中級

中級/第67回『牌譜検証のススメ』

麻雀において、手牌が100パーセント読めることは稀で、読んだ結果、損をしてしまうこともあるため、最初から放棄する。
または、単純に面倒だし、その割に効果が薄いから捨て牌は読まない、という方も中にはいるだろう。
確かにシステム化された打ち方は精神的にブレない分強い。しかし、その対極にある繊細な打ち手に比べるとすべてが大雑把とも言える。
自身の中であらゆるパターンが処理されているため「どんな結果が出ようともこの打ち方をするしかない」といったような場面が増え、
自身の麻雀を高める部分が少ないのも事実である。
最近ではインターネット麻雀の普及により、以前より格段に牌譜検証がしやすくなっている。
これにより今後、読みの技術は高まってくるに違いない。
今回は捨て牌読みの練習方法として、実際に牌譜を検証しながら解説していこうと思う。
牌譜はインターネット麻雀日本選手権2012のもの。
インターネット麻雀「ロン2」会員の方はロビー画面の牌譜ライブラリ・イベントより同時に牌譜を再生しながら、
まずは手牌をクローズして、じっくりと再生してみていただきたい。
準決勝Y卓・1回戦
67_05
インターネット麻雀日本選手権・準決勝は半荘3回戦のトータル勝負。上位2名の勝ち上がりとなるシステムである。
※捨て牌の暗い牌がツモ切り、明るい牌が手出し。
8巡目、前原プロのリーチ。最後の八筒七筒のリャンメンターツ落としをどう考えるか?
七筒七筒八筒八筒からのダブルメンツ落としや、メンツ手から七対子への移行も考えることができるだろうか。
このあたりで簡潔に処理されるのが普通である。
しかし、その間にある五筒が引っ掛かる。八筒七筒と手出しする間に五筒が打たれている理由は何か?
ここで答え合わせをしてみよう。
八筒を打ったときの前原プロの手牌は、
四万五万六万七万二索三索五索六索七索一筒一筒五筒八筒 ツモ六万
こうなっていた。567の三色への変化を一応考えてまずは打八筒
67_01
次に七筒を引いたときの形がこれ。
ここで打五筒としたという訳だ。
五筒七筒の差は、場に五筒八筒の方が多く打たれており、危険度が高いということ。
そして七筒がダンプ大橋プロたった1人ではあるが現物であるということ。
最初にパターンとして考えた七筒七筒八筒八筒からのダブルメンツ落としなら約50パーセントの確率で六筒九筒の受けが残るということになる。
しかし、間に挟まれた五筒の意図を考えると、六筒九筒が待ちになっている可能性はそれ以下になるということがわかる。
続いて、同じ半荘のオーラスから。
67_02
親番の前原プロが仕掛けたのは4巡目。その時の打牌がトイツ落とし1枚目の四索である。
それに対して、南家の和泉プロがドラの南を打ち、今からダンプ大橋プロが南を合わせる場面だ。
同じように、手牌を開けずに予想してみる。
3者がトップ争いの場面。アガリ止めがないということも重要だ。
前原プロの連荘となっても必ずもう1局あるわけで、和泉プロの立場で、この局に勝負をかけてくるということは手が整っていることは間違いなし。
大橋プロの余剰牌一が、和泉プロの現物になっていなければ南をもう少し引っ張る手段もアリだ。
少し巡目が進み、
67_03
先ほどダンプ大橋プロが合わせ打ちした南は、北家の中山プロが同巡2鳴き。
大きく離されたラス目であるため、2鳴きの理由が打点的なものなのか、まだしかけるべき手牌になっていなかったのかは判別不能だ。
ダンプ大橋プロはここでもやはり和泉プロに対する安全牌である一万を残し、打一筒を選択。
するとそれを、前原プロがポン。前巡に中山プロが打っている一万は仕掛けていないが、一応三索の手出しがあるため、自然に見える。
この局の結末は…
67_04
前原プロが一筒をポンしたときの手出し牌が中
ここまでは一色手風の捨て牌に見えていたが、次の打二万で一色手ではなかったことがわかる。
次に前原プロの仕掛けに対してドラの南をぶつけた和泉プロは、リーチ宣言牌の六万まですべてツモ切りであるため、タンピン形の1シャンテンであったことがわかる。
ついでに言うなら、2シャンテンの形はこうなっていることも、捨て牌だけを見てわかる。
五万六万六万七索八索二筒三筒四筒四筒五筒八筒八筒南 ツモ六索
現在の点数状況の和泉プロが南を打ったこと、1,000,2,000でトップになるという条件であることから、
ストレートな手順で打つという前提があり、7巡目に五索が打たれていることだけが理由だが、これはいわゆる「捨て牌の裏スジは危険」ということと繋がる。
裏スジが危険ということを単純に処理するのではなく、なぜ裏スジが出来上がるのかということを考えることが重要なことである。
前原プロが発を仕掛けて四索をトイツ落としした形が、
二万三万七万九万九万四索四索一筒一筒七筒八筒 ポン発発発
そして最初の一筒はこの1シャンテンでポンせず、というのが答えであった。
二万三万九万九万九万三索一筒一筒七筒八筒 ポン発発発
細かい話しばかりではあるが、真面目に牌譜を検証してみると、新たな発見があるものだ。
ただし、打ち手全員が懸命に打った牌譜に限る。打ち手の意図が曖昧なものをいくら検証しても意味がないからである。
伸び悩みを感じている人、レベルアップを望む人は是非ネット麻雀を活用して牌譜を検証していただきたい。
「インターネット麻雀日本選手権2012」決勝戦のメンバーは、
前原雄大vsダンプ大橋vs佐々木寿人vsいちのせ@(ハンゲーム・麻雀4)、以上の4名に決定!
(決勝戦は7月15日(日)16時〜 半荘5回戦 ニコニコ生放送にて生中継!!)