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チャンピオンズリーグ 決勝観戦記

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第6期JPML WRCリーグ 決勝観戦記 ケネス徳田

2019/10/17
執筆:ケネス徳田


●格上に厳しいタイトル戦

半期に1度行われるこの『JPML WRCリーグ』も今回で6期目を数える。旧「チャンピオンズリーグ」から数えると18年36期。夏目坂スタジオができて放送対局が行われはじめたのが2014年前期(第26期チャンピオンズリーグ)である。その第26期からの決勝戦進出者と当時のリーグを見てもらいたい。

歴代優勝者(JPML WRCリーグ)

年度 優勝者 2位 3位 4位
第5期 2018年度後期 沢崎 誠(A1) 仲田 加南(C2) 前原 雄大(A1・鳳凰位 HIRO柴田(A1)
第4期 2018年度前期 藤島 健二郎(B1) 東谷 達矢(C1) 前原 雄大(A1・鳳凰位 沢崎 誠(A1)
第3期 2017年度後期 小林 正和(D2) 清原 継光(C3) 中川 基輝(C3・前回優勝 ケネス徳田(C1)
第2期 2017年度前期 中川 基輝(D2) 藤島 健二郎(B1) 近藤 久春(A1) 井出 一寛(C2)
第1期 2016年度後期 羽山 真生(C2) 菊原 真人(D3) 勝又 健志(A1・鳳凰位 中村 慎吾(B2)

歴代優勝者(チャンピオンズリーグ)

年度 優勝者 2位 3位 4位
第30期 2016年度前期 庄田 祐生(D3) 大庭 三四郎(E) 北條 恵美(C2) HIRO柴田(A1)
第29期 2015年度後期 阿部 謙一(D3) 山田 浩之(A2) 野方 祐介(C2) 福島 佑一(D1)
第28期 2015年度前期 西島 一彦(C1) HIRO柴田(A1) 石立 岳大(D1) 平野 良栄(D3)
第27期 2014年度後期 客野 直(B2) ケネス 徳田(D1) 吉野 敦志(D3) 安達 紘文(D2)
第26期 2014年度前期 松崎 良文(C1) 田中 史孝(C2) 安村 浩司(B2) 太田 優介(C2)

※赤字はベスト16シード

感覚的にWRCは「波乱が起きやすい」「格上に厳しい」と思われているが、データを見ても一目瞭然。本命と呼べる選手が優勝したのは第27期チャンピオンズの客野直くらい(Dリーガー3人相手だと当然か)で、あとはほぼ均等にリーグ2番手~4番手が優勝している。それだけ誰が勝ってもおかしくない、というよりむしろ本命が一番勝ちにくいタイトル戦となっている。

 

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そうなるともっとも不利なのが現鳳凰位・吉田直か。「鳳凰位決定戦ディフェンディング」「WRCベスト16」などの権利は、裏を返せばそれだけ実戦機会が失われるということ。特に吉田のような気合で打つタイプにとっては調整不足の感が否めない。

 

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リーグ的には2番手となるダンプ大橋(A2)。十段戦こそ決定戦は3回とも5着敗退と最悪の相性(3回行けるだけでも好相性か?)だが、それ以外(新人王戦・王位戦・グランプリMAX)は決勝戦に勝ち進めば100%優勝と無類の勝負強さを誇っている。

 

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杉山俊彦(D3)。巣鴨本部道場スタッフとして知名度上昇中。ベスト16・ベスト8と共に卓内1位通過は絶好調の証。(ちなみに私は過去2回決勝戦進出時、トーナメントはすべて2位残り。好調度0)
WRCになってからはリーグ3番手の優勝確率が高く、データ・充実度からなら本命印を打てる存在か。

 

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伊達朱里紗(D3)。本業声優。プロ歴1年目というよりデビュー期で決勝進出という快挙。しかもWRCになってからは女流初。杉山とは対象的に、ベスト16・ベスト8は最終戦での大逆転でここまで勝ち残ってきた。

 

