日本プロ麻雀連盟第28期マスターズ ベスト８レポート 蛯原 朗 - 日本プロ麻雀連盟

第28期麻雀マスターズのベスト８トーナメントが夏目坂連盟スタジオにて行われた。
決勝という夢の舞台への階段も残すとこ１つというところまで来た。
一体どの選手が決勝への切符を手にする事になるのか、最後まで目が離せない。

対戦カードは以下の通り。

Ａ卓：吾妻さおり（連盟）vs近藤久春（連盟）vsゆーべさん（麻雀格闘倶楽部代表）vs真光祐尚（連盟）

Ｂ卓：沢崎誠（連盟）vs蒼木翔子（連盟）vsHIRO柴田（連盟）vs菊田政俊（連盟）

日本プロ麻雀連盟ＷＲＣルール（一発・裏ドラありの世界大会ルール）での対局。
同一メンバーで半荘３回戦を行い、トータルポイント上位２名が決勝へ進出となる。

 

 

Ａ卓 １回戦（起家から、近藤・吾妻・真光・ゆーべさん）
東１局　ドラ
開局、親の近藤が以下の手牌でテンパイ。

  ポン  ポン

２巡後には吾妻もテンパイしヤミテンに構えるが、ここは近藤がツモ。
1,000オールのアガリで、静かな幕開けとなった。

東１局１本場　ドラ
10巡目、吾妻に勝負手が入る。

ドラドラのテンパイで、吾妻が選択したのは切りリーチ。
は生牌、捨て牌の状況から、ソーズの下がかなり良く見える。
リーチを受けた親の近藤は、この時七対子の１シャンテンだったが、が４枚飛んでいたので、ノーチャンスのトイツ落としで一旦迂回。
周りの２人も手牌が厳しく押し返せない状況で、ここは吾妻の一人旅になるかと思われたが、なかなかツモることができない。
そうこうしている内に近藤がテンパイ復活。

ワンチャンスのを勝負し待ちのテンパイ。 近藤は、最後のツモ牌で持ってきた生牌のを勝負し、テンパイを維持。そして、このに西家の真光からポンの声が。
リーチ者の吾妻のツモ番を無くしたいと言う思考が伝わってきた。親にハイテイが回ってしまうのは覚悟の上か。
これで吾妻のツモ番がなくなり、流局かと思いきや、ハイテイで親の近藤がまさかのツモ。3,200は3,300オールのツモアガリ。
近藤にとって、かなり嬉しいアガリとなった。

勢いに乗った近藤がこのまま加点していくかと思われたが、さすがここまで勝ちあがってきた３者。簡単にはそうさせてくれない。

南１局１本場　ドラ

ここまで我慢の展開が続いているゆーべさんが４巡目先制リーチ。
後手に回った吾妻だったが、ドラをポン、満貫手を作り上げる。

  ポン

この捲りあいを制したのは、吾妻。ツモで、2,000・4,000は2,100・4,100のツモアガリ。
吾妻はこれまでの麻雀を見ていると後手押しの多い選手だ。私も今期のマスターズで対戦したが、同じような場面を幾度となく見てきた。先手を取られても粘り、追いかけリーチし、捲りあいを制す。このタイプの打ち手は、ハマると手がつけられない。

南２局　ドラ
ゆーべさんが以下の手牌から、をカン。

トイツで持っていたが新ドラとなり、俄然やる気が出る手に。リンシャンハイからを引き、打。
ここからの鳴き判断が絶巧で、終盤に真光から打たれたをスルー。誰もが鳴きそうな場面であったが、目先のテンパイに囚われず、アガリのルートを見つけていた。
その後、チー、打。狙い通りの最終形に仕上げ、トップ目の近藤からアガる。

南４局１本場　ドラ

真光が、お世辞にも整っているとは言い難いこの手からをポン。しかしこの選択がうまくいき、トイトイのテンパイを入れる。

  ポン  ポン  ポン

先ほどの牌姿からは誰も予想出来ないような最終形となったが、この時既にが２枚、が１枚河に切られていて、待ちが薄い。
親のゆーべさんにも、真光がテンパイする１巡前に七対子ドラドラのテンパイが入っている。
待ちを、他家が使いにくそうなや、真光の河に捨てられたなどにコロコロ変えつつ、最終的にを引きリーチへ。

同巡、微差で２着目の近藤にも役なしドラドラの手が入る。ここをアガることができれば、大きい。
近藤が選択したのはリーチだったが、宣言牌のがゆーべさんのあたり牌となってしまった。
一発での放銃で18,000と、近藤にとっては大きな痛手となり、これでゆーべさんがトップとなった。

１回戦終了時
ゆーべさん＋29.1P　吾妻＋14.3P　真光▲19.2P　近藤▲34.4P

２回戦（起家から、真光、吾妻、ゆーべさん、近藤）
東１局３本場　ドラ
真光は、先ほどとは打って変わって、リーチ主体の麻雀で点数を加点していく。
12巡目、以下の手牌で先制リーチ。

