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第75回『確率と経験則』

2013/03/13
執筆:白鳥 翔


これまで5回に渡ってこの中級講座を担当させて頂いたが、今回が最終回となる。
講座というよりは、ただ自分が思うことをありのままに書いてきた。読者の皆様に、少しでも自分の考え方が分かって頂けたなら幸いである。この最終回も、自分の考えを伝えて締めたいと思う。

さて、いきなりだが次の問題に直感で答えてほしい。
「今ランダムに30人が集められたとして、少なくともその中の2人の誕生日が同じである確率は何%でしょう?」

これはインターネットで見つけた問題なのだが、答えから書いてしまうと、きちんと計算すると70%を超えるらしい。直感的に、これよりかなり低く見積もっていた人がほとんどなのではないか、と思う。
この問題を、「確率」を重視して麻雀を打っている打ち手に聞いてみても、直感で、と言われたら大幅に誤差がでるのではないか?

「確率」というものを重視している打ち手であっても、麻雀と比べたらよほど簡単と思われる確率計算も瞬時に判断することはなかなか難しい。つまり麻雀という、より複雑で難解なものに対して、その場その場で様々な確率を正確に計算することはできないのだ。

様々な確率とは、例えばある牌を切った時の鳴かれる確率だったり、鳴かれた場合の失点率、鳴かれなかった場合は・・・などだ。

「確率」を追い求めている上級者のプレイヤーでも、局面毎に正確な計算をして打牌しているわけではない。
では、全てのプレイヤーが何を根拠に打牌しているかといえば「経験則」というものも少なからずあると思う。全く同じ局面など来ないが、似たような局面、手牌は多々存在していて、それまでの経験からどれを切るかを瞬時に体感で判断している。

上に記した、直感で答えてほしいといった確率の問題に答えてもらった時、なぜ大幅に誤差がでるのかといえば、同じ様な問題を解いたことがないからだ。

例えば、終盤に危険牌を持ってきた時に、そろそろオリた方がいいのか・・・と自分自身は瞬間的に感じることがある。理屈で言えば、安手の1シャンテンで、カンチャンも残っているし・・・など、様々な理由付けはできるが、これまでの経験や結果から体感で感じているのだと思う。

ある人から見れば、選択A、選択B、選択C、と3つの選択肢が経験則から浮かび、その中から1つを思考して選択するが、それより雀力が上の人からは選択A、選択Bの2つの中からの選択になったり、または選択A、選択Dの2択になったりする。

この体感を養うには、とにかくひたすら打つことで、これを養うのも雀力向上の為に必要だと考えている。
「第一感」とよく言うが、私はこれを経験則に基づいたものから瞬時に判断しているものだと思っている為、決してオカルトだとは思っていない。修練の積み重ねこそが、その様な瞬時の判断力を生む。

ただ、その自らの経験則を養う訓練自体が間違っているものだとしたらどうだろうか。
インターネットの記事から、「他家のテンパイが入っている時、大抵の1シャンテンから攻めるより、安手でもテンパイから攻めた方が有利」という文章を見つけたことがある。

以前にも似たような状況を記したが、東1局、南家からリーチが入っている6巡目、自分は西家で、

三万四万五万四索四索五索五索六索三筒四筒六筒六筒北  ドラ三万

この様な牌姿で、南家から二筒が打たれたとする。
この記事の内容だけで考えれば、チーテンをとることが得策なようだが、果たしてあっているのか、更にあっていたとして、全ての状況で適用されるものなのか、自分自身で考える必要がある。

チーした場合の失点率や和了率、または最終的な順位にどの程度影響するか、順位点はどうなるか・・・。
他家の捨て牌や動きによっても、それら全ては変わってくるだろう。
重要なのは、これは局単位で考えた収支データであるので、自身の置かれた点数状況からの順位点の相関などは全く考慮されていないということだ。

例えばこれが、南2局の北家、7,000点持ち、他の3人が31,000点持ち位で競っているとしたら、絶対にチーすべきではないだろう。自分はもう親もない北家で、このチャンス手を2,000点で終わらせてしまえば、残り2局、3人が僅差で競り合うという、その後の展開を考えてみてもかなり不利なものになるのは間違いない。

しかし、門前でリーチをかけてアガることができれば、一気にトップ争いに食い込むことができ、順位点の大幅な上昇も十分見込むことができる。
この記事を否定する気はもちろんないのだが、要は使い方次第ということだ。

最近は、インターネットなどから、データやそれに伴った知識を得やすくなったのは間違いないが、その知識をそのまま当て嵌めて使っているだけ、という場合が多い。知識が増えるのはもちろんいいが、自らでそのデータの検証をしているのか?まだまだ未開拓で歴史が浅い為、間違ったデータが世に広まっていったとしても不思議ではないだろう。

本当は「ミス」なのに、それに気付かずデータを鵜呑みにしたり、間違ったデータの使い方でずっとその手法を取り続けてしまう、というのが最も恐れなくてはならないと思う。

毎回似た局面や手牌で、損な選択をしてしまうだけでなく、それを積み重ねてしまうことによって、自らの経験則として蓄積されてしまいかねない。常に疑問を持ち続けながら訓練し、自らの経験則や体感の精度を上げていくことも、雀力アップに必要ではないだろうか。