プロクイーン決定戦 レポート

プロクイーン決定戦 レポート/第12期プロクイーン決定戦 ベスト16レポート 小車 祥

2014年10月25日
プロクイーンのベスト16が行われた。
最高位戦日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀協会、日本プロ麻雀連盟。
この3団体の女流プロである事が、プロクイーンへの出場条件となる。
予選を勝ち上がってきた12名に、前年度決勝進出者4名を加えた16名での戦い。
和久津、豊後、安田、手塚の4名は、1年前の忘れ物を取りに決勝の舞台へ戻るため、ここから参戦する。
ルールは一発裏ドラのある連盟Bルール。
30,000点持ち30,000点返しの順位点が5,000点、15,000点。
オカがなく順位ごとの点差がそこまで大きいわけではないため、着順と素点の重要度のバランスが絶妙なルールと言える。
ベスト16は全5回戦のトーナメント。
同一メンバーでの長丁場の戦いは様々なドラマが生まれる。
選手の真剣な戦いをお伝えしていきたい。
 
A卓:和久津晶・朝倉ゆかり(協会)・佐藤あいり・西山あみ
100
 
イニシアティブを取る和久津に、終始冷静な朝倉の両極端なスタイル。
そこへ佐藤と西山がどう切り込んでいくのかが楽しみなカード。
1回戦の東1局から和久津が飛ばす。
まずはドラの南を雀頭にした親の和久津がリーチをかけてツモ。
挨拶代わりの4,000オール。
東2局、ここでも和久津は積極的に仕掛けを入れ、以下のアガリをものにする。
三索四索三筒三筒三筒四筒五筒  ポン北北北  チー六万 左向き七万 上向き八万 上向き  ツモ五索  ドラ三筒
2,000・4,000のアガリ。
100
 
1回戦をトップで終えた、和久津のペースでゲームは進行していくかと思われたが、和久津を簡単に逃がすほど甘いメンバーではなかった。
特に全5回戦の戦いでは、1人抜け出たからといって簡単には逃がしてくれない。
2回戦、東4局、親の西山はドラ暗刻の手牌を仕掛け、和久津からロンアガリ。
一万一万六索六索六索西西  ポン二万 上向き二万 上向き二万 上向き  ポン三索 上向き三索 上向き三索 上向き  ロン一万  ドラ六索
仕掛けている牌を見ても、簡単には止められない一万
しかし和久津にとっては、痛い12,000の放銃となってしまう。
朝倉もアガリを重ね、2回戦はトップに躍り出る。
和久津は▲45.1Pという大きなラスを取らされてしまう。
3回戦、ここまで勝負手をかわされてきた佐藤だったが、少しずつアガリをものにし始める。
南2局
四万五万六万七万八万九万七索八索五筒五筒五筒北北  リーチ  ツモ六索  ドラ七万
親の佐藤。裏ドラは乗らず、2,000オール。
しかし佐藤の勢いを止めたのは朝倉。
南2局1本場、わずか7巡での朝倉のアガリ。掴んでしまったのは佐藤。
五索五索八索八索八索西西西中中  ポン西西西  ロン中  ドラ三筒
12,000の放銃は佐藤にとって大きなダメージとなった。
安定した内容で4回戦もトップだった朝倉。
4回戦終了時
朝倉+65.4P  佐藤+23.1P  和久津▲13.6P  西山▲75.9P
最終戦は1つの席をめぐって佐藤と和久津の争い。
しかしこの最終戦、佐藤だけが取り残される展開となってしまう。
南3局
一万一万四万五万六万二索三索四索四索五索四筒五筒六筒  リーチ  ツモ六索  ドラ一万
裏ドラが四索で8,000オールと、西山も最後の親番で意地を見せるがここまで。
オーラス、和久津が300・500をツモり、勝ち上がりを決めた。
最終成績
朝倉+53.3P  和久津+0.7P  佐藤▲24.5P  西山▲30.5P
A卓勝ち上がり:朝倉ゆかり 和久津晶
 
