プロリーグ(鳳凰戦) レポート

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第29期プロリーグ A2 最終節レポート

2013/01/17
執筆:前原 雄大


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「A1リーグの麻雀が良く解らない」
若手のプロからよく聞く言葉である。
その言葉の意味する処が、当事者である私には解らなかった。

この1年間、A2リーグを観戦して何となくではあるが、その言わんとすることがわかったように思える。
滝沢和典が降級した理由や、第1節レポートで記した中で、古川孝次に1票も票が入らなかったことも。

自分の手牌を中心に手を組んでいくことは麻雀の基本である。
そのことはリーグに関係ない。
ただ、上位のリーグになればなるほど、結果を残し続けるためには対応力が求められる。
何しろ相手は3人いるわけだから、常に自分の手牌を中心に戦っていけるはずもない。

滝沢の降級は対応し過ぎが敗因の1つだろうし、古川孝次に票が入らなかったのも、古川の適切すぎる対応力を軽く見ていたからだろう。
私がアンケートを施行したのは、A2リガーの意識調査と麻雀力を知りたかったためである。

最終節の採譜卓は、古川孝次、猿川真寿、黒沢咲、四柳弘樹。
トータルポイント上、首位を走る猿川を捉えることは難しい。
ならば、黒沢、四柳共に意識すべきことは、まず古川に点棒を持たせないことが大きなテーマであることは間違いない。

特に、初戦は自分が沈んでも古川だけにはプラスさせてはならない。
古川も人の子である。初戦沈めば焦りが必ず生じ、つけ入る隙も生まれる。
ところが、実戦では古川のアガリから始まってしまう。

四万五万二索二索三索四索五索五筒六筒七筒  ポン白白白  ドラ二索

9巡目とは言え、普段から仕掛けの多い古川だから、放銃した黒沢を責めるのは酷か。

黒沢
八万九万六索六索七索八索九索四筒四筒六筒七筒八筒九筒

ここからのツモ切りの六万の放銃であった。
次局は四柳の3巡目リーチ。

二万三万四万七筒八筒八筒九筒九筒発発中中中  リーチ  ドラ二筒

このリーチに真っ向から向かって行ったのが古川。
普段、放銃を嫌う古川が攻め返すからには、ここが勝負処と踏んだのであろうと観戦子は見ていた。
実は、古川は四柳より先にテンパイしていたのである。

一万一万六万七万八万一筒二筒三筒五筒六筒東東東

この時点で四筒が4枚、七筒が3枚山に眠っていた。
この四筒-七筒が全て黒沢に吸い込まれていく。四筒3枚、七筒2枚が交互に黒沢のもとへ。
残されたのは四筒-七筒共に1枚ずつである。そして、最後の四筒が四柳の元に訪れた。

「ロン7,700」

低く、そして重い古川の声が上がった。
古川の長い親が落ちたら、今度は猿川のさらに長い連荘が始まった。

結局、この半荘1時間20分ほど掛かっているが、そのほとんどが古川と猿川のための時間だった。
A2の対局前の僅かな時間に、荒、滝沢、佐々木で食事をした。

「やはり、古川さんになるんだろうな」

ボソッと呟くような滝沢の言葉が印象深い。遡れば5月、

「古川さんの精神力はすごいものがありますね。ぼくの本命は古川さんです」

瀬戸熊十段の言葉も頭をよぎった。

大切なのは眼である。
麻雀を見る眼であり、打ち手の能力を見つけ客観的に観る眼である。
これだけは誰に学ぶでもなく自分で養っていくしかない。
これも打ち手の大切な能力である。

初戦が終わり、古川+17.7P、猿川+49.2P、四柳▲30.2P、黒沢▲36.7P。

四柳、黒沢だけでなく、勝又、板川も沈み、追う側にとっては絶望的な点差がまた開き、追われる側にとっては楽な展開となった。

黒沢は好い打ち手ではあるが、惜しむらくはやはり前節の纏め方だろう。
そういうことを記せばキリがないのだが、数節前、黒沢はアクシデントで鼓膜を破り、そんな中でも大幅にプラスポイントを叩き出した。それを知っているだけに惜しまれてならない。

四柳は人として実直すぎる。
その誠実さが四柳をA2までのぼらせたのだろうが、プラスアルファの何かを身に着けるべき時期にやってきているように思えてならない。

降級争いも熾烈を極めた。
3回戦終了時
10位・遠藤啓太▲14.9P
11位・山井弘▲45.0P
12位・山田浩之▲47.8P
13位・金子貴行▲58.9P
14位・老月貴紀▲99.1P
15位・中村毅 ▲206.8P
16位・吉田直 ▲251.9P
下位4名が降級である。