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ちなみにこの決勝戦の2週間前に夏目坂スタジオでは『第4期プロアマオープン競技会』が行われ、奇しくも吉田・ダンプ・杉山の3名が対局・

 

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結果は…3名ともベスト16敗退。もっともこの大会もプロに非常に厳しいというデータが出ている。むしろ夏目坂スタジオに魔物が棲んでいるとしか……。

 

 

●道中の好調さが継続

1回戦、東1局8巡目(ドラ二筒)の4人の手牌。

東家・杉山
三万三万四万六万八万五索六索三筒三筒三筒五筒六筒七筒

南家・ダンプ
二万四万四万五索六索七索二筒二筒五筒六筒七筒八筒八筒

西家・吉田
二万三万六万七万八万三索六索七索二筒二筒六筒七筒西

北家・伊達
五索六索七索八索八索一筒三筒四筒七筒八筒九筒発発

3人がイーシャンテン、吉田だけリャンシャンテンだがドラトイツで好形・手役残りと大好物の形。通常1人くらいはボロボロの手牌なものだがさすが決勝戦。ここまで勝ち残ってきた運気が違う。とはいえその4人の中でも一番の運気を持っていたのが、やはりここまで2連続1位通過だった杉山であった。

マンズのリャンカンから埋まって即リーチ。意外にもつれたが終盤七索をツモって2000オールスタート。そして…

 

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5本場まで積み6万点近く稼ぎ出す。東3局では
8巡目西家

一万一万八万九万九万一筒一筒九筒九筒西西白中 出る九万 ドラ三筒

の形から果敢に九万ポンから入ったのが大成功。

 

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しかもダンプ・吉田の2件リーチを潰しての満貫のアガリは値千金。

1回戦終了
杉山 +51.8
伊達 +5.0
ダンプ▲14.1
吉田 ▲43.7

 

 

●長過ぎる道中?

杉山にとっておそらく決勝戦は初めての舞台。その立場で、1回戦で大きなトップを取って考えることは?
「オール2着、あわよくばもう1回トップで優勝」ともちろん考えるであろう。しかし問題はその方法論である。

 

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杉山は手数が多い雀風、1回戦こそ親でのリーチや満貫の仕掛けで素点を伸ばしたが、全体的なイメージとしては終盤のテンパイに強く固執するタイプ。例えば2回戦東4局1本場、親番で

 

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五筒八筒が5枚目を切られた直後の六筒のポンテン。で三万六万待ちテンパイ。もちろん取るのが普通かもしれない。
しかし3者にしてみたら、ドラが九万だけにほぼ1500の仕掛け。状況が状況だけに押し返しやすい局面。
現に結論から言うと北家・ダンプに

四万四万四万五万六万七万九万九万三索四索中中中  ドラ九万
のテンパイが入ってしまい、直後杉山が二索をツモ切ってダンプの6400のアガリとなった。
結果的には杉山が仕掛けなかったとしてもダンプが自力で満貫のツモアガリとなっているのだが…例えば決勝慣れしている選手ならば、杉山のこの状況では「ポンテン取らず、ノーテンで親番は落ちてもいいから、とにかく自力でテンパイ入れてリーチ」という選択をしているかもしれない。少なくとも「終盤安いテンパイを入れたがため危険牌を切り続ける」リスクは回避したかもしれない。
いずれにせよ杉山にとってはこの6400が、2回戦目のラスへのきっかけとなる非常に痛い放銃であった。

2回戦成績
吉田 +25.1
ダンプ +7.2
伊達 ▲10.3
杉山 ▲22.0

2回戦終了時
杉山+29.8 伊達▲5.3 ダンプ▲6.9 吉田▲18.6

 

 

●2本場には何かが起こる!?