B卓:豊後葵(協会)・宮内こずえ・内山えみ・古谷知美
100
 
女流桜花でAリーガーの古谷、押しどころと引きどころの使い分けが非常に上手い。
古谷を軸にゲームが進行していく中、内山と宮内が食らい付いていた。
昨年度ファイナリストの豊後はらしさを見せ、元気いっぱいに戦っていたのだが、展開に恵まれないように見えた。
B卓では最終戦に着目したい。
4回戦終了時
古谷+52.1P  内山+14.3P  宮内▲26.2P  豊後▲40.2P
古谷は最終戦の戦い方を、防御を主軸とする戦術に決めたようだった。
これだけのリードを持っていれば、2人に捲られることはそうそうないと踏んだのかもしれない。
自然と古谷以外の3者での叩き合いとなる。
南2局、豊後は絶対に落とせない最後の親番だった。
少し遠い苦しい仕掛けを入れ必死に連荘を狙うが、宮内のリーチにツモられてしまう。
四万四万四索五索六索七索八索二筒三筒四筒五筒六筒七筒  リーチ  ツモ六索  ドラ東  裏二筒
南3局、諦めずに豊後はドラ単騎のリーチを打つが、ここも宮内がかわす。
いよいよ最終戦のオーラス。
現状5回戦トップ目の宮内は、このままの順位で終わればトータルトップの古谷と17.9P差。
トータル2着の内山と17.6P差まで迫っていた。
いずれにせよ宮内は連荘しなければならない。
アガリやめもないので、どちらかを捲ってもさらにもう1局。
宮内にとってはかなり苦しい状況だった。
100
 
南4局、宮内の配牌はかなり苦しく、テンパイできないかもしれなかった。
内山、遠いながらも自分がアガって終わらせようとタンヤオの仕掛けを入れる。
宮内は残りツモ2回のところでなんとかテンパイ。リーチをかける。
五万五万五万七万八万九万四索四索四索六索六索二筒四筒  リーチ  ドラ五筒
ここは宮内の1人テンパイで流局。
南4局1本場、宮内の配牌。
四万五万八万七索九索三筒五筒八筒九筒九筒東南北発  ドラ三万
この局も前局に続いて苦しい手牌の宮内。
なんとかツモにも助けられ、ある程度形は整っていくのだが、それでも13巡目になっても1シャンテンだった。
宮内の上家に座っていた内山、13巡目の手牌。
七万八万九万一索二索三索七索七索八索一筒三筒三筒五筒  ツモ一筒
残りツモは3回。自分でアガって決めにいくというのは少し無理があるように思う。
点数状況的には、宮内がテンパイしていてヤミテンに構えている可能性は低く、手出しツモ切りや雰囲気を見ればテンパイしていないと読むのは難しくない。テンパイを入れさせないために、宮内の現物を切るというのがセオリーに思えた。
しかし内山の選択は打八索
宮内はこれをすかさずチー。
四万五万二筒二筒三筒四筒五筒七筒八筒九筒  チー八索 左向き七索 上向き九索 上向き
役なしだが、最低条件であるテンパイを確保。
次巡に、内山も四筒をツモりテンパイ。打三筒でリーチを打つ。
流局し、宮内と内山のテンパイ。
これでトータルトップが内山になる。
続く2本場も3本場も、内山はあくまで自分がアガって終わらせにいく姿勢。
宮内は片アガリの仕掛け、役なしテンパイの仕掛けを入れ、なんとか親番だけは維持する展開。
内山もなんとかテンパイまでは漕ぎ付けるため、古谷はどんどんテンパイ料で持ち点を削られていた。
おそらくこの3局の内、どこか1局でも内山が宮内に鳴かせないように打っていれば、宮内はテンパイできずに終わっていただろう。
南4局4本場、わずか2巡目、ついに宮内に自力テンパイが入る。
六万六万九万九万二索二索三索三索六筒六筒八筒発発  ドラ一索
一旦はヤミテンに構えるが、4巡目に七筒待ちに変えてリーチ。
アガれそうな待ちを探すよりも、早めにリーチを打って押さえつけておきたいという意図。
誰もこの親のリーチには放銃したくないのだから。
終局間際に七筒をツモ。3,200は3,600オール。
この時点で宮内がトータルトップになる。
順位点を含むトータルポイント
宮内+25.3P  内山+24.5P  古谷+15.2P  豊後▲66.6P
しかし、5回戦現状4着目の古谷は3着目の豊後と900点差。
古谷は何をアガっても3着になり、順位点が▲5Pになるため、宮内と内山を捲り勝ち上がりという条件だった。
南4局5本場、北家の内山が豊後の切った八万を早々に仕掛ける。
一筒一筒一筒三筒六筒七筒九筒北北中  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き
古谷、7巡目にテンパイ。
八万八万一索二索三索五索六索七索六筒七筒発発発
古谷のアガリで終わりかなと思っていたが、宮内がツモ切った北を内山がロン。
一筒一筒一筒三筒三筒五筒六筒七筒北北  チー八万 左向き七万 上向き九万 上向き
1,300は2,800
これで内山と宮内の勝ち上がり。
まさか2人に捲られるとは思ってなかったであろう古谷の胸中を想像すると苦しかったが、古谷は気丈に振る舞い凛と返事をしていたのが印象的だった。
100
 
