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第76回『基盤』

2013/04/10
執筆:佐々木 寿人


 

「麻雀の強さはルールを選ばない」
これは、「SSG第4回麻雀格闘倶楽部麻雀トライアスロン雀豪決定戦」のサブタイトルとなった言葉である。

この大会では、東風戦、半荘戦、3人麻雀の3モードから成るセットを1クールとし、得点の多寡を競う。
当然のことながら、全てのモードで満遍なく好成績を収めなければ、上位に入賞することは難しい。

初めてこの標語を目にしたとき、十数年前の自分の姿がふと頭に思い浮かんだ。
雨霰のように東風戦を打ち込んだあと、別の街へと3人麻雀を打ちに行く。
そして、誘いがあれば東南戦を戦いに、赤坂や六本木まで繰り出す。
そう、毎日がトライアスロンのような生活だったのである。

当時私は、どんな麻雀であっても得手不得手があってはならないと考えていた。
いつ何時、どんな麻雀が転がっているかわからないのに、自分が得意なものだけやっていればいいはずがなかったのだ。

冒頭の標語は、正に私の思いを表していた。
もちろん、今もその思いに変わりはない。

さて、今では「麻雀格闘倶楽部」や「ロン2」などでもお馴染みとなった3人麻雀だが、リアルとなれば話は別だ。実際打ったことのない人もたくさんいるだろうし、その必要すらないと考えている人も多いだろう。

しかし、3人麻雀から学べるもの、つまりは4人麻雀に応用できるものは数多い。
相手が1人削られて、使われる牌の枚数も減るわけだからそれも当然である。
そして何より、3人麻雀にはチーがないことも大きい。
例えば以下のような手があったとしよう。

赤五索六索六索七索七索九索九索三筒三筒四筒五筒六筒七筒中  ドラ四筒

テンパイ最優先なら中切りがベストであるが、3人麻雀では字牌の占めるウェイトが非常に大きい。
中が生牌なら、打点ということではなく、鳴かれることのない三筒を先に外していくのがセオリーとなる。
切り順を誤ればアガリ番が変わるケースもあり、一打一打の重みを知る上でも、3人麻雀は格好の稽古場となるのだ。

他にもある。

二索三索赤五索五索六索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒南

3人麻雀なら平均的とも言える配牌だ。ここにツモが西なら何を打つか。
ちなみに、自分は西家でドラが西。東家と南家の第一打は共に南である。

答えは南である。

九索でいいじゃないかと思われる人もいるだろう。
だが、純粋にアガリを目指すなら南切りしかないのだ。

3人麻雀は4人麻雀に比べ、より早く正確な手順が要求される。
アガリが出る局面も紙一重であるケースが非常に多く、1巡のミスが命取りとなるのである。

賢明な読者ならもうおわかりだろうが、南は安全牌にこそなれ、攻撃には全く使えない牌である。
では九索はどうか。ソーズの上目をカン七索の受けと見れば、確かに不要牌には見える。
しかし、九索にはトイツになる可能性、すなわち雀頭候補になる可能性が残されている。

二索三索赤五索五索六索八索九索一筒二筒三筒七筒八筒西  ツモ九索

こうなればしめたもの。配牌から怖がって南を抱えるのは、優れた手順とは言い難い。
アガリを見据えたときにどの牌を活かすか。これは当然、4人麻雀にも通じることである。

 

以下の手牌は、昨年私が地元仙台で手にしたものである。
東1局、西家7巡目。

四万赤五万六万七万二索四索赤五索五索一筒二筒三筒七筒九筒  ツモ七筒  ドラ八万

欲しいのはテンパイでもノーテン罰でもなく、より確実なアガリである。
となればもう選択肢は1つしかない。

二索である。

四万七万のどちらかをを外して、1シャンテンに取ったところで、所詮それは気持ちに焦りがあるだけ。
頭の中に限られた最終形しか思い浮かばないようでは、この手牌がかわいそうである。

まだ7巡目という段階で形を決める必要はどこにもない。
仮に先手を取られても、こちらが磐石の形を作ればいくらでも押し返せるのだ。
今はその基盤を作り上げるときなのである。

さて、実戦ではこのあとのツモが八万ときた。
これはドラの指示牌を抱えている強みでもある。

四万赤五万六万七万四索赤五索五索一筒二筒三筒七筒七筒九筒  ツモ八万

ここで自然に打九筒。これはベストのツモと言えるが、それも受け入れの広さが成せる業。
この形が出来ればあとはひたすら押しあるのみである。

皆さんにも経験があると思うが、いつも手なりで勝負手は作れない。
雀頭作り、ターツ作り、メンツ選択、そして鍵となる牌の取捨。
さまざまなプロセスを経て、ようやくひとつのアガリが生まれるのである。

身の保全に走る気持ちもわからなくはないが、それでは手牌の要となる牌を逃してしまうこともある。
安全牌ばかり抱えていたって、手牌は育たないのだ。