プロリーグ(鳳凰戦)レポート

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A2 最終節レポート

9ヶ月間に渡るA2リーグがいよいよ最終節を迎える。
今年度の最終節は、『日本プロ麻雀連盟チャンネル』が始まった関係から、対局日が下位卓から順に行われることとなった。
組み合わせは対局順に、
9位・黒沢(▲40.3P)×10位・仁平(▲61.7P)×11位・滝沢(▲81.2P)×12位・金子(▲194.9P)×13位・山田(▲260.6P)
5位・四柳(+80.7P)×6位・山井(▲7.6P)×7位・佐々木(▲17.4P)8位・刀川(▲33.9P)
1位・勝又(+239.3P)×2位・前田(+137.1P)×3位・白鳥(+124.5P)×4位・石渡(+100.4P)
まずは各卓の注目点から。
下位グループではやはり降級争いに注目したいところなのだが、降級ボーダーを争う滝沢と金子の点差が113.7P。いくら直接対決とはいえ、この点差はあまりにも大きい。しかもこの卓は5人打ちの為、金子と滝沢の直接対決は僅か半荘3回。滝沢の守備力を考えてみても、さすがに金子にとっては苦しい1日となりそうだ。
中位グループでは、1人ポイントを持った四柳がどこまでポイントを伸ばせるかに注目が集まる。5位・四柳と2位・前田との差は56.5P。上位陣にプレッシャーを掛ける為には最低でも70Pオーバーのプラスが求められるところ。しかし残りの3人がそう簡単に自由に打たせるはずもなく、四柳には大きな壁が立ちはだかるのではないか。
そして上位グループは単純明快。
首位の勝又が1人抜け出している為、実質の昇級枠は後1つ。
前田、白鳥、石渡の3人のうち、最上位に位置することが昇級の条件となる。また、前週に対局を終えている四柳のポイントが分かるだけに、四柳が加点したとしても3人にとってはわかりやすい戦いになりそうだ。
まずは最初に行なわれた下位グループの対局を振り返ってみよう。
1回戦、仁平の猛攻に巻き込まれた滝沢は少し大きめのマイナスを喫し3着。
対する金子は、粘り込みプラスを堅守。この結果、滝沢と金子のポイントは22.4P縮まり、91.3P差。
この時点では、まだまだ滝沢絶対有利だと誰もが感じていたはずだ。しかし、この後金子の逆襲が始まる。
滝沢が抜け番の2回戦、東3局の親番で大ブレーク。
1人浮きの大トップで+33.4P。滝沢との差57.9P。
そして今日2度目の直接対決。東1局から滝沢と金子がぶつかり合う。
東1局、滝沢、勝負を決めるべく渾身のヤミテンが入る。
七万八万九万三筒四筒五筒六筒七筒八筒白白中中  ドラ中
金子は親番。滝沢がこの手をツモれば、この2人の決着は8割方決まるだろう。
金子が放銃したとなれば滝沢の勝利は決定的だ。
金子の手中には中が1枚。そして金子がポンの発声。中を切ればテンパイなのだが…
金子絶体絶命!ニコ生をご覧になっていた皆さんはきっとそう感じていただろう。
しかし…金子は中を切らなかった。
丁寧にリャンメンターツを払い、放銃を回避。するとこの動きで、滝沢がツモるはずの白が流れ流局。
滝沢にとっては絶好のチャンスを、金子が自身のファインプレーによって食い止めると、親が流れた東2局、滝沢の親番で今度は金子にチャンスが訪れる。
東2局、金子7巡目、金子は迷わずリーチを放つと、
三索四索五索六索六索四筒五筒六筒西西西北北  リーチ  ツモ北  ドラ六筒
高めの自風北を引きアガリ、大きな2,000・4,000。
滝沢に親カブリさせた金子は、このプラスを最後まで守りきり2着をキープ。
逆に滝沢は、このマイナスが重く圧し掛かり痛恨のラス。
これで滝沢と金子の差は34.4P差。
4回戦は金子が抜け番、滝沢との直接対決は最終戦のみとなった。
滝沢としては、金子が抜け番の4回戦をプラスで終えればかなり優位に最終戦を戦える。滝沢もそれは十分に理解しているはずなのだが…他の3者がそう簡単に滝沢を楽にさせないだろう。そう思いながら観戦していると、予想通りにここまでで一番重い展開に。滝沢も容易に顔を上げてしまうわけにはいかない為、終始我慢の展開に。
結果、滝沢は▲2.1Pながら痛恨のラス。
金子との差を24.3P差と、最終戦まで降級枠の行方がわからなくなってしまった。
得点状況をおさらいすると、金子と滝沢がトップラスだった場合、8,400点差で金子が滝沢を上回る。1人浮きであれば6,400点差でOK。トップ3着でも12,400点差でOKということは、かなり現実的な条件差だという事がわかるだろう。
とはいっても、滝沢が絶対有利であることは変わりがない。
滝沢はプラスであれば、金子の条件はかなり厳しくなるのだから。
