プロリーグ(鳳凰戦) 決勝観戦記

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第35期鳳凰位決定戦 初日観戦記 荒 正義

2019/02/04
執筆:荒 正義


2019年1月19日(土曜)、第35期鳳凰決定戦の日が来た。
この日、東京は冷えたが晴れだ。雨より、晴れがいいのだ。皆、電車をつないで来るから、雨の日は傘を差しても濡れて大変である。気分よく卓に着くためには、やっぱり晴れの日がいい。
対戦者は現・鳳凰の前原雄大。挑戦者はHIRO柴田・勝又健志・吉田直の3名である。一番早く会場入りしたのは、柴田のようだ。卓上でツモ捨てを繰り返し、イメージトレーニングをしていた。これは、指先をほぐす効果もある。

次に見たのは勝又。彼は、清々しい笑顔で挨拶をしていた。彼の透き通った顔を見て、気合も仕上がりも十分と見た。すると、奥からぬーっと現れたのが普段着の前原だった。彼は、会場入りしてから着替えるのだ。
一番遅く入ったのが、吉田である。まだ、足を引きづっている。彼は昨年、事故で足を痛めた。その様は痛々しかったが、こうして挑戦権を得たのは、不幸中の幸いか。彼が見せた予選最終日の涙は、記憶に新しい。この一戦に賭ける思いが伝わる。

 

100

 

1回戦東1局。ドラ西
出親は前原で、順に勝又・柴田・吉田の並び。
13巡目、テンパイ一番乗りは南家の勝又だった。

六万七万八万八万九万九万三索四索五索三筒四筒五筒西  ツモ八万

ここで、初牌のドラの西を切る。しかしヤミテン。まだ様子見だから、危険は冒さない。これに合わせて、柴田も西を切る。
字牌を絞り、オリ気味に打っていた柴田の手はこうだ。

一筒二筒三筒六筒八筒九筒東白白発発中中

残念ながら白は、2枚出て枯れている。14巡目、吉田の手はこうだ。

四万五万七万八万九万五索六索八索八索五筒六筒七筒東  ツモ発

ドラ切りから、勝又のテンパイは見えている。しかし、勝又の打点とマチは分らない。東発も初物。オリか迷ったが、発を切る。
これに柴田がポンの声。

一筒二筒三筒六筒八筒東白白中中  ポン発発発

白は枯れているし、中は1枚残り。苦しいが、アガリできれば跳満の大きい手だ。次に吉田が四筒を掴んでオリ。このとき、柴田の河はこうだった。

柴田の河
一万 上向き南二万 上向き六万 上向き四万 上向き六索 上向き
二索 上向き六万 上向き七索 上向き四索 上向き五索 上向き三索 上向き
西五万 上向き九筒 上向き

初牌の東も、ピンズも切れない。このとき、前原の手がこうなった。

三万三万三万七万九万五索六索七索六筒七筒東東西  ツモ西

取りあえず七万切り。ドラは枯れているが、欲しいのは東だ。この東が、受けが広がった柴田から出る。

一筒二筒三筒六筒八筒東白白中中  ポン発発発  ツモ四筒

前原のポンテンが入る。誰もドラ2とは思わない。

三万三万三万五索六索七索六筒七筒西西  ポン東東東

引けば3,900オールだ、でかいぞ。
結局、八筒は勝又が掴んで回る。しかし、勝又はもう1枚八筒を引きこみテンパイ復活。勝又の最終形はこうだ。

六万六万七万八万八万三索四索五索三筒四筒五筒八筒八筒

吉田は、流局間際に形式テンパイ。柴田の1人ノーテンだ。流局したが、見ごたえのある1局だった。

 

100

 

東1局1本場。ドラ西
1人ノーテンの、柴田が怒った。8巡目のリーチだ。

一万 上向き北白東一万 上向き一索 上向き
五索 上向き七万 左向き

そして、手牌はこうだ。

二万四万四万八万八万二索二索六索六索六筒六筒七筒七筒

無筋のタンキ待ちだが、4者の河見ると、四万が1枚切れていい待ちに映る。

しかし13巡目、前原が追いかけリーチをかけた。

一索二索三索四索五索八索八索八索八筒八筒八筒九筒九筒  リーチ

が、結果は流局。

東1局3本場。ドラ東
勝又の早い仕掛け。6巡目でこのテンパイ。

四索五索発発中中中  チー一索 左向き二索 上向き三索 上向き  チー三索 左向き一索 上向き二索 上向き

すぐに前原が追いつく。

四万五万五万九万九万九万四筒四筒五筒六筒七筒白白  ツモ白

普通なら五万切りのヤミテンで、サバキに出る場面。しかし、三万が場に3枚出ている。なので、前原は四万切りでツモリ三暗刻に受ける。ドラが東で、初牌だからヤミテンが正しい応手だ。リーチ後に東を掴んで勝又に打って、跳満ではかなわない。しかし、勝又は六万のツモ切り。前原はがっかり。これは麻雀ではよくある出来事だ。私も、前原と同じ構えに取る。
16巡目、ドラを重ねた吉田にテンパイが入る。

