戦術の系譜

戦術の系譜23 齋藤 豪

みなさんこんにちは。
今日は「ネット麻雀で勝ちやすい戦術」コラム、第2回目をお送りいたします。
第2回目のテーマは「ネット麻雀で安定して勝ちやすい鳴き判断」です。

私は、オンラインでネット麻雀の上達のお手伝いをするコーチングの仕事もしているのですが、生徒から聞かれる事が多い質問の一つとして「鳴き判断ができない」というものがあります。

出た役牌をポンしていいのか?
クイタンでチー発進していいのか?
手牌を短くして安牌をなくしても良いのか。

牌効率やベタオリと異なり、正解が見えづらい事が多く、基準が分からないということで迷ってしまうようです。
よって、本コラム第2回目ではネット麻雀における「鳴き判断」について、汎用性が高い考えをまとめたいと思います。
対象者は初心者~中級者向けとなり、以下のフィールドから抜け出しきれないプレイヤーがターゲットと考えます。

・ロン2 R2000以下
・天鳳 特上卓以下

しかし、上記以上のフィールドで戦っているプレイヤーでも、あらためて基本の思考整理や情報整理になると思いますので、最後までご覧いただけると幸いです。

 

■鳴くかどうかの判断基準

基本は以下の3つの要素で判断します。

① 速度がある
② 打点がある
③ 守備力がある

上記のうち、1個でも満たしていたら基本的に鳴いてOKです。
要素を満たしている数が多ければ多いほど、鳴きよりとなります。
それでは1つ1つの要素を確認していきましょう。

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① 速度がある
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ここで言う速度とは「テンパイ」の速度ではなく「アガリ」の速度である事が重要です。
なので「アガれそう」なら「鳴く」ということになります。
誰よりも先にアガれそうなテンパイに辿り着けるのであれば「速い」と判定できます。

■「速い」例

 

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役牌の中をポンして1シャンテン。打二万を選択すれば以下の状況となります。

一索四索のリャンメン+三筒六筒九筒の3メンチャンの完全1シャンテン
二索七索のポンテンも可能
・どのテンパイにたどり着いても必ず良形が確定。

これは典型的な「速い」の例です。
ポンすればアガリはほぼ確実のような手牌です。
中は2枚目ですし、ポンする一手で間違いないでしょう。

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② 打点がある
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アガった時に点数が高い場合は、リスクを追う価値があります。
特に満貫以上が見込める牌姿では、メンゼンにこだわる必要が無いので、ほとんどの場合で鳴き有利となります。

■「打点がある」例

 

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親の6巡目の牌姿です。
上家から出た七索をチーして打二索とすれば、以下の状況です。

・ドラ1赤赤で満貫級(11,600)の2シャンテン。
・愚形が残るので速度は十分とは言えない
・手牌に19字牌が無いので守備力がほとんどゼロ。

速度や守備力ではネガティブな要素が多いですが「打点が高い」のでリスクを追う価値が十分にあります。
よって、ここはチーして攻め込んでも良い状況でしょう。

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③ 守備力がある
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他の2つの要素よりも難易度が上がるのが、この守備力の要素です。
わかりやすく言えば「リーチ」を受けた時に困るかどうかが1つの指標となります。
とりあえずアガリたいから鳴いてみたけど、リーチを受けて安牌ゼロ……。
みなさんも経験ありますよね?

■ 「守備力がある」例

 

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上家から出た七万をチーして打三筒とすれば、以下の状況です。

東ドラ赤3,900の1シャンテン。
・ペン七索というドラそばの愚形が残る。
・1枚切れの東が暗刻のため守備力が高い。

打点はそこそこですが、ペン七索が残る牌姿では決してアガリまでの速度は早いとは言えません。
相手からのリーチを受ける事も多々あると考えられる牌姿です。
しかし、いざとなれば東の暗刻落としができると考えれば守備力はバッチリです。
低いリスクで自分のアガリの可能性を高められるのであれば、チーして問題ない一手と考えられます。

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上記の3点の要素を理解したら、後は鳴いて良いか迷うシーンに当てはめて考えるだけです。
もちろん、あくまで3つの要素は目安であり、実践では点数状況だったり、メンゼンリーチ効率などの要素が判断に絡んで来ます。
いくつかのケーススタディを混じえて、さらに理解を深めていきましょう。

 

 

■ケーススタディ1:全ての鳴き判断要素を満たさない

 

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役牌の「東」をポンするかどうかがテーマとなります。鳴いた場合は、以下の状況となります。

