麻雀マスターズ 決勝観戦記

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第27期マスターズ決勝観戦記 白鳥 翔

2018/06/08
執筆:白鳥 翔


第27期麻雀マスターズ決勝戦が5月4日に行われた。前日に行われたベスト8から勝ち上がったのはこの4名。
 
 

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山田浩之(連盟)
17期生でA2リーグ所属。タイトルはチャンピオンズリーグ(現在のJPML WRCリーグの前身)のみだがその実力は誰もが知るところ。
麻雀においての理論にも明るいが山田は自身の状態を重んじるタイプだ。初のG1タイトル獲得を狙う。
 
 
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沢崎誠(連盟)
3期生。A1リーグ所属。麻雀マスターズは16期に獲得。
十段位獲得経験もあり獲得タイトル多数の大ベテラン。粘り強い攻め主体の雀風から「マムシ」の異名を持つ。
直近では麻雀日本シリーズ2017優勝と波に乗っている。
 
 
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武田裕希(連盟)
21期生でB1リーグ所属。初のタイトル戦決勝進出。
周りがボスキャラ揃いの中どう戦うか。
 
 
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阿部孝則(RMU)
かつては連盟で鳳凰位3連覇経験もある。この麻雀マスターズも15期に1度獲得。
第2期の日本オープン優勝など輝かしい実績を誇る。ついた異名は寡黙な王者。

 
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1回戦(起家から山田、沢崎、阿部、武田)
開局、苦しそうな配牌を丁寧にまとめつつホンイツに向かった親番の山田。2枚目のオタ風の西ポンだったが他家を牽制することに成功し、最終ツモでテンパイを入れ1人テンパイでの連荘。
アガリ自体は厳しそうだった為感触は悪くはないだろう。
同1本場、
 
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1メンツも無いが、ダブ東の暗刻やタンピン系を見据えてまっすぐにドラ打ち。やる気満々だ。
 
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しかし、そのドラ打ちを受けて北家の武田がカン八筒のリーチのみでリーチ。このリーチにはこの決勝における武田の戦い方、覚悟の様なものが見られた。
親が向かってくるであろうことは武田も百も承知。場況的には悪くないカン八筒だがいかんせん打点力が無い為ヤミテンに構えるか取らずとする打ち手がほとんどだろう。
武田はとにかくぶつかっていくことを選んだ。
そこに対して、沢崎も攻めて追いかけリーチ。それを受けた山田は、巡目と自分の手形からここで撤退。結果は流局。
全部押していればテンパイ即で沢崎から八索でピンフで討ち取っている未来もあった。流れや状態を重んじるタイプの山田はこれをどう捉えていただろうか。
そして武田。百戦錬磨の3人相手にこのテンパイ形を見せつけた。他3者は焦っているな、と思ったか。それとも腹を括っているな、やりづらいなと思ったか。

東2局2本場は親の沢崎の仕掛けに対し臆することなく武田が攻め返しリーチを打つも流局。
そして同4本場、
 
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山田、マンズの伸びを見て1巡ヤミテンを選択するも次巡にリーチ。しかしこの1巡で阿部にドラの五索を打たれてしまい、リーチの一発目に二筒を打たれる。
これを沢崎がポンして攻め返し、見事にアガリに結びつけた。点数自体は2,900だが、リーチ棒4本と3本場で満貫分の収入だ。即リーチを打てていたら阿部の打牌がどう変わっていたか、興味深い。
結果は沢崎にとっては良い方に、山田にとっては悪い方に転がってしまった。

次局も沢崎が積極的に仕掛けを入れていき局面をリード。この決勝戦では、このように沢崎が先行して動いていく場面が総じて多かった。
5本場でようやく沢崎の親落としに成功した山田だが、次局が痛恨だった。
 
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ここから打五筒。程なくして七筒をツモった次のツモが一筒。役なしのカン五万のテンパイでヤミテンにするも、上家の武田から五万を打たれてリーチされ瞬く間に3人リーチに。
決勝戦が終わった後、山田が一番悔いていたのはこの局だった。四筒七筒が良く無さそうだとは思ったが、五万が良い訳でも無い。なら素直に打つべきだったと。「自分で悪くしてしまった。」
事実ここから山田は、手牌が苦しいのはもちろん、分が良いめくり合いなどもことごとく負けてしまう苦しい展開を強いられることとなる。
この局は阿部から武田のアガリに。

次局は山田、高目三色のピンフドラ1リーチを打ってこれが山に5枚。対して、親の阿部はカンチャン、ペンチャン残りの一通の1シャンテンだったが引き入れ追いかけリーチ。
そして最後の1枚を山田が掴み、7,700の放銃。態勢論者からすればそうだよな、となりそうな結末。山田もそれを感じ取っていたことだろう。
この半荘決め手は沢崎のこの一撃。
 
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南4局は阿部が何とかアガリきって2着に浮上。

1回戦終了時
沢崎+31.2P 阿部+4.6P 武田▲9.0P 山田▲26.8P

 

 

2回戦(起家から阿部、武田、山田、沢崎)
東1局、沢崎が仕掛けてそこに山田がリャンメンドラ1リーチも武田がハイテイで1,300・2,600のツモアガリ。
次局、山田ドラドラで仕掛けてテンパイをいれるも、阿部にホンイツで押し返され5,200の放銃に。決勝後の山田の発言は、こうならない様に「入り」をしっかり打つべきだった、ということなのだろう。
次局も山田リーチと出るが沢崎がきっちり躱す。
 
