北関東プロリーグ レポート

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第8期北関東プロリーグ 決勝観戦記

2013/03/07
執筆:塚越 祐次郎


予選を勝ち抜いたのは小川尚哉、沢崎誠、元木伸明、井出一寛。

 

1回戦 起家から(元木・小川・沢崎・井出)

東1局、先手を取ったのは元木だった。
颯爽とダブ東を鳴き、ホンイツを見切ったファーストテンパイで沢崎を捕らえた。

『格下の感が強かったから、自分に勝機があるなら1回戦次第だろう』と、意識して臨んだ開局を3,900のアガリで元木はスタートを切った。

直後の1本場、井出が沢崎より5,200は5,500。
この北関東プロリーグで、5期連続決勝戦に進出している沢崎だが優勝は未だにない。
今回も苦戦を予感させる出だしとなった。

南1局、ドラを雀頭にした3面待ちでリーチを打った小川。
抜群の手応えでテンパイし、これはほぼ間違いなくツモるだろうという小川の感覚を奪う元木の仕掛け。
テンパイを維持し親を継続させるため、ハイテイで元木が放ったのは、奇しくも小川がツモるはずの牌であった。意識していたことが裏目に出てしまったように思えた。
普段の元木であればこの牌は間違いなく打たない。

続く南2局、小川が仕掛ける。

三万五万四索五索六索七索八索九索北北  チー二索一索三索  ドラ北しかし、ツモ切った三万が元木に捕らえられる。
この時、小川の河、手順には他者はソーズと字牌を安易に打ち出すことのできないものだった。
打点だけで考えて、ドラを待ちにするシャンポンに取れば、この放銃にはならなかっただろう。
だが、あえてこの手順を踏み相手に待ちを想定させないように造り上げた手牌だから、手出しの五万は意志に反する。元木もソーズで回りきって、ギリギリのアガリをものにしたわけだ。
あと1枚でもソーズか字牌を手にしたら、オリることを選択することは理解していたから。

オーラスで井出は、タンヤオイーペーコードラを沢崎からアガる。
この時点での各自の持ち点は、
元木23,300点 小川42,300点 沢崎9,900点 井出44,500点

オーラス1本場。ここで元木に、千載一遇のチャンスが訪れた。

一万二万三万四万五万六万七万八万九万東東中中  ドラ三索

これをヤミで沢崎から中で出アガリ1人沈みを押し付けたわけだが、この結果は少しだけ腑に落ちない。
…勝機があるなら1回戦次第、そう意識していたはずの元木だったのだから、ここはリーチをして欲しかった。
たらればなんて言い出したらキリがないが、中をツモれば倍満で首位。
格上相手だと認識していたのなら駄目で元々、アタマを取りに行くことに価値が付く。
その上に、南1局の放銃も善し悪しは別としても意志としての辻褄が合う。
振り返って思った。ブレていたのかな、と。

1回戦成績
井出+22.5P  小川+15.3P  元木+6.9P  沢崎▲44.7P

 

2回戦 起家から(井出・小川・元木・沢崎)

東1局、1回戦でトップを取った起家の井出のリーチ。
これに飛び込むのは、ラスを取った沢崎だった。リーチ三色の7,700。
井出が絶好のスタートを切ると続く1本場で6巡目にリーチ。

四万五万六万二筒三筒三筒四筒五筒六筒七筒八筒八筒八筒  ドラ八万

すると小川も、

八万八万一索一索二索二索三索三索九索九索一筒白中

この手牌に井出の当たりの一筒を重ね白待ちに取ると、小川の手元に待望の白が。
大きな大きな2,000・4,000だった。

東2局、ここも井出と小川がぶつかった。
井出が北発とポンしテンパイ打牌でドラの四万を切れば、すかさず小川も四万をチー。すぐに井出に追い付く。
しかも手には四万がまだ2枚。11,600をテンパイしていた。

そこに、井出の当たり牌である三索を掴むやいなや、四万を落として回ってテンパイ。
ここはお互いにアガリがなく流局したが、小川の打ちまわしにひどく感心した。
放銃をすることもなく、最後の最後までリーチに屈することなく、流局時にはテンパイを取った。

普段卓から離れれば、ふにゃふにゃしている印象の小川だが、眉をシャキーンと吊り上げ鋭い眼光で牌の行方を追い続けている。集中力が冴え渡っている。

1本場では、下家元木の仕掛けが入り、ここまで進めるも、

五万六万七万八万九万九万六索七索八索五筒六筒中中  ツモ三万  ドラ六索

ピンズを払って、

三万四万五万六万七万八万九万九万六索七索八索中中  リーチ

これは1人テンパイに終わったが、見応えのある粘り強い麻雀だった。
東3局4本場、ここで元木のリーチにひっそり沢崎がピンフ一通ドラをリーチの現物で張っていた。
小川も元木の現物を含む4面待ちで張っていたが、沢崎に放銃となった。

