中部プロリーグ レポート

第31期中部プロリーグ 最終節レポート

●Aリーグ(執筆:村瀬 寛光)


Aリーガーにとっては1年間の集大成とも呼べる第31期中部プロリーグの最終節が行われた。
プロであるが故、これまでこの日の結果にすべてを懸けて闘ってきた選手の熱い想いが実る瞬間である。しかし現実は決勝進出者、残留組、降級組の3つの席しか残されていない。言葉だけでは語り尽くせない一期一会の数々のドラマが繰り広げられて来たが、栄光のスポットライトに当たる権利を得るのは4名だけだ。
最後に決勝を決めた4人の各プロフィールと自身が常に己の麻雀と向き合い、いかに結果を追い求めているかという想いや思考をこの場を借りてご紹介したい。

 

4位通過: 土岐雄太(+57.9)  25期生・二段  決勝進出:3回目  優勝経験:なし
【 最終節の感想 】
「通年制度と長期間での戦いに変わって初めて決勝卓が見える展開になり、自分自身いつも以上に緊張し、気が張っていたと思います。
対局前の抽選にて小野プロとの直対になったので彼にだけは自由にさせないようにと思ったんですが、その張り詰めた緊張のあまり1,2回戦は焦った仕掛けや親番での腰の軽さが目立ち、3着4着と大きなビハインドを背負いました。3回戦の抜け番で気持ちを切り替え、人のポイント差を意識し過ぎないこと、自分のスタイルを崩さないことを反省し、迎えた4回戦。幸運にもドラの集まりや手のまとまりがよくなり、元のポイント以上に浮上することが出来た。麻雀が改めて気持ちと心の持ちように左右されるものだと実感しました。4回戦は特殊な場況回しが生まれ、ギリギリでしたが決勝に残ることが出来てホッとしました。」

【 決勝戦への意気込み 】
「自身の無難なスタイルに比べ、掛水、小野、伊藤の3者は、たった一回の親番で逆境を跳ね返す爆発力を持っていることは今期の戦いでも十分実証されているので、まずは気持ちで負けないこと、自身の持ち味やスタイルを崩さないことを心掛けたいと思います。」

 

3位通過: 小野雅峻(+81.3)  29期生・三段  決勝進出:2回目  優勝経験:1回
【 最終節の感想 】
「今期より全10節の長丁場となったAリーグだが、8、9節と大きくポイントを減らしてしまった。折り返しまでうまくまとめられていただけに、絶対に負けられない最終節だった。
1回戦東二局、6,000オールをツモり、最高のスタート。しかし終わってみれば32,500持ちの2着。とても感触が悪かった。が、逆にここで改めて気合いを入れ直せたことが決定戦進出に結びついたとも思う。」

【 決勝戦への意気込み 】
「今回で2回目の決勝となる。前回は優勝という最高の結果であったが、内容には納得していなかった。今回は内容も満足いくものにした上で優勝という最高の結果を残したい。意識している選手は伊藤プロ。」

 

2位通過: 伊藤鉄也(+111.5)  22期生・四段  決勝進出:8回目 優勝経験:2回
【 最終節の感想 】
「金曜日の夜から名古屋入りして調整セットとイメトレを行った。おそらく掛水は当確とし、私以外の3名の内プラスした1名ないし2名が決勝メンバーになるだろうと想定し、ポイントを守るのではなく最終節を決勝だと思って対局に入ろうと前もって決めていた。
この方が決勝で対戦したときの相手に与えるイメージも楽ではない相手だと思わせたいという思いもあった。いつも通り私も全力で攻めようと思って対局に挑んだが、三戸・土岐・小野の気迫に押されてしまっている感触があった。
最終5回戦はそのことも踏まえて今日の私はすでに他の選手と比較して気持ちが遅れてると判断し、素直に受け入れ面前にこだわり打点重視で手を組んだ。鳴きたい牌も我慢し守備を強めに意識しつつ、ゆったりとかまえて終局した。 決勝に残れたことは素直にほっとしている反面こんなのではダメだ!と強く反省している。決勝までには万全の状態で挑みたいと思う。」

【 決勝戦への意気込み 】
「この1年決勝に行きたい気持ちが強く、まずは決勝という結果が残せて嬉しい。優勝したいと言う気持ちは全員一緒だしそれは当たり前のことなので、とにかく一生懸命闘ってその上で結果がついてきたら最高。なにより良い試合を見せたいし、良い試合にしたいです。」

