プロクイーン決定戦 決勝観戦記

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第10期プロクイーン決定戦 最終日観戦記

2012/11/19
執筆:魚谷侑未


プロクイーン決定戦、最終日。
この日も、澄みきった青い空がどこまでも続いていた。
秋晴れの綺麗な空に心地よく吹く秋の風。
今日の舞台で吹く秋風は、心地よく吹く順風か。はたまた、奇跡の逆風が吹き荒れるのか。

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6回戦(起家から、室伏・清水・安田・豊後)抜け番:和久津

5回戦終了時点での成績は、

清水 +115.3P
安田 +85.9P
室伏 ▲23.7P
豊後 ▲86.7P
和久津 ▲91.7P

上から下までが縦長な成績となった。
上位である2人は、大崩れするタイプではなく、よほどの事がない限り上位2人のどちらかが逃げ切るだろうと思った。
東4局、親番の豊後は先制リーチを打つ。

四万五万六万4索4索5索5索7索8索9索一筒二筒三筒 リーチ ドラ4索

待ちはあまり優秀とは言えないが、万が一アガる事が出来れば大きな加点となる。
今日の豊後からは、昨日の終盤に見せた弱気な表情は見られなかった。
ただ前を見据え、上位2人を捉えようと懸命に戦っている。
そこにテンパイを果たした清水。

二万二万3索4索5索四筒六筒六筒八筒八筒東東東 ツモ六筒

親リーチに対して、果敢にも無筋を叩き切って行く。
戦う清水の姿は、トップ目に立ったからといって変わらない。
これをしっかりと3,200で清水がアガリ切る。

南1局、攻める姿勢を崩さない豊後が続けてリーチを打つ。

五万五万5索5索一筒一筒五筒五筒七筒七筒白白中 リーチ ドラ中

この中は、1人1枚ずつ抱えていて、既に純カラだ。
室伏も終盤に、チンイツのテンパイを果たす。

4索5索5索6索6索7索7索8索8索9索中 ポン2索2索2索

ここで少考の末、現物の打8索として中単騎に構える。
ドラの中を打ったところで、自分のアガリ目は厳しいと判断したのだろう。冷静な判断である。
この局は2人テンパイで流局。

点棒に大きな動きもないまま迎えた南4局。親番の豊後に勝負手が入る。

五万七万八万九筒東北北白白白発発中 ドラ8索

伸び方によっては満貫から跳満まで見える。
しかし、字牌が山に深く、テンパイを果たしたのは10巡目。

七万八万東東北北北白白白 ポン発発発

この形でテンパイをするが、清水からリーチが入る。

3索4索7索8索9索9索9索一筒一筒一筒四筒五筒六筒 リーチ

清水のリーチは、豊後にとっても直撃チャンスになるので好都合であった。
しかし、ここに七対子のみでテンパイしていた室伏が、一発で飛び込み清水の5,200のアガリとなった。

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2日目も、清水のトップでのスタートを見て、会場内の誰もが清水の優勝を確信しただろう。
総合で2位につける安田とのポイント差ですら、80ポイント以上ある。
清水がここから大崩れする様子など想像も出来なかった。

しかし、清水にとって鬼門とも言える波乱の7回戦が待ち受けていたのだ…。

6回戦成績
清水+29.8P  豊後+6.2P  室伏▲11.3P  安田▲24.7P

6回戦終了時
清水+145.1P  安田+61.2P  室伏▲35.0P  豊後▲80.5P  和久津▲91.8P

7回戦(起家から 、和久津・清水・安田・室伏)抜け番:豊後

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場が大きく動き出すのは南場に入ってからの事だった。
南1局、和久津の親番で、和久津は驚異の粘りを見せる。
南1局、清水の先制リーチに、和久津が追っかけリーチで一発ツモの2,000オール。
南1局1本場、親番中の和久津は、5巡目には東西を仕掛けてこの形。

