プロリーグ(鳳凰戦)レポート

プロリーグ(鳳凰戦)レポート/第30期プロリーグ A2 第5節レポート

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今期からAリーグの戦いは9節36半荘となった。
例年ならこの第5節は折り返し地点。夏休みを挟み、気持ちの入れ替えを図ることが出来るのだが、今期は期の途中に折り返しを迎えることとなる。
長いリーグ戦とはいえ、気持ちに焦りを生むのも余裕を生むのもポイントであるだけに、下位に沈む者達にとっては是が非でも浮上のきっかけを掴みたいところ。またA1昇級を目論む者達にとっても、後半戦に向け更なる上積みを図りたいところだろう。
私事ではあるが、過去A2リーグで戦った2回とも、この第4節までは大きくマイナスしていた。特に、A2リーグ初挑戦となった第22期A2リーグでは、第4節までに▲107.8Pと、昇級はおろか降級筆頭候補からの大逆転昇級だったという経験があるだけに、下位に低迷する者にもまだまだチャンスが必ず訪れるはずだと信じて戦ってほしい、と願いながら今節も観戦に入った。
今節注目したのは、首位の四柳、4位の山井、6位の白鳥、10位の仁平、そして13位に低迷する滝沢の卓。
上位につける3人が如何にしてポイントを伸ばすかはもちろん、下位に苦しむ仁平と滝沢の戦いにも注目したい。
さて、開局から良く見えたのは親仁平。
変則3メンチャンも、三暗刻と三色同刻、さらには一手変わり四暗刻が見えるだけに当然のヤミを選択。
三万三万三万四万五万三筒三筒三索三索三索発発発  ドラ九索
しかしこのヤミテンは上手く滝沢が捌き事無きを得る。
親が落ちた仁平だが、またもや大物手の予感が。
東2局6巡目、
二万三万五万五万七万七万八万八万八万九索九索中中  ツモ一万  打九索  ドラ八筒
トイツ手の1シャンテンからホンイツの1シャンテンへ移行。
この局こそは…との思いが伝わってくる仁平の摸打なのだが、これが一向に動かない。
上家・白鳥の打六万にも見向きもしない仁平は、ツモ四万、ツモ九万で少考。
一万二万三万四万五万五万七万七万八万八万八万中中  ツモ九万  打中  ドラ八筒
全く動かなかったこの手も既に16巡目。
早い巡目なら打八万で問題なさそうだが、仁平は打中と清一色へ。
しかし仁平の強い気持ちは牌には届かずこの局も不発に。
こうなると仁平以外の3者にチャンスが訪れる。
南1局、ここでぶつかるのは滝沢と白鳥。
11巡目、仁平の切った白をスルーした白鳥、続く滝沢が合わせた白をポン。
この仕掛けに対し、滝沢は生牌の東を切って応戦。白鳥がポンテンを取ると、滝沢が力強く七万を引き寄せる。
三万四万五万五万六万二索三索四索五索六索七索七筒七筒  ツモ七万  ドラ七筒
このアガリの後も滝沢は攻める。
南3局2本場、親・滝沢の配牌。
一万二万四万八万九万一索三索五索二筒三筒六筒七筒九筒九筒  ドラ九万
この配牌から何を切る?
滝沢が選んだのは四万
この後。ツモ一筒、ツモ二索などの場合、打六筒とジュンチャンに移行する為の一打だろう。
しかし、この後の対応が滝沢らしい。
2巡目、ツモ六索とソーズが横に伸びると、素直に打二万
こういった丁寧な順応性が滝沢の良さであり、魅力でもある。
さらに今節は、そんな滝沢に思い切りの良さと戦う姿勢が加わっていた。
9巡目、テンパイした滝沢は即リーチ。時間は掛かったものの17巡目に七万をツモ。
八万九万四索五索六索二筒三筒四筒五筒六筒七筒九筒九筒  リーチ  ツモ七万  ドラ九万
この2,000オールで一歩抜け出す。
この日の滝沢は、今まで私が感じていた滝沢のイメージを一新させたといってもいいほど、気持ちの入った戦いぶりだった。滝沢にしては珍しく放銃はあるものの、常に卓上から気持ちを切らさず、まさに“戦っている”といった表現が相応しいと思える程の闘志をギャラリーにも伝えてくれたのだ。
それを感じさせたのが1回戦南4局1本場。
ここまで劣勢の続いていた白鳥が4巡目にリーチ。
四万五万六万一索二索二索三索三索五索六索七索四筒四筒  リーチ  ドラ五万
ここまで白鳥の点数は25,300。
高め一索の出アガリかツモアガリで30,000の原点復帰。それを見越してのリーチだったはずなのだが…