3回戦が一番早く終わったのが山井、山田の卓。
この時点で、金子が+64.2Pと11.2Pの特大トップを含む2連勝を決め、降級争い、ある意味悲惨な戦いは混沌を極めていた。

「今季だけは3回戦で終わりにならないかな」

山井が近寄り冗談めいた言葉を呟く。
金子の卓が終わっていないので、ボーダーの山田との差がわずか、2.8Pだったのである。
山井の冗談が出るほどの源は、前節の山井のコメントを読んでいただきたい。
山井は遠の昔に降級の肚を括っていたし、落ちたら、そこから、また鳳凰を目指すだけのことと割り切れていたのである。結果は、山井も山田も降級を免れた。

残念ながら降級した4名の方に伝えたいことがある。

貴方達には残された時間は充分にあるということである。
鳳凰への道を1年遠回りした、くらいの気持ちを抱いて欲しい。
やるべきことをやり、苦しむことが肝要だと私は思う。
苦しい時間が人を成長させることは間違いのないことなのだから。
私を含め、荒正義なども残された時間は本当に少ない。
荒さんはA1を落ちたらリーグ戦から身を退くと公言して憚らない。
それは、一にも二にも残された時間がないからに他ならない。

 

「今、A1復帰の切符を手に入れてホッとしている。
思えば第4節で首位に立ってから、今期昇級出来なければ、この先復帰はないと自分を追い詰めていった。
その結果、いい形になったと考える。そして、自分なりの麻雀が打てたと述懐する。
私は30年以上、連盟で麻雀を打ってきたが、勝つ負けるは運が大いに左右するとつくづく思うのである。
リーグ戦(4回戦)の戦いの中で、1戦目の出だしがものすごく大切であることを最近になって感じるようになったのである。(遅い!)

最終節の組み合わせ、猿川、古川、黒沢、四柳の中で、トータルトップを取らなければ昇級出来ないと思って、猿川を抜くつもりで優勝宣言を心に誓って勝負に望んだのである。

1回戦目、東1局、親の私が黒沢から5,800点、1本場、四柳から7,700点をアガリ、おっ、ロケットスタートと思いきや、ちょっとしたミスから、その間隙をぬって、猿川に流れを持って行かれ、そこから方針を変え、黒沢、四柳を押さえ込む作戦に変わった。
3回戦目が終わり、2位の私と3、4、5着の差が、80P近く、余裕を持って、4回戦目を戦ったのである。
それにしても猿川プロは強い。私は放銃は極力避けて、廻って手作りをしていくタイプであるが、猿川プロは放銃もちゃんと計算して麻雀を打っている。私とは真逆な雀風。

今期は覚悟をしてA2で戦ってきた。2年間のA2での戦いは良い勉強になったと思います。
さて、A1への復帰と相なりましたが、望月君も残留となり、久しぶりのA1の空気を満喫させていただきます。A1への抱負を言わせてもらいますと、やはり鳳凰戦の決勝戦の切符を手に入れ、思う存分戦いたいと思います。体力的に若い人には負けるが、精神力でもって残り少ない時間をA1で昇華したい。
A1の皆様、よろしくお願いします。」

古川孝次

 

「今節が終わって、無事に終わってよかったという安心感と、来期からの期待感の両方で気持ちがいっぱいです。今節はとにかく1回戦を浮きで終わろうというのが目標でした。沈みで終わると、まだまだ大丈夫という気持ちもあるのですが、それ以上に焦りも生まれると思ったからです。直対でも上下100ポイントぐらいといわれていますが、巷の麻雀みたくトビ終了もないので、1半荘で100ポイントぐらい浮く時もなくはないので、ポイント差があっても正直有利なだけで、安心感は全くありませんでした。
今期全体の感想としては、いい部分と悪い部分がはっきり成績にでたなと思います。
いい部分は「加点」だと自分は思っています。独自の態勢の作り方がうまくいって、大トップがたくさん取れました。悪い部分は【すべての部分のメンタルの弱さ】だと思います。
今期の目標は【小手先の技術に頼らない】と決めていましたが、そう簡単に直らなく、劣勢になった時に、自滅して失点を増やしてしまった事がしばしばありました。
最後に、来期の目標は【決定戦に残ること】です。5節までは、通用するかはわかりませんが、自分らしく攻めようと思っています。」

猿川真寿

 

最後に、拙い私の文に傷ついた打ち手の方もいらっしゃるかと思います。
この場を借りて改めてお詫び申し上げると共に、読んでくださった方々に御礼申し上げる。

前原雄大