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第126回:中級講座『受け入れる強さ』 仲田 加南

2017/07/13
執筆:仲田 加南


勝利を確信した瞬間は何処ですか?
と聞かれたら、きっとこの「11回戦でトップを獲れたこと」と答えるのかしら?
な~んて一瞬でも考えていた愚かな自分がいた。
勝負の途中で顔を上げてはいけない!と、あれほど言われているのに。

第11期女流桜花決定戦、第11回戦オーラス。
トップ目(総合2着目)の魚谷は、3着目(総合3着目)宮内のリーチを受けて確実にオリている。
だからテンパイノーテンで私は逆転トップとなり、総合ポイント34.6P差を更に広げて最終戦へ向かうこととなる…はずだった。
が、しかし、ハイテイで掴んだ中筋の六索で、宮内に8,000点を献上し、トップどころか沈みの3着になってしまった。

 

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この放銃のぬるさを、ここで弁解するつもりはないです。
連盟公式ルールでのオーラス、この点棒状況でホウテイでリーチに飛び込んでしまうことが、保証されたプラスをマイナスに変えてしまうことが、どれだけもったいない一打だったかは、重々承知しています。

12回戦を戦ったこの決勝で、これが唯一痛いと感じた放銃でした。
そしてこの放銃により、総合ポイントも僅差になり[仲田78.1P魚谷62.0P宮内24.6P]
希少な私のファンの方々は青ざめてしまった瞬間でしょうが、それよりも多くの方々が
「ざまあ見ろ!仲田」と、さぞかし嬉しそうに叫んだことでしょう。

こうして私は、精神的にも物理的にも瞬間大ダメージを受けたのですが、結果的にはこの放銃で優勝出来たのかもと思っています。

理由は2つあって、1つは宮内プロの存在です。
彼女がここでトップを獲る事は最低条件だったような気がします。それを見事にクリアして、意気揚々と最終戦に挑んできたわけです。もちろん優勝だけを目指して。

そんな彼女の存在は、私にとって脅威でもあり頼もしいものでした。
並びも悪い魚谷プロの親番を落とすのに、一人では不安だったからです。

もし、11回戦で、宮内プロがあのまま沈みの3着で、私が浮いて終わっていたら、かなり厳しい条件での最終戦となり、簡単に魚谷プロの親番を落としたりは出来なかったでしょう。
そしてオーラスでの決定打となった私への放銃も、条件があったからこそ打ち出された牌でした。
もちろん、その宮内プロの存在が自分にとってどう転ぶかわかないものでしたが、感覚的に不安より期待の方が大きかったわけです。

そしてもう1つの理由。
それはこの放銃によって、負けることも受け入れることが出来たからです。
絶対負けたくない、負けられないとずっと思って戦ってきた3週間でしたが、このミスにより、初めて負けるかもしれない、敗因を作ってしまったかもしれないと思いました。
応援してくれている人にはとても申し訳ないけど、その時は誠意を込めて謝るしかないな、などと考え、覚悟を決めて最終戦の卓につきました。

もう運命は決まっているはず。犯したミスもふまえて、それが今期の自分だ。後は最後まで、正しいと思える選択を続けるのみ。ポイントとか、条件とかは、オーラスまで気にしない。私は今まで通りのやり方で、最後の親番(オーラス)に辿り着けばいい。

歯を喰いしばり、勝負の邪魔をしないように一生懸命卓を見つめる松岡プロ。
淡々と気持ちの良いリズムと美しいフォームだが、指先は微かに震えている宮内プロ。
激しい息遣いで、確実に迫ってくる魚谷プロ。
もしかしたら、みんな私より苦しいのかもと思えたら、フッと気持ちが楽になりました。

欲を捨て、受け入れること。
自然に身を任せ、リラックスすること。
客観的に見ること、感じること。

もし、あの時トップを獲れていたら、満貫を放銃しなかったら、もう少し余裕のあるポイントで最終戦に挑んでいたら、、、私は取り返しのつかないミスを犯してたような気がしてなりません。

半年間、拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。
いつの日か、上級講座で再会できますよう、精進致します!