女流プロリーグ(女流桜花) 決勝観戦記

第13期女流桜花決定戦 初日観戦記 紺野 真太郎

100

 

王位戦は魚谷侑未が優勝、日本オープン、女流日本シリーズに続き3冠で幕を閉じた。そして人々の興味は「女流桜花で4冠なるか」に移っていた。
魚谷が女流桜花を制すと、仲田加南と並ぶ3度目の戴冠となる。そちらの方にも注目である。

最強とも言える挑戦者を迎える仲田はこれを制すれば「3連覇」となる。こちらも魚谷含む3名と並んでいる連覇記録の更新となる。

予選1位通過を決めたのは石田亜沙己であった。前年に続く決勝進出で、周りも本人も「今年こそ」の思いは強かろう。
そんな石田であったが、この決勝の舞台に戻って来る事は、決して簡単な事では無かった。プレーオフ前の最終節南3局まで敗退(残留)のピンチを迎えていた。そこで、

九万九万九筒九筒九筒東東  ポン一万 上向き一万 上向き一万 上向き  ポン南南南  ツモ九万  ドラ九索

この珍しい混老頭を決めて、プレーオフに滑り込み、プレーオフでは、その余勢を駆って1位通過の位置まで駆け抜けた。ギリギリまで追い込まれるということを経験した石田。決勝ではそれが生きることになるであろう。

今期、第1節、首位スタートを決めたのは中野妙子であった。そのポイント80.0P。Aリーグ1年目の中野にとって、ある意味重しになっていたのかもしれない。決勝を目指し戦う中で、周りとの経験値の差は嫌と言うほど感じたであろう。一時はポイントを減らし、まさかの降級がちらついた事もあったであろうが、中野は踏みとどまり、決勝の椅子を掴み取った。

各自の思いを卓に乗せ、長いようで短い半荘12回が幕を開けた。

 

 

1回戦、起家から 仲田、中野、魚谷、石田

東1局、始まりは九種九牌であった。途中流局が起こると、次の山がセットされるまで、しばしの静寂が訪れる。経験豊富な3者にとってはなんていう事も無い時間かも知れないが、中野にとっては、落ち着くことが出来る時間を得れたのは大きかったかもしれない。

東1局1本場、魚谷が淀みのない手順で先制リーチ。

六万七万八万九万九万九万一索二索三索七筒八筒白白  ドラ七索

白は1枚切れ、八筒は魚谷から全て見えており、九筒は1枚切れ。ドラが見えていない事が唯一の不安点であるが、完璧を求めるとどこか綻びが出るもの。親の仲田の機先を制するには十分である。

一方の仲田。親番でドラ2の好手牌。

二万三万三万七万八万七索七索二筒二筒三筒四筒五筒七筒  ツモ八万

こちらの持つ仲田のイメージではノータイムで八万をツモ切る・・はずだが、仲田の選択は現物の打二万。「私守備型なんで・・」そう聞くたびに「またまたw」と思っていたが、これを見るとなるほどと思わされる。決勝戦は12回戦制。仲田からすれば、短いようで長いということなのだろう。

この局は魚谷の700・1,300で決着。4つ目の頂へ第1歩を刻んだ。

東2局、魚谷がここも先手で仕掛けていき、13巡目にこのテンパイ。

一索二索三索四索四索四索五索五索白白  チー七索 左向き八索 上向き九索 上向き  ドラ二索

テンパイ打牌は一索、それまで1枚もソーズを切っておらず、ソーズが余った形。
それを受けて親の中野もテンパイ。

二万三万七万七万二索六索七索三筒四筒四筒五筒五筒六筒  ツモ五索

二索切ればテンパイ。それは誰でも解る。しかし、その二索はドラ。魚谷は下家で既に余っている。普段の中野であれば、いや、中野で無くても、七万辺りに手を懸けそうな場面。それでも中野は二索を河に置いた。技術で敵わなくとも、心で負けないように。

中野の覚悟が実る時が来た。南1局、東発を2鳴きし、1シャンテン。

四索六索七索八索八索八索七筒  ポン発発発  ポン東東東  ドラ四索

七筒はテンパイ取らずからのトイツ落としの途中の牌。親の仲田の手番。様子を伺うかのように三索を置く。

一索一索六索七索一筒二筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  打三索  ドラ四索

上家であり、直前の七筒手出しがテンパイしていないように見える。この三索が動かれるようであればヤミテン続行で守備的に、しかし、動かれなければ・・

「リーチ」

仲田は次巡の西をツモ切り、リーチを敢行。自分の手は打点があり、相手はまだ(多分)1シャンテン。待ちは色が被っている。仲田とすれば、勝負に値する状況が出来上がったという事であろう。
中野も引かない。七筒一筒九万と打ち出す。その全ては無スジ。そして打九万の時に八索を引き入れ追いついた。