戦略に走らない内山のまっすぐな麻雀がどこまで通用するのか、ベスト8を楽しみにしたい。
最終成績
内山+26.3P  宮内+23.5P  古谷+15.2P  豊後▲66.6P
B卓勝ち上がり:内山えみ 宮内こずえ
 
C卓:安田麻里菜・優木美智・茅森早香(最高位戦)・ジェン
100
 
第10期プロクイーン、初代女流桜花、第11期女流最高位。
タイトルホルダーが名を連ねる。
そしてその3者は皆、守備が上手な対応型のように見受けられる。
ジェンがアグレッシブにかき回す展開を想像したが、実際にはジェンは展開が向かずかなり苦しい戦いだったようだ。
100
 
1回戦東4局、安田から7巡目にリーチの声。
一索二索三索四索五索六索六索七索東東東北北  リーチ  ドラ二万
安田の河の第一打には九索が切られていて、ホンイツには見えない工夫が施されていた。
しかしアガれないまま、14巡目に親の優木が追っかけリーチ。
六万七万八万三索四索五索六索七索八索三筒四筒六筒六筒  リーチ
ほどなくして安田がツモ切った二筒を優木がロン。
5,800のアガリとなる。
南2局、10巡目、茅森がテンパイ。
二万三万四万二索三索四索一筒二筒三筒四筒四筒七筒八筒  ドラ七索
ここはヤミテンとし、すぐに一筒を引いて三色確定のリーチを打つ。
七対子ドラドラをテンパイしていたジェンからすぐに出て12,000。
南4局、優木は茅森を追う立場で親番を迎える。
六万六万七万七万八万二索三索四筒四筒五筒六筒七筒八筒九筒  ドラ四索
四筒を切るのが一番テンパイチャンスが多いが、優木は打点と最終形の考慮し打九筒と構える。
茅森が南をポン。五索五索 左向き四索 上向き六索 上向きでチー。
安田がリーチ。
100
 
二万二万二万二索二索四索五索六索六索七索八索二筒三筒  リーチ
優木はツモ五万でテンパイし、ヤミテンを選択。すぐに四索をツモり、2,600オール。
肝がすわった腰の重い麻雀で優木がまずはトップを取りリードする。
その後は、優木と茅森のアガリ合戦のような状態。
安田とジェンは勝負手が入ってはいるものの、競り合いで勝てない展開が続く。
対して、ここぞというところでアガリをものにしていた優木が、トータルトップで最終戦を迎える。
4回戦終了時
優木+73.6P  茅森+25.2P  安田▲30.0P  ジェン▲69.8P
安田が最終戦にようやくらしさを見せ、トップ目に立つ。
トータル2着だった茅森は、最終5回戦はオーラス4着目。
この時点でのトータルポイントは、安田より茅森の方が上。その差はわずか2.2Pだった。
オーラスの親は安田。安田からすると一度アガリ、茅森より上になってからもう1局という状況。
しかしここで勝負を決めたのは茅森。
五万五万三索三索一筒一筒四筒四筒七筒七筒東東南  ロン南  ドラ七筒
ジェンから6,400をアガリ、勝ち上がりを決めた。
道中劣勢でありながらも、最後にはきちんと差をつめて勝ち上がりを狙える位置についているのは、さすがはタイトル戦決勝常連の安田だと思わされる強さだった。
最終成績
優木+88.0P  茅森+14.0P  安田▲5.0P  ジェン▲98.0P
C卓勝ち上がり:優木美智 茅森早香
 
D卓:手塚紗掬・吾妻さおり・王政芳・山脇千文美
100
 
王位戦やプロクイーン決勝進出など、次々に結果を出している手塚。
現女流桜花の吾妻。
初タイトルを狙う王。
ベスト16メンバーの中で最若手の山脇。
まずは吾妻が先制。
東3局
一万一万七索七索八索八索九筒九筒東東南南西  リーチ  ドラ九筒
わずか4巡でのリーチ。河の情報が少ないリーチに山脇が放銃してしまう。
そして続く東4局。
吾妻の四暗刻が炸裂。
100
 
七万七万七万六索六索三筒三筒三筒七筒七筒七筒西西  リーチ  ツモ六索
1回戦は吾妻の大量リードで終了。
続く2回戦は手塚がアガリを重ねトップ。リードをもらっていた吾妻はラスを引かされる。
しかし、吾妻はそんなことではうろたえず、落ち着いてアガリを積む。
3回戦南3局、吾妻と王のトップ争い。
吾妻が積極的に仕掛けを入れ、テンパイ。
三万三万五万六万七万八万九万  ポン南南南  ポン中中中  ドラ四筒
これに対し王がリーチ。
100
 
