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第143回:中級講座『心構え』 浦田 豊人

2018/12/12
執筆:浦田 豊人


連盟公式ルールに的を絞った中級講座の連載も、今回で5回目となりました。

第1回目
トップ狙うべからず。
第2回目
役無しリーチかけるべからず。
第3回目
二鳴きするべからず。
第4回目
2フーロに放銃するべからず。

これまでは麻雀の押し引きの判断、リーチや鳴きの判断について、または鳴き読みについてをテーマにして、麻雀の「技」の部分を書かせて頂きましたが、今回のテーマは「心構え」。
麻雀も相手との闘いである以上、他のスポーツや競技と同様に「心・技・体」のどれもがしっかりとしていないと勝ちきれないものであり、そのためには「技」の鍛練は勿論の事、「体」をしっかりと管理し、そして「心」もしっかりと鍛え上げなければなりません。

今回のテーマは抽象的であり、ある意味講座向きではないかもしれませんが、私としては最も書きたかったテーマでもあります。
私の個人的意見では「心50%、技25%、体25%」くらい、心の部分が勝敗を分ける大切な役割を果たすもので、「心=精神」が麻雀において勝つために最も重要なものだと思っております。

今回は私が公式戦に臨む時に、呪文のように唱える心構えを幾つか紹介させて頂きます。
もし1つでも共感出来るものが有りましたら、幸いに思います。

●対戦前の心構え

【其の一:負けるイメージを持て。】

先ず対戦前の心構えです。
よく他のスポーツの競技などでも言われる事ですが、
「勝つイメージトレーニングをせよ。」
「勝った時の成功例を思い出せ。」
と言われる事がありませんでしょうか?
確かにポジティブに考えて試合に挑む事は、当日ネガティブになって力を最大限に発揮出来ない事を防ぐ上で、非常に効果的だと思います。
しかしそれだけでは私の中では50点です。
勝つイメージと同時に「負けるイメージトレーニング」も行って、はじめて満点と言えましょう。

人はどうしてもミスをしてしまう生き物です。
そんな時、「◯◯しておけば良かった。」
「次は絶対に◯◯をしない。」と反省をし、直後の戦いに調整していると思います。
そして1日終えて、
「最初の失敗さえなければ今日は結果プラスだったのになぁ。」とか、
「でも、それを教訓にしたから、その後からは良い麻雀が打てたかな。」とも思う日もある事でしょう。
しかしながら人はまたその失敗を忘れて、ポジティブのみをイメージして、同じ過ちを繰り返すのです。
だから、あらかじめ「先に負ける」のです。
そうしてから1回戦に挑めば、最初から油断なく最大限良い麻雀が打てる、というものではないでしょうか?

「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」

この言葉は佐賀藩士・山本常朝という人の武士道書『葉隠』の一説で、この言葉を耳にした方は多いのではないかと思います。
いったん死んだ気になることで、何事かに臨めば、自由な気持ちになり上手くいく、という意味合いですが、
まさにこれこそ「負けるイメージを1回持て」という事になるのではないでしょうか?

【其の二:格上との対戦は、それ以上の迫力で押し返せ。】
【其の三:全ての対戦者にリスペクトする。】

当たり前の話ですが、麻雀は3人と戦う競技であります。
その対戦相手の中には、時には動画配信でお馴染みで誰もが知っているトッププロの方との対戦もあるかもしれません。
また、そこまでいかなくても明らかに自分より格上の方との対戦が当然遭遇すると思います。

そういう時にその相手の「迫力(オーラ)」で、対戦前や対戦中に圧倒されてしまい、普段打てる牌を怖がって止めてしまったり、もしくは逆に目をつぶって一か八かで懐に飛び込んでいったりと、冷静さを欠いてバランスを崩すのが、私の経験則を含めて見受けられます。
それこそ上級者の思うツボなのです。

こんな時こそメンタルを強く持つ事です!
相手に物凄い迫力があっても、そのオーラを上回る迫力で押し返さなければならない。
いつも通りにしっかりと勝負し、しっかりと受けなくてはなりません。