五万六万七万四索五索六索七索八索六筒七筒東東白  ツモ六索

白を切ってリーチだ。白は、吉田の勝又への勝負牌。
次の前原のツモが六索で、ツモ切る。これが勝又に放銃。積み場と合わせて4,500点。リーチ棒が3本あって、勝又には美味しいアガリである。
しかし、六索切りは意外な放銃だった。アガリ逃しが3度あった前原には、止められた牌である。

東2局は勝又のアガリ。ドラ三索

三万三万八索八索白白白  ポン四万 上向き四万 上向き四万 上向き  ポン東東東  ツモ八索

勝又が手なりで打って、4,000点オールだ。好い流れだ。
後は、小場で進んだ。

南1局は前原の親番。この時点で、4者の持ち点はこうだ。

前原・25,700
勝又・50,700
柴田・21,600
吉田・22,000

勝又が断然有利だ。このまま進んで勝又のトップが決まるかに見えたが、そうは簡単に問屋が卸さない。前原は、この親で4本積んだ。アガリは小さかったが、それでも4本である。親が落ちた段階で、持ち点はこうだ。

前原・38,200
勝又・46,300
柴田・19,200
吉田・16,300

そして、南2局。勝又の親に加点のチャンス到来。
この手が5巡目の仕上がり。当然リーチだ。

一万三万三万四万四万五万五万七万八万九万四索四索六索  ツモ二万  ドラ五索

一万 上向き北一索 上向き三索 上向き六索 左向き

安目で5,800、高目の六万なら11,600点だ。三万が2枚、六万が3枚残っている。一発で引くかと思ったが、違った。二筒だった。なかなかツモれない。これに勝負と出たのが吉田である。

 

100

 

一万二万九万七索八索九索南南白白中中中  ツモ三万

九万切りのリーチだ。

一筒 上向き九筒 上向き東三索 上向き七筒 上向き九索 上向き
四万 上向き九万 左向き

両者ともロン牌は、4枚生きている。さあ、勝つのはどっちだ―。2巡後、南を引いたのは吉田だった。これで3,000・6,000点。勝又には、痛い親のかぶりだ。
南3局は前原の1,300・2,600点のツモ。これで前原がトップに立つ。

南4局は、柴田が意地を見せた。

四万五万六万一索二索三索七索八索九索三筒三筒七筒八筒  ドラ三筒

この手をリーチで、吉田から九筒を打ち取る。これで、4者の成績はこれだ。

前原+18,4P
勝又+11,0P
柴田▲11,7P
吉田▲17,7P

 

 

2回戦。出親は吉田で順に勝又、前原、柴田の並び。
東場は、小場で回って勝又が有利の展開。南場に入って急に荒れだした。

南1局は、吉田の親番。

二万二万八万八万九万九万二索二索五筒六筒七筒七筒東  ツモ六筒  ドラ二索

北一万 上向き五筒 左向き

これが、3巡目のリーチだ。東は河に1枚出ているから、絶好の狙い目だ。
打った者が不幸である。東は柴田に1枚あるが、オリで出る気配なし。しかし、7巡目にラス牌を吉田が引いて6,000点オールだ。これは大きいアガリだ。
この時点で4者の持ち点がこうだ。

吉田・48,000
勝又・28,900
前原・22,400
柴田・20,700

1本場は前原が500・1,000点のツモアガリ。
南2局は、吉田がリーチツモで500・1,000点のツモ。
南3局は、親の前原が吉田から3,900点のアガリ。吉田と柴田のリーチは不発。
1本場は、前原が1,300点のツモアガリ。
2本場は、吉田が満貫で決めた。

三万三万五万六万四索五索六索四筒五筒六筒発発発  ドラ四索

四万を打ったのは、本日不調の柴田だった。
南4局は、トップの吉田の1人ノーテン。でも、トップだからいいのだ。
1本場は、吉田が1,000点で勝又からアガって幕。
トップは前回ラスの吉田。浮きの2着は前原で、3着が勝又。柴田がラスだった。
2回戦終了時の総合成績はこうなった。

