麻雀マスターズ 決勝観戦記

麻雀マスターズ 決勝観戦記/第23期マスターズ 決勝観戦記後編~前原 雄大~

gpmax2012
紺野 真太郎

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中西 正行さん

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西島 一彦

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和久津 晶

4回戦
東1局、和久津より12巡目にリーチが入る。
受け気味に構えながらも、もう後がない親番の紺野
四万五万六万二索三索三索四索六索七索八索四筒五筒七筒  ツモ三筒  ドラ五索
ここからの、打三索の放銃は責められないところだろう。
裏ドラが五索で、2枚乗せるところに和久津の好調さが覗える。
東3局3本場、7巡目に親番の中西さんにテンパイが入るもヤミテン。
八万八万八万七索八索九索一筒一筒一筒二筒三筒四筒六筒  ドラ南
トータルトップから来るプレッシャーだろうか。
このヤミテンは、すでに中西さん自身がドラである南を打っている以上、リーチを打って逆に相手にプレッシャーをかけて欲しかった。
ヤミテンに構えること4巡後に、ツモ六万でリーチを打つも、同巡、和久津にもテンパイが入り、押し返され、和久津にツモアガリを許してしまった。
四万四万四索五索六索三筒四筒五筒五筒五筒六筒七筒八筒  ツモ四万
和久津もリーチを打たず、ヤミテンに構え押し通したのは、ここは打点ではなくアガリを求めた局面と捉えたものだろう。

 
南2局1本場、親番である西島の、全くテンパイ気配を出さない処は評価に値する。
西島の「ロン」の声に「あっ」小さな声を上げる和久津。
これでまた展開が分からなくなってきた。
続く2本場、親の西島より7巡目にリーチが入り軽々とツモりアガる。
三万四万五万七万八万九万三索四索五索五筒六筒八筒八筒  リーチ  ツモ七筒  ドラ五筒  裏西
「怒涛の勢いを感じる」と私のノートに記されている。
南2局3本場、フリテンながらも粘り込み連荘はさらに続く。

 
南2局4本場、和久津のリーチを受け追いリーチを打つ西島。
和久津
一万二万三万七万八万三索三索二筒三筒四筒五筒六筒七筒  リーチ
西島
四万五万六万七万七索七索七索二筒三筒三筒四筒四筒五筒  リーチ
西島は8枚目の七万を、七索の暗槓後、嶺上から引きアガる。
これだから勢いはこわい。
この長い西島の親番を、紺野がメンゼンツモのみの300・500は800・1,000で落とす。
南3局、中西さんが4巡目にリーチを打つも、その捨牌が凝っている。
これも中西さんのバランスの引き出しのひとつということなのだろう。

 
放銃して、頭を抱え込む様子を見せた西島の姿は珍しい。
続く1本場は、その西島がドラであるカン六筒待ちのリーチを打つも、和久津に追いかけられ1,300の放銃。
これは西島が痛いというよりも、連荘を狙う中西さんにとって痛い一打なった。
中西さんの親も落ち、そして迎えたオーラス。

 
紺野から明らかな一色手のリーチが入る。
そこに向かい、親の和久津はドラの一索を打ち九筒をも打ち抜き、ラス牌の三筒でアガリ切る。
毎度思うことだが、勝負強いの一言につきる。
南4局1本場、チーテンを取る和久津。
二万二万五万六万二索三索四索二筒三筒四筒  チー五筒 左向き四筒 上向き六筒 上向き  ドラ二万
そして、ドラの二万をツモり少考の末打六万
これには少し驚かされた。

 
放銃したのは中西さんだが、唖然とした表情で最終形を眺める西島。
何を思っていたのだろうか?
対照的に「はい」と言って点棒を支払う中西さんが清々しく映った。
南4局2本場、和久津が最後のツモで、西島へのロン牌が炙り出されないツモ二索でテンパイを維持する。
西島
三万四万四索五索六索六索六索三筒四筒四筒五筒五筒六筒
和久津
二万二万三万七万七万七万二索二索四索六索  ポン八万 上向き八万 上向き八万 上向き  ツモ二索  ドラ七万
南4局3本場を、和久津は9種9牌で流す。
南4局4本場、和久津はリーチツモの1,000は1,400オールのツモアガリ。
これで西島との点差はわずか200点である。
西島にヤミテンの7,700を放銃したときには、とても予想しえなかった肉薄ぶりである。
5本場を、中西さんがリーチツモドラ1の1,300・2,600は1,800・3,100のツモアガリで終わらせるとともに、これで最終戦3者がトップを取ったものが優勝という形で第4戦を終えた。
4回戦成績
西島一彦+34.3P  和久津晶+22.8P  中西正行▲13.8P  紺野真太郎▲43.3P
4回戦終了時
和久津晶+45.2P  西島一彦+42.7P  中西正行+26.9P  紺野真太郎▲117.8P(供託+3.0P)
 
