JPML WRCリーグ 決勝観戦記

JPML WRCリーグ 決勝観戦記/第28期チャンピオンズリーグ 決勝観戦記 紺野 真太郎

今年の夏も暑かったが、期間は短め。9月初旬にはもう秋の気配が感じられた。
毎年前期のチャンピオンリーグ決勝は真夏の決戦となることがほとんどだが、スタジオでの生配信対局となり、番組編成や対局者のスケジュールの都合で9月19日に行われることとなった。
季節はすっかり秋でも真夏の太陽のような熱い戦いが期待された。
予選、トーナメントを勝ち抜き、決勝に進出してきたのは以下の4名。
柴田弘幸
17期生 39歳 A2リーグ所属
多数のAリーガー、タイトルホルダーを輩出している17期生の柴田。決勝進出歴は6度目。2度の鳳凰戦決勝進出が光るが、タイトル獲得には至っていない。実力は折り紙つきで、未だ無冠であるのが不思議なところ。今回も大本命を背負っての戦いとなる。
西島一彦
19期生 69歳 C1リーグ所属
私の目の前でマスターズを勝ち切った西島。同年行われた世界選手権でも準優勝と当時68歳にしてブレイク。第2の人生として麻雀プロを選び、それが実を結んだ。現在のプロテスト規定では受験に年齢制限が設けられているが、西島の受験時にはそれが無く、運命に導かれたかのようでもある。勝負強さには定評があり、今回柴田の調子が上がらないようだと西島が浮上するか。
石立岳大
23期生 35歳 D1リーグ所属
石立に関して私はほとんどデータが無い。話をしたことも皆無であり、対戦も数えるほどしかない。ただ、その時の印象ではよく動く打ち手だなと感じられた。今回のメンバーは積極的に動くというよりはじっくり構えるタイプが多いと思えるので、台風の目になりえる存在であろう。
平野良栄
30期生 38歳 D3リーグ所属
先日行われた新人王戦にも決勝進出していた平野。新人ながらに立て続けの決勝進出は立派である。爆発力を持ち、リーグ戦では1節で140ポイント以上叩いたことも。だが、反面後手に回らされる局面では、大きく沈むことも。バランスをどうとっていくかが今後の課題であろう。今回は爆発力を発揮し、局面をリード出来れば面白い。
 
1回戦(西島、平野、柴田、石立)
東1局3巡目平野にいきなり大物手の予感。
四万六万四索八索八索三筒六筒七筒白白発中中  ツモ発  ドラ中
三元牌が全てトイツとなり大三元までという手牌。これをものにし、局面をリードすることが出来れば、優勝へ大きく近づく。そんな事は平野も十分承知であろうが、この手牌はここからが難しい。平野は打三筒とし、色々な可能性を残した。
分岐は直後の4巡目にやってきた。親の西島が打白とした。平野はこれを仕掛けた。この場面、白を一鳴きするかどうかは意見が分かれるところであろう。中がドラであり跳満を狙いつつ、うまく行けば大三元までと考えれば仕掛ける手もあろうし、表示牌の発とドラの中をなんとかしたい、大三元に拘りたいならばスルーもあろう。平野の考えは前者に近いものであろう。これがまた1回戦東1局でなければまた違ううのかもしれない。
12巡目平野は中を引き当てる。大三元テンパイ。発はまだ山にある・・
八索八索五筒六筒七筒発発中中中  ポン白白白
直後の柴田、やってきたのはその発。柴田の手牌
二万二万六万七万七万五索六索七索九索九索九索六筒七筒  ツモ発
独特の緊張感が対局室を支配する。柴田が切るとすればこの一瞬だけであろう。ほんの一瞬の間の後、打七万。567の三色となった場合どうかだが、巡目を考えると出ることはないであろう。
15巡目、平野ドラの中を引き暗カン。脇は強い牌を切っておらず(実際は西島、石立がテンパイ)発はもう山にはないと読み、安目でも倍満を確定しにいったか。それとも敢えての暗カンで、大三元ではないと装ったか。解説の瀬戸熊は中を1枚切っておくと面白いと指摘。私ならば、もう少し巡目が浅ければツモ切るであろうし、この巡目ならば暗カンしたようにも思える。大事なのはどういう結果を導きたいか、その為にどういう思考で選択したのかであろう。