前原+27,7P
吉田+10,8P
勝又 +1,6P
柴田▲40,1P

 

 

3回戦。出親は前原で順に勝又、柴田、吉田の並び。
東3局までロンとツモで、小場で流れた。トップ目は前原で、4,000点の浮き。他者3人は、その分沈みだが大した差はない。

東4局。ドラ八筒
4巡目の柴田の手牌がこうだ。

二万八万八索二筒五筒六筒七筒七筒八筒東東南南

ここから、柴田が仕掛けた。オタ風からの南の仕掛けは、少し強引に映る。しかし、これまでの失点が大きいから、風を変えたかったのかもしれない。
8巡目でこの仕上がり。

五筒六筒七筒白  ポン東東東  チー九筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ポン南南南

白は2枚出ているから、掴めば出る可能性はある。
だが、10巡目に前原が追いつく。

一万二万三万一索一索二索三索三索一筒二筒三筒九筒中  ツモ九筒

放銃覚悟の中切り。しかし、この中を動いたのは親の吉田だった。吉田もポンテン。

九万九万九万三索四索五索五筒五筒六筒八筒  ポン中中中

しかし、七筒は空テン。二索は3枚残りだ。場はソーズが安く、ツモ切られる可能性大である。18巡目、その二索を前原が引いた。3,000・6,000点。大きなアガリだ。前原の生命力は、この後だ。

 

100

 

南1局。ドラ九索
これが、親の前原の配牌。

二万四万一索一索三索六索九索九索三筒西白白発発

配牌で親満確定の手だ。まず、西を切る。すると、次のツモが発である。で、三筒を切ると次のツモが白だ。それなら、六索切りである。そして、二万一索のツモである。

二万二万一索一索三索九索九索白白白発発発  ツモ一索

ズルイよね、こんなツモ!
ヤミテンで親の倍満。ツモなら16,000点オールだ。しかも、前原は即リーチだ。

西三筒 上向き六索 上向き四万 上向き西三索 左向き

ドラは九索だから、筋でもおいそれと出る牌ではない。引きがいいから、押さえ込みのリーチをかけたのだ。鳴かれて、牌を流されてはかなわない。前局、跳満ツモの運の後押しもある。やっぱり、ここはリーチだ。
この時点で二万が1枚、九索が2枚生きていた。だが、なかなかツモれない。
この大一番は、8巡目にテンパイを入れた吉田がかわして500・1,000点のツモだった。ああ、くわばらクワバラである。

南2局は、親の勝又が頑張った。3本積んで浮きに回ったが、残念。
3本場で吉田のリーチに、高めの五万で振り込んだ。

吉田の手
六万七万一索二索三索五索六索七索五筒六筒七筒発発  ドラ発

これで勝又は、ぴったり配給原点。

南3局。今度は親番の柴田が頑張った。
まず、3,900点を吉田から打ち取る。そして、次がこれ。

柴田
七万八万九万五索五索六索六索七索一筒一筒五筒六筒七筒  ツモ七索  ドラ一筒

ヤミテンで引いて4,000と100点オールだ。
これで柴田の持ち点は、29,900点まで復帰した。
しかし、追撃もここまで。残り2局は、前原がさばいて1人浮きのトップだ。2着は柴田で、3着が勝又。ラスが吉田だが、沈みは小さい。
そして、3回戦までの総合成績がこれだ。

前原+52,5P
吉田 ▲3,6P
勝又 ▲7,0P
柴田▲41,9P

 

 

4回戦。出親は勝又で、順に柴田・前原・吉田の並び。
東1局は、10巡目の親の勝又のリーチを柴田が蹴る。六筒を打ったのは、テンパイの吉田だ。

一万二万三万四索五索六索三筒四筒四筒五筒五筒七筒七筒  ドラ七筒

勝又は、リーチのみだが連荘狙い。三筒六筒は柴田の目から5枚見えていたのでヤミテン。リーチ棒込みで4,900点はまずまずの収入だ。

東2局。
柴田の親番。ここから柴田の快進撃が始まった。

四万五万三索三索二筒三筒三筒四筒四筒五筒六筒七筒八筒  ツモ六万  ドラ南

まず、リーチで引いて2,600点オールだ。
1本場。

四万五万七万八万九万一索一索五索六索七索四筒五筒六筒  ツモ六万  ドラ四筒

これもリーチで引いて、同じく2,600点オールだ。不調だった柴田が、急にツキ出した。
2本場は勝又がさばいた。

東3局。
親の前原が、11巡目に勝負手のリーチ。

一万一万三索三索四索四索八索三筒三筒七筒七筒九筒九筒  ドラ三筒

北八万 上向き中南七索 上向き東
一万 上向き五索 上向き五筒 上向き六万 上向き七万 左向き

これに追いかけリーチをかけたのが、柴田だ。そして、引き勝つ。

三万三万三万四万五万六万五索五索七索八索二筒三筒四筒  ツモ六索

六索は、吉田の暗刻牌だった。これで柴田は持ち点を57,100とする。今日のこれまでのうっ憤を、晴らしているかのようだ。

 

