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グランプリ 決勝観戦記

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第9期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 第1章:HIRO柴田【遠すぎる冠】 古橋 崇志

2019/04/15
執筆:古橋 崇志


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「機は熟した」
11年前の第24期A2リーグで優勝し、A1所属となるとそこから3度の決定戦進出。この35期で4度目だ。

 

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第35期の鳳凰位決定戦での優勝者予想を見る限り、誰しも柴田が鳳凰位を取ると思っていた。
だが、結果は2位。またしても手が届かなかった鳳凰位。
決定戦の最中にはJPML WRCリーグの決勝戦にも進出しこちらは4位。
そしてこの麻雀グランプリMAXで2019年早くも3度目の決勝戦を迎える。
誰もが認める実力がありながら、優勝が遠い柴田。
初のタイトル獲得に向けて今期3度目の正直なるか。柴田の挑戦が始まる。

1回戦東2局、3巡目にドラの中を重ねて以下の形

 

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柴田はここから打七万
瞬間の効率よりも後の好形を目指した、まさに公式ルールのセオリーとも言える一打。
このように柴田の門前での手組みは至ってオーソドックスである。

 

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狙い通りソウズを伸ばし、六万九万でのリーチを山田から捕え5,200の和了り。
1回戦はこの和了りで得た浮きを守りきり2着と上々の滑り出しとなった。

2回戦は柴田の圧倒的な半荘となる。
まずは東1局1本場

 

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淀みないツモで6巡目リーチ、次巡あっさりとツモ2,000・4,000

次局も先制リーチを打つと追いかけリーチの藤崎から二索を打ち取り3,200

 

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決め手はオーラス
高目11,600を丁寧にヤミテンに構えるとこれもあっさりとツモ

 

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この和了りで5万点を超え、トータルでも頭一つ抜け出す。

3回戦、絶好調で迎えたこの半荘が柴田にとって苦しい半荘となってしまう。

まずは東1局、親番で残りツモ1回ながらも積極的にリーチ。

 

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この宣言牌の六万を藤崎がテンパイからチー。食い延ばしだ。
これは私の主観であるが、ヤミテンであったならば藤崎は鳴かなかったであろう。
鳴けば確かに待ちが広くなる。ただ、自身のツモ番を放棄して親に海底を回す行為を藤崎が好まないのは知っている。
しかし、この局面は藤崎智というトッププロが何かを感じ取ったのだ。

 

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海底牌は何と五万。柴田の積極策が藤崎によって打ち砕かれた。
ここから柴田の歯車が狂い始める。

東4局に山田に2,900を放銃し迎えた1本場、白を仕掛けてソウズの混一に向かう。
かなり遠い混一ではあるが、上家の山田にプレッシャーを掛ける意味も強そうだ。

 

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しかし、山田はプレッシャーが掛かるどころか生牌の発、そして六索と押し返す。
山田に驚異を感じた柴田はこの六索をスルー。手牌を短くする事を拒否する。
私はA1リーグで柴田の戦いを長く見てきたが、このスルーには違和感を覚えた。
麻雀には「押して押し返されたら引け」という格言があるが、
柴田の麻雀は「押して押し返されたらさらに押せ」である。
もう1枚仕掛け、さらに駆け引きするのが柴田の強さであると思うが、山田という打ち手を高く評価している事が見える一局であった。

苦しい展開が続く柴田であるが親番で以下の配牌。

 

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スピードもあり、ドラか三色になれば打点も伴う好配牌である。

 

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2巡目には一万を引き込み早くもドラをリリース。

 

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次巡四筒を引き早くも一向聴となる。

このままリーチといきたい状況であるが、5巡目に山田が放った二万にチーの声。

 

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恐らく柴田はこのまま門前で進めても自身に和了りは無いと感じたのだろうが、この鳴き
によって藤崎に急所が埋まり、あっという間に親が落ちてしまった。

 

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たらればを言っても仕方ないが、ここを門前で進めた時には柴田の優勝という未来があったかも知れない。

そして南3局、山田の清一に捕まり12,000の放銃でこの半荘一人沈みのラスとなり、
ここまでの貯金を全て吐き出してしまう。

しかし、ここでまだ踏ん張るのがA1リーガーの力。
4回戦では拮抗した展開の中、東4局。

 

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5巡目にテンパイも良型を求めてテンパイ取らず。

 

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次巡狙い通り八索を引き入れ三面張のリーチ。

 

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これをツモ和了り2,000・3,900。

そして南2局1本場ではこの配牌を

 

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ここまで仕上げ3,000・6,000。

藤崎を交わしトータルトップで折り返す。

2日目初戦の5回戦、柴田は東1局から幸先の良いツモ和了り。

 

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このまま一気に抜けるか、という雰囲気が漂ったが東4局、土俵際に追い込まれたダンプが驚異の9本場まで連荘。
ようやく親が落ちたと思ったら、次は山田が4本場まで積み上げ、柴田は何と箱下のラス。

6回戦もラスとなった柴田は7回戦で意地のトップを取り、最終戦に僅かな望みを繋ぐが、
東1局の山田が親番で6本場まで連荘し、後はダンプと山田の優勝争いを見守るしかなかった。

またしても麻雀の神様は柴田には微笑まなかった。
あまりにも遠くに見える栄冠はこの男の頭上にいつ輝くのだろうか。
それは遠くない未来に訪れると信じるファンの気持ちを背負い、また新たな挑戦が始まる。