女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記

女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記/第11期女流桜花決定戦 初日観戦記 藤原 隆弘

女流プロだけの権威あるタイトル戦を創ろうと2003年に創設されたのがBルール(一発裏アリ)で他団体の女流プロも参加できる「プロクイーン」。
その3年後の2006年に連盟女流だけのリーグ戦として創設されたのがAルールで行われる「女流桜花」だ。
女子だけの鳳凰位戦とも言える連盟女流ナンバーワンを決めるタイトル戦である。
昨年末、第1期から参加している宮内こずえが10期目にして涙の初載冠を果たした感動的フィナーレから1年。
ひと月半前にプロクイーンでも初優勝してダブルクラウンとなったばかりの宮内が早くも最初の防衛戦を迎えた。
初防衛に成功するようなら、桜花&QUEEN[宮内時代]の到来と言っても過言ではないだろう。
この女流桜花は宮内の前の9期までに6人のチャンピォンがいるが、二階堂亜樹、魚谷侑未、吾妻さおりの3人が連覇していて連覇率五割。
さて11期目の今回はどんな結末が待つのであろうか?
 
100
宮内こずえ
18期生 五段 愛媛県出身 O型
新人時代から人気女流として活躍、テレビマッチなどでは数回優勝していたが公式戦の優勝は昨年の女流桜花が初。
それだけに人一倍強い思い入れがあったのだろう、表彰式での涙には私も思わずもらい泣きをしてしまいそうだった。
元々攻撃力は強力なものを持っていたが、欠点だった攻守のバランスが良くなり、大きなタイトルを獲った自信と余裕も加わったようだ。
プロクイーンで見せた流れを掴んだ親番での怒涛の高打点連荘は驚異の一撃必殺。新KKT(クマクマタイムならぬコズコズタイム)か!
 
100
魚谷侑未
25期生 四段 新潟県出身 B型
プロ入り3年目の第6期で初優勝し7期も連覇、トップ女流の1人として第一線で活躍中、2年ぶり5回目の決勝。
今期は開幕戦で▲56.8Pと大きく躓いたが後半戦から怒涛の追い込みで堂々の1位通過。
「去年も開幕▲60Pスタートで追い上げ届かずでしたから今年もまたこの位置からかと全く気にしませんでした。」
「昨年後半から今のままだと勝ちきれないと思い、それまではほぼ毎局イニシアチブを取ってアガリに向かっていたのを、相手に対応して受けるスタイルに変えて、バランスが良くなってきたようです。」と自信をのぞかせる。
 
100
仲田加南
21期生 五段 神奈川県出身 B型
第4期優勝、7年ぶり3回目の決勝。第21期の新人王を獲り、その2年後に女流桜花載冠、同年の王位戦決勝にも残りプロリーグもB1まで昇るなど勢いに乗っていたが、この5~6年は低迷していた。
「6年前までは一人麻雀をやっていて感性だけで打ち、要らないものを切っていただけ、勢いがあって相手のアタリ牌を掴まないだけの麻雀でしたね。」
「理を重んじて受けや押し引きを考えて打つようになってから、大負けしないけど大勝ちもできなくなってきました。」
ほぼ真逆にモデルチェンジを試みた成果がようやく出てきたのか。本来持っていた攻撃力と新たに取り入れた守備力の調和がとれてきたようで、今期の女流リーグでは終始安定した内容で開幕から決勝圏内をキープしたまま余裕の勝ち残りだった。
 
100
松岡千晶
28期生 三段 東京都出身 A型
今期初めてAリーグに昇級。1~2節とマイナスし、やはりAリーグは敷居が高いかと思われたが中盤から好調の波にのり強気の攻めでプラスポイントを積み重ねる、プレーオフでは気持ちが守りに入り少し危うかったが、貯金を活かして辛くも逃げ切り初の大舞台の椅子を掴んだ。
「相手は3人共強いので勝てなくて当たり前だから、自分なりの麻雀で当たって砕けろの気持ちで頑張りたいです。」
今の力がどこまで通用するか健闘を期待したい。
 
