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第81回『自分を識るパートⅡ』

2013/09/18
執筆:前原 雄大


 

『自分を識るパートⅡ』

http://archive.ma-jan.or.jp/title_fight/10dansen24-fin.php

身近な存在である、滝沢和典が今を遡ること6年ほど前に記した観戦記である。
今でもハッキリと覚えているが、滝沢君に出したメールとは裏腹に、プロリーグの遅刻欠席は心に重く抱えたままだった。

勿論、ペナルティは課せられるのだが、私はプロリーグの対局者に申し訳ない気持ちで一杯だった。
それは、プロであるならばこの日のために調整を重ね、その日に合わせベストの状態に自分を導く。
それが別日対局になるわけだから、相手のモチベーション、負担などを考えれば、対局者に対して、そして、麻雀プロを名乗っていることに対して、申し訳ない気持ちになり、許されざるべきことだと思っていた。

しかし、そう考えてしまうことが私の欠点でもあり、当然、その気持ちが対局にも反映されてしまう。
良い、悪いは別としてペナルティを課せられた以上、そこで心を切り替えるのがプロとして、ハートの強さに繋がるようにも思える。

いずれにしても、自分の気質、性格の弱さは個人差はあるが、自分の弱い部分をしっかり把握しておくことは肝心なことである。

この時の十段戦は幸運にも優勝が叶ったが、多くのことを学ばされた。
一番は体力の衰えである。何しろ当時50歳前後であったのだから、体力が落ちて当然である。
尚且つ、私は腰に爆弾を抱えていた。
それにも拘わらず、当時の体重はマックスで118kg。
20代の頃は77kgをキープしていたわけだから、40kgの負荷を抱えて長時間の戦いは想像以上に身体だけでなく精神にも異常を来す。この対局後、私は1年をかけて、16kg、3年で30kgほど体重を落とした。

私はそうせざるを得ない状況だったから、そうしたまでだが、瀬戸熊直樹は違う。
まだまだ、若いし、体力もある40代である。
それでも大きな対局に備え、走り込みや、体力作りに専念するのは麻雀プロとしての自覚がそうさせるのだろう。

「麻雀だけ打っていても麻雀は強くはならないように思える」

故阿佐田哲也さんの言葉であるが、意味合いは多少違うが、至言だと思う。

 

【変容するということ】

長丁場の戦いであるならば、東1局はある程度の手材料に恵まれたならば、攻めを中心に考える。
何らかの結果、放銃であれば、そこから麻雀の組み立て方を考えれば良いと思う。
アガリという結果に恵まれたならば、そこから、攻めをさらに強くしていけば良いと考える。
その部分は昔からあまり変わっていないように思う。

要は自分の状態を計るためである。悪ければ悪いなりに頭を下げてチャンスを待つ。
良ければ真っ直ぐに打ち進めれば良いだけの事である。
怖いのは受けに走りすぎて、自分の手牌が死んでしまうことである。

滝沢が観戦記を記した時の十段戦は、初日を終えた時点でほぼ勝負の結末は見えていた。
何しろ、4回戦を終えた時点で2位との点差が110P以上あった。
それを大混戦にしてしまったのは、取りこぼしはできないという気持ちから、放銃を(受けを)意識し過ぎ、自分で自分を窮地に追い込んでしまったためである。

2日目を迎えるにあたり、110P差を200P差にしようという意識があったならば、あれほど苦しまずに済んだのに・・・。
この十段戦では、そのことが良い勉強になった。

数か月前の勉強会での一コマ。
東1局、南家7巡目。

一万二万三万四万四万一索二索三索一筒二筒三筒七筒八筒  ドラ白

状況は、私以外は明らかに遅く、各者が九筒を2枚、六筒を1枚場面に飛ばしており、私の目からは六筒-九筒が3枚見えていたことと、このあと数巡の間に誰が九筒を掴んでも打ち出される可能性の高い場面であったこと、つまりは、私の河が平凡であったという状況である。

私は「リーチ」の発声と共に、対面に坐していた山井弘に問うた。
「終局後、私のこのリーチに対する貴方の考え方を聞かせてほしい」
「わかりました」
結果は流局。

九筒を打ち出していた下家の手牌に九筒が2枚あった。{勉強会では終局時、全員が手牌を公開する}
リーチを打たねば打ち出されていた可能性が高い。

「僕はリーチを打ちます。アガれれば最良ですし、流局しても手牌を公開するだけでも意味があると思います。」
「貴方なら、そう答えてくれると思ってはいたのだけど・・」

不思議そうな顔をして山井は私を見ていた。
多分、このカタチでリーチを打たない私を見たことがないのだろう。

私はこの半荘、成す術なくラスを引いた。
勿論このアガリ損ないが、原因の全てではないと思うが。

次局私の親番で、本来ならば、前局九筒で放銃していた可能性の高い下家が、満貫のツモアガリでこの半荘を決めた。私が山井に尋ねたのは、私の普段の麻雀フォームを知っているから、自分自身で分からない部分を確認するためである。

私の武器は何と言っても親番のブレイクである。
その為には、如何に良い親番を迎えるかに掛かっている。やはり、南家のアガリは欲しい処ではある。
難しいのは、ヤミテンで3,900を拾いに行くことが良いのか、それとも自分らしく空振り覚悟でリーチを打つべきことなのかである。

一番の問題は、4月辺りからバイオリズムが下降線に入っていることを感じていた。
昨年の夏にヒサトに言ったことがある。
「好調期に入ったようだ」
「それは良かったですね」
先月に記したが、20代の私は夏が低迷期だった。30代にそれを克服したくて麻雀を打ちまくった。
夏がダメということは無くなったが、良い時期もあれば悪い時期もある。
今は、7ヶ月から8ヶ月くらい波の高さは違っても好調の時期が続く。
私の思い込みかもしれないが。

ただ、全てがそうだと思うが良い時がずっと続く人生が無いように、麻雀にも波があると私は思っている。
このことはプロ、アマチュアに関係なく、20代の若い人はとにかく、打って、打ち続けそして、至らない部分、欠けている部分をきちんと反省し考えることが大切だと思う。
それが、40代を過ぎた頃からの経験値の財産となるからである。

私に関して言えば、「連盟チャンネル」「ロン2チャンネル」をかなり観ており、新しい発見や、忘れかけていた肝心なモノを思い出させてもらっている。ロン2もよほどのことがない限り、ほぼ毎日、プレイする。
以前は、プレイした日にチェックしていたが、どうしても感情が入り良くないので、翌日の朝にできるだけ丁寧にチェックしている。その方が客観的に自分を識ることが出来るからだ。

強くなる方法論は幾らでもあるだろう。
無理をせず、自分に合った方法論を見つけることをお奨めする。
それは、例えば日々の麻雀の勝ち負けだけでも良いから、ノートに1年間記し続けるだけでも良いと思う。
それをやり続けられる人は、間違いなく1年後には強くなっていると思う。
小さなことかも知れないが、それが自分を“識る”始めの一歩にはなるものである。