東4局、親の沢崎が仕掛けると、小川は七対子ドラドラをテンパイ。
五索西待ちなのだが、井出が国士気配からオリていて1枚切れ、どちらも沢崎に通るのであればとアガリに賭けた五索待ちだったが、読みが外れ西をツモ切る小川の背中に落胆を見た。

しかし次局、牌が小川を救う。メンタンピンのドラをツモ。再びトップに立った。
このままリードを保ち2回戦は終了した。

2回戦成績
小川+15.7P  井出+4.3P  元木▲7.3P  沢崎▲16.7P

2回戦終了時
小川+31.0P  井出+30.8P  元木▲0.4P  沢崎▲61.4P

 

3回戦 起家から(小川・井出・沢崎・元木)

東1局に、井出が元木より2,600をアガリ、続く東2局に元木が跳満をツモ。
東3局は井出が沢崎から2,000をアガる。
勝負の分かれ目に成り得ると感じたのが東4局と南1局。

東4局は手なりにリーチした小川がツモって1,300・2,600。
続く南4局、小川が親の局面で沢崎よりリーチを受ける。”ツモ切りリーチ”だった。
しかし、小川もホンイツドラをテンパイ。待ちはドラ表示牌に1枚と1枚切れのペンチャンの七索
私は小川と同じ選択をしていただろう。結果は沢崎に3,900の放銃。
ツモ切りの意図は、三色への手変わり待ちだった。

実に難しく、答えなど見つかる由もないのだが妙に心に引っ掛かった。
このペンチャンにドラの八索を引いてリーチをしツモって8,000オール、そんなこともあるのが麻雀で、私はその可能性や意志を大事に今まではやってきた。

しかしその可能性や意志に隠れたリスクの大きさを見誤っていた気がしてならない。
『ツモ切りリーチだったからさ、何か訳ありだと思ったんだよね。』と小川は後に語った。

小川も沢崎のことはよく知っている。沢崎の打牌に信頼もしている。だからこその”読み”だった。
私と小川は同じ選択をしたが、感じ方と受け取り方は違う。
まして、私にとってはまだまだ上の存在の小川が、今後どう戦ってゆくのか、他人事には思えなかった。
前局のアガリから一変、ラス目の沢崎への放銃で苦しい立場となった。

南2局7巡目、
井出
六万八万一筒一筒二筒二筒二筒四筒四筒七筒九筒南南  ドラ九筒

ここから一筒をポン。2巡後には八筒を引きテンパイ。
沢崎が、

六索七索八索四筒五筒五筒五筒六筒七筒八筒南中中中この形で打南リーチ。井出がこの南を捕らえることとなった。
1本場、沢崎が2,000・4,000。南3局は元木が沢崎より3,900。
オーラスは、井出が元木から1,000点をアガリ3回戦の終了。

結局、南1局以降、小川はアガリはおろかテンパイすることもできぬままに3回戦を終えた。
競っていた井出はといえば、更に加点しリードを許すこととなった。
南1局が原因かどうかすらわからないが、過ぎてみればあの放銃の他は咎めようもなかった。
たった1つの、ミスとは言えないような、小さな失敗で態勢を崩すこともある。
立て直すのには、更に力と時間、根気を要する場合の方が多いように思う。
結果的に、今後の展開が苦しくなったことには違いない。

3回戦成績
元木+15.6P  井出+10.2P  小川▲7.8P  沢崎▲18.0P

3回戦終了時
井出+41.0P  小川+23.2P  元木+15.2P  沢崎▲79.4P

 

4回戦 起家から(井出・小川・沢崎・元木)

東4局1本場元木の親番。

二万三万四万七万八万九万一索二索九索九索九索南南  ドラ四索

10巡目にこのテンパイで即リーチ。3巡後にツモり1,300は1,400オール。
2本場、元木の7巡目のリーチ。

一万二万三万六万七万八万五索六索二筒三筒四筒五筒五筒  リーチ  ドラ二万

小川が放銃。数字の上か、気持ちの上か、どちらにしても引きずっている気がした。
小川のこの放銃は、今までの戦いぶりから考えると、何か説明のしようがないものだった。
ふと表情を見たら、そこに座っていたのは、いつものふにゃっとした小川だった。

3本場、元木はこの勢いで突き抜けたいところ。
北を1枚目から仕掛ける元木。元木は時に大胆に仕掛けを入れる。
ほぼバラバラだった牌姿が、

五万六万六万七万七万八万東東西西  加カン北北北北  ドラ九索

こうなるが、河には北以外の風牌が1枚も切れていない。

その間に井出が牌を倒す。

三万三万一索一索三索三索六索六索九索四筒四筒南南  ツモ九索

井出は、仮にこの手に他の危険牌を掴んだとしても、絶対に下ろすことはないだろう。
井出には隙がない。これが井出の強さなんだと感じた。

南1局、井出が沢崎から2,000点をアガる。
1本場は井出、小川、沢崎のテンパイ流局。
2本場、井出が元木より7,700は8,300。
3本場に小川が仕掛けて1,000は1,900を元木から。