近藤にも、14巡目に待ちのタンヤオピンフドラドラのテンパイが入る。
親の現物待ちであり、三色への手変わりもあるのでヤミテンに構える。

それに対し、東１局に放銃から始まった吾妻も攻めの姿勢を崩さず押し返し、リーチへ。

２軒リーチに挟まれてしまった近藤のもとに無筋のが。
満貫テンパイなので危険牌を押していく選択もあるが、放銃は厳しい状況になることもあり、一旦回る。
17巡目、真光がを掴み吾妻に放銃。2,000は2,900のアガリとなった。

ここまでの各自の持ち点は以下の通り。
真光39.600　吾妻31.000　ゆーべさん22.100　近藤27.300

南４局、南１局で大きなアガリを決めた吾妻からリーチ。
１回戦、ラススタートとなってしまった近藤のもとにあたり牌のが。
勝負に行かざるを得ない近藤は止まるはずもなく、吾妻に飛び込む。5,200の放銃となり、２回戦終了。

２回戦の成績
真光＋24.6P　吾妻＋11.2P　ゆーべさん▲17.9P　近藤▲17.9P

２回戦終了時
吾妻＋25.5P　真光＋15.6P　ゆーべさん＋11.2P　近藤▲52.3P

ついに最終戦。
真光、吾妻、ゆーべさんは着順勝負になりそうだ。
近藤はかなり頑張らなければならないポイント状況。
一体どんなドラマが生まれるのか・・・。

最終戦（起家から、ゆーべさん、吾妻、真光、近藤）
東１局　ドラ
２回戦目と同様、真光からの先制リーチ攻撃。

これがなんと一発ツモ。2,000・4,000のツモアガリ。

東３局１本場　ドラ
親の真光、またしても一発ツモ。

  ツモ

2,000オールのアガリを決めた。

続く東３局２本場　ドラ
真光の大物手が炸裂。

  ツモ

6,000は6,200オール。このアガリで自身の勝ち上がりをほぼ確実のものとした真光。
それと同時に近藤にとってはかなり厳しい状況だ。
しかし近藤は、まだ勝ち上がりを諦めていない力強い眼差しをしている。

南２局　ドラ
ここで、大物手がぶつかり合う。
まず６巡目、吾妻が面前チンイツ１シャンテンに。

次巡、ゆーべのをチーして打で、テンパイに。

  チー

９巡目、親のゆーべにも、テンパイが入る。
リーチをする一手もあったが、ここは一旦１シャンテン戻しをすることを選択。
しかし、その後なかなか欲しい牌が引けず苦しい展開に。
そうこうしている内に、近藤からアガると跳満以上が確約されたリーチが打たれる。更にリーチ後、を暗カンした近藤。新ドラがとなり、手に力が入る。

吾妻、近藤の２人のどちらかのアガリになると思われた１局であったが、手を開いたのは、なんとゆーべさん。
近藤から、で、12,000をアガる。

こうなると、ゆーべさんと吾妻の着順争いになりそうか。

南３局　ドラ
吾妻が以下の手牌で７巡目、先制リーチ。

打点こそ無いが、ここでアガリを決め、局を消化したい。
最後のツモ番でツモり、裏ドラを１枚乗せ2,000・4,000のツモアガリ。
思っていた以上のリードを得ることに成功した。

オーラスは親の近藤にテンパイが入らず、終局となった。

最終戦成績
真光＋46.6P　吾妻＋3.3P　ゆーべさん▲13.0P　近藤▲36.9P

最終結果
真光＋62.2P　吾妻＋28.8P　ゆーべさん▲1.8P　近藤▲89.2P

Ａ卓決勝勝ち上がり
真光祐尚
吾妻さおり

 

 

 

Ｂ卓
１回戦（起家から、菊田・蒼木・沢崎・H柴田）
東１局　ドラ
開局、親の菊田８巡目、先制リーチ。

を一発ツモ。裏ドラが１枚乗り、4,000オールと幸先の良いスタート。

東１局１本場　ドラ
中盤に差し掛かり、菊田は三色の１シャンテン。

H柴田は打点のあるチャンタ１シャンテン。

そこに蒼木からリーチの声が。

H柴田がアタリ牌のをツモ切り3,900は4,200の放銃になったが、H柴田にとっては想定内か。

東２局　ドラ
まずは、11巡目に沢崎が先制リーチ。

同巡、菊田も以下のテンパイ。

沢崎の現物待ちであり、ヤミテンに構える。
更に、H柴田からも12巡目、勝負手の追いかけリーチ。先ほど放銃しまっただけに、ここはアガリたい局だ。

しかし、ここは沢崎がH柴田のアガリ牌でもあるドラのをツモり、2,000・4,000のアガリを決める。

東４局　ドラ
背水の陣となったH柴田の先制リーチ。

この手をツモでアガリ切り、2,600オール。これで前々局の失点を帳消しにする。

東４局１本場　ドラ
ここでもうひとアガリしたい親番のH柴田だが、蒼木から先制リーチが入る。

この蒼木のリーチを受けたH柴田、高め三色の手で追いつきリーチするも、ここは２人テンパイで流局。

迎えた東４局２本場、供託のリーチ棒２本が大きい状況。
蒼木が積極的に仕掛けH柴田から2,000は2,600をアガリ、２着に浮上。

南場に入ってからは流局が続き、以下の点差でラス前を迎える。

菊田35.400　蒼木32.100　沢崎28.800　H柴田22.700

南３局３本場　ドラ
親の沢崎、ここはアガってトップ目に立ちたいところ。配牌はまずまずだ。
H柴田もタンピン系で悪くない。しかし、トップ目の菊田がを仕掛け、流れるようにテンパイ。