100

 

柴田は、2000年に連盟入りした17期生である。最終学歴は、県立川崎南高等学校卒。ビッグタイトルは、無冠である。なのに、連盟の7人の優勝者予想は、◎の本命だった。実績からすれば、◎は前原のはずだ。次が勝又である。

1回戦開始前、緊張して1人で部屋に佇む柴田に私は声をかけた。
「よう、本命の気分はどう?」
「いや、あの予想は無いですよ!」
照れくさそうに、頭をかきながら彼は笑った。そう、緊張もいいがリラックスも大事なのだ。柴田の鳳凰戦は4度目の挑戦である。いつも、胃痛に苦しみながら打っていた。皆、それを知っている。あの予想は、その柴田への応援歌なのである。

東4局。ドラ八万
ここは、吉田の親番。柴田の手が軽い、2巡目にしてこの手だ。

三万三万四万六索八索四筒五筒六筒六筒八筒八筒白白  ツモ五筒

ここで柴田は八索切り。七対子の1シャンテンで普通の応手に見えるが、私は違和感を覚えた。ここは白を切るところに思える。運気は上々で手牌もいいのだから、ここもてっぺんを狙うところではないのか。白切りから浮かぶ手牌の最終形はこれだ。まず、これがてっぺん。

四万五万六万四索五索六索四筒五筒五筒六筒六筒八筒八筒

四万五万六万五索六索四筒四筒五筒五筒六筒六筒八筒八筒

いや、これでもいい。

三万四万六索七索八索四筒四筒五筒五筒六筒六筒八筒八筒

リーチかヤミテンかは状況次第だが、どちらにしてもこのテンパイならアガリの予感がする。次に七対子のテンパイが入れば、そのままテンパイに取るだろう。運気のある場面の、いなし手。それが嫌なのだ。
3巡目に下家の前原から白が出る。これを柴田がポンだ。

三万三万四万六索四筒五筒五筒六筒六筒八筒八筒白白

この鳴きにも、違和感があった。まだ、鳴くには早すぎる。鳴けば、1,000点にしかならないからだ。このとき、親の吉田の手はこうだった。

三万五万五万六万六万七万八万八万二索二索三索五索七索

この鳴きで四索を引きこみ、打三万。これを柴田がポンして打四万

柴田の手
四筒五筒五筒六筒六筒八筒八筒  ポン三万 上向き三万 左向き三万 上向き  ポン白白白

この鳴きで3巡後、ドラの八万を引きこんだ吉田の手がこれだ。

五万五万六万六万七万八万八万八万二索二索三索四索五索

四万が、仕掛けた柴田の河にあるからヤミテン。みんなの目は、柴田に向いている。これに打ったのが柴田だった。残念。
失投の始まりは八索切り。そして、白の鳴き。今の態勢なら面前で進める限り、柴田の放銃は無かった、と思うがどうだろう。

1本場は流局。
そして、2本場が吉田のこれだ。

四万五万六万三索三索一筒二筒三筒四筒五筒七筒八筒九筒  ツモ六筒  ドラ八万

8巡目のリーチで、高目のツモだ。これで柴田を抜いた。

後は無難に流れて、オーラス吉田の親だ。

一索三索三索三索四索五索六索七索八索九索中中中

この手を終局間際、一索で打ち取り大きな追加点。吉田の河は、ソーズの染め手。しかも、八索が余っている。打ったのは、剛腕・前原である。しかも、七対子テンパイの暗刻切り。

「そりゃあ、ないだろう!」

これで、4回戦は前原の1人沈みとなった。

4回戦の成績。
吉田+28,3P
柴田 +6,8P
勝又 +2,6P
前原▲37,7P

初日の総合成績。
吉田+24,7P
前原+14,8P
勝又▲4,4P
柴田▲35,1P

高い山が削れて、その差が詰まった。勝負は、これからだ。次が楽しみである。