初日は穏やかな冬晴れの12月10日、松岡だけが緊張からかやや表情が硬いように思われたが定刻通り第1回戦開局の賽子が回された。
 
100
 
1回戦 (起家から、仲田―松岡―魚谷―宮内)(ドラ西)、
最初のリーチは西家魚谷8巡目。
四万四万四万五索五索六索六索七索七索四筒四筒六筒七筒  リーチ
いきなり2,000、3.900を引きに行くリーチはかねてからの作戦なのか迷いが無い。
親の仲田もドラ2のチャンス手だったが愚形テンパイで追いかけることはせず、粘りのテンパイ連荘。
同1本場は松岡が先制
七万八万九万六索七索八索五筒六筒六筒七筒八筒北北  ドラ七万
入り目がドラのペン七万で好感触だったから三色を待たず即リーチと出た。
ここで最初にアガリを決められていれば、初日の闘いがまた違ったものになっていたかもしれないが親の仲田が今度は即追いかけリーチ。
六万二索三索四索一筒二筒三筒四筒六筒七筒八筒西西
ここにドラ表示牌の六万ツモで不本意なテンパイになったが、あっさり西ツモ。
2本場、最初のアガリを決めた仲田が今度はダブ東暗刻の隠れ親満貫。
一万一万一索二索三索八索八索東東東  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  ドラ八索
しかし北家の宮内がタンピンツモでかわす。・宮内なら当然メンタンピン即リーチかと思ったが、仲田の本手を察知したのか慎重な入りだ。
次局も宮内がタンピンドラ1の1シャンテンから両面チーして2,000点で捌く。
東3局(ドラ七万)は親の魚谷が即リーチ。
七万八万九万五索五索六索七索四筒五筒五筒六筒六筒七筒  リーチ
3人を受けさせて終盤八索ツモの2,600オール。
魚谷連荘の1本場はまたも宮内が1,000点で捌く。
北家スタートの宮内、親番を引くまでは徹底して慎重に捌く作戦だったのか、親番を迎えた途端豹変する。
東4局宮内の親番
100
西家の松岡が西をイチ鳴きすると、仲田に絶好のカン七万が埋まり6巡目リーチ。
三万四万五万六万七万八万二索二索六索七索八索六筒七筒  リーチ  ドラ三筒
仲田もこれは手応えを感じた勝負手だった筈だが、なかなか引けずに長引いた。
宮内13巡目にテンパイ。
五万六万七万八万九万九万一索一索一索八索二筒三筒四筒  ツモ八万  ドラ三筒
八索を切って追いかけるかと思いきや「八索はかなり危ないと思った」そうで八万切りで回り八索単騎で復活。
16巡目に七万をツモリこの時は五索が通ったので、八索切りとしてフリテンにマチ変え、それは普通だがナント宮内残り2巡で追っかけた。
五万六万七万七万九万九万九万一索一索一索二筒三筒四筒  リーチ
八万をトイツで落としてしているから2枚フリテンだし、八索が通るなら既に2,600オールをアガリ損ねているし、あと2巡で流局だから追いかけリーチする人は世の中になかなか居ないと思う。
ここはどうしても本人に聞かなければなるまい。
100
八索が通りそうになったしフリテンは承知していましたが、もう四万七万のオナテンしか無いでしょう、だったらツモったときに高くなるようにと思いリーチしました。」
とのご回答。流石は勢いに乗っている現女流二冠。読みは当たっていなくとも勝負感と思い切りの良さが凄い!
一発で四万をツモって(一発役は無いが)2,600オール。このアガリを見せつけられたら相手は平常心を保てるだろうか?
特に勝負手をこんなふうに潰された仲田はどう感じたのだろうか?
100
次局も松岡が仕掛けを入れたが、宮内は早くからヤミテンで回していた。
二万二万四万四万六万六万六万二索三索四索四筒五筒六筒  ドラ二筒
松岡が動いても足止めリーチも打たずヤミテンで回す。終盤三万を引くと、暗刻の六万を切ってリーチと出る。
二万二万三万四万四万六万六万二索三索四索四筒五筒六筒
ここは流局でテンパイ連荘となったが、宮内流高打点連荘打法を垣間見た。おそらく五万引きならカン五万マチリーチとするつもりだったのだろう、太い!
東4局2本場
100
宮内に小四喜狙いの配牌、字牌を出やすくするため白から切り運良ダブ東から鳴けて風牌はほぼ山残り、更に字牌を安くするべく中から切った為に対面の松岡にポンされことごとく風牌を食い取られた。松岡も中さえポンできればのチャンス手でようやく初アガリの満貫ツモ。これで少し落ち着いた気持ちになれただろうか?
タラレバではあるが、もし宮内がギリギリまで中を絞って他に動きが無ければ小四喜のテンパイが入り、宮内のブッチギリがあったかも知れない。
この局のアガリは松岡だったが、松岡にマンズホンイツテンパイ気配があるのに、ダブ東ホンイツのテンパイを崩し、無スジのマンズを切りだして小四喜を狙った宮内はやはり太い!
100
南1局の仲田の親は北家の宮内がドラの六索を暗刻にしてリーチ(六万九万マチ)
ここに四暗刻の1シャンテンに持ち込んでいた魚谷が放銃したが、巡目が深い事、ドラが1枚も見えてない事、まだテンパイしてなくて危険牌が2枚ある事などを考えると魚谷にしては行き過ぎた感があった。
宮内初戦から1人浮きトップかと思いきや、ラス前の親で魚谷が3,900オール、次局は仲田が2,000、4,000と負けじと浮きで終わらせたのは2人共しぶとい。
1回戦成績
宮内+15.5P 仲田+5.4P 魚谷+3.2P 松岡▲24.1P
現女流二冠の宮内が貫禄のトップスタートを決めたが気になるのは初陣松岡。
1回満貫をアガれたけれど1人沈みのラススタート。まだ始まったばかりなので結果に焦ることなく落ち着いて次戦に臨んで欲しい。
 
