プロクイーン決定戦 決勝観戦記

プロクイーン決定戦 決勝観戦記/第15期プロクイーン決定戦初日観戦記 白鳥 翔

女流プロならば誰もが欲しいであろうビッグタイトル「プロクイーン」。
今年も戦いの火蓋が切って落とされた。
決勝戦はWRCルール(一発、裏ドラあり、順位点5,000点-15,000点オカなし)で、決勝に辿り着いた4名+ディフェンディングチャンピオンの5名で争われ、1人ずつ抜け番で2周り、計10回戦を戦いその時点でのトータル最下位の者はその場で敗退、残った4名でポイントを持ち越し更に2回戦行い、トータルトップの者が優勝となる。
最初の5回戦までの抜け番だが、予備抽選を行い1番を引いた者から抜け番となる回を選ぶことができる。プロクイーンは4回戦×3日間の戦い。抜け番選択にもそれぞれのカラーが出そうだ。
まずは選手の紹介から。
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宮内こずえ 18期生 女流桜花Aリーグ
現プロクイーン。女流桜花と共に二冠に輝くという偉業を成し遂げるも、桜花の防衛戦では仲田の前に敗れる。ここの冠も失う訳にはいかないと気合い十分だろう。
 
 
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清水香織 13期生 女流桜花Aリーグ
女流初のG1タイトルとなる27期王位獲得の言わずとしれた実力者。プロクイーン、女流桜花も手にしたことのある清水がまた決勝の舞台に帰ってきた。
 
 
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魚谷侑未 25期生 女流桜花Aリーグ
第6期、7期と女流桜花連覇から数々のテレビマッチでも優勝を果たす。意外にもプロクイーンは初決勝。
 
 
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西嶋ゆかり 28期生 女流桜花Cリーグ
昨年のプロクイーン決勝で宮内に敗れた西嶋が、今度こそはの思いで決勝に戻ってきた。2年連続の決勝とはいえ、決勝に残った5名の中で圧倒的に舞台慣れしていないと思うが、どうなるだろうか。
 
 
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山脇千文美 29期生 女流桜花Bリーグ
昨年はベスト16で敗退してしまったが、今期は悲願の決勝の舞台へ。獲得タイトルこそないものの、他の対局やタイトル戦等惜しいところまで駒を進めていることが多く、近年活躍が目立つ女流の1人である。
抜け番選択の権利を得た順は山脇、清水、宮内、魚谷、西嶋の順。山脇は4回戦目、清水は1回戦目、宮内は5回戦目、魚谷は2回戦目、選択権のない西嶋は自動的に3回戦目の抜け番となった。
 
1回戦 起家から 西嶋 山脇 魚谷 宮内
開局の親の西嶋、ファーストテンパイは5巡目。
 
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迷う事なく二万単騎の即リーチを選択。四万七万が1枚ずつ見えているから即リーチだったのか、四万七万が1枚も見えていなかったらどうしたか、それは分からないが西嶋はこの選択がすっとできるようにこの決勝までの期間準備してきた、と思わされるリーチだった。準備と記したが技術的なものという意味ではなく精神的にというもの。これが出来ているかいないかでは、舞台が大きければ大きい程違いが出る。
宮内が躱しのピンフテンパイをいれるも力強く二万を引き寄せた西嶋。裏ドラはなかったが大きな3,200オールだ。
東2局にも西嶋
四万五万六万六万七万八万五索三筒四筒四筒五筒白白  ツモ六筒  ドラ西
二筒の3枚切れを見て打四筒のテンパイトラズ。次巡に白を引くとピンズの場況がいいことから三筒六筒のノベタンでリーチ。
これを1シャンテンの宮内から一発で捉えて、裏が1枚乗り満貫のアガリ。今局は一転冷静さも見える素晴らしい入りだ。
南1局
 
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南家の山脇、数少ないチャンスをものにしようとここから柔らかくドラドラのテンパイを外す打七万。次巡に七筒を引き入れリーチ!
山に6枚の満貫リーチ。追いつきそうな人もいない・・・後は山脇がツモるかどうかの勝負かと見ていたが結果は、
 
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見事に押し切った西嶋のアガリ。
その後は魚谷が素晴らしい満貫を2回決めるも、西嶋には届かず。山脇も宮内のドラポンに対しハイリスクだが勝負と出てきっちりアガリ最小限の失点で抑えた。
1回戦終了
西嶋+28.5P 魚谷+17.4P 山脇▲9.8P 宮内▲36.1P (抜け番、清水)
 
2回戦 起家から 清水 宮内 山脇 西嶋
ここから清水が登場。
まずは宮内がタンヤオ、ツモの500・1,000からスタート。
三万四万五万六万六万八索八索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  ツモ八索
1回戦にラスを引いたからといって焦ることもない、自分のフォームで戦っている。
しかし東2局の親番でソーズのホンイツで仕掛けた山脇がソーズも字牌も余る事なく満貫テンパイ。これに宮内が捕まってしまった。これは宮内が不運としか言いようがないが、この局に関してはツイテいた山脇が次局の親番、チャンスを逃さなかった。
 