 

1位通過: 掛水洋徳(+248.7)  21期生・三段  決勝進出:6回目 優勝経験:なし
【 最終節の感想 】
「最終節の対局メンバーは上位陣が集まったのでこの卓から3人以上は決勝メンバーが出ると思ってたのと、幸いポイントに余裕があったので決勝をイメージして対局メンバーの対応などを確認しながら出来ました。」

【 決勝戦への意気込み 】
「決勝戦は放送対局の上、決勝メンバーの中では前回の決勝から1番長い期間が空いてるので、最初は緊張すると思いますが、その緊張感を楽しみながら自分の麻雀を打ちたいです。宜しくお願いします。」

普段どんな事を考えて麻雀を打ち、向き合っているかなどは実際に接して見なければ分からないだろう。4名のコメントから多少なりともそれぞれの人となりを理解して頂けたかと思う。決勝は独特な雰囲気を持つ場で、ましてや配信対局は全員初めての経験となる。今期貫き通した麻雀を同じように打てるかが最大のカギとなるだろう。各自の熱い想いを決勝の舞台で遺憾なく発揮する事を期待したい。

最後に私自身はC・Bリーグ昇級を経て1年半ぶりにAリーグ復帰となる。レポートを通して色々と勉強をさせて頂いたのと同時に、来期からは自分も決勝の舞台に残れるよう今からしっかり準備をして行くつもりだ。
半年間、レポートにお付き合い頂きありがとうございました。
中部プロリーグ決勝戦は夏目坂スタジオにて2019年1月25日(金)14:00開始予定となります。

Aリーグ

順位 名前 10節 合計
1 掛水 洋徳 ▲ 12.5 248.7
2 伊藤 鉄也 ▲ 42.2 111.5
3 小野 雅峻 34.9 81.3
4 土岐 雄太 20.3 57.9
5 都築 友和 46.2 48.3
6 森下 剛任 ▲ 7.4 32.8
7 三戸 亮祐 ▲ 1.5 12.4
8 加藤 泰史 13.9 2.0
9 寺戸 孝志 14.5 ▲ 8.9
10 朝岡 祐 ▲ 21.1 ▲ 31.1
11 清水 哲也 ▲ 27.6 ▲ 52.1
12 山本 拓哉 1.8 ▲ 61.8
13 日下 健司 ▲ 59.4 ▲ 117.0
14 杉村 泰治 19.8 ▲ 193.0
15 古川 孝次 ▲ 20.7 ▲ 217.3

 

 

●Bリーグ(執筆:村瀬 寛光)
寒さもひとしおに身にしみる頃、Bリーグの最終節が始まった。
Aリーグに昇級できる栄光の切符はわずか2枚。そして今期の結果を真摯に受け入れ来期に懸けるチャンスを獲得できる残留枠、対して降級へ誘う茨の道への切符は4枚。それぞれ現在の立ち位置で向かうべき目標はすでに決まっている事だろう。

5卓 中谷・金平・青山・大橋
昇級を狙える位置にいる4位の金平と6位の大橋。1~2回戦は青山と大橋がトップを分け合い、対する金平はオール2着。3回戦終了時には2位に浮上していた金平。他卓の結果次第ではあるが、残り1回戦で昇級が決まるプレッシャーからか気持ちと手牌がかみ合わず手痛いラスを引き終了。今期は6位で終えた大橋だが、中部プロリーグ全体の中で唯一オールプラスにまとめていたのが非常に印象的だった。実力に定評があるだけに来期も引き続き注目される選手の一人になるだろう。

6卓 高橋・佐藤・富村・田村
ここまでプラスなのは7位の高橋と9位田村。昇級圏内に達するには状況的に厳しいがチャンスはゼロではない。結果を見ると1~4回戦まで1・2・2・2着とすべてプラスでまとめた富村の圧勝劇。高橋も最後まで頑張ったが届かず4位で終了。田村は序盤から女流プロ3人に圧倒され、3連続ラスを引き降級となった。

7卓 斎藤・木村・大滝・大町
注目は首位斎藤と2位大町の直接対決。最低条件として相手よりポイントで上回る、もしくは両者共にプラスで終えなければ自力での昇級の道は閉ざされる。1~3回戦と大滝が3連続トップを取りポイントを伸ばし卓内トップ。斎藤は2・3・4着とかなり苦しい展開を強いられる一方、大町は1・4・3着で少しのマイナスで迎えた4回戦、その差は18.8P大町がリードしていた。斉藤はプラスが最低条件だが、現実的に考えると大町をマイナスに沈める事が出来なければ昇級は厳しい。対する大町は斎藤よりポイントを少しでも上回れば昇級がグッと近づく優位に立った状況の中、厳しい条件を最後まで諦めず見事クリアしたのは斎藤。2位での昇級となった。

