十段戦 レポート

十段戦 レポート/第31期十段戦ベスト16A卓レポート 瀬戸熊 直樹

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左から、沢崎誠 森下剛任 森脇翼 一井慎也

 
沢崎誠vs森脇翼vs一井慎也vs森下剛任
昨年の決勝進出者沢崎はここからの登場。
森下王位は、九段戦からの階段を登っての進出。
森脇、一井は、五段戦と四段戦からの勝ち上がり組。決勝までの階段はあと2つ。
単純確率で行けば、2分の1が2回だから25%である。
数字だけ見ると、なんとなく決勝が見える位置に来た感じはする。
しかし、僕自身、三、四段の頃、数回このベスト16、ベスト8で敗れてきている。
相手うんぬんより、勝ち上がる難易度は、このステージは格段に厳しい。
それは、気持ちが前のめりになり、勝ちたい意識が予想以上に大きくなる為だと思っている。
「負けられない戦い」の難しさ。
さらに、今期からは、このベスト16からニコ生による放送。
気負うなという方が難しいだろう。
この事を克服した者が、勝ち上がるような気がしていた。
1回戦、2回戦と、沢崎・一井が、交互に1・2着を取り合った。
沢崎の落ち着きようは当たり前だが、一井の落ち着きぶりには、正直びっくりさせられた。
 
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やはり新人の頃、テレビ対局を経験していたからであろうか。
反対に、心配していた気負いがモロに出ていたのが、森下王位。
「チャンスを逃したくない」の気持ちがちょっと強く出ていたように、僕の目には映った。
 
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連盟の名物男、森脇は、いつも通りに映っていたが、森脇をよく知っている僕からすると、良い意味で、上品すぎる感じがしたのがちょっと物足りない。
3回戦以降に期待したいと思った。
放送でも話したように、森脇ほどエピソードを抱えている人物はいない。
一番有名な話は、ご存じの方も多いが、今から20年ほど前に、試験会場のエレベーターで、当時の試験官、故安藤満プロと乗り合わせ、安藤プロを同じ受験生だと思い、肩をたたきながら「今日は頑張ろうぜ」と言ったエピソード」だが、他にもこんな事があった。
あるタイトル戦で、森脇が当時のトッププロのリーチを受けてマチを一点読み。
無筋を何枚も飛ばし、同じ単騎待ちで流局させる事に成功した。
テンパイノーテンの公開時に、森脇が12枚だけ公開し、なかなか1枚を開けようとしない。
数秒間の沈黙の後、1枚をパタリと倒したシーンがあった。
プロのマナーとしては最悪だが、なんて面白い人だろうと僕は思った。
3回戦以降、森脇のそんなシーンが見られたら、勝機もあるのだがと考えながら解説をしている僕がいた。
3回戦、森脇が突如暴れ始める。
何かが吹っ切れたかのように、次々とアガリ出し、60~70ポイント差つけられていた、一井、沢崎を追い始める。
そして、森脇最大の長所、勘の鋭さも見せだすようになる。
4万点超えで迎えた、南場の親番、5巡目。
五万五万五万六万六万六万七万四索四索五索六索  ポン東東東  ドラ五万
ノータイムで打七万。8割の人が打四索としそうな場面。あっさり森下から四索がでて、アガリとなる。
その後展開も味方し、沢崎をラスにする事に成功。
70ポイント近くあった差を、15ポイントまで縮め、残り2回につなぐ事となった。
 
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正念場の4回戦。やはり沢崎は強かった。
このメンバーでは、1枚も2枚も違って見えた。
3回戦のお返しとばかりに、次々とアガリ、5万点をオーバー。
最終戦を待たずに、勝ちをほぼ手中に収めてしまう。
 
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最後のイスは、森脇か一井に。
共に2万点で迎え、両者のポイント差は40P(一井が上)
森脇は、2局で浮きに廻れば、最終戦に繋ぐ事ができる。
そんな森脇の願いが通じたのか、8巡目に跳満テンパイ。
二万三万四万六万七万八万九万  ポン南南南  ポン中中中  ドラ四万
ダブ南中、ホンイツ、ドラ1。
マンズはまだあまっていないが、当然、捨て牌はホンイツ。出アガリは厳しいか。
運命のいたずらか、ライバル西家・一井も手牌が育ってしまう。
一万二万三万四万二索三索四索五索六索八索八索三筒四筒  ツモ七索
一万。勝負となった。
親の沢崎が、北家・森下から出た2枚目の九筒をポンしてテンパイ。
二万二万八万八万七索七索七索発発発  ポン九筒 上向き九筒 上向き九筒 上向き
下りポンなので、チーした形と同じだ。
一井がツモっていたはずの六万が森下に。
一井は打っていただろうか、打っていれば森脇と並んでいたはずだった。
次の一井のツモは当然のように二筒
最終戦をまたずして、沢崎、一井が勝ち上がりを決めたシーンであった。
森下が九筒を合わせたのも必然。沢崎が鳴いたのも必然。
やはり森脇に勝ち運はなかったように思う。
終了後、森脇に「また飯いこうぜ!」と言われた。
森脇が負けた後によく言うセリフも聞けた。
「やっぱりオレ、ヘタだわ」
うーん、決勝で対戦できる事を楽しみにしていただけに、残念。
でも「カッコ良かったです。森脇さん。お疲れさまでした」