2回戦(起親から、仲田―魚谷?松岡―宮内)
東発、西家の松岡5巡目に中暗刻の一筒四筒マチノベタンをリーチ即ツモで1,300、2,600と幸先良いスタートを切る。休憩中に少し落ち着きを取り戻したか、この半荘トップかせめてプラスで終われたら以降の善戦が期待できるかと思ったのだが、東4局に大きな落とし穴が待っていた。
東4局
100
北家の松岡配牌でドラの七筒暗刻のチャンス手、しかし南家の仲田が無駄ツモ無しの4巡目メンホン七対子、北単騎リーチ。
仲田の2巡目、
五万二筒二筒四筒四筒八筒九筒東東北白白中中
ここから九筒単騎になったときの迷彩のつもりか八筒切りとしているが、さすがに八筒がカブってのテンパイ逃しは痛すぎるので素直に五万切りとするべきだろう。
結果は同じだったが、あえて注文をつけたい。
さて、親の宮内が3巡目に北を切り単騎待ちの絶好の狙い目となった。同じ巡、西家の魚谷が以下の手牌から発を切ったのが松岡の不幸への誘い。
三万三万五万六万六万一索一索三索四索五筒六筒白発中
全て生牌で条件は同じだったが、魚谷の発切りで松岡が手牌にある北発の字牌のうち発を合わせ北が残った。もし魚谷が白中を切っていれば(仲田はポンしない)
松岡もまだ面子不十分だから、生牌の発を残して1枚切れの北から切っただろう。仲田は「直前に北が2枚切られていたら地獄待ちリーチはしませんでした。」
と言う。それでもこの局は仲田のアガリ濃厚だろうが、放銃者が違ったかも知れない。
1つダメ出しを言わせてもらえば、松岡の第一打は一筒で無く九万であるべき。結果は同じだったかもしれないが基本は基本である。
この不幸とも言える跳満放銃は、立ち直りかけた松岡のメンタルにかなりのダメージを与えたことだろう。
100
仲田アガリ親で迎えた南1局でも、仕掛けて2,000オールをツモりリードを広げるが、次局、宮内も負けじとドラ暗刻の喰いタンをツモアガる。強い!
南2局では松岡に手が入り勝負のリーチ。
六万七万四索四索五索六索七索四筒四筒五筒五筒六筒六筒  ドラ北
しかし同巡、仲田が789の喰い三色でペン七万待ちのチーテンを入れると、なんと松岡が即七万を掴まされ勝負リーチをあっさり潰される。
このような最悪の状態になったときは、細心の注意を払い二次災害、三次災害にあわないように気をつけなければならない。
南3局、親の松岡8巡目
一万二万三万四万六万八万九万九万三索四索五筒七筒九筒  ツモ五筒  ドラ四索
手なりで手を進めこの五筒をツモ切ると魚谷からロンの声
一筒二筒三筒四筒四筒五筒六筒六筒七筒八筒九筒西西
可哀想なくらいにツカンポだが、この放銃は危険意識を強めていれば防げた筈。ピンズメンホン気配の魚谷が自風の北、次に発と連続手出しで生牌を切り出してきたことや、自分の状態の悪さ、手牌の形の悪さなどを考えると、仕方ないでは無く見合わない放銃だった。
これで魚谷も浮きになり松岡は1回戦よりも大きな1人沈みの連続ラス。早くも唯一人窮地に立たされた。
2回戦成績
仲田+26.7P 魚谷+10.6P 宮内+1.6P 松岡▲39.9P
トータル成績
仲田+32.1P 宮内+17.1P 魚谷+13.8P 松岡▲64.0P
 