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ターツが足りているからと、多くの人が二索を打ちそうなこの場面山脇は発を打った。次巡ツモ三索でターツオーバーに。
ターツがたくさんあると迷うからよくない、とたまに耳にするがそんなことはないだろう。ターツオーバーは迷う形などではなくターツが選択「できる」状態のこと。相手が重なる前や鳴きづらい形になる前に役牌を打ちたいとの気持ちもあったのだろうが、ここからうまくピンズターツを処理し、最速の六索九索テンパイでリーチ。ピンズのホンイツテンパイの清水から九索を捕え12,000の加点に成功した。
次局は状況判断が的確なピンフのみをヤミテンにしてアガると、次は2件リーチを受けての3フーロで1,000は1,200オール。2回戦目にして山脇の良さでもあるフットワークの軽いアガリがでてきた。
しかし待ったをかけたのはベテラン2人。まずは宮内がホンイツで1,600・3,200をアガると圧巻はこの清水の3,000・6,000。
 
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ここまで明らかな劣勢でどこからでも溢れそうな一万を拾いにいかず真っ向勝負のリーチ宣言。
見事にツモアガってみせた。
「入り目はラス牌の九索。だったらこの手は満貫じゃないんですよ」
対局終了後にそう語った清水に憧れの様な感情を抱かずにはいられなかった。
この後は山脇が局を進めていく展開に。2着をなんとか宮内が守りきり2回戦が終了した。
2回戦結果
山脇+41.9P 宮内+3.0P 清水▲17.1P 西嶋▲27.8P
2回戦終了時
山脇+32.1P 魚谷+17.4P 西嶋+0.7P 清水▲17.1P 宮内▲33.1P
 
3回戦 起家から 魚谷 宮内 山脇 清水
宮内、清水が苦しい。ミスをしている、という訳ではないが山脇と魚谷の躱しと覚悟の一打が2人の手を潰しているといった印象。
 
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マンズのホンイツであろう親の清水に対してこのドラをどうするか。無難に行くなら五索切りもあるこの局面。ドラを打ったとしてもヤミテンか?発をそのままツモっても満貫あるし・・・と考えそうな所。魚谷は七万を横にスッと置いてリーチ宣言。
結果、清水から五索の出アガリで清水の親を潰す。リスクは承知。こうやって勝ってきたんだという魚谷の声が聞こえた気がした。
清水は躱し手も随所に入れ、巧さも見せるが本手はきっちり捌かれるかぶつけられて負けるというパターンに。
この回本手を実らせたのはまたも山脇で連勝。宮内は手にならない厳しい時間が続く。
3回戦結果
山脇+38.7P 魚谷+6.9P 清水▲17.5P 宮内▲28.1P
3回戦終了時
山脇+70.8P 魚谷+24.3P 西嶋+0.7P 清水▲34.6P 宮内▲61.2P
 
4回戦 起家から 宮内 西嶋 清水 魚谷
初日の最終戦。長い戦いとはいえここで3分の1が終わる。宮内としては少しでもポイントを戻しておきたいところか。
東1局、清水が仕掛けて3,900テンパイも終盤に魚谷がタンピンドラ1で追い付きリーチ。清水が勝負に出て一発放銃で裏ドラが1枚。両者にとって大きな跳満のアガリとなった。
しかし次局は西嶋が4,000オールとプラス者が得点を伸ばす展開に・・・と思ったが、同1本場、西嶋更に魚谷のリーチに被せ今度は魚谷から12,300!
その後魚谷が加点して親を迎えリーチを打つも、それを跳ね返したのは西嶋。
 
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ここから打三万として1シャンテンにとると、次のツモが四万でテンパイ。中筋になった六万を打って六筒単騎にとるかと思いきやここで更に六筒勝負。二筒五万と無筋を勝負して最後の六万を引きアガった。結果だけみると河には一組のトイツも落とさず最速のアガリであった。この感覚が西嶋の強さだ。
この後宮内が連荘するも本手は入らず苦しい展開。ラス親で3着目だった魚谷が選択を間違えずに4,000オールを決めて一旦宮内を躱して2着目に立つも、次局ピンズのメンチンが入った清水から宮内が七対子ドラドラを捕えて、この半荘2着で終了となった。
4回戦結果
西嶋+40.6P 宮内+9.0P 魚谷▲2.5P 清水▲47.1P
4回戦終了時
山脇+70.8P 西嶋+41.3P 魚谷+21.8P 宮内▲52.2P 清水▲81.7P
初日を終えて宮内、清水のベテラン2人が離されるという波乱の展開。しかし今日の内容を見る限りプラスで終えた3名が素晴らしかったということに尽きると思う。正に女流の頂点を決めるに相応しい戦いに初日はなったと思う。宮内、清水両名の巻き返しはあるのだろうか?2日目以降も目が離せない