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十段戦 決勝観戦記

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第34期十段戦決勝 最終日観戦記 柴田 吉和

2017/09/21
執筆:柴田 吉和


『神は乗り越えられる試練しか与えない』
私は、麻雀対局で厳しい条件に追い込まれた時、何故かこのフレーズがよく頭をよぎる。
今決定戦に、神が4名に与えた最後の試練は≪現十段位藤崎の圧倒的リードを4半荘で乗り越えろ≫である。
さらに藤崎は、層の厚い連盟の中でも一番といって過言ではない程、先行させたら捕らえる事が難しいイメージを持っているのは私だけではないだろう。
神様、なんて無謀な試練なんですか!辛すぎます!せめてもうちょい易しい試練にして下さい!なんて神様にツッコミを入れてしまいそうだが、幾ら泣き言を言っても4名はこの試練を乗り越えなければ頂点は無い。

 

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8回戦終了時成績
藤崎:+84.6P 上田:+15.8P 青山:+1.9P 仁平:▲33.9P 瀬戸熊:▲68.4P

 

9回戦(起家から、瀬戸熊・上田・藤崎・青山)抜け番:仁平

現在首位を走る藤崎からの点差
上田 : 68.8P
青山 : 82.7P
仁平 :118.5P
瀬戸熊:153.0P
※10回戦終了時に最下位者が敗退。

東3局1本場 親:藤崎 ドラ二万

 

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藤崎チンイツ1シャンテン、3者テンパイでぶつかったが、果敢にリーチといった青山のアガリ。

南2局 親:上田 ドラ:八索(瀬戸熊:28,500・上田:25,800・藤崎:30,500・青山:35,200)

 

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上田2巡目に切った白を藤崎が仕掛ける。まだ局流しに入るには早いので、藤崎の1鳴きを考えればドラドラ以上濃厚に映っただろう。

 

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藤崎、6巡目九索チー。7巡目三筒チー。滅多にお目にかかる事のない藤崎の3フーロ。緊急事態である。
それでも青山は1,300リーチを打った。今まで観てきた青山であれば、尚更ヤミテンに構えそうだったので、より意外なリーチ選択だった。
観ている側からすれば、優勝を決定付けかねない無謀なリーチ。

 

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キッチリと結果を出した。
緊急事態なんて百も承知。闘わずして優勝は無い。気持ちで闘うんだ。ようやく腹を据えて今日一日戦い抜く事を、青山から感じ取る事ができた瞬間であった。

 

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今半荘は、藤崎以外の親連荘が無く、安手で局が進んで行く。藤崎にとって理想的な半荘となった。
青山が18P藤崎と差を詰めるも、藤崎からして見れば2番手が上田から青山に代わっただけ。2番手とのポイントはほぼ現状維持で今半荘を終えられた。

9回戦成績
青山:+13.5P 瀬戸熊:+5.5P 藤崎:▲4.5P 上田:▲14.5P

9回戦終了時成績
藤崎:+80.1P 青山:+15.4P 上田:+1.3P 仁平:▲33.9P 瀬戸熊:▲62.9P

現在首位を走る藤崎からの点差
青山 : 64.7P
上田 : 78.8P
仁平 :114.0P
瀬戸熊:143.0P

 

10回戦(起家から、藤崎・仁平・青山・瀬戸熊)抜け番:上田

残り半荘がこの回を入れて後3半荘。
上田が今回抜け番の為、藤崎としてはターゲットの青山を沈めて自身が浮くことができれば、かなり優勝に近づく事になる。
もう一方で、この10回戦終了後、最下位者が敗退となる為、敗退争いにも注目が集まる。
仁平・瀬戸熊は勿論優勝目指して打つわけだが、今半荘で敗退してしまうと100%優勝は無い。しかしギリギリのポイントで通過しても、残り2半荘で臨みの残るポイントにしなければならなく、
2人にとってはバランスの取り方が難しい半荘となりそうだ。
敗退者が出るこの10回戦、大味な麻雀が増え例年荒れる傾向にあるが、首位を走る藤崎が台風に巻き込まれずに切り抜けられるかにも注目だ。

仁平、瀬戸熊より29.0Pリードでスタート。

東2局3本場 親:仁平 ドラ:二万

 

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先制は瀬戸熊。
ドラをツモリ2,000・3,900は2,300・4,200供託1,000。仁平の親被りにも成功。
現状トータルポントでも仁平より1.6Pリードした。

東3局 親:青山 ドラ:五索

 

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瀬戸熊ドラドラで跳満まで見えそうなチャンス手だが、6巡目青山の切った2枚目七索にチーを入れた。通常の瀬戸熊のスタイルではまずない仕掛けなので、かなり仁平との点差を意識しているのが見て取れた。

 

