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第65回『トーナメント戦』

2012/05/15
執筆:滝沢 和典


『トーナメントとは』

麻雀でよく使われるトーナメントシステムは、半荘を1回〜複数回打って1卓の中で上位2名が勝ち上がりとなる方式である。
日本プロ麻雀連盟のタイトル戦では、十段戦、マスターズ、グランプリMAXの予選段階。
ロン2、天空麻雀など、ネット麻雀の大会やテレビ対局でもこの方式が使われている。
卓内での上位2名が勝ち上がりということは、1、2着は同じ「勝ち」3、4着は「負け」勝ちか負けか、2つの評価しかないということ。
ときには、安手に振り込んだり、仕掛けをアシストしたりと、上位2名が場を進行させる場面も増えてくる。
つまり、トップを目指したり、ラスを回避したりするのが基本となっている一般的なルールとは、戦い方も違うということである。
また、タイトル戦の決勝など、トップ条件の対局にも通じるところがある。

【戦術と条件計算】

65_01

画像は「第9回天空麻雀・女性大会予選B卓」のもの。
半荘1回戦で上位2名が勝ち上がりというシステムの対局である。(一発裏ドラ有り、各5に赤1枚、オーラス親のアガリやめ有り)

まず、それぞれのテーマを考えてみる。

親番の和泉は現在ラス目で、ターゲットである2着目の和久津まで23,900点差となっている。
この点差ならどれだけ無理があろうとも、すべて自分の都合でアガリに向かって直線的に打つべきである。
「他者に迷惑をかけてしまうかも……」などと考える人がいるかもしれないが、
「当然、この親は攻めてくる」というのが相手3者共通の認識なので、余計な気を使って手を曲げること自体が迷惑なことにもなり得る。
どう打とうとも誰かしらに迷惑がかかるのだから、とにかく自分のためだけに打つことを心がけるのが紳士的な打ち方であろう。

現在3着、北家の二階堂もマイナスしている状態なので和泉と同じようなことが言えるが、
ターゲットである和久津との点差が12,000点以内、つまり満貫ツモでオーラス親の和久津を逆転できる範囲である分、和泉より選択の幅が広がる。
一発裏ドラや赤牌が3枚入っていることもあり、満貫は現実的な条件である。
ここで和久津にこれ以上、点差を広げられることがなければ、オーラスにかけることもできるので、和泉ほど無理をする必要はない。
勝負所を見極めて打つという選択が残されている。

視点となっている黒沢は、現在南3局でトップ目に立っている。
ここで大切なのは、それぞれの選手がどういったテーマで、この局を打ってくるかということを把握しておくことだ。
配牌で中がトイツになっているが、防御を考えたときに残る形の都合が悪く、
和泉、二階堂の2者がほぼ攻めの姿勢であることを考えると迂闊に仕掛けることもできない。
上家に座っている和久津のアシストを期待するという戦い方もあるが、赤牌が入っているため、それは難しい。
黒沢がどれだけ安さをアピールしても、和久津の視点から赤牌の所在まで確信できるケースが少ないからである。

以上の理由から、この段階では黒沢は中を仕掛けないのがセオリーといえるだろう。

各自テーマに沿って打つのは当然として、他者のテーマを踏まえて押し引きや手順を判断することが勝率に大きく関係してくるのである。

オーラス
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南3局は、黒沢が1シャンテンで中を仕掛けて、和泉から5,200の出アガリ。オーラスを迎えて点数状況は以下のようになっている。
東家・和久津37,000 南家・黒沢50,400 西家・二階堂25,600 北家・和泉7,000

二階堂は2着に着けている和久津との点差に変化がなかったため、満貫ツモまたは跳満の出アガリという条件が残った。
黒沢の条件は言うまでもないが、自分がアガるか流局、もしくは他者のアガリでもほぼ勝ち残りとなる。
和久津は流局か黒沢のアガリが通過条件。自分のアガリでトップ目に立つことができればアガリやめで終了となる。
和泉は和久津からの倍満直撃か、ツモアガリなら3倍満以上。
かなり難しい条件だが、かすかにでも勝ち上がる条件がある以上は、その目標に向かって打牌を選択するべきだ。

視点を親番の和久津に移してみよう。

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5巡目、六万を引いた和久津の選択は打一万
二階堂の満貫ツモ条件は、単純に確率だけで言えば10%を下回るので、目一杯に構えずにライバルに対して安全牌を残すのは当然。
しかも、二階堂の河には早くも九索のトイツが打たれている。和久津は手が整う気配がなければ、危険を冒さずにオリる選択肢も残しておくべきである。

10巡目
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1シャンテンになった和久津は手牌を目一杯構えたところで二階堂からリーチが入り、結果は二階堂の一発ツモで終了となった。

四万四万一索二索三索四索赤五索六索三筒四筒六筒七筒八筒 一発ツモ二筒

とりあえずは、打ちたい牌が現物になっているため問題なく打牌が選択できるが、もしこのあと局が続いた場合、和久津の選択が非常に難しい。
もちろん、二階堂がリーチとくる以上は条件を満たしていることは間違いないのだが、
出アガリでも満貫が完成している場合、和久津からの直撃でも条件クリアということになる。(5,200点の直撃では着順が変わらない)
和久津が二階堂のリーチを無視してストレートに打つと、二階堂のツモが2倍になるのと同じで、逆転を許す可能性も倍増してしまうのである。
仮に、和久津に好形のテンパイが入っても、オリという選択は消去してはならない場面であった。

実際の対局では、オーラスに至るまでに条件を把握しながら打つことが大切なことだ。
普段のシステムとは違い、1、2着の価値が同じということが打牌内容に大きく影響してくる。
それまでのトータルポイントがあるなら、東1局からそれぞれのテーマを踏まえて打つ必要があるのだ。

現在開催中の「インターネット麻雀日本選手権2012」や日本プロ麻雀連盟のタイトル戦など、
複数回打って勝ち残りを決める場合は、それまでのトータルポイントに現在の得点、順位点を足して計算することになる。

今回の第3次プロテストではこんな問題が出題された。

タイトル戦決勝、最終戦南4局を以下の条件で迎えた。あなたの優勝条件を答えよ。

A+8,3P B▲2,7P C▲6,7P あなた+1,1P(ここまでの成績)

南4局 持ち点
東家A 30,300 南家(あなた)28,600 西家C 34,600 北家B 26,500

≪1≫ ツモアガリの場合の優勝条件を答えよ。
≪2≫ A、B、C各自から直撃の場合、何点以上が優勝条件か答えよ。

※順位点、点数計算は日本プロ麻雀連盟Aルールに準ずる

これは、実際にあった条件計算に基づいた問題で、プロとしては必須の問題。
プロを目指そうという方は特に、興味のある方は是非挑戦してみていただきたい。