結果は3人テンパイ。私は一瞬だけ平野にはノーテン宣言の選択もあったかなと思うが、さすがに考えすぎか・・ただ柴田は発を掴んでいたこと、真っ直ぐテンパイを組みリーチを打っていたら大三元放銃の可能性があったことを理解できた分、3,000点払う価値があったと思う。
東1局1本場、今度は親の西島にチャンスが訪れる。
一万二万五万四索五索六索九索一筒三筒六筒西発発  ツモ発  ドラ発  打西
ドラの発が暗刻に。これが2巡目。それが次巡には槓子になる。
5巡目西島
一万二万五万四索五索六索一筒三筒六筒発発発発  ツモ三筒
ここから打発としてしまう。親であり、心情は十分すぎる程理解できるが、ここでの打発は早かったかなと思う。
この後テンパイまでは最低でも2枚手出ししなければならなく、その場合ドラの発がなぜこのタイミングで切られたのだろうと相手に情報を与えてしまうからである。
仕掛けを考えていたのであれば尚更で、どうせ情報を与えるのであれば暗槓をし、プレッシャーも与えてしまったほうが良い気がする。
この局は柴田が丁寧に打ち回しピンフをアガリ局を進めた。東1局に現れた大物手2連発はどちらも未遂に終わった。
東4局、開局早々の大物手の気配とは裏腹に、ここまでの点数移動はおとなしく移行していたが、ここで動いた。
西島1巡目
二万三万四万三索四索八索六筒八筒東東白発発  ドラ四筒  ポン東  打八索
比較的好形とはいえドラも無く、普段の西島ならばスルーかなと思える手牌。この時は「珍しいな。少し焦ってるかな」とも思えたが、この後もこの様な先手に拘る仕掛けを多用してきた。西島なりの決勝戦用の戦略か。
この仕掛けが6巡目テンパイ
二万三万四万三索三索六筒八筒発発発  ポン東東東  ドラ四筒
対するは平野、9巡目にこの形
五万七万八万八万四索五索二筒三筒四筒四筒五筒南南  ツモ発  ドラ四筒
発をツモ切る。ここで西島が「カン」と力強く発声。「まさかな・・」そのまさかが普通に起こるのもまた麻雀。リンシャン牌に眠っていたのは七筒
二万三万四万三索三索六筒八筒  明カン発発発発  ポン東東東  リンシャンツモ七筒
これは責任払いありなので平野の6,400放銃となってしまう。西島の積極策がハマった格好で、平野は何を思っただろうか・・
これが決め手となり1回戦は西島トップ、平野ラスの形となった。とはいえ、素点自体は小さく、この先どうとでも転がるであろう。
1回戦終了
西島+14.2P 柴田+5.0P 石立▲6.7P 平野▲12.5P
 
2回戦(平野、石立、西島、柴田)
東1局柴田4巡でこの形
一万二万四万五万五万六万六万八万九万白発中中  ツモ発  ドラ東
ここから打八万。直ぐに発を仕掛け、ペン三万も鳴けテンパイ
四万五万五万六万六万中中  チー三万 左向き一万 上向き二万 上向き  ポン発発発
捨て牌は
一索 上向き三筒 上向き七索 上向き八万 上向き九万 上向き白
西島が4巡目に切ったドラの東には反応せず最終手出しが白中に目が行くのは当然で、平野が四万で放銃となった。しかも3,900。このルールにおける3,900は意外と大きい。簡単なようでなかなか取り返せない打点だ。
東2局、親の石立、7巡目にリーチと出る。
四万五万三索四索五索六索七索八索二筒三筒四筒南南  ドラ北
1回戦、自らが動き先手を取る展開が作れなかった石立、動けそうな手もあまりなかったが、安全牌を確保することに比重を置き、手をあまり広げなかったようにも見えた。ここは親であること、先手であること、それよりも自らを奮い立たせる為のリーチに思えた。
9巡目、これに追いついたのは平野。
二万二万四万五万五万六万六万七万七万八万三索四索五筒  ツモ三万
