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グランプリ 決勝観戦記

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第9期麻雀グランプリMAX決勝観戦記 第3章:山田浩之【あとひとつ】 古橋 崇志

2019/05/08
執筆:古橋 崇志


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18年前、当時24歳の若者に敵はいなかった。
花の17期と呼ばれる中でも誰もが認めるトップクラスの雀力を持ち、僅か3年でA2リーグへ、そして第23期A2リーグを優勝し若干30歳でA1リーガーとなる。
しかしタイトル戦ではチャンピオンズリーグを獲得するものの、G1タイトルにはなぜか縁が無かった。
ここ1年ではリーチ麻雀世界選手権、麻雀マスターズと決勝に進むも惜敗。A2リーグでもあと一歩届かずにA1への切符を逃してしまう。
同い年の吉田直が鳳凰位を獲得し、ベスト8ではその吉田を破っての決勝進出。
この麻雀グランプリMAXへ懸ける思いは誰よりも高いはずだ。

山田の麻雀は門前高打点に寄ってはいるが、状況・場況などに合わせて柔軟に手牌を動かしていく。

 

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開局の6巡目、高打点を狙うのであれば五万切りの一手であるが、山田の選択は打二万
ドラが無ければ打五万となりそうだが、ドラ1あるので素直に良型を求める一打である。

 

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打点に折り合いをつけて2枚目の発をポン。
藤崎・柴田の2件リーチを受けるが五索をツモ和了り上々のスタートだ。

南2局1本場、山田に難題が。
親のダンプにダブ東をポンされている6巡目。

 

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テンパイまでの効率なら打五万であるが、山田の選択は打九万
ドラドラの勝負手であるからこそ、和了りやすい形を求めていく。
10巡目、狙い通りマンズが伸びテンパイ、待ち取りは同じ5枚見えながら一筒四筒を選択。

 

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そして3巡後ツモ二万と来たところで山田の手が止まる。

 

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5面張のテンパイであるが、三万四万は目に見えて0枚。そしてフリテンである。
小考後、意を決した山田は四筒を切ってフリテンリーチを敢行する。
親のダンプは中の後に一索の手出しが入っているのでピンズの混一では無さそうだが、
ピンズが高く、そして何よりも自身の待ちも五万八万は山に残っている可能性がある。
山田の読み通り五万八万は2枚ずつ、そしてドラの二万も1枚残っていたが、無情にもツモ筋にいたのは一筒のみであった。

 

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勝又健志は「いくらマンズの場況が良くても八万切りのところでピンズを払っていくのは至難の技」と解説したが、山田本人はそれが出来たのではないか?と思っていたに違いない。

この局の加点のチャンスを逃してしまった事が尾を引いたのか1・2回戦まさかの連続ラスと山田にとって厳しいスタートとなってしまった。

3回戦東3局
1回戦の東1局以来和了りが出ない山田に久しぶりのチャンス手が。

 

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タンピン三色が見える手牌であるが、ドラが七筒なので悩みどころだ。
三筒が一番手広い事は百も承知だが、山田の選択は打九筒
ここまで和了りが遠のくとまずは和了りを、その為にはテンパイを、となってしまいそうだが、そうならない所が山田の強さである。
ここまで言ったからにはタンピン三色が決まったと思われそうであるが、次巡のツモは八筒・・・
裏目の中の裏目である。

 

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裏目を引いたものの、その後は柴田の仕掛けに丁寧に対応しつつの1人テンパイ。
1・2回戦は1度の選択ミスで他家に和了りが生まれていたが、潮目が変わったように見えた。

次局親番を迎えると7巡目にダブ東ポンテンの一筒四筒七筒待ちテンパイ。

 

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これが柴田から打ち出され2,900、実に25局振りの和了りとなった。

その後は拮抗した展開で迎えた南3局。
親のダンプの先制リーチを受けたもののチンイツテンパイ。

 