四索六索七索八索八索八索八索  ポン発発発  ポン東東東  ドラ四索

追いついたと言っても、他家からは出るはずもない、ドラ単騎。仲田の待ちは分からないが、ここで被せてくる以上、少なくとも好形。もしかしたら、ドラトイツ以上かも・・
しかし、そんな負の思考はすぐに消え去った。仲田の次のツモはドラの、そして、中野の待ち牌である、四索であった。

これが勢いを生むきっかけとなったか、次の南2局、親番でこの手に仕上げる。

一万二万三万四万五万六万七万八万九万七索九索九索九索  ドラ七索

八索でも7,700あるが、果敢にリーチ。6,000オールを引きに行く。魚谷から追いかけリーチを受けるも七索をツモり6,000オール。大きく抜け出した。

次局の1本場、今度はドラ3枚の1シャンテン。

二万四万九万九万九万三索四索三筒八筒八筒九筒九筒九筒  ツモ四索  ドラ九万

ここで、中野は、三万が2枚切れな事、下家の魚谷がソーズのホンイツ気配であることを受けて、丁寧にマンズのカンチャンを払っていく。そして残した三筒が生きる。9巡目にこのテンパイ。

九万九万九万三索四索四索三筒四筒八筒八筒九筒九筒九筒  ツモ五索

手応えしか感じないリーチを打つ。これには他家、成すすべなく4,000は4,100オール。まだまだ先は長い。が、「もしかしたら・・」と思わせるには十分のアガリであった。

 

100

 

1回戦終了
中野+45.2P 魚谷▲3.8P 石田▲13.9P 仲田▲27.5P

 

 

2回戦 起家から 石田、中野、仲田、魚谷

新しい半荘になっても中野の勢いは衰えないのか、10巡目にこのテンパイ。

三万三万五万五万六万六万六万南南南  ポン発発発  ドラ三万

マンズのホンイツ濃厚な河だが、ここに魚谷、親の石田が決死のテンパイ打牌。

魚谷
八万八万九万六索六索一筒一筒三筒七筒七筒九筒九筒北  ツモ北  打九万

石田
四万六万七万七万二索三索四索五索六索七索二筒三筒四筒  ツモ二万  打六万

魚谷は石田の打六万も見て次の四万で打三筒とするが、(三筒は石田の現物)石田が三万をツモり、得意の手役を決めた。4,000オール。まだ2回戦とはいえ、これ以上離される訳にはいかない。

東2局2本場、ここまで、なかなか打点のあるテンパイが組めなかった魚谷にようやく手が入る。

二万二万七万七万九索九索一筒一筒二筒二筒九筒南南  ドラ九筒

欲を言えば、九筒を重ねて、山にあると読んでいた、二万発で待ちたいとこであったが、贅沢は言っていられない。ドラ単騎でリーチ。仲田、石田はオリ気配。親の中野が追いつく。

四万五万六万六万六万六索七索八索三筒三筒四筒五筒六筒

無スジを打たずに追いつけた事と、魚谷の河に三万があるので、ヤミテンを選択。六筒三筒を入れ替え、次に掴んだのが、魚谷の当り牌である、ドラの九筒

魚谷のリーチまでの捨て牌は

三万 上向き一索 上向き一万 上向き西七筒 上向き発

こうで一万以外は手出し。特徴が無いと言えば無いが、第一打の三万と、西は2枚切れたとこで打たれた牌で、発は1枚切れ。ここに少しの違和感。とは言え、こちらは卓外から冷静に見ているわけで、戦っている最中に気づけるかはまた別。中野が六筒と入れ替えた三筒は無スジであり、ここから先の脇からのアガリが期待しにくくなってしまった事を考えると、この九筒はいかにも間が悪い。止めるならここだが・・