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青山の親リーチを受けるが、押し切って加点に成功する。

南1局 親:藤崎 ドラ:六筒

 

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現状瀬戸熊6.6Pリード。
親藤崎が1巡目に切られた自風の東を1鳴き。
仁平6巡目2シャンテンから強気に切った中ポン。東1鳴きを考えると、ドラが固まっているかホンイツか、いずれにせよ藤崎は勝負手に見える。
そうは言っても仁平は追いかける立場、そうそう簡単にオリられない状況でツモ五索の場面。
藤崎が北白の後に手出し一万が不気味に光っているが、仁平は強く二万を選択した。この選択は、もう多少強引にでも加点しに行かなければならない程追い込まれているという証拠でもある。

 

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今度は藤崎視点から。
親番、河でマンズのホンイツ模様の高打点を演出しつつ5,800をテンパイ。
そこへ仁平からリーチ、強烈な二万のトイツ落としで親に向かってきたとなれば高打点は明白。
自身アガれば5,800と今半荘をほぼ浮きで終わる事ができそうだが、8,000を打ってしまえば折角沈んでいる青山と並んでしまう。
無スジは打ちにくいだろうなと思い観ていた所へド無スジのツモ八筒

 

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外野の予想などどこ吹く風。藤崎の選択はノータイムで八筒をツモ切った!そしてあっさり七筒を捕まえる。
藤崎がこれまでに培ってきた、勝負所の見極めの経験値が打たせたノータイム打八筒
私は観戦記者席で、「ワァ」と言葉が飛び出そうなになり必死でこらえたのを覚えている程、インパクトある一打だった。

瀬戸熊15.6Pリード。

南2局2本場 親:仁平 ドラ:九筒

 

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仁平、今半荘最後の親番。強引に仕掛け始め、強引にねじ込む。
瀬戸熊4.2Pリード。

南2局3本場 ドラ:南
青山6巡目リーチのみを打つが、親仁平が南バック、瀬戸熊七対子ドラ単騎で追いつき、一歩も引かない捲り合いになるが、青山のツモアガリ。500.・1,000は800・1,300。
瀬戸熊8.7Pリード。

南3局 親:青山
瀬戸熊、藤崎のタンヤオ・ドラ1の2,600へ放銃。
瀬戸熊6.1Pリード。

南4局 親:瀬戸熊 ドラ:八万(藤崎:36,200・仁平:21,000・青山:22,700・瀬戸熊:40,100)
オーラス。現状瀬戸熊が6.1Pリードしているが、仁平は2,100点以上のアガリで敗退を免れるデッドヒート。

 

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結果は瀬戸熊が高め三色を冷静にヤミテンに構え、見事高めを仁平から打ち取り決着となった。

10回戦成績
瀬戸熊:+37.7P 藤崎:+5.4P 青山:▲14.5P 仁平:▲28.6P

10回戦終了時成績
藤崎:+85.5P 上田:+1.3P 青山:+0.9P 瀬戸熊:▲25.2P 仁平:▲62.5P(敗退)

 

11回戦(起家から、上田・青山・瀬戸熊・藤崎)

現在首位を走る藤崎からの点差
上田 : 84.2P
青山 : 84.6P
瀬戸熊:110.7P

直接対決とはいえ残り2半荘。3者は自分が優勝の為には藤崎と2連続トップラスが必須か。最終戦に向けまずは藤崎への挑戦権を賭けた闘いである。

東1局2本場 親:上田 ドラ:三筒

 

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先制パンチは青山。ピンズの波をしっかり捕まえた。

さらに青山自身の親番で加点に成功する。

東2局 親:青山 ドラ:八万

八万八万五索六索七索二筒三筒四筒七筒八筒  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ロン六筒

ホウテイで手の詰まった上田の放銃で5,800。

東2局1本場
青山・藤崎の2人テンパイで流局。

東2局2本場 ドラ:八索

三万四万五万八万九万一索二索三索八索八索三筒三筒三筒  リーチ

青山ドラドラリーチ打つも1人テンパイで流局。

現状トータルポイント
藤崎:+79.3P 青山+37.3P 上田:▲17.7P 瀬戸熊:▲37.4P

青山が藤崎まで42.0P差。
青山、今半荘開始時の84.2P差が東場だけで半分詰める猛追撃。完全に射程圏に捕らえる。

東2局3本場

 

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親番青山が今局も先手を取りリーチと行く。これをツモれば34P差、もう本当に現実的な数字だ。
と思っていた矢先、急に上田のツモがのびを見せる。
リーチを受けた時点で国士無双9種10牌。連続で九筒一索白とツモりあっという間にテンパイ。
そして、

 

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最終ツモで念願の国士無双成就。
藤崎への挑戦権は青山と思いきや、まさかの親被り。上田が挑戦権を獲得した。

