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第137回『勝負の感性⑧~天運と地運~』 荒 正義

2018/11/23
執筆:荒 正義


麻雀の運には、2つの運がある。
その日一日、その打ち手が持っている運。これが「天運」である。もう1つは卓上の中で右に左に揺れる運、これが「地運」である。
麻雀は、相手の運と自分の運の戦いである。運の違いを知って、運を究めれば正しい応手が解る。では、その運の違いとは何か―。

第1戦・東1局。8巡目の親(A)にテンパイが入った(一発・裏あり、赤なし)。

二万三万六万七万七万二索三索四索二筒二筒四筒五筒六筒  ツモ八万  ドラ発

可もなく、不可もなく普通の手。
(高目の四万で、アガリできたらいいナ…)
と、思うくらいのものだった。
当然、親は両面なので先制リーチをかけた。これは普通の応手だ。

西北八筒 上向き九筒 上向き八索 上向き九万 上向き
中七万 左向き

このとき、南家もテンパイだった。

四万四万五万六万七万六索七索八索一筒二筒三筒発発

ドラの発は初物だから、ヤミテンで発の出を狙っていたのだ。相手の手が煮詰まれば、ドラでも発が打たれる可能性がある。リーチなら出ないドラでも、ヤミテンなら分らない。しかし、親がリーチなら話は別である。ここで戦うか受けるかは、雀風によって分かれるところ。
佐々木寿人、前原雄大は戦いを好むから、このままの牌姿でも追いかけリーチがある。当然、負けるときもある。したがって、彼らの体は生傷が絶えない。
藤崎智、沢崎誠は状況次第。しかし、勝負は始まったばかりで、相手と自分の運量が分からない。となると、その場の直感で打つことになる。向かうこともあれば、オリることもある。私も後者だ。生傷は嫌だ。
自分だけ傷つかず、戦いに勝つことを考える。これが賢明で合理的。誰だってそれが理想のはずだ。しかし、それは云い方を変えれば、ズッこい(ずるい)である。冗談はさておき、話を先に進めよう。

南家が、同巡に引いたのが八万だった。

四万四万五万六万七万六索七索八索一筒二筒三筒発発  ツモ八万

ドラドラで3面チャン、絶好のツモだ。南家は四万を切ってリーチをかけたが、これが親にズドンと命中。

二万三万六万七万八万二索三索四索二筒二筒四筒五筒六筒

裏ドラが二筒になって18,000点。東家は幸運だが、南家は不運。これが、天運である。
親の天運は高く、上々の滑り出しである。まず、一発で高めが出たこと。次に、裏ドラに2枚の二筒が乗ったこと。一方、南家の天運は最悪だ。勝負手で切ったら、なんと一発で高めの放銃。これは麻雀ではよくある出来事。だが、勝負はこんな1局では決まらない。通常、卓を囲むときは1日に半荘4、5回戦は打つ。となれば先は長いし、この後勝負がどう転ぶかわからない。まだ、山あり谷ありだ。
東家と南家の点差は36,000点。これで南家がトップ逆転を考えるのは、無理な話。せめてこの半荘はラス逃れを考え、受け中心に構えるところである。
もちろん、手が来たら攻める。西家か北家から満貫を打ち取れば、点差が一気に詰まるのだ。
このことは、西家と北家にも同じことが言える。仮にこの後、東家から満貫を討ち取れば、その差は2,000点以内になるのだ。現状は圧倒的に東家有利だが、勝負はまだ分らない。

第1戦・東1局1本場。
そして1本場、北家(B)の手が7巡目にこうなった。

三万四万五万六万七万二索四索六索四筒五筒六筒八筒八筒  ドラ一万

通常ならソーズが埋まれば、3面チャンリーチでほぼいただきの場面だ。しかし、北家は上家の切った三索にチーテンを入れた。すぐに東家が八万を掴んでロンだ。1本場で1,300点のアガリ。普通なら、北家の手は面前で決める手である。なのに、なぜ―?
北家は、親の河に危険を感じた。前の局は、ラッキーな18,000点のアガリ。そして、この河である。

(親の河)
西東二万 上向き二索 上向き四索 上向き二筒 上向き
八索 上向き

2打目が、W風で初牌の東。ここで東の重なりを否定したのだから、それなりの手が入っていると読める。続いてドラそばの二万切りである。こんなに早くドラそばを切るのは、一万一万二万二万二万三万から二万の切りである。どちらにしても、早い手であることは確かだ。そして、有効牌の中張牌の切り出し。北家は思った。
(親の手は、高くて早いぞ…。もう一度アガられたら、トップ確定のダメ押しが飛んで来る…)

だから、チーテンにかけたのだ。通常、親落としは南家の役目だが、親の跳満を打った南家にその期待はできない。警戒警報、発令である。これが、北家の読みと感性である。このとき、親の手はこうだった。