8卓 安藤・太田(充)・堤・岡田
こちらは3位の堤と5位安藤との一騎打ちの様相を呈している。他卓の結果にもよるが昇級を目指すためにはプラスが最低条件。堤は3回戦終了時点で+123.2Pと暫定首位に躍り出ていた。最後に3着を引かされたものの、マイナスを最小限に留め逆転優勝を果たした。
太田は降級圏内にいるため、なんとしてもプラスで終えたいという鬼気迫る雰囲気が伝わってきた。その想いが通じたのか1回戦目は一人浮きのトップ、続く2回戦も2着とポイントを蓄えギリギリのところで降級を免れた。

昇級を自らの力で見事勝ち取ったのは、堤・斎藤の両名。今この瞬間が彼らにとって本当のスタートになるだろう。1年間という長丁場で上位4人の椅子を争う熾烈な戦いが幕を開ける。さらなる高みに向けて真の力が必要とされるAリーグでも今期以上の活躍を期待したい。

Bリーグ

順位 名前 5節 合計
1 堤 文吾 25.6 114.0
2 斎藤 寛生 ▲ 12.1 97.8
3 大町 篤志 ▲ 17.6 83.7
4 高橋 侑希 37.8 66.2
5 金平 裕樹 ▲ 15.7 65.1
6 大橋 幸正 1.4 41.1
7 安藤 大貴 ▲ 30.6 40.1
8 富村 つぐみ 55.6 18.9
9 青山 大 31.6 12.2
10 木村 東平 ▲ 31.5 ▲ 7.4
11 佐藤あいり 5.6 ▲ 35.5
12 太田 充 22.2 ▲ 59.0
13 大滝 聡 61.2 ▲ 88.6
14 田村 良介 ▲ 99.0 ▲ 95.1
15 中谷 彰吾 ▲ 17.3 ▲ 103.3
16 岡田 智和 ▲ 18.2 ▲ 206.2

 

 

●Cリーグ(執筆:長谷川 弘)
第31期中部プロリーグ後期Cリーグもいよいよ最終節だ。

今期開始前、各者ともそれぞれが思いを込めて描いたはずの脚本。
節が進む毎に幾度も推敲を重ね描き直すも、ほぼシナリオと相違なく最終節にたどり着いた者はほんの一握りだろう。
それでもやはり、良質なドキュメンタリーは見る者を魅了し、感動を与える。
それらを精一杯演じたすべての対局者にねぎらいと感謝の意を表したい。

予断を許さない激戦を制して昇級を果たしたのは前節まで着実にスコアを伸ばし、上位を堅守してきた次の二名。

優 勝: 大高坂 松城 トータルスコア +146.8
「大きなミスもなく、粘り強くそつなく打てたことが結果に繋がったと思います。Bリーグでもこの状態を維持して精いっぱい戦いたいと思います。」

準優勝: 越川 清一 トータルスコア +127.7
「11年前初めてリーグ戦に参加して以来、最も気合の乗った戦いができたと思います。日和らず前に出て戦ったことが結果に繋がったと素直に受け止めています。」

辛くも降級を免れた者も、今の成功はその先の成功を何も保証しないということを心に留めておいてほしい。望む結果が得られたのなら、次はそれに慢心することなく、苦心して戦い抜いた過去の自分を振り返ることも忘れないでほしい。
ともあれ昇級を果たした二名には忘れられない瞬間の一つになったに違いない。
今後のさらなる飛躍を祈ってエールを送ろう。

わずか5節という泡沫の戦い。それらを全て終え、降級という結果に終わった五名それぞれの胸に去来するものは何か。
誰しも何と戦っているのかわからなくなる瞬間を経験したことがあるだろう。牌か、人か、それとも卓上の何かか。見えない何かに怯え、何に怯えているのか自分でもわからない。真剣に向き合おうとすればするほど臆病になり慎重になる。何と戦い、何に勝ったのか、あるいは負けたのか。答えの出ない負のスパイラル。
自分で自分に何かを言い聞かせるしかないとき、それは大きく目標から遠ざかるときでもある。
たとえ降級という現実を辛くも受け入れなければならない立場に立たされようと、昇級または残留した者の過ぎ去った一打を邪推するほど時の猶予はない。
終わりがあれば始まりもある。新たな希求心をもって来期に目を向けてほしい。

