麻雀マスターズ 決勝観戦記

麻雀マスターズ 決勝観戦記/第24期マスターズ 決勝観戦記 猿川真寿

2015年5月3日
電車に揺られながらこんな事を考えていた。
ここまでの戦い方を観ると、攻めと受けが2人ずつに分かれたな。
A以外の麻雀はそこまで知っているわけではないが、場慣れと実績でBが少し有利だろうか。
リードを奪うことができれば、そのまま逃げ切る可能性も低くないだろう。
Cとは予選で2度対決したが、好調そうに見え今回の戦いにかける、意気込みからも優勝争いには絡みそうだな。
前日のツイッターでもこうつぶやいていた。
「マスターズ準決勝113で通過。最後もたついたけど頂点を決める闘いに進むことができた。さあ、あと1つ!」
カッコ悪くてもプロっぽくなくても。ただがむしゃらに勝ちにいく!
気合い十分といったところだろう。
Dは雀力的には問題ない。条件戦の戦い方がどうであろうか?
そうはいってもプロのほうが慣れは多い。
Aはリードしたときに逃げに走る可能性が高い。
私は逃げるから捕まることのほうが多いと思っている。
会場に到着。放送開始30分前、運営サイドが慌ただしい。
木原が遅刻みたいだ。連盟規定によって▲30のペナルティーらしい。
波乱の幕開けとなった。
出場選手は
100
白鳥翔
日本プロ麻雀連盟
AⅡリーグ
 
100
木原浩一
日本プロ麻雀協会
Aリーグ所属
 
100
平賀聡彦
最高位戦日本プロ麻雀協会
Aリーグ所属
 
100
石川優さん 一般
 
綺麗に3団体と一般代表の4人に分かれた決勝メンバーとなった。
 

100

 
1回戦(起家から平賀、木原、石川、白鳥)
100
開局、4者の配牌は上図の通り。
皆それなりにまとまってはいるが、親の平賀だけ急所が多く少し厳しいかのように思えたが、主導権をとったのは平賀。
10巡目に5トイツになりメンツを崩して七対子に向かう。
これが功を制し次巡テンパイ、リーチと攻める。
七万七万七索七索九索九索一筒一筒二筒六筒六筒八筒八筒
正直二筒でリーチに踏み込むとは思わなかったが、出親で他者の進行具合を読んでいたら、回らせるためにもリーチを打ったほうがいいタイミングのようにも感じる。
結局この局は白鳥の1人ノーテンで流局した。
印象的だったのは、木原と石川さんがファーストテンパイを取らずに、回りながら上手くテンパイを入れたことだった。
木原はともかく石川さんは初の決勝でその選択をできることは、能力の高さと落ち着きを感じさせるものだった。
次局は連荘に成功した平賀が、4,000オールのツモアガリで大きく引き離す。
四万五万六万六索六索六索七索七索二筒三筒四筒六筒七筒  ツモ五筒  ドラ二筒  裏四筒
追いかけたのは石川さん。
東4局、南1局と木原から2局連続8,000をアガって一気にトップ目に躍り出る。
南3局、追いかける立場になった平賀が8巡目にリーチをする。
三万四万七万八万九万三索四索五索三筒四筒五筒東東  ドラ五万
この時の手順が独特で5巡目に
三万四万七万九万九万四索五索四筒五筒五筒七筒東東  ツモ東
ここから打五筒としている。
賛否両論あると思うが、平賀のこの意志は粘り強いなと感じた。
五筒先切りに意味があるとすれば、三筒六筒待ちになったときの三色のアガリやすさが違う。
緩手となる可能性も高いが、タイトル戦の決勝では普通という感覚が「敗局」になっているのもよく見る。
リーチをした時点で二万が3枚、五万が2枚と山に残っていて、高めをツモりそうだなと思って観戦していたが結果は流局。
これもタイトル戦の決勝ではよくみる光景。
他者のツモらないでくれという希望の力なのか、たまたまよく見るのが決勝なのかは分からないが不思議である。
逆に、一筋縄でいかないのも決勝なので、今回はどんなドラマがあるのだろうか?
1回戦成績
石川+31.5P 平賀+16.5P 白鳥▲18.4P 木原▲29.6P
 