逆に明らかに自分より経験が浅い人との対戦の時、勝手に「今日は勝った」、「プラス100ぐらい稼ぎたいな。」と慢心する事は禁物。
経験が浅いとはいえ、牌を持っていたら何が起こるかは分からないのが麻雀。
それで相手に先制パンチなんか喰らうと、「何故!?」となり、そこからズルズルといってしまう。
これではいけません。

相手と闘うのではなく、牌と闘わなくてはいけません。
とにかく普段やっている自分の麻雀を、いかに出来るか。

そのためにもやはり大切な事は「相手をリスペクトする」ことです。
格上だろうが、経験が浅かろうが、対戦相手を敬う気持ちをしっかりと持つ事は、闘いにおいてとても大切なことだと思います。
自分に自信を持つ事は大事ではありますが、それ以上に謙虚に真摯に卓に臨まないと、段々と正確な判断が出来なくなっていきます。

偉そうに書きましたが、そういう私もなかなか実行出来ていません。
リスペクトして臨む、と言うのは簡単ですが、自分が一番強いと思う、負けず嫌いの勝負師達にはなかなか出来ないものであります。

 

●対戦中の心構え

【其の四:忘れろ!とにかく一旦忘れろ!】

さて、それでは対戦中の心構えです。
対戦中は一打一打、一局一局、いろいろな出来事が起こります。
会心のアガリ、見事なアタリ牌止めなど成功もありますが、同時に失敗もいっぱい起こしてしまいます。
親リーチへ無理しての放銃、ヤミテンへのうっかり放銃、選択ミスによるアガリ逃し、単純な切り間違いなどなど…。

プロであるならば「反省」は絶対に必要です。そして、その反省を元に次への糧にしなければなりません。
しかし、その反省を次の局の最中にしてしまう人がいます。
これではいけません。

麻雀は毎局毎局の一打一打で選択の連続となります。自分のツモ番以外でも他家のツモ切り・手出しや細かい挙動に気配りをしなければなりません。
誰かの一打で局面がガラッと変わってしまう競技です。
そんな時に前局の失敗を思い、あれこれ反省している場合ではないのです。
ガックリしたり、カッカして熱くなっている場合ではないのです。
そんな事していたら、その瞬間から「勝利」はあなたのもとから離れていくでしょう。
麻雀の敗因は「ミスをした」事よりも、ミスにより心が揺れて、集中力を欠いて「更にミスを重ねてしまう」、このミスの連鎖が敗因になるのではないかと思います。

「反省はその日の対局全てが終わってからするべし。」

反省は上達のためには絶対条件ですが、忘れる事こそ先ずは絶対条件なのです。
それでもついつい反省してしまう人は、自分がどんな時に心が揺らぎやすいのかを、普段から検証しておくと良いです。
一番多いケースは自分が放銃した直後ではないでしょうか?
なので、特に自分のダメージになるような放銃は、絶対にしないようにしましょう。

ダメージにならないためのアドバイス
「ワンチャンやスジは信用するべからず。」

初心者を卒業して、麻雀が分かってくると、ワンチャンスやスジが「比較的通りやすい」と思い、受ける牌の選択肢にしてしまう人がいます。
それで放銃すると、「ツイテない!」となり、勝手にダメージを受けている人が見受けられます。

連盟公式ルールは平均打点が低いため、どうしても失点を防ぐ「守り重視=放銃回避」の傾向になりがちです。
なので、攻める側も場況に恵まれて「ワンチャンスだからリーチ」、「スジ待ちになっているからリーチ」として、少しでも放銃を誘い込もうと考えるケースがおおいに有り得ます。
そして受け手側もリーチに対してガチガチに現物しか切らないと、結果リーチ後にワンチャンスになる事も非常に多く見受けられるのです。

