出アガリがトップ条件になる。よって、このリーチはアガってもらうのは悪くない。

明らかに安いと分かるか、自分の手がすでにテンパイで待ちがいいぐらいでないと、放銃したときのリスクが大きすぎるので攻める価値は低そうである。
例えば、受け気味に打っていたので、リーチを受けたときの牌姿はこうだったとする。

一万一万六万七万六索七索八索四筒赤五筒八筒八筒西西北  ドラ八筒

現物は一万とドラの八筒西は2枚切れだったとする。さて、何を切るのがいいだろうか?
とりあえず、放銃だけはしたくないので、現物か西以外は切りたくない。他者がくることも踏まえて、一万切りになりそうだ。
他者がくることも踏まえての、ドラの八筒落としだけはやってはだめだ。なぜかというと、赤があるとはいえ、ドラが3枚見えたら2着目が攻めやすくなってしまうからだ。

それによって、2着目が4着目に放銃してトップがとりやすくなる展開もあるが、現状かなりいい位置なので無理をする必要はない。
このリーチは、アガってくれていいので出来れば1人旅になって欲しい。
逆にこれが、2着目のリーチだったら、私なら迷わずドラのトイツ落としとして、他者を前に出しやすい状況にする。

次回は最終回です。
私の実戦譜から、今まで書いたことの説明をさせていただきたいと思います。