3回戦(起親から宮内―魚谷―松岡―仲田)
仲田がトータル首位に立ったが、まだまだ先が長くこれからの勝負。松岡は焦らずメゲず、まずはプラスの半荘を作り立ち直りのきっかけとしたい。
起親の宮内が魚谷から2,900をアガって1本場。(ドラ九筒
連荘の宮内が配牌ドラ2の2シャンテンだったがなかなか手が進まず、悪い配牌から露骨に七対子一本狙いの仲田が終盤にラス牌のドラを重ね、魚谷の現物の発単騎。
これに間に合わせるように、発を抱えていた宮内が6,400プラス1本場の放銃、安全牌を抱えての切り遅れ放銃は痛かった。
魚谷のソーズ仕掛けを警戒しすぎたか?気配を殺して魚谷の現物待ちヤミに持ち込んだ仲田の注文にハマる形となった。
東2局、魚谷の親は仲田が8巡目にピンフツモ
二索三索四索四索五索六索六索七索八索九索九索三筒四筒北  ドラ北
仲田はこの手で生牌のドラを切りテンパイとしたが、テンパイ取らずでソーズに寄せる手も勿論ありだろう。魚谷の親番は辛く打つ作戦なのか、直ぐに五筒をツモって即攻の親落とし。
東3局は親の松岡がメンタンピンツモで2,600オールのツモアガリ。
トップ目に立った次局。
五万五万六万六索二筒六筒六筒九筒九筒東白白中  ドラ中
この手から2巡目に出た1枚目の白をポン。松岡にはこういう仕掛けが多く見られるのだが、ドラが浮いているし形も悪いしせっかく調子が良くなってきたのに、七対子を見るとかドラやダブ東が重なってから仕掛けるとかのタメが欲しいと感じた。東中も切り出して1.500のテンパイには漕ぎ着けたが仲田に捌かれて親落ち。仲田が僅かにトップ目になった。
東4局、仲田の親では松岡がピンフドラ1をリーチして1,300・2,600のツモアガリ、再びトップ目に立つ。
松岡がアガれるようになってきた。この回は是非ともトップで終わりたいところだ。
南1局、では南家の魚谷絶好のリーチ。
一万二万三万四索五索六索七索七索七索八索一筒二筒三筒  ドラ一筒  リーチ
これは鉄板のアガリだろうと思ったが、仲田がタンヤオツモで魚谷ガックリ。
南2局はリーチのみで何とか連荘を果たした魚谷。1本場で勝負手が入る。
まず南家の松岡が6巡目に先制リーチ
四万五万六万五索六索七索九索九索三筒四筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ五筒
ここは松岡ヤミテンで良いかとも思うが8巡目に魚谷が追いかける。
一万一万二万二万四万四万六万六万二索二索五筒五筒北  リーチ
北は生牌だが宮内の手中に1枚あるだけで山2枚。出て親マン、ツモれば6,000オールのリーチ。
西家の仲田も松岡の切った七筒をチーしてテンパイ
七万八万九万六索六索七索八索九索四筒五筒  チー七筒 左向き八筒 上向き九筒 上向き
直ぐに魚谷が六筒を掴む、魚谷無念。
仲田はここも2件リーチを捌いて大きな有効ポイントを決めた。捌きたいときにすんなりと捌けるのは好調の証だ。
南3局は親の松岡が2本積み仲田を逆転。
3本場は仲田がリーチして流局、1人テンパイでオーラスに。
オーラスは仲田の親。南家の宮内が仲田をトップにせず、尚且つ自分が3着で終わらせるために、仲田の切った白をイチ鳴きで仕掛け一筒もチー。
六万六万一索一索八索九索七筒八筒  チー一筒 左向き二筒 上向き三筒 上向き  ポン白白白  ドラ四索
ここから六万切りとしたが、チャンタを付ける必要は無いので、ペンチャンを嫌うほうが良いだろう。
しかし、この仕掛けで親の仲田が5巡目にテンパイ
七万七万五索六索七索三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒七筒
当然リーチかと思いきやヤミテンのまま2,900の出アガリ、連盟で一番リーチが少ないと自負する私でさえリーチするし、何かもったいないような気もする。
ここは本人に聞いてみなければならない。
「前局のリーチが空振りしたのでヤミにしました。今日はリーチが空振りした後は全部ヤミテンと決めていたからです。」
そういえば1回戦でもタンピン三色のリーチが成就しなかったから、その次のピンフ高め一通のテンパイをヤミにしていた局がありましたね。
アガリ連荘の次局、トップ狙いの松岡が白をイチ鳴きして二万五万待ちテンパイ。切り出したドラの南を魚谷がポンという煮詰まった局面で今度は即リーチ
六万七万八万三筒四筒五筒五筒六筒七筒東東西西  リーチ  ドラ南
松岡から西を直撃して2連勝を決定づけた。
3回戦成績
仲田+25.8P 松岡+18.2P 宮内▲17.7P 魚谷▲26.3P
トータル成績
仲田+57.9P 宮内▲0.6P 魚谷▲12.5 松岡▲45.8P
狙い通りに宮内と魚谷を押さえ込んで連勝した仲田が、トータルで1人浮きとなり大きく抜け出した。
トップこそ逃したが、プラスの2着が取れた松岡は少し落ち着けただろう。初日最終戦となる第4回戦は是非トップを取り2日目からの反撃のきっかけとしたい。
宮内と魚谷は、仲田にこれ以上ポイントを伸ばされないよう、少しでも差を縮めて初日を終わりたいところだ。
 