それぞれの思惑がぶつかりながら、最終戦が始まった。
東1局、いきなり勝負局が訪れる。
親番の金子、4巡目にしていきなり逆転条件を満たす七対子ドラ単騎リーチを放つ。
ツモればもちろん一気に滝沢を逆転だ。
このリーチを受けた滝沢。この日ここまで慎重に歩を進めてきた滝沢が、初めて金子に対し勝負を挑む。
白をポンし、自風の北もポン。一歩も引く気配がない。そして勝負が決まる瞬間が訪れる。
四索五索六索六索七索八索九索  ポン北北北  ポン白白白  ツモ九索  ドラ四筒
普段冷静に対局しているように見える滝沢だが、この時ばかりは顔が紅潮しているように見えたのは気のせいだろうか。金子は千載一遇のチャンスを逃し、滝沢にとっては値千金のアガリをモノにした瞬間、滝沢の残留が確定したのだ。
毎年苦しい残留争いとなるA2リーグだが、今年も最終節まで白熱した戦いを見ることができた。
残留する者と降級したものでは天と地ほどの差があるが、これも勝負の世界に生きる者達の宿命であろう。今期悔しい思いをした選手の、来期の活躍を期待したいものだ。
続いて昇級争いに。
中位グループの注目は四柳がどれだけポイントを伸ばし、上位陣にプレッシャーをかけられるかに焦点が集まった。
四柳が目標とする2位・前田のポイントを上回るには約60P。
最低でも70P以上の上積みをしてプレッシャーを掛けたいところだ。
一口に70Pといっても、この数字をクリアするのはなかなか難しい。
順位点で2万点加点したとしても、素点で5万点以上加点しなければならず、大ブレークの半荘を作り上げなければならない。それと同じくらいに大切な事はマイナスしない事。苦しい時間でも我慢を重ねて失点を減らすことが、浮上のきっかけを掴むことになるのだから。
以上を踏まえると、大きな加点を積み重ねる為には初戦の入り方が非常に大事になってくる。初戦を丁寧に入るか、もしくはエンジン全開で入るか、その辺りは各自の考え方になるわけだが…
そういった意味でも注目した1回戦だったが、上手く戦いに入れたのは佐々木であり、刀川だった。四柳は2人の勢いに押されたのか終始劣勢で、大きくポイントを減らす結果となってしまった。
初戦に大きく沈んでしまった四柳は、2回戦、4回戦とトップを取るものの、ポイントの上積みは21.6P止まり。僅かに石渡のポイントを上回り暫定4位に浮上したものの、A1昇級には極めて厳しい状況で上位卓の結果を待つこととなった。
この結果を受けて、上位グループはどう戦うのか?
四柳がポイントを伸ばせなかった為、焦点は前田のポイントを巡った戦いになることが対局前から予想された。
そして始まった1回戦。
前田を追いかける立場の白鳥が攻める。が、思い通りにポイントを伸ばすことは出来ない。
それでもその姿勢が功を奏したか、前田を抑え込むことには成功し、オーラス1本番を迎えた段階で、石渡36,000、白鳥32,700、勝又28,400、前田22,900。
白鳥としては、このまま前田を抑えてラスにして終えることが出来れば前田に並び、さらにトップに浮上すれば一歩リードとなる大事な局面。
そんな中、ラス目の前田がリーチ。白鳥も同巡テンパイを果たすが…白鳥の選択は勝負を決めに行くリーチ。
しかしその宣言牌は無情にも前田の当たり牌。
三万四万二索三索四索六索七索八索四筒四筒  暗カン牌の背発発牌の背  リーチ  ロン五万
このアガリで、白鳥は原点を割って3着に後退。前田はラスを受け入れたものの、当面のライバルである白鳥のポイントを削ることになったため一安心。
これで漁夫の利を得たのが石渡。
見る人によっては消極的とも取れるほどの慎重な打牌を繰り返し、原点をキープしていたことがプラスに作用した形となった石渡。恐らく石渡の心中は、最終戦までに捲れるポジションに位置することが先決で、ここが勝負所ではないと考えていたのではないか。これがここまで積み重ねてきた石渡の経験値なのだろう。
結果、前田がポイントを減らし石渡の1人浮きで終わったため、前田+126.8P、白鳥+119.4P、石渡+118.4Pと3人が横並びで2回戦を迎えることとなった。
2回戦、勝負を掛ける3人がぶつかる。
東2局、微妙な手順でアガリを逃す形になってしまった白鳥がリーチを放つと、そこに潜んでいたのがトータルトップの勝又。石渡が白鳥の現物であるドラの九索を切ると、
二万二万八万八万二索二索九索一筒一筒四筒四筒五筒五筒  ロン九索  ドラ九索
この放銃で石渡が一歩後退。
前田の1,300オールを挟んだ東3局1本場、先程痛恨の放銃をした石渡がヤミで白鳥から7,700は8,000を召し取り、先程の放銃を帳消しに。
三万四万五万五万六万一索一索二索二索三索三索三筒三筒  ロン四万  ドラ三筒
放銃した白鳥は七万が雀頭の二万五万待ち。