 

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35.8P差。

東3局 親:瀬戸熊 ドラ:六筒
高打点が飛び交う乱打戦。ここに瀬戸熊も参戦。

 

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藤崎の7巡目リーチを受けた時点で瀬戸熊は1シャンテンだったが、選択を間違えず押し切り一発ツモ4,000オール。さらに藤崎にラスを押し付けた。

現状トータルポイント
藤崎:+59.0P 上田+29.2P 青山:+8.0P 瀬戸熊:▲33.7P
藤崎上田が29.8P差。とうとう30Pを切った。
藤崎もまさか東場で50Pも貯金を使ってしまうとは、想像もしていなかっただろう。

南1局 親:上田 ドラ:九索

 

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藤崎丁寧に手牌進行し、12巡目最高の入り目でテンパイ1番乗り。

 

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瀬戸熊13巡目、藤崎の切った1枚目の南を仕掛けて打五索。あからさまなホインツ高打点が見て取れる河。藤崎次巡ツモ六索で選択。
自身高め7,700テンパイだが、六索での放銃は7,700以上の失点必須。今半荘ラス目、現状2位上田と約30P差。
攻守のバランスが非常に難しい場面だが、藤崎はノータイムで攻めの六索ツモ切りを選択した。
得点に余裕があるうちに、リスクを負って加点する事が大事。私もこの理屈は頭では分かっている。しかし、優勝が見え始め大プレッシャーが掛かっているこの場面で、ノータイムで選択できる腹の座った選手がどれぐらいるだろうか?
このノータイム選択は、長年大舞台での経験・実績がなければできない、トッププロの証明だと思う。
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結果は、藤崎の切った六索を瀬戸熊が責任払いを狙った大明カン。カン七索の8,000テンパイだったが、次巡六万で決着を見た。
藤崎が押し切りきっちり結果を出した。勝負所を間違えないトッププロの選択だった。

その後、南場で決定打のアガリは発生せず終局。
上田が見事1人浮きトップ、藤崎をラスに沈め最終戦に望みを繋いだ。

11回戦成績
上田:+29.9P 青山:▲1.9P 瀬戸熊:▲10.6P 藤崎:▲17.4P

11回戦終了時成績
藤崎:+68.1P 上田:+31.2P 青山:▲1.0P 瀬戸熊:▲35.8P

 

最終12回戦(起家から、上田・青山・瀬戸熊・藤崎)

現在首位を走る藤崎からの点差
上田 : 36.9P
青山 : 69.1P
瀬戸熊:103.9P

最終戦、実質藤崎・上田の一騎打ち。

東1局 親:上田 ドラ:五筒

三万五万三索三索六索六索七索七索八索八索七筒八筒九筒  リーチ

上田11巡目リーチを打つも1人テンパイ流局。

東1局1本場R1 ドラ:三万

 

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3人リーチも流局。藤崎1人ノーテン。
上田1人浮き。藤崎ラスの順位点で26P詰めぐっと近づく。
藤崎10.9Pリード。

東1局2本場R4 ドラ:中
供託4,600点。自分が加点したいのは勿論だが、相手に与えたくないと思える供託点だ。

 

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上田、形は不安定な2シャンテンだが三色などすべて取りこぼさない様にドラをツモ切り。
このドラを藤崎が仕掛け、ターツ選択が成功し次巡すぐに二万五万テンパイ。

 

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青山、四暗刻2シャンテンではあったが、藤崎のドラポン・2枚目の四索とあってポン打六万でカン三万テンパイを取る。

 

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藤崎すぐに放銃牌三万を掴むが、またしてもノータイムで打四万、放銃回避して三万五索八索へ待ち変え。

 

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すぐに上田から直撃のアガリ。本当に勝負所を間違えない。
これで藤崎71.5Pリード。このアガリが実質ゲームセットとなるアガリとなった。

前年、藤崎が十段位に輝いた打上げ席のスピーチで、私や上田・若手スタッフに向け「今後は若い子がどんどん大きなタイトルを取って活躍して連盟を盛り上げて欲しい。心からそう思ってます。」
何気ない短い言葉だが、先輩の優しさ思いやりの詰まった後輩想いが、私の心に強烈に突き刺さったのを覚えている。

今決定戦も、藤崎十段位は若手の大きな壁となり立ちはだかった。自分の壁の高さを見せつけ、若手後輩にメッセージを込めた。自分達を乗り越えて連盟・麻雀界を一緒に盛り上げようと。
先輩達の高い高い壁を乗り越えられないまでも、影が踏める位置まで辿り着ける若手がより多く出てくれば、麻雀界は益々の発展・進展を遂げるはずであり、世界中に認められる日もそう遠くはないはずである。

 

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