北陸プロリーグ レポート

第5期北陸プロリーグ 第7節レポート

本年2022年は、北陸支部にとって大きな飛躍の年となった。
第2期鸞和戦を吉野敦志が制し、第4期桜蕾戦を新人の宮成さくが優勝する。
また、戴冠こそならなかったが、地方チャンピオンシップを制しグランプリMAXへ歩を進めた里木祐介。
第4期若獅子戦の決勝の舞台で奮戦した梅本翔。

彼らはその名を全国に知らしめた。
「北陸が、今、熱い。」

Mリーガーとなった本田朋広を輩出した北陸の地に、俄かにスポットが集まっている。
このムーブメントを一過性のものとするのではなく、彼ら彼女らに続く新星を生み出してゆく事。その確かな土壌を作り、固めていく事が私を含めた北陸支部員一人一人に課せられた使命となっていくだろう。

令和4年11月27日
第5期北陸プロリーグ第7節。

勝負はいよいよ最後の直線を迎えようとしていた。
独走の志多木。崩れることなく積み重ねた230ものポイントは圧巻である。
彼の決勝に向けての思いなどは、次節ほぼ必ず聞く事となるだろう。
前述のタイトル戦を賑わせたプロ達を抑えての堂々の首位。見事の一言である。

続く2、3位には安城と南。
手綱を緩めることなくポイントを伸ばし、最終節の選択肢を大きく増やす事が出来ただろう。
今回は決勝圏内をほぼ固めた安城に話を伺っている。

安城るい 29期生
「一撃必殺ネコパンチ」のキャッチフレーズで周囲に愛されるチャーミングな彼女だが、そのキャリアも腕前も一目置かれる実力者である。
もしも今期も決勝進出が成れば、なんと5期中3期の決勝となる。

「前節、ポイントを失うことに怯えて逃げの麻雀を打ってしまった事を悔やんでいます。今日は強い気持ちで打つと心に決めて臨みました。」

そんな彼女の意志の強さに牌が応えてくれた1局が下記。

1回戦東1局北家 ドラ中

八万八万五筒六筒七筒八筒九筒六索七索八索中中中 リーチ ツモ四筒

競技麻雀打ちにとって、是が非でもモノにしたいドラ暗刻の勝負手。
多くの打ち手はヤミに構えて8,000を狙うところ、安城の選択は牌を横に曲げて跳満を引きアガる事だった。

「この場面で迷わずリーチに行けてアガれた事で緊張が解けました。その後もまっすぐ攻められたのはこのアガリに依るところが大きかったです。」

はにかんだ笑顔の奥に秘められた確かな闘志。
経験や思いの強さは折り紙付き。今期の安城の眼差しは、既に決勝に向けられている。

上位から中団にかけては大混戦。4位の里木から8位の後藤までは誰が決勝に滑り込んでもおかしくはない。最終節の4半荘は上位陣の直接対決である。
おそらく最後のオーラスまで、何人かが条件を残す激戦となるだろう。
当人も周囲も、瞬きも許さない最終決戦が迫っている。

また、先般より触れてはいるが、今期は新人達の多くがプロの壁に直面した年だったのだが、私を含めた中堅~古参のプロが苦しんだ年でもあった。
特に実績・実力充分な藤本や木戸の苦戦は誰もが予想しえなかったのではないだろうか。
今期なかなかスコアを伸ばせず、声を届ける事が出来なかった木戸にスポットを当てたい。

木戸僚之 石川県七尾市出身の36歳。
年齢はまだ若いが、23期生とキャリアは長く、北陸支部の理事も務める、北陸になくてはならないプロの1人であろう。
若手プロの指導役でもあり、牌理の深さにかけては支部の第一人者の1人に名の上がる、北陸プロリーグ優勝経験もある実力者である。

「今期は厳しい状況が続き、残り4節から1節辺り+50Pを勝ちに行く麻雀にシフトしましたが、やはり選択肢も少ない中成績も伸びず、今節は丁寧に打つ事を最大の方針にしました。」

1年を通して苦しんだ木戸だが、7節目の最終戦にして漸く自ら納得のいくアガリを手繰り寄せる。

三万四万五万七万七万七万四筒四筒六索七索七索八索八索 リーチ ツモ六索

二万二万四万四万三筒三筒三筒六筒七筒八筒九索九索九索 リーチ ツモ二万

縦横を受け間違えずしっかりとアガリを掴む、牌理に明るい木戸の持ち味を生かしたアガリでこの節をトップで締めくくる。

「今期、形は作れていても勝負手をアガれない、放銃や流局となる場面が多かったですが、手ごたえのあるアガリが出来ました。最近の北陸支部では沢山の後輩の活躍が目覚ましい中で、私も負けないよう頑張りたいです。」

後進の指導を任されていると言えど、まだまだ老け込むには早い実力者。
支部にとって欠かせぬピースの一角が、来節、来期、どのような麻雀を見せてくれるのか今から楽しみでならない。

今節は期を通して不調だった木戸、藤本、後藤などが気を吐いた節でもあった。
前半戦に最下位争いに甘んじていた後藤は、気がつけばボーダーの狙える位置に。
藤本は今節国士無双のリーチをかけて岡田を討ち取っている。
彼らが共通して残したコメントが、「まだ僅かだが決勝の可能性が残っている。」だ。
どんなに苦戦しても、決して諦めない姿勢。心構え。
支部の若手や新人達、そしてこれからプロの道へ進もうと考えている方はどうか身に刻んで欲しい。

我々の麻雀は、観てくれている方々への麻雀でもある。
その誰かのために、決して諦めず、無様な麻雀を打たない事。
その想いを全員が共有するからこそ、飛躍するに足る、強い、熱い、北陸となるのではないだろうか。

最終節の最終戦、オーラスが終わるまで。
全員が、自身と見てくれる誰かの為に、全力で腕を振って欲しい。

最終節は12月11日。
応援の程、宜しくお願い致します。

(文:荒谷誠)