既に石立のリーチに対して一筒九筒と押している。そしてこの五筒も押した。しかしリーチは打たず。石立の捨て牌に二索五索は無くリーチの選択もあろうが、もう一役欲しいのか。はたまた一気に清一色までか・・
次巡、平野が引き入れたのは八万。ここで五万切りのリーチとした。
二万二万三万四万五万五万六万六万七万七万八万三索四索  ツモ八万  打五万 左向き
確かにソーズが高く親に三索四索が通る保障は無い。しかもイーペーコーが付き打点も7,700以上と申し分ない。間違った選択ではないと思う。
平野のその後のツモに四万三万が眠っていた。清一色に向かった場合、リーチ者石立の八万をポンする可能性もあるのでどうなっていたかは解らない。ただ、三倍満のアガリ形もあったのは事実である。
麻雀は選択の積み重ねのゲームだと思うが、アベレージだけを追うものではないとも思う。どこを勝負処と見極め踏み込むか、結局はバランスなのであろう。
東2局1本場、2巡目早くも西島が動く。
一万二万八万六索七索一筒二筒三筒六筒西中  ポン白白白  打八万  ドラ西
これも少し遠い仕掛け。ドラを引っ張り相手のスピードを殺す狙いか。この後ツモが効き9巡目テンパイ
六索七索一筒二筒三筒四筒五筒六筒西西  ポン白白白  ドラ西
対する平野。こちらは西島より一歩早く6巡目にテンパイ
三万五万六万七万八万三索三索四索四索五索五索北北  ドラ西
13巡目に北を暗刻にして五万八万待ち変えリーチにいった。
この宣言牌を仕掛けたのが親の石立。
三万四万四万五万六万七万七万九万九万九万  チー三万 左向き一万 上向き二万 上向き
こちらは二万五万
3者に挟まれた柴田。苦しい・・
五万五万六万八万八万六索七索八索西白  チー六筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ツモ四索
リーチ者の平野は宣言牌の三万以外マンズを切っていない。その三万を仕掛けた石立も1枚も切っていない。特に石立の6巡目から9巡目の七筒 上向き七筒 上向き二索 上向き三索 上向きは全て手出しで、ドラが重なり、ホンイツへ移行したように見える。更にその親に上家でリーチを打っていった平野もそれなりの手であろう。この場面柴田はもちろん放銃はしたくないが、放銃をしたくない相手を順位つけると、石立、平野、西島となり、石立、平野の現物の打八索としたのだろう。これが西島の3,900に捕まるのだが、柴田は放銃した自分の不調さよりも西島の好調さを感じずにはいられなかったのではないだろうか。
後日この場面を柴田に聞いた。「西島さんドラ単騎かなって思ったんですよ。雰囲気がドラ1枚持っての仕掛けっぽかったんで。もちろんドラが重なってのテンパイもあるので放銃は微妙でしたね・・」
柴田の読みはその通りでやはり場を読む能力は高い。柴田は雰囲気が・・とか感じが・・という言葉をよく使う。その感覚はそれぞれのものであり、解るようでもあり、解らないようでもある。ただそういう部分で戦っているし、生命線でもある。
東3局、ここまで噛み合わなかった平野にタンピン三色の勝負手が入る。しっかりとリーチを打ち、高目をツモり3,000・6,000。反撃態勢となる。
東4局、3巡目石立が仕掛ける。
六万八万八万八万三索四索四索七索七筒七筒西白白  ドラ発  ポン七筒  打七索
今決勝初めての先手取りの仕掛け。ここまで無難にきたが、ここからは戦いの舞台に乗っていくという意思表示か。
だが、石立の手は思うように進まず、反対に親の柴田にテンパイが入る。
三万三万三万五万四筒五筒七筒八筒九筒東東発発  ツモ三筒  ドラ発
「1回ヤミテンか・・」
「リーチ」
柴田はリーチを打った。12,000を拾うのではなく6,000オールを引きにいった。この場面、石立の仕掛けがある以上、東発もこぼれ難くなっているのでこの判断もわかる。問題は引けるかどうかだが、結果は流局。リーチを打たなければこぼれた可能性もあっただけにどうだったろうか。