南2局、小川の親番にチャンス手が入る。

二万三万六索六索七索八索九索六筒六筒七筒七筒八筒八筒 ドラ六筒

これをヤミに取る。このときは再びシャキっとした表情に。
しかし元木がピンフをツモ。

南3局、沢崎の親番。
沢崎
二索三索三索三索四索四索四索五索六索七索七索八索九索  リーチ  ドラ三索

しかし流局。沢崎の1人テンパイ。

1本場、沢崎のリーチに井出が放銃。3,900は4,200。
これが4回戦目にして井出の初めての放銃だった。

2本場、小川より2,900は3,500。
3本場、

一筒二筒二筒三筒三筒四筒五筒五筒六筒六筒七筒八筒九筒  ツモ五筒  ドラ八筒

8,000は8,300オール。

4本場、小川がリーチツモドラ、1,000・2,000で沢崎の親を止める。

オーラス、元木が小川より2,000。
2本場、3本場と元木は攻め続けるが決め手ななかった。
そして3本場、元木のリーチに沢崎が飛び込み9,600は10,500。
4本場を井出がピンフでアガる。

4回戦成績
沢崎+23.5P  井出+10.5P  元木▲8.0P  小川▲26.0P

4回戦終了時
井出+51.5P  元木+7.2P  小川▲2.8P  沢崎▲55.9P

 

5回戦 起家から(元木・小川・元木・井出)

井出が大きくリードを広げ迎えた最終戦。
東1局は小川の1人テンパイ。
東2局1本場、

三万四万六万七万八万一筒一筒二筒三筒四筒四筒五筒六筒  ツモ二万  ドラ四筒

この手を開いたのは親の小川。

4,000は4,100オールで井出との差を一気に30ポイント以上を縮める。

2本場、

三万三万六万六万五索五索六索七筒七筒八筒八筒九筒中  ツモ中  ドラ六索

当然のようにドラ待ちに取ると、テンパイ打牌にロンの声。
それは井出だった。これまでも、ここぞというときには井出がキッチリと流れを断ち切っている。

東3局、沢崎、

二万三万二索三索四索六索七索七索七索八索二筒三筒四筒  リーチ  ドラ五筒

これに対して元木が追い掛ける。

二万三万四万四索五索四筒五筒六筒七筒八筒九筒北北  リーチ

この勝負は元木が四万を掴み12,000の放銃。
1本場、小川が沢崎の親を落とす。

東4局、元木。

四万四万六万六万二索二索六索七索七索五筒五筒東東  リーチ  ドラ東これに小川が放銃してしまう。東場が終わったところでの持ち点は、
元木19,900点 小川31,400点 沢崎37,900点 井出30,800点
井出以外の3人誰しもが諦めていないからこそ、前に出ようとする者のぶつかり合いになっているように思った。結果的に、井出を助けているようにも感じた。

南1局で井出が1,300・2,600。
南2局2本場で、小川が2,600は2,700オールをツモり再びトップに。
しかし、井出が小川に止めを刺すかのように1,000は1,600。

そしてオーラスでは、小川が役満ツモ条件であったが、実ることなく勝敗は決した。

5回戦成績
井出+21.8P  沢崎+6.3P  小川▲4.1P  元木▲24.0P

5回戦終了時
井出+73.3P  小川▲6.9P  元木▲16.9P  沢崎▲49.6P

終了後のコメント

第4位:沢崎誠
『2回戦の東1局できょうはだめかもなって思った。
気を取り直して明日(北関東プロアマリーグ)頑張ります。』

第3位:元木伸明
『井出さんが強かった。気持ちを切り替えてプロアマ頑張ります。』

第2位:小川尚哉
『井出さんが強かった!元木さんの(4回戦南2局の)400・700に心がポッキリ折れました(笑)
来期こそは獲りにいきます!!』

優勝:井出一寛
『北関東リーグは初めての参加でした。参加目的は、悪い意味で慣れてしまった対局に緊張感を戻すためと、新しい環境で何かを見つけ出すことにありました。実際、緊張感を持ち対局に望むことができました。その上、優勝という結果まで残すことができてとても嬉しいです。
北関東リーグには、沢崎誠プロと吉田幸雄プロ、朝武雅晴プロなどを始めとした、現役Aリーガー及び経験者の方々がおり技術的な鍛錬にもなりました。
リーグ戦では相手を必要以上に気にせず、自分が何をできるか、何をしなければいけないかと原点に戻り、一打一局を大事に打てたと思います。
決勝戦では途中2回ほど優勝を意識し、その度に打牌と判断が甘くなったが、展開にも助けられ平常心を保ったまま最終局までたどり着けました。』