4回戦(起親から 仲田―魚谷―松岡―宮内)
東1局、南家の魚谷が喰い一通ドラ1を松岡からアガって捌いたが、親の仲田と北家・宮内に大物手が入り早くも一蝕即発の気配だった。
仲田
二万三万四万六万八万七索七索二筒二筒三筒三筒四筒四筒  ドラ七索
宮内
一万一万二万三万三万七万八万九万九索九索七筒八筒九筒
魚谷のカン五索チーで、仲田から七索七万を喰い取った事がこの局の勝因となったようだ。
東2局は、仲田が松岡に中ポンドラ2の3,900を打ちラス目になる。3人共このまま仲田をラスにしておきたいのは共通意識だろう。
東3局は松岡の親番。アガリ親の勢いで連荘したいところだが西家・仲田が早くも5巡目テンパイ。
一万一万七万八万三索四索五索七索八索九索六筒七筒八筒  ドラ一万
六万が1枚切れ九万が3枚切れていて、ヤミテンなら3人とも九万を切りそうな状況だし、唯一人プラスポイントの余裕がある仲田は落ち着いてヤミテンを選択。
ソーズホンイツに向かった宮内が、4枚目の九万を掴み仲田ラス抜け。
失点を直ぐに挽回できるのも好調な証拠だ