東4局1本場、石立の先制リーチ。
一万三万五万六万七万八万一索一索六索七索八索六筒八筒  ツモ七筒  打五万 左向き  ドラ五筒
石立に初めて手役らしい手役が入った。これに柴田が放銃。石立がトップ目に浮上し、柴田はラスに転落する。前局ヤミテンにしていればこの局の展開も変わっていただろうと思わずにはいられない1局であった。
ただこのまま落ちていく柴田ではなかった。南4局親番7巡目リーチ。
二万三万二索三索四索三筒三筒四筒五筒六筒六筒七筒八筒  ドラ南
これは2,600オールを引きにいくというよりも相手を止める為のリーチか。平野42,400西島31,700石立30,000柴田15,900の並び。誰も放銃したくない場面で、先に仕掛けていた西島、ドラトイツだった石立を降ろし1人テンパイ。これは目論見通りか。続く1本場。
柴田配牌
三万三万四万七万三索四索五索九索一筒二筒五筒五筒西中  ドラ五筒
生き返った。勝負手だ。7巡目
二万三万三万四万三索三索四索五索一筒二筒三筒五筒五筒  ツモ四万  打三索 左向き  ドラ五筒
ここは前局とは意味合いが全く違う。6,000オールを引きに行くリーチだ。そして即五万ツモ。安目ながら4,000オールで浮きに回った。調子、展開に恵まれなくともゲームをまとめる能力の高さを見せた半荘であった。
2回戦終了
平野+14.3P 柴田+4.2P 西島▲4.4P 石立▲14.1P
トータル
西島+9.8P 柴田+9.2P 平野+1.8P 石立▲20.8P
 
3回戦(石立、柴田、平野、西島)
親の石立9巡目に仕掛ける
四万五万七万七万二索四索二筒四筒六筒八筒九筒東東  ドラ四万  チー三筒  打九筒
上家の西島が八万 上向き九万 上向き四索 上向き三筒 上向きと手出ししてきての三筒チーなので微妙か。受ける牌が無い中スピードも劣っている。
西島がテンパイ即リーチ
二万三万四万五万六万一筒一筒三筒四筒五筒六筒七筒西  ツモ二筒  ドラ四万  打西
石立も東を落としタンヤオで応戦もやはり追いつかず。西島一万をツモり1,300・2,600
九種九牌を挟み、東2局1本場、西島5巡目リーチ。
一万二万三万三万四万五万三索四索一筒二筒三筒六筒六筒  ドラ一万
先制リーチかと言えばそうではない。親の柴田が切り出したドラを平野がポンしている場面だ。だが西島は臆することなくぶつけにいった。1,300・2,600力強く引き勝つ。この勝負強さこそ西島最大の武器だ。
そんな西島を親番で平野が捕える。
七万七万七万二索二索四索四索六索七索八索  チー四筒 左向き五筒 上向き六筒 上向き  ドラ四索  ロン二索
5,800。この3回戦はこの2人がリードしオーラスを迎える。
西島39,500、平野32,500、5巡目親の西島に選択が訪れる。
五万八万九万一索二索四索四索六索七筒八筒中中中  ツモ三索  ドラ八筒
五万六索かチーテンを取れるだけにペンチャンには手を掛けないだろう・・場はソーズが高い。打五万五索を引いた時の強さを重視。打六索五万にくっついた時の強さ重視。西島は打五万とした。
同巡平野がリーチ。
三万四万五万一索二索四索五索六索七索八索九索白白  ドラ八筒
浮いて終わらせることより、優勝する為、トップを獲りにいくリーチ。
対する西島、リーチを受け七索を引き現物の打九万。1シャンテンは変わらないがリャンメン2つに。次巡のツモは七万。手順通りに進めていたが裏目を引いた。これは四万が現物なのでスジでツモ切り。次はドラの八筒八万を勝負。2巡後九筒ツモでテンパイ。ドラを切り追いかけリーチ。ただひとつ気がかりはこの九筒で追うのは難しいながらもアガリがあったということ。私なら打八万のところで打たずに、点差を考えオリていたかもしれない。
西島がリーチを打った段階では山に2枚対1枚で西島有利であったが、西島の五索八索は脇に流れた。そして西島のツモ筋には三索が眠っていた・・
