プロリーグ(鳳凰戦)レポート

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第31期A1リーグ第6節レポート 荒 正義

秋は、夕暮。
これは清少納言の『枕草子』の一文で、季節と和する佇まいの刻限を記したものである。
プロリーグは昨年から連盟チャンネルで17時からの放送となった。
今は秋、だからこれは今日のボクにぴったりである。
(何かいいことがあるぞ…)
ボクは本当にそう思った。気合いも鍛錬も十分だったのだ。
ところが、卓についたらどうも雲行きが怪しいのだ。いつもなら風に乗って左から右に流れる雲が、逆に流れている。飛び込んでくるロン牌。押さえてもこれが山のようにまたやって来る。これが不調の流れ。
(お前なんか…あっちに行けよ!)だ。
不調からの脱出の方法論は、大きく分けると2つある。1つは危険を承知で勝負し、アガリを掴み取りに行く打ち方。これでうまくアガリが取れたら、脱出の糸口を早くつかむことができることもある。しかし、裏目を食らうとその先はどん底だ。
もう1つは、じっと我慢の方法。そして、風の変わり目を虎視眈々と狙うのである。しかし、その変わり目が察知できるとは限らないから意外に厄介だ。
けれど、ボクがいつも選択するのは後者の方である。
そんなこんなで、1回戦目は▲20.2Pのラスを引いた。
これが6時で、秋の夕暮。
これでは、入れた気合いと積んだ鍛錬が徒労に終わるではないか。
(ちぇっ!)である。だけどけっして、声に出してはいけない。出せばマナー違反だし、相手に自分の腹の内を読まれてなめられる。
ロン牌の襲来はなおもつづいた。しかし、2戦と3戦目は浮きの2着だった。これは、浮きはわずかだが辛抱してロン牌を止めた神からのささやかなご褒美と見たが、どうだろう。これでマイナスは半分に減らせたのは幸いである。
そして次が最終戦である。
風の(運の)変わり目がはっきりと感じたのは、東2局のときだった。
親は望月でボクは北家。
親の河が優雅だ。
一索 上向き発九万 上向き二索 上向き八索 上向き六索 上向き四万 上向き西
ドラが四索<なのに、4枚のソーズの切り出しが早すぎる。彼はアガリの早さより打点を求めるタイプだ。となれば、ドラはトイツか暗刻と見なければならない。八万に親からポンの声。そして九万が切られた。1シャンテンかテンパイかわからぬが、ボクは上家だから慎重な打牌をしなければならない。放銃がではなく、鳴かせもしない打牌という意味である。そして5巡後、彼の手から六筒が出た。
一索 上向き発九万 上向き二索 上向き八索 上向き六索 上向き四万 上向き西九万 上向き北五万 上向き一索 上向き五万 上向き六筒 上向き
(張ったな―)これがボクの直感。
この時、ボクの手がこうだった。
一万二万三万七万七万二索三索四索四筒六筒六筒七筒八筒  ドラ四索
ここに四万を引いても三筒を引いてもヤミテンの腹である。
その両方を引いてもやっぱりヤミテンである。だが、ボクの次のツモが五筒で決着。
この時、望月の手が人より一瞬速く伏せられたのをボクは見逃さなかった。
勝負手がツモのみに蹴られるのはよくある光景だが、人より早く手牌を伏せるのもまたよくある光景なのだ。
それはチャンス手が実らなかったときに見せる打ち手の所作で、実戦心理と云える。
この時ボクは確かなる手応えを感じていた。後は新しい風に乗って、攻めるだけである。
後でタイムシフト見ると望月の手はこうだった。
四索四索二筒三筒七筒七筒七筒中中中  ポン八万 上向き八万 上向き八万 上向き
これで7,700、トイトイに変化すればてっぺんは18,000の高打点が狙えたのだ。
この後、ボクのアガリは3,000・6,000のツモ。リーチを交わして5,800の出アガリと、浮きを大台に乗せることができたから気分は上々。
終わったのは、いつもより早めの夜の9時。
秋は、夕暮…とんでもない!
秋は、月明かりの見える暮夜。肴は秋刀魚の塩焼きが好いのだ。