二万二万六万7索五筒五筒六筒 ポン西西西 ポン東東東 ドラ発

褒められた仕掛けではないが、和久津の親番に対する執着が伝わってくる仕掛けだ。
そして、

二万二万一筒三筒五筒五筒六筒 ポン西西西 ポン東東東

ここから二万をポンして打六筒。3枚切れかつフリテンのカン二筒に受けた。
和久津の狙いは、もちろんこの形のままアガる事ではない。
周りを牽制させて、親番を維持する事がメインで、トイトイに変化するような事があればラッキーといったところか。

そして、ツモ五筒三筒四筒の待ちに振り替える。
これを、安めではあるが安田から四筒で出アガリ、2,000は2,300で親番を維持をする事に成功した。
ここから始まる和久津の怒涛の追い上げは、ここが分岐点だったように思う。

「明日は生きるか死ぬかでやります」

と、腹を括った和久津は、ただただ強かった。

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南1局2本場。

三万四万五万六万七万八万八万八万4索4索6索7索8索 ドラ七万

まずはこの形で和久津がリーチを打つと、4,000は4,200オールのツモアガリ。
南1局3本場、またしても和久津が先制リーチ。

三万三万四万四万七万七万九万九万七筒七筒南南中 リーチ ドラ八万

すると、ここに1シャンテンだった清水が一発で飛び込む。
裏ドラが四万で18,000は18,900のアガリ!清水からの直撃に、和久津は更に波に乗っていく。
更に加点を続けて1人テンパイ。2,600は3,100オール。1人テンパイ。と、連荘を続けていき、迎えた南1局7本場。

三筒三筒三筒三筒五筒五筒六筒七筒九筒九筒 ポン一筒一筒一筒 ドラ南

和久津は一筒をポンすると、9巡目には4枚目の三筒を引き入れ、カン四筒の満貫テンパイ。
河には1枚もピンズは余っていない。そこに、七対子1シャンテンとなった清水が暗刻の四筒を打ち出した。
清水も、まさか和久津が既にテンパイをしているなんて夢にも思わなかっただろう。
あまりにも痛い12,000は14,100の放銃となった。

このアガリで、和久津はまさかの100,000点超え。
反対に清水は、箱下15,300点となってしまったのだ…。

南1局8本場には、室伏の早いテンパイに、またしても清水が放銃。3,900は6,300。
南2局、清水の親番では、13巡目に打たれた1索をポンして形式テンパイを取る。

三万四万五万5索6索7索8索9索八筒八筒 ポン1索1索1索 ドラ八万

そこに、北家の和久津も押し返してテンパイを入れる。

八万八万4索5索四筒四筒五筒北北北 ポン2索2索2索

ここから3索をチーして四筒切り。
マンズやソーズは、和久津の河にほとんど切られ、場に高いピンズのテンパイ(四筒の跨ぎ筋だろう)である事はほぼ間違いない。
更に和久津は、持ってきた2索を加カンして新ドラは7索。そのドラのいずれも清水の目からはほとんど見えていない。
そして清水は、終局間際に持ってきた六筒で和久津に5,200の放銃となった。
清水らしくない放銃は、箱下20,000点超えで流石にメンタルが揺さぶられたか。
清水の表情が辛そうで苦しそうに見えた。

南4局、そこまで大人しかった室伏が4,000オールをツモる。
南4局1本場、和久津から8巡目にリーチが入る。

一万一万一万3索5索7索8索9索四筒四筒六筒七筒八筒 ドラ4索

そこへ、ヤミテンに構えていた安田が、

四万四万五万六万七万3索3索6索7索8索六筒七筒八筒 ツモ五筒

ここから打四万
678の三色やタンピンも見える広い1シャンテンにはなるが、リーチを受けて一発で危険牌、かつ1シャンテン戻しはなかなか出来るものではない。
和久津の河に七筒が早いので、通りそうな八筒を打ってしまいそうだ。
受ける局面の多かった安田だが、戦うべき局面の判断は間違えない。