平野が連勝でトータルトップに立った。新人王戦の雪辱を果たすことができるのか・・
3回戦終了
平野+16.7P 西島+7.3P 石立▲9.0P 柴田▲15.0P
トータル
平野+18.5P 西島+17.1P 柴田▲5.8P 石立▲29.8P
 
4回戦(柴田、西島、平野、石立)
東3局ここまでは点棒の移動はわずか。11巡目西島。絶好の三万を引き入れリーチ。
二万三万四万二索三索四索五索六索七索二筒三筒八筒八筒  ドラ九索
一筒が2枚切れだけに四筒を拾う選択も勿論あるが、ここまでの西島の戦い方を考えればリーチが妥当であろう。ここまで好位置の西島を走らせるわけにもいかぬ三者は降りずに懸命に粘るが、その3者にとっては無情の西島四筒ツモ。3,000・6,000。特に平野は痛恨の親かぶりである。
勢いにのる西島次局わずか5巡でこのテンパイ
五万五万五万二索四索一筒二筒三筒西西  ポン中中中  ドラ西
8巡目に二索をツモりシャンポンに受け変え。親の石立も粘る。13巡目、二万 左向き三万 上向き四万 上向きでチーして追いつく。
二索二索三索四索二筒三筒四筒六筒七筒八筒  チー二万 左向き三万 上向き四万 上向き
ギリギリのテンパイ。西島は受け変えた後なので二索は出ない。せめて五索・・いや、西だけは引くな・・
残りツモ2回、石立のツモは西・・打牌が早い石立にしては珍しい小考・・ポイント差を考えたらもう1回の親も無駄には出来ない。絞り出すように二索を打ち出した。5,200・・ワイプに映る石立はある種、納得したかの表情であった。
西島の勢いを止められないまでも、じりじり追い上げる者がいた。柴田だ。南3局持ち点29,200。ここで浮けないようだと西島が楽になる。
西島、柴田の第1打、自風の北をポン。遠い仕掛けではあるがプレッシャーを与えるには十分か。上家の柴田、慎重に鳴かせないよう手を進め、10巡目にリーチを打った。
二万二万四万五万六万六万七万八万二索三索三筒四筒五筒  ドラ三筒
こうなると西島のほうが受けに回らされる。柴田は程なく一索を引き1,300・2,600。原点を超え浮きに。オーラスも満貫をアガリ、最終戦は西島VS柴田の様相を呈していくこととなった。
4回戦終了
西島+24.2P 柴田+16.4P 石立▲13.4P 平野▲27.2P
トータル
西島+41.3P 柴田+10.6P 平野▲8.7P 石立▲43.2P
西島と柴田の差は30.7ポイント。西島は浮いてさえいればほぼ安全圏。しかし、原点を割った瞬間にわからなくなる。果たしてどのような結末が待っているのだろうか・・
 
最終戦(柴田、平野、石立、西島)
最終戦はそれまでのトータルポイントで、座順が決まる。トータル2位の柴田が起家となるので、いきなり山場がやってくることとなる。
柴田配牌
二万三万五万六万六万七万八万九万九万一筒東西発発  ドラ中
「なんだこれ・・」
これだけで、この最終戦西島にとって簡単でないものになるであろうと予測できる。30.7ポイント差といっても4,000オールで逆転される点差なのだ。
柴田、2巡目に発をポン。表示牌であるから目立たない。1シャンテン。5、6巡目に東四万を引き入れテンパイ。
二万三万四万五万六万七万八万九万東東  ポン発発発  ドラ中
この時西島もこの1シャンテン
四万五万六万六索七索八索二筒二筒四筒南南中中  ドラ中
数巡の間であれば西島を捉えることは十分可能なテンパイである。が、しかし・・
直後の平野
六万二索三索四索四索五索六索三筒三筒三筒六筒七筒北  ツモ一万  ドラ中
平野は前巡打北としテンパイを取らなかった。それはいいと思う。ならばここは北を打って欲しかった。表示牌の発から動き、その後手出し2回。テンパイしていないことの方が多いかもしれない。でも鳳凰位や十段位の決定戦ではこの一万を打つ者はいないと思う。平野には酷な言い方かもしれないが、そういうものがタイトル戦決勝の価値だと思う。