  ポン

をツモり、2,000・4,000は2,300・4,300のツモアガリ。

南４局、２着目の蒼木が電光石火のごとくアガリ、１回戦終了。

１回戦成績
菊田＋30.3P　蒼木＋5.8P　沢崎▲11.5P　H柴田▲24.6P

２回戦（起家から、H柴田・菊田・沢崎・蒼木）
東１局　ドラ
１回戦、ラススタートとなってしまったH柴田が先制リーチ。

ツモで2,600オール。

東３局１本場　ドラ
またしてもH柴田が先制リーチ。

ここに、１シャンテンだった蒼木がで飛び込む。8,000は8,300のアガリとなった。

南４局、５万点を超えるトップ目となったH柴田、親の蒼木からリーチが入るも押し切り、2,000をアガリ、２回戦終了。
H柴田は大きなトップで、トータル２位に浮上。一方この半荘、展開に恵まれなかった蒼木はトータル２着からの手痛いラスとなってしまう。

２回戦の成績
H柴田＋37.1P　沢崎＋2.0P　菊田▲9.9P　蒼木▲29.2P

２回戦終了時
菊田＋20.4P 　H柴田＋12.5P　沢崎▲9.5P　蒼木▲23.4P

最終戦（起家から、蒼木・沢崎・菊田・H柴田）
東１局　ドラ
沢崎から７巡目先制リーチ。

菊田は９巡目にピンフのテンパイを入れ、ヤミテンに構える。沢崎がを掴み1,000の放銃。打点こそ低かったが、大きなアガリとなった。

東３局　ドラ
沢崎が３巡目、以下の手牌から動き出す。

  ポン

そして５巡目テンパイ。

  ポン

９巡目、を引き打とし、トイトイへ移行。
２巡後にをポンすることが出来、あっという間に満貫手に変化した。

  ポン  ポン

これは相手との距離感が分かっていなければ容易に出来る判断ではなく、何より、数々のタイトルを獲得してきた沢崎だからこそできる手筋なのかもしれない。
同巡、H柴田にも七対子ドラドラの勝負手が入り、ヤミテンに構える。

そこに割って入ってきたのは、蒼木だ。以下の手牌でリーチに踏み出す。

蒼木はこの半荘でトップをとらなければ勝ち上がりが厳しいため、ここでアガって勢いをつけたい。
しかし、ここは沢崎がをツモり、2,000・4,000。
H柴田は、１牌危険牌を押すことが出来ていればアガリがあったのだが、トーナメントと言う押し引きが非常に難しい試合方法のため、点数的にも親のリーチに押すのは微妙だと判断してオリを選択した。

南場に入り、沢崎が5,200の加点をするも、その後は特に大きな動きもなく、オーラスへ。

各自の持ち点、トータルポイントは以下の通り。

蒼木14.200　沢崎40.500　菊田25.700　H柴田39.600

トータルポイント
H柴田＋27.1P　沢崎＋16.0P　菊田＋11.1P　蒼木▲54.2P

南４局　ドラ
トータルトップ目のH柴田は伏せれば勝ち上がりのため、序盤から中張牌を河に並べ、アガリには向かわない姿勢。
沢崎は、菊田に1,000放銃さえしなければ通過の条件が満たされるが、自身でのアガリは厳しいと思ったか、手を組まずに流局狙いに。
こうなると現状３着目の菊田が僅かに有利か。しかし菊田の手牌は、中盤からなかなか進まない。12巡目、ようやく菊田からリーチの声が。1,000・2,000をツモれば通過条件クリアだ。

15巡目、静かにをツモり、自身のアガリで決勝戦進出を決めた。

最終戦の成績
沢崎＋24.2P　H柴田＋12.0P　菊田▲4.1P　蒼木▲32.1P

最終戦終了時
H柴田＋24.5P　菊田＋16.3P　沢崎＋14.7P　蒼木▲55.5P

Ｂ卓決勝勝ち上がり
HIRO柴田
菊田政俊

これで決勝のメンバーが出揃った。
卓を変幻自在に操る真光。
女流桜花２冠の吾妻。
そして昨年、王位戦で惜しくも準優勝となった菊田。
昨年度３度も決勝戦に駒を進めたH柴田。

麻雀マスターズは誰の手に・・・？
白熱した戦いになるに違いない。
引き続き決勝戦の観戦記も、是非ご覧いただきたい。