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現物待ちとなっていたところに一向聴の柴田が飛び込み12,000の大きな和了り。
この和了りが決定打となり3回戦は待望の初トップとなる。

このまま勢いに乗りたい山田であったが4回戦は沈み、そして5回戦東4局、ダンプ無双の親番が始まる。
ダンプは29,000点持ちで親番を迎えたが、9本場開始時には78,800点持ちと実に5万点近くの加点に成功した。
そんな嵐の中を山田は僅か5,900点の失点で抑え、更には

 

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この和了りで何と原点復帰。
そして、迎えた親番で2万点を加点し大きな2着となった。

連荘中の親に対して無理に向かわず、戦える時にしっかりと手を組むという山田の経験値の高さを伺い知る半荘であった。

5回戦の浮きでトータルポイントが初めてプラスになり、6回戦も更に得点を伸ばす。
しかし7回戦では痛恨の4着、迎えた最終8回戦、ダンプとの差は丁度60ポイント。
トップラスで4万点差と公式ルールではかなり厳しいポイントである。ダンプ優勝の雰囲気が漂う中、山田が優勝への執念を見せる。

東1局1本場、13巡目山田の手牌。

 

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四暗刻への渡りを見るならば打二索、6,000オール狙いならば打三索のリーチ。
しかし山田はダンプの4巡目に捨てられたドラの二索、そしてその後の手出し六万四万を見て安全度も考慮した打五索のリーチとする。
自身の手に溺れずに冷静な判断を下した山田の元には四索が舞い降りた。

 

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反撃の狼煙には十分の4,000オール。

1,500の和了りで繋いだ3本場、タンヤオドラ2のテンパイ。
柴田のリーチを受けるものの、押し切って3,900オール。

 

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4本場はきっちり高目をツモって2,000オール。

 

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何と東1局でトータルポイントでダンプを交わして山田が首位に立った。
親番が流れた後、山田は点数を減らすもののトータルトップ目でオーラスを迎える。
山田が和了るか、ダンプがノーテンならば山田の優勝である。

 

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形は悪いが二向聴である。形が悪いと言ってもライバルのダンプの配牌に比べたら十分だろう。
しかし、「麻雀は配牌よりもツモ次第」と小島先生が言っていた通り、先制テンパイはダンプ。

 

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山田も次巡の無筋でオリを選択。流局で勝負は次局に持ち越しとなる。

オーラス1本場

 

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白が鳴けるか暗刻になればのまずまずな配牌。だが、ダンプの配牌が速度・打点共に上回っていた。

 

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しかし「配牌よりもツモ次第」という麻雀あるあるがここでも当てはまり、4巡目でダンプは全てツモ切り、山田は両面2つの一向聴となった。
山田は役無しテンパイならばリーチと行くだろうし、ダンプは降りられない。
山田の優勝も秒読みかと思われたがダンプのツモが突然効き始める。

 

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7巡目にダンプが先制リーチ。
山田も無筋を切り飛ばし全面対決だ。
ダンプはカン五索なだけに長引くかと思われたが、意外にもあっさり勝負が付いた。

 

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大きすぎる3,900オール。
3本場、倍満ツモ・ハネ満直撃条件となった山田に逆転する力は残されていなかった。

あとひとつだけ、一牌だけ、どこかで引く事が出来れば山田の優勝であった。
今から十数年前、シルバーコレクターと言われ数多のタイトル戦決勝に進出するも優勝が出来ないともたけ雅晴が初めてのタイトル、鳳凰位を獲得した。
優勝が決定した瞬間に呟いた「やっと勝てた」と言う一言が未だに私の脳裏に焼き付いている。
その場にいた観戦者は皆、目頭が熱くなったであろう。

誰もが「山田はそのうちタイトルを取るだろう」と口を揃えて言う。
山田にもその時が来るだろうか?期待に応えてくれるだろうか?
きっと近い将来その時が訪れると私は信じている。