一万一万四索五索六索七索七索八索白白白発発  ドラ一万

どこを鳴いても親満だったのである。しかし、北家の切った六索にチーテンをかけなかったのは、流石である。河から絶好の受けを鳴けば、マークが一気にきつくなる。鳴けば、捨て牌はこうだ。(親の河)

(親の河)
西東二万 上向き二索 上向き四索 上向き六筒 上向き
八索 上向き七索 上向き

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  チー六索 左向き七索 上向き八索 上向き

六索をカンチャンで鳴いても四索五索六索で鳴いても、仕掛けと河に違和感が出る。絶好の待ちを鳴けば、高い手でテンパイと相手に読まれる。となれば、字牌はおろかドラの一万も出やしない。相手が受けたなら、アガリはツモのみ。それが、ツモ山にあるかどうかも分からない。この場合、チーテンのアガリ率は25パーセントに満たない。しかし、これならどうだ。

西東二万 上向き二索 上向き四索 上向き六筒 上向き
八索 上向き七索 上向き

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  ポン発発発

待ちがよくわからない。染め手にも見えるし、トイツ手にも見える。
だが、伏せられた手の内はこうだ。

一万一万四索五索六索七索八索白白白  ポン発発発

相手に警戒され、オリられてもいい。3面チャンならツモの可能性が大である。これなら、アガリ率は75%を超える。ここのソーズは鳴いて見せるのではなく、待ちのターツなのだ。それはともかく、駄目押しのチャンス手を蹴られた東家は、がっかりである。

東2局と3局は、点棒の横移動。そして、東4局だ。
最初にテンパイを入れたのは、東家(B)である。

一筒二筒三筒四筒五筒五筒八筒九筒西西西北北  ツモ三筒  ドラ六索

入り目が七筒六筒なら、ツモに勢いを感じるからリーチも有りだ。

一筒二筒三筒四筒五筒七筒八筒九筒西西西北北

一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒西西西北北

これなら親の先制リーチで相手をオロし、悠々とツモにかけられる。
しかし、ツモ三筒は弱いと感じた。親(B)は、五筒をそろりと切ってヤミテン。これが好判断。

(親の河)
一万 上向き八索 上向き一万 上向き九索 上向き中八万 上向き
九万 上向き五筒 上向き

親の河は、ピンズの染め手には見えない。このとき、南家の手はこうだった。

二万三万四万四万四万四索五索七筒七筒八筒  ポン発発発

ここに引いたのが、ドラの六索である。一万が3枚出ていたから、この七筒は止まらない。1,300と7,700点の直撃で、丁度18,000点。
AとBは同点で、ぴたりと並んだ。このとき、東1局の親(A)の天運が、削られていると感じるが、どうだろう。この後は、小場で進んだ。そして、オーラスである。
先にテンパイを入れたのは、南家(A)だった。

二万三万四万八万九万九万七索八索二筒二筒七筒八筒九筒  ツモ九万  ドラ二筒

理想は七万ツモのヤミテンだが、アガリでトップだから贅沢は言えない。

(南家の河)
西九筒 上向き中一索 上向き五索 上向き四筒 上向き
四万 上向き八万 左向き

待ちはソーズの裏筋だが、南家には自信があった。なぜなら、この六索九索が場に1枚も姿を見せていなかったからである。そのうち出るか、ツモと踏んだのだ。親も無筋を2牌通して、これに突っ張った。当然である。
満貫を打っても2着だし、引かれても2着なのだ。5巡後、親がツモ牌を引き寄せた。

一万一万一万六索六索九索九索四筒五筒六筒東東東  ツモ九索

親は直前に五索を切っていたから、マチがソーズならここが本線と見たのだ。三暗刻のおまけが付いて4,000点オールだ。これが、この半荘の結末である。
このように、「地運」は「天運」を動かすことがある。
Bの好判断は、危ないと感じてこの手をチーテンに掛けたことだ。

三万四万五万六万七万二索四索六索四筒五筒六筒八筒八筒  ドラ一万

これが、打ち手の感性である。いわばサバキ。
次が、ヤミテンのこれだ。

一筒二筒三筒三筒四筒五筒八筒九筒西西西北北  ロン七筒  ドラ六索

ツモの強弱で応手を変える、これも勝負の感性。リーチなら、アガリできたかどうか分らない。

この後、勝負は続いた。そのときのAとBの着順がこれだ。
② ③④③④(A)
① ①②②①(B)
着順に偏りが出ている。天運と地運が混じりあい、運が動いたのだ―。

この後、勝負を続けてもAは③と④が並び、Bには①と②の着順が並ぶことが予想される。好調だった天運は、崩れると意外に脆い。落ちると底なし。
比べて、卓上で掴み取った「地運」はそう簡単には崩れない。逆に勢いが増すのだ。これが天運と地運の違いである。