・4メンツ1雀頭のターツは足りており、鳴けば2シャンテン
・ペン三筒や2枚切れのカン二索の愚形ターツが2つ以上残っている
・打点は現状で1,000点
・守備力が高い牌は残らない

このように整理すると分かりやすいですが「速度」「打点」「守備力」の一つも満たせていません
ということは東はスルー推奨となります。
そして、ここで大事なことは2枚めの東も同じ牌姿ならスルー推奨ということです。
2枚目もスルーしたら、恐らくアガリに結びつくことは無いでしょう。

しかし麻雀はそもそも4人でやるゲームですので、1局でアガれる可能性はせいぜい20~25%のゲームです。
全てを強引にアガろうとすれば失点する事は間違いないでしょう。
持ち点も慌てるような状況ではありません。
勇気を持って「局」を「捨て」ましょう。

 

 

■ケーススタディ2:全てを鳴かずに鳴き判断要素を維持する

 

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先ほどの牌姿と似ていますが、今度は東西がトイツです。
どちらを鳴いても役牌になる状況です。

打点も低く、速度も遅い状況は前回と同様ですが、今度は東西のどちらかを鳴いても、残った字牌のトイツを守備に使えます。
よって「守備力」がある程度は確保されているので、判断基準的には鳴いてもOKになりました。

ただし、このような牌姿で鳴く場合は注意が必要です。
何故なら2つとも役牌をポンすると「守備力」が無くなってしまうからです。
打点上昇もほとんどしないので「打点」の要素も満たせません。

片方をポンした後で、もう片方残っている方の役牌が出た場合は、状況に応じて鳴き判断を変えるのが安定すると考えられます。

・2つ目の役牌をポンした時点で、愚形が2箇所残る1シャンテンの場合は「鳴かない」で守備に使う。
・2つ目の役牌をポンした時点で、テンパイできるなら「鳴く」

このように役牌を片方だけあえて鳴かずに守備に使うという技術も有効です。

 

 

■ケーススタディ3:鳴き要素を満たすための手組みをする

 

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東1局の2巡目、役牌の「南」をポンするかどうかがテーマとなります。
そしてポンをした場合、以下の2つのルートが選択可能です。

ルート1:字牌から打ちだして全ての色を捉えるようにアガリ最速で進める
ルート2:五万四筒五筒を全て打ち出して、ホンイツを狙う。

どちらの選択もメリットがあるように見えます。
このような場合に、最初に提示した「3つの鳴き判断要素」を思い出してみると簡単です。

■ルート1(アガリまで最速)を選択した場合
・まだターツが揃っておらず「速度」は決して早いとは言い切れない。
・「打点」は低い
・「守備力」は字牌を打ち出すので低くなる

■ルート2(ホンイツ)を選択した場合
・まだホンイツに十分なターツは揃っておらず、強引に向かうので「速度」は遅くなる
・「打点」は、最低でも3,900で、もう1つ役牌や赤が絡めば満貫になる可能性が十分にある
・「守備力」は、字牌を溜め込むのでしばらくは確保される。

このように要素に当てはめて考えれば、ルート2のホンイツの方が鳴き判断要素をバランス良く満たしていると言えます。
うまく育てば勝負手となりリスクを追う価値があがります。
育たないうちにリーチされたら余っている字牌を打ちながら様子を見れます。
よって、南をポンするのであればホンイツに一直線に行った方が安定しやすい牌姿と言えます。

ルート1はリーチされたら恐らく安牌も足りず、勝負するにも打点が見合わない状況となり、局面が難しくなります。
局面を簡単にする選択を心がけるのがコツです。
ホンイツはだいたいの場合は鳴き判断要素を満たす事になるので、常に意識しましょう。

 

 

■ケーススタディ4:守備力がある役牌バックを意識する

 

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手頃に「速度」と「守備力」を確保できるのが「役牌バック」です。

牌姿の状況では、すでに南入しておりトップ争いとラス争いが開いている点数状況です。
このような局面では、勝っている方は局を消化する価値が高くなるので、積極的にアガリに行きたい状況です。

上家から出た二万をチーして打三索とすれば、いわゆる白バック+リャンメンの1シャンテンになります。
速度も上昇し、字牌を持っているから安全度もほどよく確保されている。
文句無しで鳴き条件を満たしていますので、チーする一手に見えます。

疑問を投げかけてくる謎の人「端っこをチーしたら役牌がバレるのでは?」
ばれてもOKです、その理由は以下です

 