三万四万五万七万八万九万四索五索四筒四筒北北北  リーチ
ドラドラの勝負手であったが、軍配は吾妻に上がる。
山脇の仕掛けで流れてきた四万を王がツモ切り、吾妻へ8,000の放銃。
4回戦東2局、この時点でトータルトップの吾妻、以下のテンパイ。
三万四万五万六万八万二索二索三索四索五索三筒四筒五筒  ドラ五索
現桜花様は8,000のアガリや、手変わりして三色が消えてしまうのは納得がいかないらしい。
強欲にリーチ。簡単に七万をツモってしまうからすごい。3,000・6,000
4回戦終了時
吾妻+80.1P  王▲1.9P  手塚▲2.8P  山脇▲75.4P
吾妻の勝ち上がりがほぼ決まり。
山脇はかなり頑張らないと敗退。
事実上、王と手塚の着順勝負というような最終戦へ。
最終戦は誰も抜け出さない展開のまま、オーラスを迎える。
手塚30,000 山脇30,700 王28,700 吾妻29,600
親は手塚。
テンパイノーテンで王と着順が変わってしまう手塚は、一度アガってもう1局やらなければならない状況。
少し王の方が有利なオーラスと言えるだろうか。
南4局1本場供託1本。
先にテンパイを入れたのは王。
アガれば勝ちの王は積極的に仕掛けた。
三索四索白白  ポン八索 上向き八索 上向き八索 上向き  ポン五筒 上向き五筒 上向き五筒 上向き  ポン南南南  ドラ一万
苦しい手牌だった手塚も12巡目にようやくテンパイ。
二万三万四万四万五万七万七万七万一索三索六索七索八索  ツモ二索
少考し、五万を切ってリーチとした。
おそらく、王の仕掛けに5枚持ちの四万七万が切りづらかったのだろう。
ドラが一万ということもあり、ドラスジの四万も切りたくない。
結果的にはこれが正解。手塚は四万をツモ。
裏ドラは乗らず、1,000は1,100オールで次局へ。
決定打とはならなかった。
南4局2本場、手塚、7巡目に以下のテンパイ。
一万一万七万九万一索二索三索一筒二筒三筒七筒八筒九筒  ドラ七万
その巡目に、ドラの七万を暗刻で持っていた吾妻から、ポロリと八万が切られる。
7巡目にこの形で八万を切って18,000の放銃になるなど、夢にも思わなかったであろう。
放銃した吾妻は痛くない。痛いのは着順勝負をしている王。
南4局3本場、王は倍満ツモ条件となってしまった。
さすがにもう手塚と吾妻の勝ち上がりで終わるかなと思って見ていた。
しかし王、一度はテンパイを取らずに以下のテンパイ。
六万七万六索七索七索七索八索三筒四筒五筒六筒七筒八筒  リーチ  ドラ二筒
ツモって更に一発か裏ドラで2翻つけねばならない苦しいリーチだったが、その形まで持っていく執念に見ているこちらまで胸が熱くなる。
しかし、この宣言牌の六万に手塚からロンの声。
四万五万一索二索三索四索五索六索六筒七筒八筒北北  ロン六万
1,500は2,400。
実は王は六万を3枚持っているところから上記の手牌にしており、手塚は1枚目の六万は見逃していた。
リーチとくれば見逃さないよという構え。手塚、隙を見せない。
南4局4本場。
これで三倍満ツモ条件となってしまった王。
王はそれでも執念を見せ、四暗刻を目指すも1シャンテンまでしか伸びず終了。
最終成績
吾妻+45.0P  手塚+37.5P  王▲11.7P  山脇▲70.8P
勝ち上がり:吾妻さおり 手塚紗掬
 
これによりベスト8の卓組みが決定。
ベスト8からは連盟チャンネルにて生放送となるため、各卓の日程が異なる。
11月21日(金)
A卓:朝倉ゆかりvs宮内こずえvs優木美智vs手塚紗掬
11月28日(金)
B卓:和久津晶vs内山えみvs茅森早香vs吾妻さおり
そうそうたるメンバーに1人内山が挑戦するというような構図。
レポートでは書ききれなかった細かい感情の流れや、選手の熱気などがたくさんある。
今は連盟チャンネルという画期的なツールを通してお伝えすることができるのは、とても素晴らしいことだと思う。
是非、放送を見てそれらを感じて欲しい。