麻雀マスターズ レポート

麻雀マスターズ レポート/第24期マスターズ トーナメントレポート 澤村 明日華

前日までにベスト28が出揃い、この日はベスト28、ベスト16をを決める対局が行われた。
システムは通過順位によって決定した4名で半荘3回を戦い、トータルポイント上位2名が勝ち上がるトーナメント方式。
ベスト28を通過した14名に、昨年度優勝者である西島一彦、前日の本戦を1位通過した木原浩一の2名を加え、次週のベスト8、つまり準決勝への椅子を争うこととなる。
ルールは日本プロ麻雀連盟Bルール(一発、裏ドラあり)を採用しており、順位点はトップが+15P、2着が+5P、3着が▲5P、4着が▲15Pと、各順位に1万点の差がつく。

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まずは1卓目。
現プロクイーン・和久津と、第8期プロクイーンの石井がいるこちらの卓。
「女王対決だ」と囁かれ、自然と観戦者の目も集まる。
1回戦目を▲22.9Pと不調な様子の和久津。
2回戦目の東1局に手牌に槓子で使っている三筒を裏ドラに乗せ、満貫をツモりアガリ、現女王の力を発揮するかと見えたが、二の矢が続かず苦しい展開となる。
もう1人の女王、石井は2回戦目までを2着、トップとまとめ、好調のようだ。
最終戦、小川が親番で点棒を積み上げると、その後石井のゲーム回しが光り、そのまま2人が勝ち上がりとなった。
勝ち上がり:小川尚哉(連盟)、石井あや(最高位戦)
 

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2卓目。
連盟、最高位戦のAリーガーという猛獣たちに、紅一点藤井すみれという兎が放り込まれた。
藤井にとっては厳しい闘いか、と見るも、対局中の表情や雰囲気は、猛獣たちをも凌いでいる。
1回戦目を、水巻、藤井、白鳥、伊藤という並びで終え、続く2回戦。
親番を迎えている水巻の手が止まる。
二万三万八万八万八万一索二索三索七筒七筒八筒九筒西西  ドラ五筒
この時点で他家3人に1つずつ仕掛けが入っていて、しかも持ち点は劣勢だ。
一度七筒に手がかかるも、再び少考し、水巻の選択は打西
このとき、南家の藤井には
一筒二筒三筒五筒六筒六筒七筒八筒西西  ポン中中中
という満貫テンパイが入っていた。
やはり強い、劣勢に立ってもそうそう打ってはくれないか、と見ていると、藤井がツモ切る六索に白鳥からロンの声がかかる。
五索七索二筒二筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒  チー五万 左向き六万 上向き七万 上向き  ロン六索
「8,000」
はい、と返事をして点棒を払う藤井の表情は何かを飲み込んで返事をしているように見える。
藤井はそのまま浮上することが叶わず痛恨のラスとなった
最終戦オーラスは2本場を迎え、藤井がツモリ四暗刻のテンパイを入れるも、アガリへは結びつかず流局。惜しくも敗退となった。
勝ち上がり:水巻渉(最高位戦)、白鳥翔(連盟)
 

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3卓目。
1回戦目、東1局。平島が2つ仕掛けて300・500をツモりアガる。
ベスト28にまでなれば緊張して声も出なくなりそうな1回戦めの開局。
しっかりと発声が聞こえ、緊張どころか、普段通りの麻雀ができているようだ。
アマチュアのお二人が伸び伸びと打っている印象がうかがえる中、紺野、近藤は苦戦を強いられているように見える。
そんな中、紺野がオーラスに12,000を平島から召し取り、プロの意地を見せる。
1回戦目は中西・平島のワンツーで終えるも、2回戦目は逆に近藤・紺野でワンツーを決め、トータルポイントはほぼほぼ着順勝負となった。
最終戦はオーラスまでもつれ、中西が近藤からアガリを取り、勝負がついた。
勝ち上がり:中西(一般)、近藤(協会)
 

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4卓目。
現鳳凰位前田、A1リーガーともたけを交えた、唯一の連盟員のみの卓だ。
1回戦目、開局に前田がともたけに3,900の放銃となるも、東2局の親番では本場を積み上げ終わってみれば50,000点を越える大トップ。
逆に開局に3,900点をあがったともたけがラスになるという波乱の幕開け。
1回戦目同様、前田が鳳凰位の力を存分に見せつけるも、そこに負けじと食い込んできたのがともたけだった。
「ツモ。8,000・16,000」
この日初の役満、四暗刻だ。
このアガリで勢いをつけたともたけは、そのまま2連勝を飾り、このベスト28を悠々と通過していった。
勝ち上がり:ともたけ雅晴(連盟)、前田直哉(連盟)
 