2回戦(起家から平賀、白鳥、木原、石川)
木原はペナルティーがあるので、すでに石川さんとは90P以上の差があることになる。
残り4回戦のうち、優勝するためには3トップが必要になるだろう。
よってここからは多少強引にでも攻めなくてはならないことになる。
結果から書いてしまうと、1回戦4着だったことで今回のマスターズ決勝は、終了したと言っても過言ではないだろう。
あとは、帳尻合わせの打牌を繰り返していかなければならないからだ。
東1局、2局は石川さんが、3局は平賀が木原から出アガリした。
木原は打点がそこまでなかったものの、またしても苦しい立ち上がりとなった。
迎えた東3局、白鳥にドラドラのチャンス手が入る。
1巡目2巡目と有効牌を引き1シャンテン。
四万五万六万七万八万九万五索五索八索五筒五筒西西  ドラ五索
しかし、思うように手は伸びず先手をとったのは平賀。
12巡目にリーチとでる。
14巡目に白鳥がシャンテン数の変わらないチーを入れる。
100
リーチの捨て牌的に三万六万が打ちにくいのは分かるし、手が伸びなかったのも関係はしているのかも知れないが、私は白鳥の弱さがでたなと思った。
これはあくまで私の主観なので、もしかしたらチーのほうが普通なのかも知れないが、オカルト的な私にはこの仕掛けには未来がないようにしか見えない。
別にシャンテン数の変わらない鳴きが悪いとも思わないし、必要なときもあると思う。
ただ、白鳥の負けている日の麻雀はこういうのが多いのが事実。
結局この局は平賀が木原から3,900のアガリで終局。
東4局。1巡目に白鳥が自風の西をこの牌姿から仕掛ける。
三万三万七万八万二索七索一筒四筒八筒西西北北  ドラ七万
正直焦りしか感じない。
それこそ開きなおるしかないぐらい本人は傍目から見ているよりも、プレッシャーを感じていたのかも知れない。
苦しいながらもテンパイが入る。
三万三万四筒四筒  チー九万 左向き七万 上向き八万 上向き  ポン北北北  ポン西西西
次巡ツモ五筒で両面に変化した。
この局の石川さんの打ち回しが非常にいい。
100
ここから打五万といく。
なかなかタイトル戦の初決勝でできるものではないと思う。
三筒だけは切らないぞという意思が伝わってくる。
理屈はもしホンイツならば危険度の差で四筒八筒より先に切られてる読みになる。
次巡、三筒を重ねてリーチと攻める。
しかし、この局を制したのは白鳥。安全牌はないものの1発目に三索を押したのは見事である。
100
確かに安全牌はないが、仕掛けが入って終盤の状況だと思えば、親の石川さんは目いっぱいで構えてくるだろう。
よって、三万はそこまで危険牌ではない。私は会場で三索はきついから、三万でまわるかなと思ってみていた。
今思えば、前局に白鳥自体も感じていたのかも知れない。またやってしまったと。
麻雀愛好家は勝ちパターンしか覚えてなくてもいい。
人の脳はそういう作りになっているらしいので。
だが、麻雀プロは上にいくために、負けパターンを繰り返さないことも重要である。
長所を伸ばして、短所を減らしていくのが、理想だと私は思っている。
仕掛け自体は微妙だと思うが、白鳥が腹を括るための仕掛けだったとも、今となっては思える。
南3局、親の木原のリーチに白鳥がチーしてテンパイをとって、すべて押し返す。
ドラだけはオリるかと思ったがそこも押した。
意外な一面を見たと思った。
100
後日、この局のことを白鳥に聞いてみたら次のような返信だった。
「1回戦目、親とのリーチ対決。安手ながらもわりと待ちに自信のある一万四万で親の平賀プロに満貫をツモられる。そしてその後自然に打ったピンフドラ1リーチも流局。1回戦は何もできずの3着でした。半荘5回戦という短期決戦を制するにはよほどついていない限り自分で扉をこじ開けるようなアガリが必要と思っていました。そしてこの局。親からリーチがはいります。ツモに後押しされたのもありましたが、この局、この半荘を制さなければ優勝はきついという体感からほぼ押すことを決めていました。親のリーチに対する読みははっきり言って特にありません。親の先制なので悪形も好形もなんでもあると思いますし、メンツ手であるか、七対子であるかもわかっていませんでした。鳴いてテンパイとるかの是非はすべて勝負する気なら鳴いてテンパイをとったほうが、短期決戦ではいい結果が出やすいと思っています。」
オーラスもメンホンの2,000・4,000をツモッて点数以上に大きい意味のトップを取ったと思った。
2回戦成績
白鳥+28.8P 平賀+4.0P 木原▲10.8P 石川▲22.0P
2回戦終了時
平賀+20.5P 白鳥+10.4P 石川+9.5P 木原▲70.4P 
 
