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第108回『確率の向こう側へ④』 瀬戸熊 直樹

2016/03/28
執筆:瀬戸熊 直樹


皆さんこんにちは。
今回は「サインの見つけ方」について、お話ししたいと思います。

麻雀=戦(いくさ)と考えるなら、劣勢の時にも必ず一度や二度のチャンスは落ちているはずです。
そのきっかけをどう見つけ、どう生かすかで、その後の展開が変わるものです。

先日終わったばかりのタイトル戦、グランプリМAXに、非常に解りやすい場面があったので、その時の状況を検証しながら進めて行きたいと思います。

グランプリМAX2回戦 南3局の場面。
1回戦をプラスで終えた灘プロでしたが、2回戦は、南2局に5,200を放銃して、一万点台の1沈みに。
面前の捲り合いに何度か敗れて、迎えた場面の配牌です。

西家 灘
配牌
一万二万五索七索七索八索九索二筒二筒八筒北白発  ツモ四筒  ドラ二筒

状況を考えれば、意外と戦えそうな手牌。
ツモ四筒六万五索四万五万 と来て以下の手牌に変化します。

四万五万六万五索五索七索七索八索九索二筒二筒四筒発

そして六巡目、親の捨てた七索にポンをかけます。
この七索に声をかけられる人が何人いるでしょうか?
僕は普段から、体勢が上がった時には、自らは鳴くなと常日頃言っています。
しかし、状況が悪いと考えたなら、工夫することも必要です。

この手牌、本来なら

四万五万六万五索五索七索七索八索八索九索二筒二筒二筒

このくらいの最終形にしたいでしょう。
親のない状況であと2局、連盟Aルールなら、満貫、跳満をそろえて、何とか30,000点の原点近くにしたいところ。
しかし、灘さんは、この状態ならマックスの手牌には育たない事を感じているから、あえて「1翻、落とし」をしたのです。
大事なのはここです。

状態が良いなら1翻上げて見て、悪いなら1翻下げるを見ることです。

七索ポンして打九索とし、七万三万を引き入れ、再び五索をポンして、以下のテンパイとします。

三万四万五万六万七万二筒二筒  ポン五索 上向き五索 上向き五索 上向き  ポン七索 上向き七索 上向き七索 上向き

フリテンでしたが、すぐに五万をツモり、1,000・2,000として「キッカケ」を掴みます。
持ち点を20,000点弱として、むかえたオーラスに、四暗刻をツモり、この半荘を1人沈みから1人浮きにしてしまったのです。

この2局、いやこの半荘の結果を、たまたまと見るか、灘さんの魔法と見るかによって、麻雀観は変わります。
僕はこの工夫をプロフェッショナルの「技」と観ます。

オーラスに点数を合わせに行くのは、とても大事な作業ですし、当たり前の行動です。
でも、その選択肢を増やす為の最大限の努力は、東1局からするべきと考えます。

そしてこの四暗刻をたまたまと考える人は、こう考えて頂ければ、少し必然に思えるかもしれません。
南3局に、灘さんが動かなかった場合は、親のテンパイ連荘の可能性が高いものでした。
そうすると、次局の牌山は南3局1本場のものとなり、まったく違うストーリになります。

「戦(いくさ)」である以上、リーチや仕掛け、無筋を切る、全ての行為に戦う気持ちがしっかりあれば、それは賞賛に値します。
しかし、一発をただ消すとか、逃げ回り危険のない所だけ前に出るという麻雀は、戦っていないと思うのです。

勇気ある撤退や、自軍の兵(牌)をいたわる為の「stay」ならOK。
しかし、その場限りの損得だけのシステムは、僕の中ではNGです。
将軍として、兵の信頼を得て、共に潔く戦うことが大事だと信じております。

Capter4  荒正義プロの場合

第28期鳳凰位決定戦 2回戦 東4局 2本場

100

体勢の上がった僕の親リーチを受け、荒さんはすぐアタリ牌の三万をつかみますが、打一筒として回ります。
この辺りは名手荒さんなら当たり前ですが、驚くのは次の場面

同局11巡目

100

右田さんの打九索を見て、失点を覚悟で打八筒とし、強引に親を落とします。
もちろん、荒さんの計画通りの打牌です。
上り調子の親が落ちたのは痛かったのですが、僕の心は嬉しくて踊っていました。
「あの、荒正義が敵として認めてくれた」
戦うにふさわしいと思ってもらえた事が、何よりの勲章になった1局です。
長丁場の20回戦の2回戦での出来事だけに、本当に嬉しかったシーンです。
そして、さすが精密機械の通り名を持つ荒さんです。
僕はこの後、荒さんの筋書き通り、ズブズブと失点を繰り返すのでした。

次回は、体勢による、鳴きと面前のバランスの考察を書きたいと思います。
乞うご期待。