放銃した宮内も次局の親でダブ東ポンテンの1,000オールと4人とも譲らない。
宮内連荘の1本場。宮内がカン八索を鳴いて三色完成のチーテンを入れると、西家・魚谷がリーチ。
七万八万九万五索六索一筒一筒三筒四筒五筒五筒六筒七筒  リーチ  ドラ八万
魚谷はヤミテンで捌くつもりなど無く、仲田とのポイントを詰めに向かう。
しかしここも11巡目からヤミテンしていた仲田がピンフツモ。
今日の仲田は要所での捌きがよく決まる。
南1局となり仲田の親番。
北家の宮内が切った第一打の一万を南家・魚谷がポン。
一万一万四万五万八万八万九万六索七索七索南白中  ドラ三万
ここから仕掛けて強引にマンズに寄せに行く。チャンス手をことごとく仲田に潰されてきたが何とか流れを変えよう、仲田の親にもプレッシャーをかけようという非常手段に出たようだ。
この動きで絶好のペン七筒が入った宮内が4巡目リーチ。
三万四万五万八索八索二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  リーチ
是非とも一筒をツモって仲田に跳満の親カブリをさせたい。
しかし、魚谷もあの仕掛けから高目満貫のテンパイに漕ぎ着けた。
四万五万六万八万八万南南  ポン白白白  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き
こうなると魚谷もオリられない。一筒が2枚、南が1枚山にいたのだが、魚谷が安目四筒を掴んで3,900放銃、
追いかける2人の狙いとは裏腹に仲田無傷の親落ち、展開にも恵まれて今日は仲田の理想通りに初日が終わるんだなと思われた。
ところがどっこい、このあと初日最後の親番を迎えた魚谷が根性の大爆発を魅せるのだ。
南2局
1人沈みのラス目で迎えた親番で何とかドラの白を重ねた魚谷だったが、南家の松岡がオタ風の北をイチ鳴き、
一索一索三索四索五索八索八索東南南北北発  ドラ白
この形からのイチ鳴き、確かに面子は足りているかもしれないが、本気でアガリたいのだったら1枚はスルーしてダブ南から鳴くとか、七対子に行くとかもっと努力と工夫が欲しい。
配牌からドラ対子の仲田が、松岡の仕掛けに対して普通ならギリギリまで絞るはずの南をこの形から切り出した。
三万五万六万七万八万五索五索六索七索八索五筒南白白
後で仲田に聞いてみた。
「私にドラの白がトイツなのでわりと切りやすかったし、松岡さんにポンされても振り込まなければツモられてもいいし、鳴かれて困るのは魚谷さんの方、親が落ちてくれれば良いと思い先に切りました。」
やはり私も感じた通り戦略での鳴かせだった。これだけリードしていても仲田は魚谷の親を最も警戒しているようだ。
勿論松岡満貫テンパイ(ただ両方ともモチモチで純カラ)
一索一索三索四索五索八索八索  ポン南南南  ポン北北北
しかし強者魚谷は仲田の思惑に嵌らなかった。むしろハートに火が付いたか、仲田の狙い通りにはさせないとスピードを合わせに無理を承知でドラの白の後ズケで仕掛ける。
一索一索六索七索八索白白  ポン三筒 上向き三筒 上向き三筒 上向き  ポン九万 上向き九万 上向き九万 上向き
この親は簡単には落とさないぞと言う気迫が伝ってくる。
終盤には松岡に超危険な三索も通して、テンパイ連荘を果たした魚谷の強い思いが遂に確変を引き当てた。
1本場では5巡目にピンフ3面張リーチ。