しかし、ここも和久津が4索をツモアガリ2,000・4,000!
何とか堪えていた安田までも箱下となってしまった。
和久津は118,300点の大トップで終了。
この1半荘でトップを走る清水との差を150P以上縮める事となった。

「大変な事になった…」

会場内の誰もがそう思ったに違いない。こんな奇跡の逆風を、誰が予想しただろうか?
しかし、これで5人全員に優勝の可能性が生まれた。
1つしかないプロクイーンの椅子に座るのは、果たして誰になるのだろうか。

7回戦成績
和久津+103.3P  室伏+9.3P  安田▲35.2P  清水▲77.4P

7回戦終了時
清水+67.7P  安田+26.0P  和久津+11.5P  室伏▲25.7P  豊後▲80.5P

8回戦(起家から、和久津・清水・豊後・室伏)抜け番:安田

こういった戦いにおいて、追い上げる側は自分に追い風が吹いているように感じて強気になれるが、追い上げられる方はただただ不安に感じるものだ。
まだポイント差はあるものの、清水が何度も不安そうにポイントが書いてある紙を見上げる様子が印象的だった。

南2局、清水が3着目で迎えた親番。
室伏の仕掛け、和久津のリーチを受けるが、清水は押し返す。
そして、追い付いた親の清水が力強くツモりアガった。

四万五万七万八万九万西西白白白 チー四万二万三万 ツモ六万 ドラ三万

この強烈な4,000オール。これで清水が完全に息を吹き返した。

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南2局2本場、続く清水の親番、清水からリーチが入る。

三万三万1索2索3索7索8索9索一筒二筒三筒五筒六筒 リーチ ドラ1索 裏ドラ七万

これを一発ツモで4,000は4,200オール。
清水は再び後続を突き放し、総合ポイントで大きく抜け出した。

8回戦成績
清水+38.2P  和久津+8.9P   室伏▲8.9P  豊後▲39.2P

8回戦終了時
清水+105.9P   安田+26.0P  和久津+20.4P   室伏▲34.6P  豊後▲119.7P

9回戦(起家から、和久津・豊後・安田・室伏)抜け番:清水

東1局、4巡目に安田が東を1鳴きした。

2索2索5索6索8索9索三筒五筒北発中 ポン東東東 ドラ6索

遠くにホンイツを見ているのだろうが、安田にしては少し遠い仕掛けか。
すると、親の和久津のツモが伸び、リーチが入る。

五万六万七万3索4索6索6索6索一筒一筒六筒七筒八筒 リーチ

安田は、カン二筒テンパイから親のリーチを受けて、ホンイツテンパイに組み直す。

2索2索3索4索5索6索7索8索9索9索 ポン東東東 ツモ3索

しかし、終盤にこのテンパイとなり打2索。和久津に12,000の放銃となった。
南4局、安田が1人大きめのラスで迎えたオーラス。室伏の親番。

一万三万五万五万五万六万六万七万七万東東中中 ドラ2索

室伏は12巡目に、上家から打たれた七万に長考してポン、打東とした。(東が2枚切れ)
しかし、この室伏の鳴きが誘発したかのように、安田にテンパイが入りリーチ。

二万四万九万九万2索3索4索7索8索9索二筒三筒四筒 リーチ

これを一発ツモで3,000・6,000!
一気にダンラスから2着目に浮上する大きなアガリとなったのだ。

9回戦成績
和久津+25.4P  安田+3.0P  豊後▲7.0P   室伏▲20.9P

9回戦終了時
清水+105.9P   和久津+45.8P  安田+29.0P  室伏▲55.5P  豊後▲127.2P

10回戦(起家から、和久津・豊後・安田・清水)抜け番:室伏

この10回戦で5位敗退者が決定する。
豊後が残るためには、80,000点のトップが必要と、かなり厳しい条件となっている。
でも、豊後には落胆したような表情は見られなかった。