それでも中野は九筒を打ち出した。先ほどの打二索もそうであるが、これが中野の覚悟であろう。

魚谷が満貫を決めれば、仲田も黙っていられない。東4局1本場、魚谷のリーチ宣言牌であるドラの七索を仕掛けテンパイ。

二索三索三索四索四索東東  ポン七索 上向き七索 上向き七索 上向き  暗カン牌の背北北牌の背  ドラ七索

魚谷は

三万三万八万八万三索三索八索八索七筒七筒八筒西西

ここから打七索のリーチ。ここも山読みを入れての八筒待ち。ドラ単騎で流局、親連荘を待つ手もあったが、3,200オールを引きに行った。

結果は仲田の3,000・6,000。ある意味、起こしてしまったのかもしれない。ただ、魚谷は近年の対局において、「安全に勝てる勝負など存在しない」と考えているように見えるフシもあり、この結果を受け入れる事は難しいことではないであろう。

南4局、4,000オールスタートの石田だったが、オーラスを迎えて29,600持ちと僅かに原点を割る展開になってしまった。手数の少なさを高打点の手役でカバーするのが持ち味だが、ここまでは決まり手が少なく苦しいか。オーラス5,200をアガれ、浮くことが出来た事で好転することは出来るだろうか。

 

100

 

2回戦終了
仲田+26.8P 石田+8.8P 魚谷▲4.1P 中野▲31.5P

トータル
中野+13.7P 仲田▲0.7P 石田▲5.1P 魚谷▲7.9P

 

 

3回戦 起家から 魚谷、中野、石田、仲田

1回戦の中野トップ、仲田ラスの形が、2回戦は仲田トップ、中野ラスで、得点の上下差は一気に縮まった。

東2局8巡目、石田の手牌

二万三万四万二索三索四索五索六索二筒二筒四筒西西  ツモ七索  ドラ二筒

三色テンパイ。石田なら二筒切りヤミテンか。しかし、下家の仲田は既に2フーロ。更には直前に三筒が2枚立て続けに切られたばかり。さすがにこれはと、四筒切りリーチとする。西が1枚切れなのもそうさせた材料であろう。懸命な選択と思う。しかし、次のツモに三筒があるとはなんとも牌山の悪戯か。結果は5,200をアガるのだが、石田の心に雲がかかるに十分であったように思う。

比較的大きな動きの無い半荘であったが、得点的に決めてとなったのは南1局の仲田のアガリか。巡目が深くなりつつあった11巡目にテンパイ。

四万五万五万一索一索二索三索四索五索六索六筒七筒八筒  ツモ二索  ドラ一索

想定ではマンズを埋めての3面張リーチであったろうが、仲田から二索が4枚見え、五索が3枚見えであったことが、テンパイを取らせた理由であろう。打四万とし、ペン三索のテンパイとした。

三索が顔を見せぬまま13巡目、手牌に変化が訪れる。ドラの一索が飛び込んできた。こうなれば迷う事は何もない。ただリーチを打つだけである。親の魚谷は1シャンテンで粘っていたが、それでも仲田に届くことは無く、仲田の2,000・4,000が決まった。

南4局、魚谷が白を1鳴き。

三万二索四索四索五索二筒三筒六筒七筒南南白白  ドラ七筒

この時魚谷は18,800持ち。確かに仕掛けて行っても、7,700くらいは狙える。ただメンゼンでならば、薄いが跳満まで見えない訳ではない。
ではなぜ?答えは親の仲田にあった。仲田は早々と3巡目に八筒八筒 左向き七筒 上向き九筒 上向きでチー。ホンイツ模様の捨て牌を作り出していた。

ここから先、ファン牌は場に打たれづらくなることが想像でき、自分の武器が潰される。一方の仲田は場のスピードを落として時間を作り、テンパイ、アガリを狙っていける。それならば、自分のスピードを上げて、仲田の望む、遅い展開にはさせないという意思の表れであろう。

このシリーズ、仲田と魚谷はお互いを意識したような仕掛けをぶつけにいくようなことが多かったと思う。ここは魚谷が500・1,000と仲田の親を潰し、ラスを受け入れるアガリを決めた。

 

100

 

3回戦終了
仲田+24.0P 中野▲2.2P 石田▲4.6P 魚谷▲17.2P

トータル
仲田+23.3P 中野+11.5P 石田▲9.7P 魚谷▲25.1P

 

 