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5卓目。
ベスト28は回る卓数が多い。選手が3半荘打っている間に7卓を見て回ることになる。
南2局、沢崎が親番を開始する際に、自分は別卓へと移動してしばらく見て回っていた。
そろそろオーラスになったか、と、こちらの卓へ戻ると、なんとまだ沢崎の親番が終わっていない。
結局、打ち切りぎりぎりまで続く闘いとなり、54,600点の大トップとなった。
そのまま続けて卓を観戦しているとあることに気付く。
唯一のアマチュア、石川さんの流局時のテンパイの多さだ。沢崎のそれに似たようにも感じる。
2回戦終了時にはトータルトップ目にたち、最終半荘も飄々とこなし、勝ち上がりを決めていった。
勝ち上がり:沢崎誠(連盟)、石川(一般)
 

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6卓目。
1回戦目、▲28.7と不調な様子だった猿川が、2回戦でようやく力を出し始める。
東2局に4,000オールをツモリ上がると、一本場には1回戦目にトップを取った小平から12,000は12,300を召し取る。
+46.9の大トップを取ると、トータルトップ目にも躍り出る。
しかし、これに待ったをかけたのが、それまで黙ってじっとしていた瀬戸熊・平賀の両名だ。
最終戦、平賀が50,000点オーバーのトップ、瀬戸熊が42,000点台の2着。
瀬戸熊は3着、3着、2着という成績で、1,2回戦にトップをとった小平猿川をかわしていった。
勝ち上がり:平賀聡彦(最高位戦)、瀬戸熊直樹(連盟)
 

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7卓目。
2回戦を終了し、トータルポイントが以下のようになる。
藤本、鮎川が並んで、+28.7、ダンプ▲4.2、石橋▲53.2
最終戦オーラス
石橋30,600、ダンプ30,300、鮎川27,700、藤本31,800
といったような平たい状況になる。
そこへダンプがきっちりとトーナメントらしいあがりを見せてくれた。
一万四万の平和のみテンパイ。
鮎川が打四万、もちろんこれは見逃しだ。これで上がってしまうと敗退となる。
合わせるように藤本が一万を切る。こちらは同巡で上がれない。
そしてダンプがツモ切り、次順、もう一度藤本が切った一万へ声がかかる。
オーラスに条件確認の時間をほとんど取らず、すっとこの見逃しをやってのける。
トーナメントになれている。Aリーガーの力を感じた。
勝ち上がり:ダンプ大橋(連盟)、藤本(連盟)
 
そしてこれでベスト16が出揃い、少しの休憩時間のあと、すぐにベスト16の対局が始まる。
まずはこちらの卓

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前年度覇者、西島をシードに加えたこちらの3名だ。
1回戦を終え、ポイントは以下のようになる。
平賀+44.4 藤本+23.9 石井▲15.4 西島▲52.9
そして2回戦目起親を迎える平賀。
東1局に三万五万のシャンポン待ちを積極的にリーチを打つと、1本場には
三万四万五万六索七索七索八索八索九索三筒四筒五筒六筒七筒
から三筒を切りノータイムでリーチといき、あっさりと七筒をツモりあがる。
さすが、というべきか。選択は間違えない。
1回戦目にワンツーを決めた平賀・藤本で、再びワンツーを決めると、2回戦終了時には
平賀+49.9、藤本+44.5、石井▲36.2、西島▲58.2
と3着以下に大きなポイント差をつけ、勝ち上がりを決めていった。
勝ち上がり:平賀(最高位戦)、藤本(連盟)
 