 
最終戦5回戦
東1局、12巡目に親の西島にテンパイが入る。

 
四万四万五万五万六万六万七万四索四索七索七索九索九索  ドラ四索
同巡に、中西さんもテンパイが入り即リーチが入る。
二万二万四万五万六万一索二索三索五索六索白白白  リーチ
最初の勝負を制したのは、親の西島。
ラス牌の七万を引き、4,000オールのツモアガリである。
東1局1本場、西島11巡目にテンパイが入る。
一索三索五索六索七索九索九索一筒二筒三筒九筒九筒九筒  ドラ四万
ここを西島がヤミテンに構えたのだが、私には意外に映った。
結果論と言われればそれまでであるが、今までの西島の戦いぶりからすればリーチが自然に思えた。
いずれにしても、一発ツモのアガリであったことは紛れもない事実ではある。
南2局、親番の中西さんに、9巡目にドラ入り七対子のテンパイが入る。
三万三万五万五万九万九万三索三索九索九索三筒四筒四筒  ドラ九万
このリーチは山読みにかけた中西さんの渾身のリーチである。
確かに中西さんの読み通り、三筒は山に2枚生きていた。
しかし結果は流局であった。
南2局1本場、和久津がドラ表示牌の白を2巡目に仕掛け、5巡目にテンパイとする。
六万六万六万七万四索五索六索発  チー二筒 左向き三筒 上向き四筒 上向き  ポン白白白  ドラ発
和久津は打発(ドラ)を選択した。
ドラ単騎に受ける手もあったかもしれないが、中西さんとの点差11,000点を捲り切るには、いずれにしても和久津自身の親番勝負と考えたのだろう。
結果は、西島の放銃で終局し、これにより中西さんの親番が落ち、実質、西島、和久津の一騎打ちの構図となった。
南3局も、追いかける和久津が12巡目にリーチを打ち、安目の七筒をツモアガる。
四万四万一筒二筒三筒五筒六筒七筒八筒九筒東東東  リーチ  ツモ七筒  ドラ三索七索  裏三万白
迎えたオーラス、祈るように配牌を取る親番の和久津の表情が印象的だった。
微妙だったのが、9巡目のツモ一索での打八索

 
ここは打四万の選択肢もあったかと思う。
確かに場況はソーズが高い。しかし、ここに至っては、場況はほとんど意味をなさない。
和久津が八索に手がかかった理由は、これも推察に過ぎないが、東のポンテンも視野に入れたものも思われる。
11巡目に訪れた七索を、そっとツモ切ると西島がチーテンを入れた。
七万八万九万三索四索一筒一筒七筒八筒九筒  チー七索 左向き八索 上向き九索 上向き
このチーで、本来の和久津の要めの牌である一索が、西島よりツモ切られる。
和久津は、この一索をいかなる思いで見つめていたのであろうか。
同巡、紺野が一索を合わせ打つ。14巡目、和久津待望のツモ一索
「リーチ」と張りのある声でテンパイ宣言をする和久津。
宣言牌は打四万
一瞬抜き間違いかと正直思った。
六万は4枚飛び、三万は1枚場面に飛んでいる。
ここは枚数ということではなく、和久津の感性が選ばせた待ち取りだろう。
そして三万のツモアガリ。
四万五万一索一索二索二索三索三索五索六索七索東東  リーチ  ツモ三万  ドラ南  裏三索
「ツモ4,000オール」
なんと裏ドラが2枚乗った。否、和久津が乗せた。
南4局1本場、これで立場が逆転した。
しかも、西島からすれば満貫ツモ、跳満出アガリ条件となってしまった。
西島は、配牌8枚のソーズを抱え真っ直ぐに染め上げる。
異変が起きたのは6巡目のツモ三索
この三索を和久津はノータイムでツモ切った。

 
ここはマンズに手をかけて欲しかった。
西島がこの三索を仕掛け、一気呵成のテンパイから、ツモアガリまでわずか5巡の仕上がりで、西島がマスターズの幕を下ろした。

 
最終戦成績
西島一彦+28.0P  和久津晶+17.2P  紺野真太郎▲16.0P  中西正行▲29.2P
優勝 西島一彦+70.7P
第2位 和久津晶+62.4P
第3位 中西正行▲2.3P
第4位 紺野真太郎▲133.8P
西島一彦さん本当におめでとうございます。
マスターズを「夢の舞台」と記し、その「夢」を叶えたのは西島さんの日々の鍛え方にあると私は思う。
御年67歳の西島さんにとって、長時間に渡るしかも初めての映像媒体での戦いに耐え抜いたのは、強靭なまでの精神力にあると思う。
和久津晶さんは、攻めの力は本当に素晴らしく勝負強かった。
中西正行さんは、全対局終了後の初めての言葉が、日本プロ麻雀連盟会長である森山茂和に近寄り、
「来年はシードを頂けるのでしょうか?」
「ありますよ」
「本当ですか?」と目を輝かせていた。
こういう方を「麻雀愛好家」と呼ぶのだろう。
紺野真太郎さんに関しては、舞台を観る側と実際に上る側とでは、まるで違うということが分かったと思う。
まだ40歳である。これから幾度も舞台に上ることもあるだろう事を考えれば、良い経験になったと思う。
最後に、今回私は観戦記を記すにあたり、現場の打ち手の呼吸、息遣い、表情などを見るため、対局室で記した観戦ノートと牌譜データサービスのみで書いた。
ひとつには、私は自分自身で見たもの、触れたものしか信じないところがある。
それが良いかどうかは別にして、今までそうやって生きてきた。
また、映像をご覧になっている方に、打ち手の映像には映らない部分を知ってもらいたいという気持ちもある。
配信された映像は、一切、今日、今に至るまで観ていない。
観戦記とは、観戦記者の主観、想いをを綴る場と私は考えている。
コアな連盟チャンネルファンである私が、映像を見なかったのは、解説者の言葉に自分自身が揺さぶられる、影響されることを畏れたためである。
そのために見当違いな部分、書きすぎた部分もあったかと思う。
その部分に関しては、対局者の方々、そしてこの文を読んで下さる方には改めて深くお詫び申し上げる。