1本場は西島が必死に柴田の親を蹴り原点確保。東2局はノーテンも1本場を平野、石立のテンパイを躱し400・700。32,200まで持ち点を伸ばす。
東3局西島は五万をポンしこの1シャンテン
一万二万二万四万五万七万八万九万九万九万  ポン五万 上向き五万 上向き五万 上向き  ドラ九索
上家の親石立、マンズを切らずに粘りこの形
三万三万六万三索三索四索四索五索九索九索三筒四筒五筒  ツモ七万  ドラ九索
既に13巡目アガリを見るにはソーズを残したい。それでも石立は四索を掴んだ。切ろうかという瞬間、思い直したかのように三万を切った。親番であること、西島の仕掛け、ドラや打点、トータルポイント、全てを受け止めそれでも三万を切った。西島はチーして三万六万待ち。次巡石立が掴んだのは九万。さすがに落胆の表情。今決勝1番の長考。考え抜いた末、手牌から四索を抜いた。ギリギリの選択。
この局はまだ終わらない。柴田は次に石立の切った三索をポンした。
六万六万七万八万七筒七筒八筒北北北  ポン三索 上向き三索 上向き三索 上向き
親がオリたのを感じ、すかさず形式テンパイを取りに来た。そして七筒を引き入れテンパイ。西島の1人テンパイを阻止した。
東4局1本場、西島に親をやらせるわけにはいかない柴田がわずか5巡で蹴る。残すは南場のみ。
柴田最後の親番は九種九牌のあとの1本場、まだあきらめていない石立が3,900をアガリ親が流れる。
南2局、8巡目に石立リーチ。
二万四万六万七万八万二索三索四索六索七索八索六筒六筒  ドラ七索
西島は仕掛けを入れていたが撤退。柴田はドラを打てばテンパイだったが、自分がアガるよりも西島の素点を削りたい場面なので引いた。石立のアガり牌は山に残っておらず、最後の親番の平野も粘り2人テンパイ。3人掛かりで西島に楽をさせない。
南2局1本場、7巡目柴田仕掛けチーテン
一万二万三万八万九万七索八索九索白白  チー四万 左向き五万 上向き六万 上向き  ドラ白
親番平野がリーチ。三索を引いての二索五索待ち。西島の素点を削ることを考えればここも引く手もあったが、柴田は三索を押した。直後の平野、七万を掴み3,900。もうこうなると理屈ではないだろう。柴田の勝負感覚で三索を通しアガり切った。
3人テンパイの後の南3局1本場、親の石立4巡目リーチ。
三万四万六索六索六索七索八索九索白白中中中  ドラ五万
高目4,000オールで西島は沈む。石立が引いたのはドラの五万であった。4,000オール。遂に西島が原点を割った。
この時点で西島と柴田の差は3.7ポイント。まだ西島が上であるが、もうどう転ぶかわからない。
南3局2本場、柴田6巡目1シャンテン
一万二万九万九万一索三索七索七索七索二筒三筒四筒発  ドラ九万
打点的には条件を満たしているが形は厳しい。西島12巡目テンパイ。
三万四万五万七万八万四索五索六索二筒三筒四筒六筒六筒  ドラ九万
柴田もここまで育っていた。
一万二万九万九万九万一索三索七索七索七索一筒二筒三筒  ドラ九万
西島の六万九万は山に六万が2枚残り。柴田必死のツモもテンパイが入らない。親の石立は形式テンパイを入れる。こちらも必死だ。西島、柴田ともツモは後1回・・
西島の手元には六万が引き寄せられていた。事実上の決着の瞬間であった。
南4局、柴田の条件は1,600・3,200か5,200直撃であったが、もうそんな手を入れる力は残っていなかった。
優勝 西島一彦
後日、私は柴田の出勤日に道場へ行きこの決勝の話をした。柴田なりの見方や意見が聞け有意義であったと思う。私と柴田が卓に入っている時に平野が来た。最近はかなりの頻度で足を運んでいるようだ。平野は別卓に入り淡々と打牌を繰り返していた。私は特に声を掛けなかったが、その姿勢が実を結ぶこともあるであろう・・

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