また、下記のような例もあります。

親・Aさんのリーチの捨て牌

九万 上向き中二筒 上向き八索 上向き九索 上向き四万 上向き
西五筒 左向き

南家・Bさんの手牌

三万三万四万四万一索三索五索二筒四筒六筒七筒西西  ドラ東  ツモ東

中盤に差し掛かってもなかなか手が進まないと思っていた矢先に親のリーチ、そして生牌のドラの東ツモ。
流石にここは受けになるでしょう。
そんな時、現物の西をトイツ落としせずに、四万を2枚続けて切る人がいます。
そうです、ワンチャンスを作って他家の放銃を期待する打ち方です。
安全牌がない人がワンチャンスを頼りに打ってくるかもしれないからです。

つまり公式ルールは他のルールに比べて、どうしてもワンチャンスやスジ待ちになりやすいものです。
心が揺れないためにも、ワンチャンス・筋ヒッカケは「打牌選択肢に入れない」という、強い気持ちを持つように心がけましょう。

【其の五:理を基にして感性で判断せよ。感じろ!】

麻雀は囲碁・将棋と違って、山や相手の手はふせられているので、どうしても「見えない部分との戦い」となります。
見える部分は「理」をふんだんに頭を駆け巡らせて答えを見つけていくものとなりますが、それでも見えない部分の方が多くなります。

例えば6巡目の親がリーチをかけてきた場合、この時点で見える牌は
4人の捨て牌 21枚
自分の手牌 13枚
ドラ表示牌 1枚
合計35枚となり、誰も鳴いていないと仮定すれば、見えない牌は101枚となり、それは実に74%と3/4の部分が見えない部分となります。

ですので、このように見えない部分を推理していく事が麻雀には必要不可欠となりますが、どうしても限界はあります。

それではどうすればよいでしょう?

「分からないものは考えても仕方ない。」
これも一理あります。
私は極限まで感じて、「感性」で答えを出していこうとしております。
単なる「勘」ではなく、見える部分からの「理」を元に、これまでの状況判断を反復し、自分の感性で答えを出すよう、感じるようにしております。
(この「感性」におきましては、また別の機会に書かせて頂きたいと思っております。)

【其の六:勝負処を見極めろ、行け!】

「麻雀=戦い」である以上、戦いには必ず「勝負処」というものが存在します。
その勝負処を制したものが、勝利を掴み取るものでありましょう。

現在行われている公式ルールの各種リーグ戦では半荘4回戦がスタンダードでしょうか?
その4回戦のどこかで必ず勝負処が存在しますので、その勝負処が何処かをしっかりと見極めて、その時はどこまでも突っ込んでいかなければ、勝利の女神は微笑まないものだと私は思います。
安全牌ばかり捨てていて、自分だけアガろうとは虫のいい話です。
相手を倒すには、同時に倒される近さまで踏み込まなければなりません。
そういう勝負処では絶対に弱気になってはならないし、かといって打ってもいけません。
何としても恐れず進んでアガリ切って、自分の主導権にしなければなりません。

逆に勝負処が来るまでは無理に行き過ぎて、自滅しないように打ち進めなければなりません。
一番気を付けなければならないのは、公式戦のような回数の限られた戦いの場合、「開局・スタートが最重要」なのであります。
序盤戦において、状態が悪い時はまだ勝負の時ではなく、我慢のしどころなのであります。
いきなり一か八かにいかないようにして下さい。
それでも開局1回戦東1局に勝負処が訪れる事もありますので、とにかくスタートには最大限に神経を研ぎ澄まさなければなりません。

【其の七:最後まで絶対諦めない。】
【其の八:最後まで油断しない。】

麻雀は本当に最後の最後まで何が起こるか分かりません。
どんなに大差であっても、まさかの奇跡の大物手やオーラスの突然の大連荘など、麻雀を覚えて36年間、嫌と言うほど大逆転劇を見てきたし、自分でも味わって来ました。
逆に最後まで諦めなかったおかげで、降級確実な位置から最終節に残留を果たすという経験も何度もして来ました。