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東2局1本場、豊後の親番。

一筒一筒一筒三筒四筒七筒八筒九筒白白 ポン東東東 ドラ白

豊後はこのポンテンの、6,000は6,100オールをツモアガる。
まだまだ4位までは遠いが、勝負はここからだ。
最後まで諦めずに前を向いて戦う姿を、豊後のために集まってくれた応援してくれている方々に見せて欲しいと思った。

南4局、清水の親番。
オーラスの点数は、
豊後 48,700
安田 29,400
清水 20,900
和久津 20,000
こうなっていて、最後の親番が落ちてしまった豊後の4位残りはかなり厳しくなった。
何とか清水をラスで終わらせたい安田と和久津に、せめて3着のまま終わりたい清水といった感じか。

そんなオーラス、先制リーチを打つのは安田。

八万八万1索2索3索4索5索7索8索9索五筒六筒七筒 リーチ ドラ7索

そこへ、何とか1,000点をアガって清水を捲りたい和久津が鳴いて押し返す。

五万六万七万4索5索5索二筒二筒三筒四筒 チー八筒六筒七筒

すると、安田のツモ牌が、6索3索と清水に食い下がる。
流局するか?と思われたが、安田は力強く6索を手元に手繰り寄せた!
3,000・6,000をツモり、優勝争いに安田が再び一歩近づいた。

10回戦成績
豊後+30.7P   安田+17.4P   和久津▲18.0P  清水▲30.1P

10回戦終了時
清水+75.8P  安田+46.4P  和久津+27.8P  室伏▲55.5P  豊後▲96.5P(途中敗退)

11回戦(起家から、室伏・和久津・安田・清水)

最後まで粘ったが、残念ながらここで豊後が5位で敗退となった。
残り2回戦は、豊後以外の4名で行われる。

東4局、北家・安田の配牌が凄い。

二万二万三万四万9索三筒三筒白白発発中中 ドラ三筒

これを4巡目には2つ鳴いて、あっという間に高め大三元テンパイ。

二万三万四万三筒三筒中中 ポン発発発 ポン白白白

会場内に緊張が走る。しかし、安田の待ちはすぐに純カラになってしまう。
流石に「まだ巡目が早いから」と、中三筒を勝負する者もいない。流局で安田の1人テンパイ。
白発を鳴いた後、安田はずっとツモ切りだったので、鳴いてすぐテンパイだったと分かるが、
テンパイ形を見ても3人は冷静な表情だったのが印象的だ。

南4局、3着目の清水の親番。
清水としては、何とか1つでも順位を上げておきたいところだ。
このままの着順で最終戦を迎えると、最終戦は着順勝負になってしまう。
見ている私ですら、胃が痛くなりそうなポイント差だ。
そんな、何としてもアガリたい清水が5巡目にリーチを打つ。

二万三万四万四万五万3索4索5索二筒三筒四筒八筒八筒 リーチ ドラ4索

ツモが5索ではなく、2索ならヤミテンでも12,000。
それならばヤミテンにする選択肢もあっただろうが、三色にならない安めを引き入れて清水はリーチを打つ。
安めが入ったとはいえ、5巡目のこのリーチなら清水にも手応えがあっただろう。
これをアガる事が出来れば、また清水が大きく突き抜ける。清水の手にも気合いが入るが、結果は流局。
続く1本場には、和久津が400・700をツモりアガリトップで11回戦を終了した。

11回戦成績
和久津+27.4P  安田+11.7P   清水▲8.2   室伏▲30.9P

11回戦終了時
清水+67.6P  安田+58.1P  和久津+55.2P  室伏▲86.4P

最終12回戦(起家から、安田・和久津・室伏・清水)