Cリーグ

順位 名前 5節 合計
1 大高坂 松城 36.4 146.8
2 越川 清一 20.4 127.7
3 蓮池 浩太 46.6 61.5
4 池沢 麻奈美 ▲ 16.3 50.0
5 鈴木 涼太 ▲ 22.8 45.8
6 岡本 丈司 17.5 27.9
7 若松 正和 ▲ 41.9 19.1
8 太田 峻也 ▲ 40.0 12.7
9 河合 慎悟 65.5 ▲ 13.9
10 日高 志穂 60.3 ▲ 17.1
11 山本 美文 ▲ 38.8 ▲ 22.3
12 杉浦 貴紀 16.4 ▲ 29.7
13 浅野 文雅 ▲ 15.1 ▲ 59.2
14 大西 義則 ▲ 41.1 ▲ 131.5
15 鈴木 雄介 ▲ 21.2 ▲ 132.1
16 原田 知彦 ▲ 25.9 ▲ 142.7

 

 

●Dリーグ(執筆:長谷川 弘)
冬の気配も深まりつつある師走、第31期中部プロリーグ後期Dリーグ最終節が行われた。

中部プロリーグにおいては最下層に位置するDリーグだが、今期を終え、昇級を果たせなかった者も含め、何らかの収穫を得ることができたであろうか。
途中、予期せぬ一名の休場を受け、どの対局者にも昇級の可能性が幾分か平等に高まったが、結果として次の三名が昇級を果たした。若干のブランクがあった山田を含め、結果はやはり豊富な経験がものを言った形に終着したようだ。

優 勝: 菅野 直 トータルスコア +177.7
「うれしいです。至らないところもあったので、この結果に驕ることなく来期も頑張りたいと思います。失策をすぐに修正して自分の麻雀を貫き通したことが結果に繋がったと思います。」

準優勝: 鈴木 淳 トータルスコア +111.4
「結果を出せたからというわけではありませんが、やっぱり麻雀は面白い。考えること怠らず、一生懸命闘ったので、たまたま運が味方してくれたのかもしれません。」

3位: 山田 まさとし トータルスコア +72.5
「とりあえずホッとしました。ブランクがあり、最初は空気になじむことに苦労しましたが、後半は徐々に雰囲気に溶け込むこともでき、自分らしく戦えたと思います。」

昇級を果たした三名とも今期を省みる姿勢、来期に向けたイメージトレーニングに見栄も恥じらいもない。経験豊かでありながらも謙虚に臨む姿勢に結果が付随したのだろうか。
今この瞬間の感触を忘れることなく、来期も更なる飛躍を目指すことを期待したい。

33%という昇級枠を勝ち取れなかった各者はそれぞれの課題を見出すことができたであろうか。
精進と研鑽の姿勢を示し続けなければ「精いっぱい戦った」という言葉が空虚な自己弁護に聞こえてしまうかもしれない。
来期、優勝又は昇級という大輪の花を咲かせるには、日々の小さな努力を忍耐強く積み重ねることだけが唯一自分の味方になり、決して裏切られることはないということを誰しもわかっているはずだ。結果が伴わなかった以上、その方法を論じ、取捨選択する余裕など幾ばくも無い。

未来を疑うことなく「素地」という耕地をただ黙々と耕すことができれば、いつかそこに小さな萌芽を見つけることができるだろう。現を抜かすことなくそれを大切に育てあげることができれば、いつかその幹は太く強く育ち、無数の枝が伸び、葉が茂る。
その過程を地道に、そして確実に収着できれば、美しい花は自ずと咲くだろう。

Dリーグ

順位 名前 5節 合計
1 菅野 直 25.8 177.7
2 鈴木 淳 59.2 111.4
3 山田 まさとし 57.6 72.5
4 家田 みゆき ▲ 33.9 ▲ 14.9
5 加来 千香子 ▲ 11.5 ▲ 23.1
6 後藤 咲 ▲ 50.2 ▲ 65.1
7 奥 潤次 ▲ 0.9 ▲ 74.9
8 羽川 えりか 28.3 ▲ 92.6
9 近藤 美香 ▲ 75.4 ▲ 111.9