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そしてこの東4局が山田のこの決勝戦において最初で最後のチャンスだった。ここから沢崎がチー。アガリきれるかは分からないが、これも沢崎の勝負勘によるものなのか。
このチーで山田のアガリ牌の三万を自身の手元に喰い下げる。まるで分かっていたかの様に。一人テンパイで流局。
ここからは細かいアガリが続くが、南4局を制した武田が微差ながらトップ。山田は痛恨の2ラスとなってしまう。

2回戦終了時
沢崎+27.2P 阿部+12.9P 武田+11.2P 山田▲51.3P

 

3回戦(起家から武田、沢崎、山田、阿部)
東1局、ここで武田が奮起。
 
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親番で、先行リーチの山田の現物待ちではあるが、決していいわけではないカン三筒のリーチ。これに対して詰まってしまった阿部が三筒を一発で放銃。トータルポイント3人で競っているところから、値千金の12.000のアガリとなった。
次局は、沢崎が仕掛けて阿部が3,900は4,200の放銃。この決勝戦の解説を担当していた私だが、現場では阿部の手牌としてはらしくない放銃だなと思ったが、対局者心理を考えるとこれまでの2回で沢崎の安い仕掛けも遠い仕掛けも何度も見せられている。それによりシャンテン数を見誤ったか。ここにきてマムシの毒が回ってきつつある。

ここから阿部が仕掛けとリーチをうまく使い分け、細かいながらも4連続のアガリ。やっと親番で連荘というところでまたも沢崎が仕掛けてリスクを負ってでもそれを止める。
そして南4局武田の親番。
 
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このリーチを受けるも、
 
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こうアガリきる。打点は低いが見事な攻め返しである。
しかし、次局またも沢崎が仕掛けてここも躱しきるのかと思ったが、今回はそれが裏目。阿部にテンパイ牌を送り込み、阿部が一発ツモの3,000・6,000は3,200・6,200のツモアガリ。これで一気に2着に浮上した。

南2局、武田の選択が秀逸だ。
 
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ドラ表示牌待ちのペン七筒の2,600では割に合わないとの判断。2,600愚形先制は今風なデジタルな雀風ならば喜んでリーチといきそうだが、ここまでの沢崎の押しっぷり、沢崎が親で現在3着目であることなどを加味すると、その選択だけはなかったか。ここはアガリ率をマックスに見る選択を取った。沢崎から追いかけリーチが入るも、見事ツモアガリとなった。

そして南3局、阿部の役牌ドラドラと、武田のピンフドラ1リーチがぶつかる。ここは武田に軍配がアガリ、裏が1枚乗って8,000のアガリに。
南4局は、沢崎がまたしても3フーロしてアガリきり2着を守りきった。

3回戦終了時
武田+47.0P 沢崎+29.6P 阿部+1.8P 山田▲78.4P

 

4回戦(起家から山田、阿部、武田、沢崎)
ポイント的には一歩抜け出した武田だが、心理的にはどうだろうか。優勝のゴールテープが見えれば見えてくるほど、精神的に追い詰められていく時間帯になっていくと私は思う。
所謂、水中から顔を上げたくなってしまうのだ。特に、タイトルを獲得したことのないものにとっては。

阿部が先制のアガリを決め、そして沢崎もアガリを取り、微差だがラス目で迎えた武田の親番。
 
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まずは沢崎が仕掛けてドラドラの南のシングルバックで発進。プレッシャーをかける。
武田、上家の阿部の打二索を見てツモりかけて伸ばした手が止まる。そして、ポン、打四筒。阿部への5,200放銃となった。
テンパイをとりたい気持ちもプレッシャーも痛いほど分かる。それでもぐっとこらえて牌山に手を伸ばして欲しかった。ここで欲しいのは1,500なのか。
違う。そんなことは武田自身も分かっている。人生がかかった決勝だからこそ出てしまったポンの声。この一声が武田を地獄に突き落とした。

「悔い残る場面はありましたか?」
「4回戦で安いポンテンとったのは失敗だったなって思ってます。」

武田の対局後の素直な弁だ。
東4局1本場、沢崎の選択が冴え渡る。
 
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阿部が躱し手からぶつける手に変えて追いかけるも沢崎のツモアガリ。大きな2,100オールだ。
沢崎と阿部が交互にアガっていく展開。そして武田にとどめの一撃を喰らわしたのは阿部だった。
 
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これぞ阿部の真骨頂。手役作りからの冷静なヤミテンで12,000。見ていただければ分かる通り五筒四筒が手出し。見事なターツ選択だ。
こうして阿部がトップ目に立ち、いよいよ沢崎と阿部の一騎打ちかと思われた。

麻雀は、無慈悲だ。
 
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ノーチャンスの九筒。何度見ても九筒を打ってしまうと思う。ここまでの手順が悪かったとも私は思わない。
経験豊富な阿部にとっては、こういうことは何度も経験済みなんだろう。これが麻雀だ。スッと点棒を払う阿部の姿が美しく、印象的だった。

南4局、簡単に山田を捲ってこの半荘トップに立った沢崎を最終戦で捕まえられる者はいなかった。

4回戦終了時
沢崎+70.9P 武田+13.7P 阿部▲20.4P 山田▲64.2P

最終5回戦終了トータル
沢崎+72.5P 武田▲0.6P 山田▲25.9P 阿部▲46.0P

第27期麻雀マスターズ優勝は沢崎誠。
とにかく前に出ている局面が多く、的確に相手のアガリを潰し、また要所では決定打も決めてきていた。
もちろん阿部、山田、武田の3名もそれぞれ素晴らしかったが、とにかく沢崎の強さが際立った決勝戦となった。
まだまだ現役でプロ連盟のレジェンドの1人として、これからも若手や中堅の前に立ちはだかっていくのだろう。
沢崎さん、優勝おめでとうございます!
 
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