日本プロ麻雀連盟では、タイトル戦の最終戦の回り順が、トータルの順位によって決められる事になっている。
東家・2位、南家・3位、西家・4位、北家・1位(今回の場合は、起家から安田・和久津・室伏・清水の並び順)。
こうする事によって、親番が落ちて優勝の可能性がなくなった者が、麻雀に参加しなくなるという歪みを少しでも緩和する事が出来る上に、
トータルトップ者をラス親にする事で、不自然なオーラスの連チャンを引き起こさないようにする事が出来るのだ。

最終戦でのトータルポイントはこうなっている。
清水+67.6P
安田+58.1P
和久津+55.2P
室伏▲86.4P

プロ連盟のBルールでは、順位点が5,000点・15,000点となっているため、清水・安田・和久津の3人は着順が上位の者がほぼ優勝する事になる。
そして、運命のプロクイーン決定戦の最終戦が始まった。

東1局から事件は起きた。
まだ勝負を諦めていない西家・室伏が先制リーチを打つ。

五万六万七万2索4索5索6索四筒四筒五筒五筒六筒六筒 リーチ ドラ四筒

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室伏の捨て牌は下の画像を見てもらいたい。

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特に変則捨て牌というわけでもなく、第一打に3索が捨てられている。
…正直、見ているのが辛くなった。
これが麻雀の辛いところとは言え、この誰でも飛び込んでしまいそうな待ちに飛び込んだ人は優勝が遠ざかってしまう。
麻雀中のメンタルには割と自信のある私でも、優勝をかけた最終半荘に、これを放銃して気持ちが折れない自信は…ない。
せめて、ツモってくれ…!と願う私の気持ちとは裏腹に飛び込んだのは安田。

二万四万四万五万六万2索4索4索5索7索二筒三筒四筒 ドラ四筒

親番で、この形から6索のチーテンを取ると2索で8,000の放銃。
安田からプロクイーン優勝という栄光が遠ざかったように感じた。

東2局は、和久津が3,900、1,500は1,800と連続でアガる。
東2局2本場、東1局にダメージの大きい8,000を放銃した安田だが、勝負はまだ諦めてはいない。
この局に安田の精神力の強さを感じた。

1索1索2索2索 ポン発発発 チー5索4索6索 ポン7索7索7索 ドラ4索

終盤に苦しい形ではあるが満貫のテンパイ。そこに飛び込んだのは室伏。
8,000は8,600の放銃で、東1局に安田からの満貫をそのまま返す形となった。
これで安田は再びスタートラインに立った。
「まだまだこれから」と、安田の背中越しに強い気迫を感じた。

東4局、和久津の第一打はドラの東。これに安田が仕掛けを入れる。1巡目にして、一気に場が緊張する。
和久津の第一打の東には賛否両論あるだろうが、トップ目に立った和久津がやるべき事と判断したのは、場を回す事なのだろう。
決勝戦の椅子に座ってなければ分からない想いが、そこにはある。
そして、和久津が先制テンパイを入れる。

5索5索6索7索8索五筒六筒八筒八筒八筒 チー四万五万六万 ドラ東

安田もすぐに追い付き、単騎待ちテンパイ。

七万八万九万9索五筒六筒七筒 チー九万七万八万 ポン東東東

安田は、途中良さそうな単騎待ちに受け替えるが、先に持ってくるのは和久津の当たり牌である七筒
和久津のタンヤオ仕掛けに、ほとんどの筋が通ってしまったため、自分も四筒-七筒待ちに受け替える。
この時、2人の当たり牌はほとんど清水が抱え込んでいて、このまま流局か?と、そんな空気が会場内に流れた瞬間。

「ツモ・・・2,000・4,000!」

と、安田の声。
安田がツモった8枚目の四筒-七筒に、今まで誰1人として声をあげなかった会場内がどよめいた。
これは、東1局の放銃に心を折らずに我慢した、安田への神様からのご褒美であるように感じた。

