プロリーグ(鳳凰戦)レポート

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A2 第2節レポート

 
GW明けの第2節、この第2節は毎年5月第2週に行なわれる。
それが何を意味するかというと、直前に行なわれたマスターズの結果が対局の内容に少なからず影響するという事と、GW後半の各自の過ごし方が打牌に大きく表れるという事だ。
このGWを各自の成長の為に費やした選手と、連休期間に気持ちを切らしてしまった選手とでは明らかに大きな差が現れてしまうのが、この第2節の対局であることは間違いない。
そして前述のマスターズ、このA2リーグから見事決勝の舞台に進んだのが四柳と勝又。
結果は、小車の優勝で幕を閉じることになったのだが、その道中の2人の歩み方は対照的だった。
リーグ戦での好ダッシュを引き続き維持し、マスターズ本戦をトップ通過した四柳。勢いそのまま決勝まで駆け上がり、最終戦まで縺れる戦いを行ったのとは対照的に、勝又の戦いは苦しいものだった。
ポイント的に敗退の危機が迫った本戦の4、5回戦を連勝でクリアし、得意のトーナメントで勝ち進むも、決勝では本来の持ち味を出せずに終わってしまったという勝又。
優勝できなかったことは同じだが、2人の感じ方は違うだろう。
四柳は語る。
「負けたことは悔しいけれど、自分なりに納得した戦いだった。全く駄目だったということもないですし。またいつか決勝を戦えたらいいなと。」
対する勝又は、
「四柳君は強かったですよ。ベスト8で戦った時も1回戦東2局で決勝進出を決めたような感じだったから。」
本音を言わず、ノラリクラリと私の質問を上手く交わす勝又だが、
「自分は苦しいながら展開にも恵まれましたね。恵まれるように打ったって感じですかね(笑)。」
とちらりと本音を覗かせる。
マスターズ決勝に進出した2人のコメントは対照的だが、2人が充実した時を過ごしたことは間違いないようだ。今節はそんな2人の対局を中心に振り返ってみようと思う。
今節の組み合わせは、
黒沢×仁平×勝又×刀川×滝沢
右田×白鳥×遠藤×山井×金子
石渡×四柳×山田×前田×佐々木
私は勝又と四柳の戦いが同時に見える場所に陣取り、2人の動きを注目して観戦を始めた。
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最初に声を挙げたのは四柳。
東1局、開局早々の佐々木の仕掛けを受け、開いた手は、
一万二万三万六万七万八万九万九万七索八索九索七筒九筒 ツモ八筒  ドラ一索
佐々木の仕掛けによってツモったのは六万。そしてすぐに八筒ツモ。
「ツモが効いていたので感触は悪くなかったのですが…開局だし無理はしない方針でいこうかと。」
このアガリをどう感じるかは、打ち手と受け手の感覚によって異なるのだろうが、最初のアガリを手にしたというプラス思考でこの局を受け止めるのか、それともあまり良いイメージを持たずに次局以降に臨むのか、この辺りは大きな差異があると感じながらペンを走らせる。
 
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勝又の卓に目を移すと、この卓で先手を取ったのは滝沢。
二索二索三索三索四索南南  チー七筒八筒九筒  ポン東東東  ツモ一索  ドラ八筒
悲願のA1昇級に臨む滝沢の速攻が見事に決まったのだが、その滝沢を走らせまいと立ちはだかったのは勝又。
連荘を簡単に阻止する300・500で滝沢の親を落とすと、迎えた東3局勝又の親番で、
四万四万五万五万六万九万九万九万五索六索 七索東東  リーチ  ツモ三万  ドラ中
続く1本場、
四万五万一索一索一索八索八索一筒二筒二筒三筒三筒四筒  リーチ  ツモ六万  ドラ六万
そしてとどめは滝沢から、
二万二万二万四万五万二索三索四索五索六索七索東東  リーチ  ロン三万  ドラ七索
3局連続での加点。このアガリは得点以上に大きなアガリ。何故なら放銃した滝沢の手は、
五万五万六万六万七万五索六索七索七索五筒六筒七筒八筒
高め倍満の1シャンテン。この牌姿から三万を止めるのはさすがの滝沢でも厳しいか。
この局をアガリきった勝又の岐路は9巡目。
二万二万二万四万五万二索三索五索六索七索六筒六筒東  ツモ東
ターツ選択も難しく、かといってタンヤオも確定していない。せっかく重なったダブ東を離すほどの手ではない。そんな中、勝又が選んだのは打六筒。勝又に言わせれば当然の一手なのかもしれないが、こういった細かい手順を正確に判断できるのが勝又の持ち味。ダブ東に色気を感じ、ターツ選択をしていれば滝沢の勝負手が間に合った可能性も十分にあるだけに、観戦しているギャラリーも勝又がこの半荘をリードしていくのは間違いないと感じた瞬間でもあろう。
さらに勝又は繊細な一面を見せる。
東4局8巡目のテンパイは、
四万四万五万五万七万七万九万九万南南西中中  ドラ二索
このメンホン七対子はしっかりとヤミ。待ちの西は親の刀川の第一打に1枚切れということを加味してのモノなのだろう。時間は掛かったもののこれをしっかりと刀川から打ち取って、持ち点は50,000点を超える。
さらに勝又は南2局1本場、
四万五万六万白  ポン発発発  ポン八万八万八万  ポン中中中  ドラ三筒
更なる加点を目指し、積極的な動きで大物手をテンパイさせるが、ここに立ちはだかったのはここまで1人苦しい展開を強いられていた親番の仁平。
二万三万四万七万七万一筒二筒三筒四筒六筒七筒八筒九筒  ツモ五筒  ドラ三筒
価値ある3,900オールで勝又に迫ると、続く南2局2本場も、
一万一万二万二万三万五索五索五筒五筒六筒六筒白白  ツモ三万  ドラ九万
このアガリで勝又に肉薄。粘りが信条の仁平とすれば、こういった展開は願ってもない所。
しかしそれでも勝又は慌てなかった。
勝又が親で連荘。南3局4本場、滝沢のソーズ仕掛け、
牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  チー三索四索五索  ポン白白白  ドラ四万
刀川のピンズ仕掛け、
牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背  ポン南南南
この2人の仕掛けを受けて苦しいのは仁平。
二万三万二索六索七索八索九索一筒四筒五筒六筒九筒九筒発
ここから打三万。すると勝又の手が開かれる。
二万四万五万五万二索三索四索二筒三筒四筒五筒六筒七筒  ロン三万
トップを競う仁平から価値ある12,000は13,200。仁平も意地を見せ、続く南3局5本場、
二筒三筒四筒五筒六筒六筒六筒七筒八筒九筒北北  ロン北
この12,000は13,500を勝又からアガリ返すものの時既に遅し。
緒戦は勝又が制し、マスターズから続く好調を維持した形でスタートしたのだった。
別卓に目を移すと、こちらはA2復帰の前田が絶好調。相手に影をも踏ませないような会心のアガリを連発。東3局からの3局連続のアガリを含め、一気にポイントを積み上げ他家を引き離しにかかる。開局にアガった四柳と石渡は防戦一方。佐々木が何とか食い下がり前田の1人浮きを阻止するのが精一杯。
どちらの卓も好調者と不調者がはっきりと分かれる展開となったのだ。
今期のA2は15名。よって毎節全卓5人打ちで対局が行われる。
こういった開局の場合、抜け番となった選手がキーとなるケースが多い。
1回戦抜け番の黒沢と山田がどういった心境で対局を見つめていたのか?皮肉にも2人の明暗ははっきりと分かれる形となってしまった。
 