ネット麻雀はぶつかりあう事が多い
→自身のアガリ率を高める選択をするプレイヤーが多い傾向にあるため、攻めの一手として役牌は打たれやすい。

ネット麻雀はラス回避ルールが増えている

「自分が放銃する番でなければ良い」
「自分が役牌を止めることで得をするプレイヤーが複数出てしまう」
「だから先に危険な役牌から捨てる」
ルールの性質上、上記のような考え方が多くなっており、そしてこれは合理的です。
つまり役牌バックは可能性を読まれた上でも、テンパイまでは鳴かれやすいのです。

このように、役牌を止められない事の方が多いので、今回のような愚形解消してアガリ率が高まるようなシーンであれば、鳴いた方が良い一手と考えられます。

 

 

■ケーススタディ5:鳴き判断要素を満たすが、リーチが狙えるので鳴かないケース

 

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役牌の「中」をポンすれば以下の状況です。

・2巡目
・くっつきの1シャンテン(速度がある)
・打点は2,900
・守備力は無い

条件だけみれば、アガリまで「速い」と言えそうで仕掛ける条件を満たしているように見えます。
しかし、巡目も序盤で、愚形も確定しておらず受け入れも広いので、ここはメンゼンリーチを目指して1枚目はスルーする一手に見えます。
このように、鳴けば安い手だがメンゼンリーチが狙えそうな形の場合「速い」を満たしていても例外として鳴かない選択肢も取り入れましょう。

 

 

■ケーススタディ6:鳴き判断要素を満たさないが、点数状況的に鳴きもあるケース

 

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発をポンすれば、愚形が2箇所残る2シャンテンです。

ドラそばの愚形もあるので、決して速度が伴っているとは言えません。
また打点も3,900以上は狙えるものの、満貫には現状届きません。
鳴くと当然守備力も著しく落ちますので、鳴き判断の3要素的には微妙なところです。

ただし、局、点数状況に注目すると以下の状況となっています。

・南2局で最短あと3局しかない
・11,500持ちの4着(ラス目)で、3着目との差が700点しかない。
・対面がもう一度アガったら、ラス率が急上昇する。

ここで自分のアガリが発生した場合は、以下のようなメリットがあります。

・対面のアガリを防いだ可能性がある
3着目に浮上する
残り局数が減る(相手の逆転チャンスが減る)

このように自分のアガリに価値が高い局面では、通常よりもリスクを取った選択が有効となります。
このため鳴き判断の3つの要素にとらわれずに、積極的に役牌のポンをしてアガリに向かって良い局面と言えます。
この牌姿ではラス回避に向けた選択でしたが、トップ争いをしている状況でも同じ事が言えます。
繰り返しですが、ポイントは「自分のアガリの価値が高い」かどうかです。

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上記のケーススタディのように、鳴き判断要素(点数状況やリーチ判断含む)に当てはめて考えることで、80~90点ぐらいの判断はキープできると考えられます。
迷ったシーンがあれば牌譜を見返して、今回の鳴き判断要素を思い出してトレーニングしてみましょう。
まず安定した鳴き判断を作る、そして、それができるようになってから100点の判断を目指すようにしましょう。

 

 

■鳴くかどうかの判断基準3つまとめ
① 速度がある
② 打点がある
③ 守備力がある
どれが1つを満たしていれば鳴いても良い。
複数満たしている場合は、さらに鳴き有利になりやすい。

例外として
④ 鳴くと打点が低いが、メンゼンでリーチを目指せる牌姿は、鳴かずにリーチを目指すのが基本
⑤ 局進行、点数状況で「アガリの価値が高い」と考えられる時は、3つの要素を満たさずとも鳴いて良い。

 

■おまけ:鳴きまくるトッププレイヤーたち
今回の講座では、ネット麻雀で安定して勝ちやすい鳴き判断基準をテーマに書きました。
しかし、今回の判断基準を超えるぐらい、鳴きレンジが広く強いプレイヤーもいます。
(Mリーグで言えば、例えば小林剛選手や園田賢選手などが該当すると考えられます)

 

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ただ、それは雀力がトップレベルだからできることです。
手牌が短くなればなるほど放銃リスクが上昇するので、それに見合った判断能力が必要になります。
常に相手の手牌構成を読む、アガリやすいターツ選択をする、テンパイされそうなタイミングで危険牌を先切りする、繊細な押し引きの判断など。
そして、このあたりの選択は、難易度が急上昇してミスが発生しやすくなります。
不確定な要素による判断ミスが少なくなるようシンプルに分かりやすい局面を維持するのも技術の1つです。
とは言え、難易度の高い道を突き進んでみるのも面白いかもしれません。
プレイヤーが自由に選択できて、個性が分かれるところが麻雀の面白いところでもあるからです。

それではまた次回お会いしましょう。
お読み頂きありがとうございました。