この放銃で白鳥は集中力が切れてしまったか、続く東4局に痛恨のミスが出る。
白鳥9巡目、
一万二万三万三索三索三索四索四索三筒四筒五筒北北  ドラ北
この手をヤミに構える。10巡目ツモ五筒で打四索としテンパイを外すと、13巡目、ツモってきたのは無情にもドラの北。アガリ逃しが目に見える形となってしまった白鳥は、そのまま二筒五筒待ちでリーチを宣言する。当然流局。
このミスを引きずってしまったのか、南1局2本場、前田のリーチに突っ込んでしまった白鳥。
二万二万八索八索八索二筒二筒二筒四筒四筒七筒七筒七筒  リーチ  ロン四筒  ドラ四索
山にまだ残っていただけに、白鳥が放銃しなければ結果はどうなっていたかわからないが、事実上この放銃によって白鳥の戦いに幕が降りてしまった。
スタイルチェンジして臨んだ今期の白鳥の安定感は、勝又の陰に隠れながらも十分に持ち味を発揮していた。Aリーグ最年少である白鳥はこの悔しさと経験をバネに、来期の活躍に期待したいところだ。
これで事実上前田と石渡の争いになった。
石渡はオーラス、
一万二万三万五万六万七万七索八索九索二筒三筒六筒六筒  リーチ  ロン一筒  ドラ六筒
この7,700を勝又からアガリ、2着を死守。
この結果、前田+153.3P、石渡+130.7Pと22.6P差。残す半荘は後2回。
迎えた3回戦、白鳥のリーチを受けた前田が勝又の8,000に飛び込むと、東4局、親番の石渡が、
七万七万二索三索四索五索六索六索七索七索  暗カン牌の背二万 上向き二万 上向き牌の背  リーチ  ツモ八索  ドラ白
2,600オールを引きアガリ、ついに前田を交わしトータル2位に浮上する。
さらに1300オールと加点し、前田を突き離しにかかる石渡。
しかし前田も黙ってはいない。南1局に1,500をアガって迎えた南1局1本場、
五万五万六万七万八万三索四索四索五索五索六索六筒七筒  ロン五筒  ドラ五万
価値ある11,600は11,900をアガリ、ラスを回避。
最終戦を迎え、石渡+150.1P、前田+145.0Pと、僅か5.1P差で残り半荘1回を戦う事となった。
これだけポイント差が詰まれば単純明快。
ほぼ着順勝負で順位が決定することになるのだ。
前田は南家、石渡は西家でゲームが開始される。
東1局、いきなりゲームが動く。
全員に手が入り、開局から手がぶつかり合う事が予想されたが、当たり牌を掴んでしまったのは暫定2位に浮上したばかりの石渡。親の白鳥に12,000を打ち上げ万事休す。
一万一万二万二万三万三万七筒九筒西西発発発  ロン八筒  ドラ七万
この放銃で前田が有利になったかと思えば、まだ勝負はわからない。
石渡→前田の1,500の移動があった次局、今度は前田が石渡に、
三索三索五索六索七索八索八索八索四筒五筒六筒発発  リーチ  ロン発  ドラ七索
5,200は5,500の放銃でまたもや僅差に。
しかし東3局、石渡の親番で勝又が、
一筒一筒一筒三筒三筒三筒八筒八筒南南  ポン中中中  ツモ八筒  ドラ南
4,000・8,000を引きアガリ石渡が親カブリ。
そして南1局1本場、勝利を決定付けるアガリが生まれる。
一万一万一索二索二索三索三索一筒一筒一筒二筒二筒二筒  ロン一索  ドラ一索
この6,400は6,700で前田が一気に石渡を引き離した。
追いかける石渡も、南2局に1,300・2,600を引きアガリ、オーラス2,000・4,000ツモで逆転する所まで追い上げた。さらにオーラス、条件を満たすリーチを放ったものの結果は流局。勝又の優勝、前田の2位で、この2人が来期のA1リーグ昇級の切符を手に入れた。
最後まで追い上げた石渡の粘りは、さすが元A1リーガーといったところか。
来期は念願のA1復帰に向け、今期以上のパフォーマンスを期待したい。
2位昇級は前田。
後半の追い込みは見事としか言いようがない。また私個人としても同郷ということもあり、ぜひA1の舞台で戦ってみたいと思っていただけに、前田との対戦はとても楽しみでもある。
そして優勝した勝又。
安定感は群を抜いており、完全優勝といっても過言ではない力強さに、昇級一期目での鳳凰位決定戦進出も十分に可能であろう。A1でどういった戦い方をするのか、今からワクワクしているファンも多いのではないか。
9回に渡りお伝えしてきたA2リーグレポートもこれが最終回となりました。
拙い文章にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
また、文字数を大幅にオーバーしてしまっているにも関わらず校正して頂いたHP編集部の皆様にも感謝致します。
来期もどうかAリーグの戦いを『日本プロ麻雀連盟チャンネル』でご覧いただきます様、よろしくお願いいたします。皆さん、良いお年を。