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追い風が吹いたのは黒沢。
2回戦東2局、親の黒沢は7巡目七万チー、8巡目一万ポンと積極的な仕掛け。
ここに仁平が東ポンと応戦。緒戦トップの勝又もメンホン気配の中、仁平の手牌は、
一索一索二索四索五索六索六索六索七索九索  ポン東東東  打発  ドラ一索
この発が黒沢に捕まる。仁平が対戦後、
「ここは粘らなければいけなかった。」
と悔いる一打は、黒沢にとっては幸先の良いアガリに。
二万二万四万五万六万発発  ポン一万一万一万  チー七万八万九万  ロン発  ドラ一索
続く東2局1本場、西家・滝沢が6巡目リーチ。
程なく六万をツモアガリ2,000・4,000。
三万四万五万六万七万八万九万一筒二筒三筒西西西  リーチ  ツモ六万  ドラ一筒
親の黒沢はガッカリ…と思いきや、実はこの局に苦汁を呑んだのは仁平。
滝沢のリーチの時点で、
四索五索五索九索九索九索白白発発中中中
何とメンホン四暗刻大三元の1シャンテン。
三元牌が1枚でも場に放たれれば、一気に緊張感が走るこの瞬間、2人の手を受け、悩むのは黒沢。
2シャンテンの黒沢の手には白中。ここで少考した黒沢が選んだのは打中。仁平の暗刻牌だ。
すると次巡ツモ発。この瞬間、黒沢は撤退を始める。
ここでもし黒沢が打白を選んでいた場合、仁平が白をポンして打四索。そしてツモ発
一瞬で大三元のツモアガリとなっていたのだ。この事実を目にしていたのは立会人の瀬戸熊とギャラリーのみ。黒沢はこの事実さえわからず、仁平は悔しさを隠しきれない様子。仁平以外の3者にとってプラスに働いた黒沢の打中が、今節の結果を大きく左右したことは間違いないだろう。
被害を最小限に抑える格好となった黒沢は、南3局、滝沢から価値ある7,700でトップを堅守。
一索二索三索四索五索六索七索八索一筒一筒四筒五筒六筒  リーチ  ロン九索  ドラ中
この日の黒沢は、1着4着1着4着と出入りの激しい内容ながらも、しっかりとプラスを守ったことは大きなプラス材料だろう。しかしこの卓の勝ち頭は勝又。
「今日は状態が悪いから、負けないように打っているんですよね。」
とは、3回戦時の抜け番でのコメント。その後もしっかりとポイントをまとめている所はさすがの一言だろう。今期も優勝争いに必ず食い込んでくることを予想させるような対局内容に、昇級を期待するファンも多いのではないか。
一方、別卓の緒戦の抜け番山田はというと、不運という言葉が相応しい程、苦しい戦いを強いられる1日となってしまった。この日好調の前田と、尻上がりに復調する石渡の勢いに呑み込まれるようにジリジリと追い込まれ、共に苦しい展開を強いられた四柳と共にマイナスを押し付けられた格好となってしまった。
そしてもう1つの卓から首位に立ったのは山井。
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「まだまだ2節が終わったばかりですから。」
と語るものの、その瞳の奥には強い決意が窺える。四柳が、
「同じリーグとはいえ、山井さんには本当に教わることが多くて…その気持ちに応えたいと思っています。」
と語るように、山井自身も同郷の2人で競い合いながらA1昇級を果たしたいという想いがきっと強いはずだ。
開幕早々縦長の展開になったA2リーグだが、今期は5人打ちでの対局が続くだけにどのような展開が訪れるかは想像がつかない。下位に低迷する者も、首位の山井以下はポイントが詰まっているだけに一気の浮上も考えられるところ。爆発力を持ち合わせている選手が多いだけに、来節以降も激しい戦いが繰り広げられるだろう。