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そして、運命の南4局。
安田はアガれば優勝。
和久津は満貫ツモ条件。
ラス親の清水は連チャンが必須となる。

8巡目、和久津から気合いと迷いの両方が入り混じったような「リーチ」の声。
場が緊張する。ここに居る誰もが知っている。和久津は条件を満たすリーチしか打って来ないと。

六万七万八万九万九万九万7索8索9索二筒九筒九筒九筒 ドラ二筒

決して楽にアガれるような待ちではないが、ツモれば和久津の優勝だ。
そして、その優勝への架け橋である二筒は、あと1枚山に眠っている!

いい形の1シャンテンに構えていた安田も直撃だけはまずい、と撤退。
親番を維持しなくてはいけない清水は、強気に押し返していく。
清水も和久津の条件が、満貫ツモ条件であることを分かっている。
満貫出アガリでも条件を満たさない和久津は、清水から当たり牌が七筒打たれてもアガれない可能性が高いのだ。
結果、和久津の当たり牌の二筒は室伏に流れてしまい、ハイテイで和久津は清水の当たり牌を掴み2,900の放銃。

オーラスは続く。
南4局1本場、9巡目にアガれば優勝の安田にテンパイが入る。

四万五万六万6索6索6索一筒二筒三筒三筒六筒六筒七筒七筒

しかし、ここで安田はテンパイ取らずの打二筒とした。
アガればいいという重圧で、焦ってテンパイに取ったり、リーチを打つ人もいると思う。
優勝が目の前にある。この局が終われば、プロクイーンだ。そんな状況下でも、安田は冷静だった。

ここで、取らずにしておけば三筒六筒七筒のポンはもちろん、五筒-八筒をチーしても役ありテンパイに復活出来る。
不自由な出アガリが出来ないテンパイ形ではなく、一手先を見据えた一打だった。

例えばここで、安田が「リーチ」と言ったところで誰もオリてはくれない。
この不自由なテンパイでリーチを打って押し返された挙句、放銃なんてしてしまった日には、安田の元からプロクイーンが遠ざかってしまう。

しばらくこのままツモ切りが続くが、和久津から七筒が出てそれをポン。
すぐに六筒をツモり、自らの手で安田はプロクイーンの栄光を掴み取った。

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12回戦成績
安田+29.4P  和久津+5.0P   清水▲6.7P  室伏▲27.7P

12回戦終了時
安田+87.5P  清水+60.9P   和久津+60.2P   室伏▲114.1P

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2日間の長くて短い激闘に幕が閉じた。
この場で、この2日間の戦いを観戦できた事を素直に嬉しく思った。
そう思えるのは、選手全員がいい戦いを観せてくれたからである。

最後まで戦いを諦めずに粘った室伏と豊後。
結果はついて来なかったが、諦めない心を見せてくれた。

怒涛の追い上げを見せた和久津。
あと一歩で冠に手が届く位置まで上位2人を追い詰めた戦いは、皆の心に響いただろう。

後続を突き放したものの、追い上げられてしまった清水。
一番悔しい想いをしたのは間違いなく清水だろう。
それでも清水は強い。それは、自他共に認める事実であろう。
この悔しさを胸に、来年も表舞台でいい戦いを見せてくれる事だろう。

プロクイーンの栄光を勝ちとったのは、今年の女流桜花決勝戦で涙を飲んだ安田麻里菜。
彼女以外が攻撃型という状況で、それでも彼女はスタイルを崩す事なく2日間我慢を重ね戦い続けた。

「初日から苦しかったです。2日目も苦しかったのですが、最終半荘でトップ条件になったので、最後まで諦めずに戦い続ける事が出来ました。
まだまだ未熟な所がいっぱいあるので、これからも頑張りたいと思います。」

安田プロ、本当におめでとうございます!
そして、決勝戦を戦った選手の皆さん、いい試合を見せて下さってありがとうございました。