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第114回:中級講座『バランス』 紺野 真太郎

2016/07/13
執筆:紺野 真太郎


ある目的地に行かなければいけない状況だとします。なるべく早く、出来れば1分1秒でも早く着きたい。しかし目の前には大きな川が・・・
川の幅は5メートルぐらいあるでしょうか。なかなか深そうで流れも早いです。
どうしようか・・困って周りを見まわしてみると迂回すればだんだん川幅が狭くなっていくことに気づきました。
500メートルほど川沿いを進めば川幅は3メートルに、更に500メートルほど進めば1.5メートル、その500メートル先には安全に渡れる橋が架かっています。

さてあなたならどうしますか?

川と書きましたが、これが崖でも構いません。落ちたら目的地には辿り着けないと考えてください。
思い切って5メートルを飛び越えることにチャレンジするか、それとも3メートルか、安全に1.5メートルや橋がある所まで迂回するのか、それとも目的地に行くこと自体を取りやめるのか・・
これは性格や身体能力によって選択は変わるでしょう。もちろん正解なんてものは無く、あえて正解を探すとすれば、本人が納得出来る行動をする、ということが正解に近いのかなと思います。

ん、ちょっと待てよ、これと似たようなことって麻雀にもあるよな・・
ここまで読んでそう感じたあなた、いいところに気づきましたね。今回は攻守の「バランス」の話です。

目的地=アガリ、川=相手のリーチや仕掛け、川幅=安全度、飛び超える=勝負、川に落ちる=放銃、目的地に行かない=オリ

こんな感じで置き換えていただければわかりやすいかと思います。

置かれた状況で目的地に行かない、飛び越えるにしても、飛び越えられる自信がある所で飛ぶ、無理を承知でイチかバチか5メートルにチャレンジする(しなければならない)と選択はいくつもあり、どれを選ぶのも自由です。ただ本当に状況にあったバランスの取れた選択をしているかが問題です。

実際に私が川を越えなければいけないとしたら、落ちるわけにはいきませんので、まず迂回して橋を渡ることでしょう(これは性格というよりは身体能力の問題で、ですが・・)その為に準備をして時間に余裕を持って行動します。「安全」と「時間に余裕」でバランスを取ります。

これが、麻雀では、ぎりぎりまで押すことを止めることをせず、なるべく安全に超えようとします。「押す」ことと、「安全」という反対のことでバランスを取るのです。

どちらも、なるべく安全にというのは性格なのでしょう。

この川を飛び越えるということはイメージの話ですが、麻雀における5メートルを飛び越えようとすることとはどんなことを指すのでしょうか。

例えば、親からこんなリーチが入っているとします。(東1局、ドラ六筒

北発一索 上向き八万 上向き八筒 上向き九筒 上向き
東五索 左向き

こちらの手牌は

四万五万六万七万八万八万六索七索四筒四筒五筒六筒七筒  ツモ六筒

こんな感じです。この手牌、理想の最終形を想定すると

五万六万七万八万八万五索六索七索四筒五筒五筒六筒六筒七筒

あたりでしょうか。しかし、この理想形に辿り着くには、リーチに対して四万四筒を勝負しなければならなく、リーチ者はタンピン系の好形、高打点に見えることから無謀に思えます。

この一見すると無謀と思える中で手を真っ直ぐ進めることを「5メートルを飛び越えようとする」行為だと私は考えます。簡単に言えば「ハイリスク、ハイリターン」です。東1局であれば今後の展開とのバランスを考え、この選択をすることはあまりないと思いますが、もちろんここが勝負局と判断すれば話は別です。自分の中でバランスが見合うかの判断です。

次に「3メートルの所を飛び越える」ということですが、上の手牌であれば現物の八万を打ち、テンパイが入れば六筒を勝負するといった感じでしょうか。「5メートル」の選択よりも安全度は高くなるが、打点は多少低くなる。それでも飛び越えることが出来るかどうかはわからない(勝負であることに変わりはない)といったとこでしょうか。

これが「1.5メートル」ならば、八万を連打し回しながら、チャンスがあれば仕掛けも考慮に入れて、なるべく安全に手を進めるでしょうし、「橋を渡る」であれば、放銃を避けることを主とし、アガらずともテンパイで十分と進めるようなことと考えます。

そして「目的地に行かない」ですが、これはオリです。

この手牌と状況であれば、安全度と打点のバランスを考え、私は多分「3メートル」の選択をすると思います。もちろん今後のツモ次第で選択は変わってゆくのは言うまでもありません。

同じような手牌や場面でも状況によっても選択は変わってきます。東1局であれば「5メートル」を飛ぼうとすることが無謀だとしても、これが点数も親番もない南場で、しかもどうしてもトップが欲しい状況であったらどうでしょうか。川に落ちるのを覚悟で飛ぼうとしても、本人さえ納得していれば誰も責めることは出来ないでしょう。ある意味、残り局数と着順、持ち点のバランスを考えた選択とも言えます。

大事なのは自分の中でバランスをとることです。自分はどんなタイプかを理解するのも大切です。攻撃型であれば恐れずに「飛ぶ」ことでバランスを取り、守備型であれば「橋」を探すことでバランスを取ります。

しかし、人間は同じことをやっているつもりでも少しずつフォームが崩れていくものです。疲れてくると姿勢を崩したり、楽な姿勢を知らないうちに探しているのに似ています。

麻雀で楽な姿勢というのは、攻撃型であれば「行き過ぎ」守備型であれば「守りすぎ」の状態です。自分が得意とする戦い方に重心が寄りすぎ、バランスを失いかけているのです。

放銃が多いと感じるならば「5メートル」から飛びすぎてないか、また、アガリが少ないと感じるならば「橋」を探してばかりで飛ぶことを恐れすぎてないか、見直すことでバランスが改善されるかもしれません。

怖がりすぎてもいけなければ、勇敢になりすぎてもいけない。攻撃型であっても、守備型であっても一方に寄り過ぎずバランスを取る。簡単なようで難しいことです。

強い選手の戦い方を見るのも参考になります。連盟チャンネルなどで放送されている対局を見て、真似をしてくださいという事ではなく、自分とはどこが違い、どこが似ている(同じ)のか。それを見つけ、なぜ違うのだろうと考え検証するのも良い勉強になると思います。

この「バランス」というものは、私にとっても麻雀を打ち続ける限りのテーマだと感じています。

それではまた。