3回戦(起家から平賀、石川、木原、白鳥)
三つ巴で迎えた3回戦。誰が抜け出すのだろうか。
木原は数字上では可能性は無くはないが、3者をかわすのは現実問題、不可能に近いだろう。
東1局1本場。前局、白鳥と木原のリーチをうまくかわした平賀に勝負手が入る。
5巡目の牌姿が
三万四万四万七索七索一筒三筒五筒五筒六筒七筒八筒九筒  ツモ五万  ドラ七索
親でドラドラなだけに、広く受ける打四万かと思っていたが、平賀の選択は打五筒
1巡目に石川さんと白鳥が一筒を切っているのも後押ししているとは思うが。
普段の麻雀は存じていないが、決勝の麻雀は手役派、高打点というイメージが私の中には残った。
11巡目に安めの七筒を引きリーチ。
この時点で、木原1シャンテン、白鳥2シャンテンだったが、続々と有効牌を引きいれ、12巡目に3軒リーチに。
結局平賀が白鳥に満貫の放銃となった。
100
流れというものがあるのなら、こういうものだと思う。
2回戦は先手をとられながらぎりぎりの押しでなんとかアガリを拾えた形。
この局はツモに素直に打った結果になっている。
ここから、私がいままで見たことのない白鳥の力強い麻雀を目にする。
東4局親番で3軒リーチを引き勝つ。
100
この後も自然に手を進めていく。道中放銃もあったが展開的に、
他者の勝負手を潰していくようになるから不思議である。
変に回したりする方が、逆転のきっかけを与えやすいものだと私は思っている。
南4局の親番に1人テンパイ。1,500と加点してから12,000のアガリで一気に突き放す。
100
その後さらに加点して80,000点弱のトップだった。
3回戦成績
白鳥+62.6P 石川▲7.1P 平賀▲21.9P 木原▲33.6P
3回戦終了時
白鳥+73.0P 石川+2.4P 平賀▲1.4P 木原▲70.4P
 
4回戦(起家から石川、平賀、木原、白鳥)
会場が白鳥優勝の雰囲気に包まれだした。
それに待ったをかけたのは石川さん。
東1局、白鳥の2人テンパイで連荘すると、1本場は裏ドラをツモッて4,000は4,100オール。
2本場はメンホンを平賀からアガる。
100
白鳥は1手進んだら、東で放銃になっていたかも知れない。
2手進んだらほぼ放銃。肝を冷やしただろう。
3本場。ついに白鳥から直撃する。
100
親のリーチに東は切りたくないところではあるが、手詰まりで石川さんの捨て牌はピンフ系に見えるのでこの放銃はいたしかたないか。
たった4局で一気に射程圏内に入ってきた。
今まで白い顔をしていた白鳥の顔がさらに白く、いや青白くなった。
目は朦朧としていて視点は定まっていないように私には見えた。
私も経験があるが、現実的はまだ有利なのだが追い込まれたときのプレッシャーはもう抜かれる恐怖しかなく、ポイントが並びぐらいに感じるものである。
4本場は白鳥が平賀からアガッて長い東1局が流れた。
4着になると順位点の関係で更に10ポイント差が縮まるので大きいアガリとなった。
白鳥の思考はそこまで考える余裕はなく、親がおちた安堵のほうが大きいだろうが。
その後も石川さんは加点していき持ち点が70,000点を越えた。
南2局。いよいよ後のなくなりそうな平賀が親でリーチと出る。
ツモがきいて白鳥も現物待ちでテンパイする。
しばらくヤミテンにしていたが、脇からなかなかこぼれない。
そこで持ってきたのはかなり危険牌の一筒
ここまでのポイントだけを考えると、平賀に放銃して4着になるのが1番つらい。
ここで平賀にツモられてもまだ余力はあるが白鳥の選択は攻めだった。
そして次巡リーチで追いかける。
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これで2着に浮上して、再び安全圏に戻ることができた。
そして、この局で白鳥の優勝が決まったと私は思っている。
最終戦、石川さんに余力はなく、平賀が接近して白鳥を脅かすも、捲くるところまではいかなかった。
4回戦成績
石川+50.1P 白鳥+11.5P 木原▲10.9P 平賀▲52.7P 供卓+2.0P
5回戦成績
平賀+64.7P 白鳥+5.9P 木原▲20.0P 石川▲50.6P
最終成績
白鳥+90.4P 平賀+10.6P 石川+1.9P 木原▲134.9P 供卓+2.0P

100

 
解説の藤崎が放送終了後にいっていた。
「完璧に近い勝ち方だったね。」と、私もそう思う。特に2回戦の途中からは。
押し引きの基準は永遠のテーマといえるだろう。
顔面蒼白になりながら、必死に勝ちとりにいったいい麻雀だった。
今までの白鳥にかけていた部分が見事に修正されたのではないだろうか。

100

この経験がこれからのNEW白鳥として羽ばたいていって欲しい。
最後に、対戦直後に聞いた白鳥からファンの皆さんへのメッセージでしめたいと思う。
ファンの皆様へ
今回優勝できたことは本当に嬉しいです。
ただ、嬉しいと同時にここからが勝負だな、という気持ちもあります。
ありきたりですが、皆様の応援が力になりました。
今後も白鳥翔をよろしくお願いします。本当にありがとうございました。

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