2連続流局でむかえた東1局2本場。まずダンプが456三色テンパイでリーチ。

 

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宣言牌のドラ八筒を伊達がポンテン。

七万七万四索五索二筒三筒四筒四筒五筒六筒  ポン八筒 上向き八筒 左向き八筒 上向き  ドラ八筒

同巡、親番・杉山も追っかける。

 

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三者のぶつかり合いを制したのは…伊達だった。ダンプが三索を掴んで伊達が満貫のアガリ、そして合計3000点の供託を得る。

 

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東2局2本場、吉田が満貫ツモ。

 

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ヤミテン満貫に構えていたものの、仕草と表情は「ツモるならリーチだったか」と今一つ。

そして東3局2本場(ドラ六筒)、今度も杉山・ダンプのリーチ合戦。
西家・杉山
五万六万三索三索三索四索五索二筒三筒四筒六筒七筒八筒

北家・ダンプ
二万三万三万四万四万五万六万七万二索二索四筒五筒六筒

軍配はダンプが高目二万ツモで3000・6000。各2本場には必ず誰かが大物手ツモアガリ。これで杉山1人置いていかれ、いわば展開ラスを押し付けられてしまうが南3局「2本場」で…

 

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ドラの北ポンしての王手飛車。西をツモって満貫のツモアガリ。これで3着浮上となった。

3回戦成績
ダンプ+32.5
吉田  +7.0
杉山 ▲11.5
伊達 ▲28.0

3回戦終了時
ダンプ+25.6 杉山+18.3 吉田▲11.6 伊達▲33.3

 
 

●これぞ横綱相撲!?

おそらく4者ともここまで僅差のWRC決勝は過去に類を見ない(第3期WRCでの私は240P差!)。
普段以上に全員がトップを欲しがるこの半荘、最初に動き出したのは吉田だった。

 

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南家・吉田 1巡目

二万一索四索四索五索七索七索九索九索九索四筒八筒白 出る八索 ドラ二筒

東家・杉山の1巡目打八索を仕掛けて一色攻め。6巡目に杉山から先制リーチが入るも10巡目にツモアガリ!

一索三索四索四索五索六索七索  ポン九索 上向き九索 上向き九索 左向き  チー八索 左向き七索 上向き九索 上向き  ツモ二索

リーチ時点では三索六索が無いリャンシャンテン。しかし「荒ぶる鳳凰」にとってはお構いなし。常に挑戦者の立場を忘れぬ吉田の重量級のアガリであった。

さて重量級といえば見た目も雀風もダンプが第一人者。飄々(ひょうひょう)としたアガリを繰り返しながらも打点は重い。

 

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東2局
六索七索二筒二筒二筒東東東発発  チー四筒 左向き五筒 上向き六筒 上向き  ロン八索  ドラ発

東3局
七万七万八万八万九万九万一索二索三索三筒三筒南南  ツモ南  ドラ七万

しかも東3局は吉田・伊達の2件リーチを潰してのアガリは値千金。こうなると僅差ながらトータルトップのダンプが断然有利。南1局の杉山の親番は吉田がアガリ、その吉田の親番はダンプがアガる。もちろん南3局の伊達の親番もダンプが流す。

4回戦成績
ダンプ+30.1
吉田 +15.9
伊達 ▲12.3
杉山 ▲33.7

最終成績
ダンプ+55.7 吉田+4.3 杉山▲15.4 伊達▲45.6

思えば直近でダンプが優勝した第9期麻雀グランプリMAXも序盤ビハインド、道中逆転し、終盤も適度な点差ゆえ常に勝負し続けての優勝だった。勝ち方を知ってるゆえ勝負所を間違えず、それでいて常に戦い続ける、これぞ「横綱麻雀」である。

 

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負けた3者も身のある決勝戦だったに違いない。実戦不足の吉田にとっては鳳凰戦防衛に向けた場として。杉山・伊達にとっても初の決勝戦であり、そしてD3リーガーにとっては喉手の特昇リーグの権利を得た。
そして優勝したダンプ。十段戦以外は決勝4戦4勝と勝率100%を維持。相当すごいことなのだが…やはり十段戦の相性の悪さの印象が強すぎか。もしかしたら5人打ちでの決勝戦は不向きなのかもしれない。抜け番があるため気合が削がれるのか集中力が途切れるのか(あるいは昼寝して寝起きのせいか)。