4回戦 起家から 石田、中野、仲田、魚谷

東1局、起家石田の配牌。

四万八万二索三索三索三索六索六索七索七索一筒三筒九筒白  ドラ七筒

この配牌を得た石田は何を思ったのだろうか。ホンイツ、チンイツ、もしかして四暗刻、悪くてもタンヤオ・・それが5巡目には仲田、魚谷の仕掛け、中野のリーチに囲まれてしまった。
それでも丁寧に打ちまわして11巡目にはカン三万で追いつく。しかし、アガリに結びつく前に八筒を掴まされる。

二万四万四万五万六万三索三索三索六索六索二筒三筒四筒  ツモ八筒

東1局でもあり押してもいいように思えた。その反面、ドラは見えてなく、放銃につながった場合は5,200や7,700と言われても不思議はない。

石田は全員の現物である二筒を抜いた。このままノーテンで終われば受け入れる準備も出来ていたであろう。だが、次のツモが三万であったこと、打てる牌が無くなってしまったことまでは想定出来ていただろうか。
三万をツモった手に落胆が見えたのは私だけであろうか。九索が通って五索が3枚見えのワンチャンス・・石田が必死に導き出した打牌であろう。祈りにも近い気持ちで打ち出した六索に声を掛けたのは中野であった。

四万五万六万四索五索五筒六筒七筒七筒八筒九筒東東  リーチ  ロン六索

5,200。だが石田にとっては失った得点以上のダメージであったであろう。

東2局、魚谷が放ったドラの東を石田が仕掛けた。

六万七万八万四索五索六索九索九索四筒六筒  ポン東東東  ドラ東

ポンテンの7,700。これを決めれば、さっきの失点は取り返せる。アガれれば・・
ドラを打ち出した魚谷は次巡、四万手出しでリーチ。石田が魚谷の現物七索をツモ切ると親の中野が2フーロ目。こちらはソーズのホンイツ。
二索を掴む石田。リーチにも親にも通っていない・・手が止まる石田。本能では切りたくない。でも・・
身体が拒否していても頭が打とうとする。だから、頭で通る理由を探す。四索が目に入る。1、2、3・・またワンチャンス。意を決して放った二索を魚谷は捉えた。

二万三万四万三索四索二筒三筒四筒五筒五筒五筒発発  リーチ  ロン二索  ドラ東

「そうだよね・・」石田がこう思っていたかはわからないが、石田の目は手役よりも暗刻の五筒に向けられていたのではないだろうか。

このアガリをきっかけに仲田を追いかけて行きたい魚谷。東4局中野から3,900。

六万七万七万八万九万四筒五筒六筒七筒七筒八筒八筒八筒  リーチ  ロン五万  ドラ五筒

さあ、ここからという時だが、1本場、ここは中野が3,900のお返し。

五索六索七索一筒一筒六筒七筒  チー七索 左向き八索 上向き九索 上向き  ポン東東東  ドラ一筒

調子に乗り切れない。南1局、仲田は魚谷が仕掛けを入れているところに、自風の西を鳴いて応戦。

三索五索七筒七筒七筒七筒八筒西西白発中中  ポン西  打発  ドラ五索

この手が伸びて

五索五索七筒七筒七筒中中  チー六筒 左向き七筒 上向き八筒 上向き  ポン西西西  ドラ五索

このテンパイ。魚谷にもテンパイが入っていた。

五索六索七索四筒四筒四筒南南北北  チー二万 左向き三万 上向き四万 上向き  ドラ五索

魚谷は北家、ダブルバックの形。ここに中を掴み、仲田に8,000の放銃。魚谷もこの放銃は見直して悔いていた。

南4局、魚谷の親には徹底して足を使う仲田。2巡目に

一万二万二万七万九万九索一筒東東西北中中  ドラ六索

ここから三万をチー。この仕掛けが噛み合いアガリを生む。

七万八万九万東東西西  ポン中中中  チー三万 左向き一万 上向き二万 上向き  ツモ東

2,000・4,000。仲田3連勝。ラススタートからも貫禄のトータルトップで初日を締めた。

 

100

 

4回戦終了
仲田+28.1P 中野+12.6P 石田▲15.0P 魚谷▲25.7P

トータル
仲田+51.4P 中野+24.1P 石田▲24.7P 魚谷▲50.8P

データからは初日マイナスした者の巻き返しは難しいという。だが、諦めない限り、その確率がゼロになることは無い。仲田の独走か、中野の追撃か、石田の反撃か、魚谷の爆発か。思い思いの1週間を過ごし、またここに戻ってくることになる。