このリーチを受けた滝沢、一発で打四索。3,900は4,200の失点。
「このアガリで、自分の状態がどうなのかがよくわからなくなってしまいました。それにしても滝沢さんのこの放銃はすごいなぁって思いますよ。」
と語る白鳥。
点数の損得ではなく、滝沢の戦う姿勢を評してのコメントだけにこの言葉の持つ意味は深い。この日の滝沢のポイントは+30.5P。借金返済にはもう少しだが、この日の戦いは後半戦の巻き返しに向けての大きな足掛かりとなったに違いない。滝沢の復調こそがA2リーグ全体の盛り上がりにも繋がるだけに、ここからの活躍に期待したいところだ。
さて、今節も初戦が抜け番となった山井。
しかしこの日は受難の1日となってしまった。
2回戦、東1局2本場、親の滝沢がマンズのホンイツに向かう中、9巡目に山井らしいリーチ。
三万三万三万二索二索二索六索六索一筒二筒六筒七筒八筒  ドラ六索
ドラがトイツで受けが滝沢の色と被らないだけに、ここは当然のリーチなのだろう。
しかし、これがケチのつけ始めだった。
ヤミに構えると、数巡後ツモ二筒。タンヤオに振り替わりツモり三暗刻の二筒とドラ六索のシャンポンになるところ。皮肉にも山井のハイテイツモにはドラの六索
タラレバの話だが、手変わりを待てばヤミで4,000・8,000のアガリがあったのが見えていただけに、山井の心境はどうか。
さらに不運は続く。
東3局、滝沢の切ったドラ七万を山井はポン。数巡後、ツモってきた七万を加カンすると、親仁平からワントーン高いロンの声が。
二万三万四万五万六万三索三索五索六索七索五筒六筒七筒  ロン七万  ドラ七万
あまりにも痛すぎる18,000。
この放銃で大きいラスを引くと、続く3回戦も何もできずに連続ラス。
たった2回の半荘で▲60Pと、ここまで積み上げてきたポイントを一気に吐き出してしまう。
それでも、ここで盛り返すことができるのが山井の強み。
4回戦、開局でドラ単騎の七対子を一発で引きアガると、圧巻は南1局。
僅か5巡で白鳥からロン。その牌姿は何と、
一万一万一万四筒四筒四筒白白発発中中中  ロン白  ドラ六索
トイトイ三暗刻小三元の16,000!
これは放銃した白鳥も責められないだろう。このアガリでトップをモノにすると、最終戦も2着にまとめて負債を減らした山井。ポイントを減らし順位も下がったものの、この日の状態を考えれば上出来か。まだまだ昇級を狙える位置につけているだけに、後半戦も戦いの中心に山井がいることは間違いないだろう。
しかしこの卓での勝ち頭は仁平。
本人も認めるように細かいミスが多い1日だったが、持ち前の粘り強さを発揮して負債を完済。
トータルポイントをプラスに戻すことに成功した。
元A1リーガーで地力もあるだけに、同卓の選手は脅威を感じる存在であろう。
別卓に目を移すと、上位陣では勝又の充実ぶりが光る。
初戦で展開に恵まれずラススタートとなるものの、続く2回戦、3回戦と連勝し、今節も大きくポイントを伸ばし1人抜け出した展開に。勝又の安定感を考えると大崩れは考えにくく、このまま逃げ切ってしまう可能性も十分だ。
その煽りを受けた形となってしまったのは黒沢。
一気に降級ラインまで順位を下げてしまったが、元来爆発力を持っているだけに再浮上も十分。二階堂不在のリーグ戦で1人女流プロの重責を担っての戦いだけに、何とか浮上の糸口を掴んでもらいたい。
そして最後の卓では、昨期苦汁を呑んだ前A1の右田と石渡が揃ってポイントを伸ばした。
右田は得意の先手攻撃。リーチと仕掛けを巧みに織り交ぜ局面をリード。借金返済に成功し、上位を窺う位置まで浮上。
石渡は初戦に大きなラスを引くものの、勝又同様、2回戦、3回戦と大トップで一気に加点し、順位を昇級圏内の2位まで引き上げた。
経験値では他を圧倒する2人。
仁平を含めたA1経験者の3名は、共に鳳凰位決定戦の経験者でもある。その経験はA2リーグにおいても大きな武器となろう。この3名が後半戦のキーマンになるような気がしている。
毎月順位が入れ替わる混戦模様のA2リーグ。
このままの様子では昇降級争いは最後まで縺れる可能性が極めて高い。
現在の順位やポイントはあくまで暫定的なもの。
最終節の最終打牌まで、顔を上げることなく戦い抜いてほしい。