例えばラス目の親で下記の配牌を手にしたとします。

南3局 親 持ち点13,100

一万四万八万九万八索九索九索一筒五筒八筒東白発中  ドラ一索

「さすがラス目の親だなぁ~。」と嘆きたくなりそうな配牌ですが、ここでやけになって四万五筒から切ってチャンタに向かい、あわよくば国士に、というのは安易であると言えましょう。
ここは一万から切って、役牌の重なりや上の三色などを目指し、なんとか連荘を果たすべく粘り強く「4メンツ1雀頭」を必死に作っていく方が望ましい打ち方だと思います。
ラス目、状態が悪い時でも最後の最後まで諦めない事です。

逆にトップ目、状態が良い時は油断禁物です。安心せず、油断せず、更なる上を目指す、良い勢いを奪われない事が大事となります。

「これで勝てる!」と思った時が一番危ない。それが勝負の落とし穴です。
相手も開きなおります。
総合トップ目でも決して守りにいかない。
守りにいけば勢いをなくし、追い上げ者に抜かされるのは明白です。
例えトップ目でも堂々と勝負しましょう。
オーラスが終了するまで攻撃していなくては勝ちきれません。
「『優勢』=『勝利』」ではありません。
「勝負」とは、勝負が見えてきたところからが、本当の勝負のはじまりなのであります。

しかしながら、そうはいってもしっかりと受けるべき時まで攻めていてはいけません。
油断をせずに、過信せずにしっかりと受ける場面が必ず起こりえます。

(私の実戦譜より)
オーラス 37,000点トップ目
ラス目の親が東をポンする。
捨て牌は
六筒 上向き八筒 上向き二万 上向き

私の手は

二万三万六万四索六索九索二筒三筒九筒九筒南中中  ツモ三筒  ドラ八万

親の手は捨て牌からいってホンイツが本命で、最低5,800から12,000まであろう。
トップ目の私としてはのんびり構えているわけにはいかず、中を早く仕掛けてこの半荘を終わらせたい。
なのでソウズを早めに処理すべく九索を切ると、「ロン!」

一索二索三索四索五索六索七索八索南南  ポン東東東

なんと親はすでにテンパイしていて、「ホンイツ役一通」の高目親満に放銃してしまいました。

「こんな早い手、交通事故だよ。」
確かに3巡目のポンテンの出来事なので、そう思いたくなりますが、そうではありません。
放銃したのは結果的に仕方ないかもしれませんが、親の手をホンイツと読んだ以上、九索を鳴かれる可能性も考えねばならず、やはりトップ目としては軽率な一打と言えましょう。
これこそ「油断の一打」なのです。

 

●対戦後の心構え

【其の九:盆面を良くしよう。】

よく「勝つまでは決して白い歯を見せるな。」と言われますが、勝った後でも極力必要以上には見せない方が、私は良いと思います。
これまでの闘いにおけるお互いの健闘を称えて、その対戦者に敬意を表したいと思えるかです。
対戦中の心構えのところでも書きましたが、真摯に相手をリスペクトされているかどうかは、対戦後に自ずと分かります。

問題は負けた場合の心構え。
麻雀という勝負が好きな人は、それこそ大好きなゆえに負けず嫌いの人が多いものです。
そんな人が負けてしまった場合は、挨拶もおろそかに帰ってしまったり、残っていても周りにあれこれと愚痴ったりしてしまいがちです。
いわゆる「盆面が悪い人」です。
しかし、それではやはりいけないと思います。
対局後は勝者をしっかりと称え、周りにも気持ちよく感謝の気持ちを持たなければなりません。
と言いつつ、実はこの私も昔から盆面が悪いという強い自覚があります。
負けず嫌いも本当に困り者です…。

【心構えのまとめ】

◯対戦前
「負けるイメージを持て。」
「格上との対戦は、それ以上の迫力で押し返せ。」
「全ての対戦相手をリスペクトする。」

◯対戦中
「忘れろ!とにかく一旦忘れろ!」
「理を基に感性で判断せよ。感じろ!」
「勝負処を見極めろ!行け!」
「最後まで絶対諦めない。」
「最後まで油断しない。」

◯対戦後
「盆面を良くする。」

今日も私は呪文を唱えながら麻雀をします。

邪道戦法は続きます。
お楽しみに~。