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第88回『エネルギー論』

2014/04/22
執筆:猿川 真寿


この“エネルギー論“とは、私が10年前に先輩から教わった戦術である。
それ以降、私はこの戦術を使っている。

どのような戦術かというと、人にはみなエネルギーがある。
それを激しく消耗する方が、勝負どころの競り合いでは負けるという戦術だ。
なので、それを出来るだけ使わないほうが良いという事だ。

ゲームの話にして例えるならば、皆固定のMPを持っていて…
※MP=キャラクターの持つ魔法力を数値化したもの。
ただ、MPを消費せずには勝つことは到底無理なので、どこでうまく消費して敵を倒していくか?
と言ったところだろうか。

これを聞いた当時の私のスタイルは、局単位思考の「鳴き屋」だったと思う。
相手の心理を考えながら、局面で先手のアプローチをしながら、戦っていくスタイルだった。

私がこのスタイルを封印したきっかけになったのは、第22期十段戦ベスト16に初めて残ったときである。
対戦相手は、はっきりとは覚えていないが、当時のAⅠ、AⅡリーガーだったと思う。
私の麻雀は手も足もでないまま惨敗した。今の私がその対局を見ていたとしたら、
「態勢的に負ける勝負を何故続けるのか?」と思っていただろう。

そして、その年の第33期王位戦決勝。私は最終戦オーラス、トータルトップ目にいた。
そこで私は封印していたにも関わらず、悪癖がでてしまい、仕掛けによって4回のアガリ逃がしをしてしまい、滝沢に連覇を許してしまった。

その頃、近代麻雀で連盟のタイトル戦などを紹介するコーナーがあり、そこで藤原が
「それまで腰の重かった猿川が仕掛けだして、バランスを崩しだした。」と書いていた。

私は、その日の滝沢の祝勝会に最後まで残り、最終的には滝沢の家に泊まりに行くぐらいまで付き合った。
2次会の会場で藤原が「何でサルいるんだよ、変わった奴だな。」と
いう台詞を昨日のことのように覚えている。

ただ、この2つの敗戦があったからこそ、翌年のマスターズは獲得できたと思う。
その時から、私のスタイルは今の礎となっていった。

話を元に戻すと、エネルギーを使う行為は以下のことになると聞いた。

① 生牌の字牌をきること。
② 危険牌を打ち出すこと。
③ リーチをすること。
④ 仕掛けを入れること。

私は現状、③に関してはエネルギーを使うと感じていないので、残りのことを意識して打つようにしている。
特に、仕掛けに関してはアガるために鳴くように変えていった。
ただ、体感でしかないが、④はエネルギーを1番消耗するイメージがある。

これまで、連盟主催のタイトル戦決勝には殆ど足を運ぶようにしていたのだが、近年はニコニコ生放送で配信されることになったので、それもできなくなってしまった。

1番の理由は、決勝の空気に慣れたいというものだったが、色々な対局を見ているうちに、仕掛けが多い打ち手の方が終局につれて、手が枯れてくる印象を受けた。

勝ち負けはそこだけでは決まらないが、長期決戦の決勝では、エネルギーの使い方が大きなウエイトを占めていると思う。

この感覚は瀬戸熊の麻雀を見ていて1番感じる。
字牌の切り出しや危険牌は多く切るが、その分仕掛けが極端に少ない。
仕掛け以外のエネルギーの使い方は、態勢の見極めのために使っているのだろう。
要はバランスが1番大事なのである。

エネルギーに関して言えば、連盟では現鳳凰位の藤崎が一番使っていないと思われる。
①~③によってのエネルギー消費を極力無くし、④で消費しているイメージだ。

昨年、麻雀格闘倶楽部のマニフェストで書いた「3理論」はこのエネルギー論からきている。

私は瀬戸熊や藤崎のバランスは保てないので、この理論を採用している。

では、危険牌とはどの程度のことを指すのか実際の牌姿で考えてみるとする。

100

この局面で四筒切りは放銃になる可能性が高く感じるので、かなりの危険牌と言えるだろう。
2者の八筒切りと上家の二筒三筒落とし、ドラの六筒を考えれば、リーチは入っていないとはいえ、怖いところである。

エネルギーの話だけでいえば、

100

この段階で、234の三色とドラ受けを残して六索切りの方がいいかなとも思える。
456の三色にはなりにくいからであるのと、打点は分からないが全体的に字牌の切り出しが早く、速度的には他家が早そうに見えるからである。

実際の私は最初の牌姿から打四筒と選択とした。

理由は、この半荘が本戦の最終半荘で、私は2着で決勝進出という条件だったことから、アガリ逃しを恐れたからである。ただ、そうだとしても四万二万の切り順はミスだなとこの局をみて思った。

次章は「自然論」について書きたいと思う。