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そして2卓目。
昨日、堂々と本戦トップ通過を飾り、ジャンプアップでベスト16の切符を手に入れた木原が、満を持しての登場だ。
しかしほかの3名は厳しいベスト28を勝ち抜き、そして肩もそろそろ温まってきているであろう選手たちだ。しかも3名とも連盟のAリーガーときた。
4名ともが違う麻雀を打つ。面白い闘いを見せてくれそうだ、と、期待の胸も高まる。
さて始まってみると、メンツのせいか、大物手が飛び交うことはなく、かわし手ばかりが目立つ。
300・500や、500・1,000、1000点という声ばかりが聞こえ、
おかげさまでオーラスになってもトップからラスまでの差が13,200点以内と誰にでもトップが見える。
オーラス、白鳥がドラ暗刻のチャンス手をものにし、ようやく点棒が動いた。
1回戦目に痛恨のラスを引いた木原だったが、2回戦目には親番の大連荘が始まる。
結局50,000点近いトップを取り、トータルポイントをプラスへと返したのだ。
そして最終戦。
2回戦目の勢いをそのままに、木原が早々に4,000オールを引きあがる。
木原、白鳥が決めるか?と思いきや、オーラスは均衡した状況となる。
持ち点は親番より、沢崎29,200、木原37,600、ダンプ27,400、白鳥25,800
トータルポイントを込めると、沢崎と白鳥の差が、1,100点なのだ。
そんな中、木原が一番のりにテンパイへとこぎつける。
南単騎の七対子のみだ。
沢崎からの出アガリとなれば白鳥の勝ち上がり、白鳥・ダンプから、もしくはツモあがりとなれば沢崎の勝ち上がり。
そんな中、沢崎から「リーチ」の声がかかる。
そっと置かれる宣言牌。心なしか、宣言牌から離れていく手がゆっくりと感じる。
「ロン。1,600」
勝ち上がり:木原(協会)、白鳥(連盟)
 

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3卓目。
ベスト16唯一の連盟員のみの卓だ。
十段位、鳳凰位を何度も獲得している瀬戸熊に、現鳳凰位の前田。
A2リーグ昇級を果たした紺野に、小川がどこまでくらいついていけるのか。
そんな心配をよそに、ベスト28最終戦で50,000点オーバーのトップをとった好調が続いてか、
このベスト16でも2着、トップと好調のようだ。
そんな小川とは打って変わって、苦戦を強いられていたのが、現鳳凰位・前田だ。
2回戦までのトータルは▲31.5と、目下2着目の小川とでも68.5ポイントの差がついている。
最終戦も始まり、隣の卓の観戦へと移ると、「8,000オール」という声がする。
振り返ってみてみると、手を倒していたのは、その前田だった。
まだ遠い。遠いが、かすかに光が見いだされる。
ラス前
親番から前田56,800 小川26,300 瀬戸熊32,500 紺野4,400
トータルトップ目だったはずの紺野が、何かに焦れたようにリーチを打つ。
瀬戸熊は発を仕掛け、マンズで一メンツを仕掛けている。
先制のリーチ・仕掛けを受け、後手に回らせられながらもようやくテンパイにこぎつける前田。
三万四万六万七万八万九万九万三索四索五索六筒七筒八筒
この手をヤミテンへと構える。そしてツモる三筒、無筋だ。前田の手が止まる。
長考後、前田が選んだのは九万だった。
リーチをかけている紺野からツモ切られる五万にチーをかけると、三筒単騎へと受ける。
直後、紺野が瀬戸熊のあたり牌を掴み1,000点を放銃する。紺野の待ちはペン三筒だった。
この追いかけなければいけない立場で、ラス前の最後の親番で、どれだけの人間がこの三筒を止められるのだろうか。
「だから、鳳凰位なんだ」
惜しくも敗退となってしまったが、そう思わずにはいられない。
まるで、なにかのタイトルの決勝を見ている気分にさせられる局だった。
勝ち上がり:小川尚哉(連盟)・瀬戸熊直樹(連盟)
 

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ベスト16最後の卓。
アマチュアの方が入っている、唯一の卓だ。
ここで、どちらか一人は敗退になってしまうのではないだろうか・・・。
卓組を見てそう思う。
如何せん、対戦相手はベスト28で役満をあがり快調なともたけと、トーナメントに滅法強いと噂をきく水巻だ。
しかし、そんな思いをよそに、開幕から親番の中西がチャンス手をものにする。
六万七万八万二索三索四索六索八索六筒六筒白白白  ドラ白
水巻に先制リーチをかけられるも上記の手格好で追いつき、追いかけリーチをかけ水巻から召し取る。
結局この半荘は中西がこのアドバンテージを守りきり、63,000点のトップとなった。
そして2着は石川。アマチュアのお二人が快調にとばすなか、プロ2人が苦戦を強いられている。
最終戦を迎え、トータルは以下のようになる。
中西+40.0 石川+32.6 水巻▲15.7 ともたけ▲56.9
南2局、水巻が親番にドラドラの勝負手をテンパイするも流局。
次局、ドラ1の一通をテンパイするも、石川にかわされ勝負が決した。
勝ち上がり:石川(一般)、中西(一般)