五万六万七万七索八索九索三筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ
全員オリてアタリ牌は全て他3人の手の中に、1人テンパイの連荘でも良しだが、手詰まりの松岡がワンチャンスでの三筒トイツに手をかけて放銃。
このオリ打ちで立ち直りかけた気持ちが揺れ態勢が壊れたか?
次局2本場、失点を取り返したい松岡の手牌が目一杯の1シャンテンになった。
三万五万五万六万六万七万七万八万五索六索四筒五筒六筒  ドラ二筒
ここで魚谷の親リーチ。
捨牌が
発九索 上向き北九万 上向き一索 上向き六索 上向き
一筒 上向き八筒 上向き中七筒 左向き
手牌が
三万四万五万六万七万八万一索二索三索二筒二筒七筒八筒  リーチ
一発で九筒を掴んだ松岡にはこれを止めようが無かった。
トップまで抜けた魚谷続く3本場でも9巡目リーチ。
六万七万八万一索二索三索六索七索八索二筒三筒六筒六筒  ドラ六筒
一筒ツモで4.000オールの3本場
4本場では仲田が先制リーチ。
三万三万六万七万四索四索五索五索六索六索五筒六筒七筒  リーチ  ドラ二万
しかし魚谷も直前にドラ2の七対子をテンパイしていた。
二万二万五万五万六万六万七万五索五索南南白白
七万単騎に好感触があったのか、八索八筒と平然と押して見事七万ツモ4,000オールの4本場、強い!
魚谷驚異の猛ラッシュで親満級の3連発。初日最後の親番1回で、3回戦までに仲田につけられていた70ポイント以上の差をあと数ポイント差まで縮めた。
5本場は、仲田が2フーロの喰いタンでようやく魚谷の親を落とし、松岡の親はあっさり流れてオーラスは宮内の親。
宮内も連荘し初日をトータルをプラスにして帰りたいがテンパイしないうちに魚谷から12巡目リーチ。
五万五万五万九万九万一筒二筒二筒三筒三筒四筒五筒五筒  ドラ三筒
捨牌に六万が有り、スジの九万が狙いのリーチ。
宮内にようやくテンパイが入る。
六万六万七万九万六索七索八索四筒六筒七筒七筒八筒八筒九筒
宮内の目からは六万が4枚見えていて八万九万は場に出て無い。強気に四筒切りの追いかけリーチをしていれば残り山には魚谷の待ち五筒が1枚残るだけだったから、もしかしたらテンパイ連荘ができたかも知れない。
しかし、ここで宮内は少考の後、三筒五筒引きのリーチか四筒を重ねての678メンピン三色の好形高打点を狙ってテンパイ取らずの九万切りを選択し、魚谷への5,200放銃で初日が終了した。
難しい選択であり、結果は裏目と出たが仕方ないと気持ちを切り替えるしかないだろう。
4回戦成績
魚谷+56.4P 仲田▲6.3P 宮内▲15.7P 松岡▲34.4P
初日トータル成績
仲田+51.6P 魚谷+43.9P 宮内▲15.7P 松岡▲80,2P
初日は仲田が独走する気配だったが、魚谷が最後に強烈な追い上げを見せてくれた。初戦トップスタートの女流二冠宮内としては、トータルマイナスは不本意だろうが、今日魚谷が見せたような高打点連荘は宮内の十八番、3番手でも余裕を見せる宮内にはまだまだ後半の逆転に期待が持てる。
心配なのは松岡だ。元々他3人にくらべて実績も経験も足りず、若さと勢いと強い気持ちでぶつからねば好戦が難しいところに、初日から3ラスと打たれ過ぎた。
今日の結果を気にしないで、欲を出さず怖がらず挑戦者として勉強させてもらう気持ちで2日目からまた元気に闘って欲しい。
そうすることが、決定戦全体を素晴らしい闘いにすることになると思うから。