静岡プロリーグ レポート

第32回静岡リーグ(プロアマ混合)決勝戦観戦記

それは5回戦・南2局の出来事だった。

親の川崎から発せられたロンの声。
手牌が開かれる前に、放銃した藤島は大きくうなだれた。

その放銃が何を意味するのか。
彼は全てを悟ったのだろう。

全6回戦で行われる静岡リーグ決勝。
その中で最も印象的だったシーンである──

 

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16年目に突入した静岡リーグ。
総勢50名以上で行われた今期の戦いも、いよいよフィナーレを迎えることとなった。

静岡リーグの決勝には、特殊な点が1つある。
それが「アドバンテージ」である。

これまでのポイントはリセットされるのだが、通過順位によってポイントが付与されてスタートする。

1位通過 +40P
2位通過 +30P
3位通過 +20P
4位通過 +10P
5位通過 ±0P

一発・裏ドラのない日本プロ麻雀連盟公式ルールにおいて、このアドバンテージは勝敗を大きく左右する。

どの位置で決勝を迎えられるか。
より上の順位で通過する為にも、第1節から勝負は始まっていると言えるだろう。

5回戦終了時、最下位の者はそこで敗退。
最終6回戦は残りの4名で戦い、トータルトップの者が優勝となる。

栄えある決勝の舞台に立つことを許されたのは、以下の5名。
直前に行ったインタビューと共に、出場選手を紹介させて頂く。
1位通過
山本 拓哉 中部本部 Bリーグ

 

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第28回 静岡リーグ優勝。
その年には静岡プロリーグ、そして地方チャンピオンシップ2017も制した実績を持つ。

●首位通過のアドバンテージをどう見る?
「無理にトップは狙わず、オール2着でも十分にチャンスがある。押し引きを大事にしたい」
●マークしている選手は?
「藤島プロと川崎プロ。打牌に雰囲気が出ない分、川崎をより警戒している」
●優勝したら誰に最初に報告したい?
「中部本部の青山大プロと伊藤鉄也プロ。伊藤さんは今朝、頑張れと連絡をくれたので良い報告をしたい」

会場入りの際、元気良く大きな声で「おはようございます」と挨拶していた。
この決勝に懸ける気合いの現れだろう。
2位通過
川崎 義之 静岡支部

 

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第30回 静岡リーグ優勝。
私生活では人生の伴侶に恵まれ、心身共に充実した状態で臨めることとなった。

●優勝経験もあるが、受けて立つという気持ちか?
「あくまでも挑戦者。他に本命もいるので気負わずに戦う」
●マークしている選手は?
「藤島だが、あまり気にしていない」
●優勝したら誰に最初に報告したい?
「奥さん」

山本のインタビューにもあるように、川崎はテンパイ気配や打牌のトーンの乱れをなかなか表に出さない。
彼の持つ大きな武器の1つ。
相手にとって脅威となるに違いない。
3位通過
藤島健二郎 東京本部 鳳凰戦A2リーグ

 

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第31回 静岡リーグ準優勝。
今期は様々なステージで活躍を見せてきた。
もはや説明不要だろう。

●多くの人が優勝候補筆頭に挙げているとみられるが、プレッシャーは?
「全くない。勝つか負けるか、ただそれだけ。静岡の全体の評価の為、格好悪い麻雀は見せられないという想いが強い」
●マークしている選手は?
「山本。いろいろな部分で指針になる」
●優勝したら誰に最初に報告したい?
「望月支部長。お世話になっているので」

藤島健二郎はどれだけの覚悟と想いを背負って、またこの舞台に戻ってきたのだろう。
我々はその答えを垣間見ることができるのか。
4位通過
松清一樹 一般参加

 

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静岡リーグには2回目の出場。
そして、今回は決勝へ。
最終節の最終戦で大きなトップを取り、自らの手で決勝の椅子を勝ち取った。

●強力なメンツを相手にどう戦うか?
「とにかく決勝の雰囲気に飲まれないように。普段通りのバランスで打ちたい」
●マークしている選手は?
「藤島と山本。先行されると厄介」
●優勝したら誰に最初に報告したい?
「練習に一緒に付き合ってくれた仲間たちへ」
5位通過
藤井太郎 一般参加

 

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藤井さんも初めての決勝進出。
第4節まで首位につけていたが、最終節は不調でアドバンテージなしの5位で決勝を迎えることとなった。

●この位置で迎えることになったが?
「仕方ない。逆に新たな気持ちで入れると思う」
●マークしている選手は?
「藤島。過去2回戦っているが、いずれも負け。最初は本当に緊張した。相当意識しているのが自分でも分かる」
●優勝したら誰に最初に報告したい?
「練習に付き合ってくれた皆。全員、この静岡リーグでの麻雀を通じて出会った仲間たちなので」

 

4位の松清さんと5位の藤井さん。
どちらも優勝した時は「練習に付き合ってくれた仲間たち」に最初に報告したいという同じ答えだった。

後日、こんな話を耳にした。

決勝を控えた数日前、最後の調整の為に打ち込む松清さんと藤井さん。
その周りには、それぞれを応援する人たちの姿があった。
中には今期の静岡リーグで決勝に進めなかった者もいた。
それも1〜2人ではなく、各グループに7〜8人も集まっていたとのことである。

なんという素敵な話なのだろう。

勝者がいれば敗者がいる。
本当は自分たちがこの決勝のステージに立ちたかったはずである。
その想いを共に戦ってきた仲間に託しているのだ。

麻雀は決して1人では出来ない。
自分の為だけに戦っているばかりでもない。
応援してくれる人、一緒に戦ってきた仲間、周りの環境。
勝ち負けの向こう側にある大切なこと。
そんなことを改めて感じさせられる出来事であり、この輪が静岡リーグ最大の魅力なのである。

それぞれの想いを胸に決勝卓につく5人の選手たち。
多くの観戦者が見守る中、ついに第32回 静岡リーグ決勝が開始された。
(以下敬称略)
【1回戦】
抜け番・藤島

共に初めての決勝の舞台である松清と藤井。
藤井は落ち着いているように見受けられるが、気掛かりなのは松清。
気合いとは裏腹に、表情にも摸打にも緊張していることが外から見ているこちらにもハッキリと伝わってきていた。
どれだけ早い段階で麻雀に入ることが出来るだろうか。

そんな中、悠々と打っていたのはポーカーフェイス・川崎。
2つの大きなアガリを決めた。

東3局0本場

五索五索五索二筒二筒二筒三筒三筒六筒七筒発発発  ロン八筒  ドラ二筒

南4局2本場

一万二万三万四万五万六万五索六索四筒五筒六筒中中  リーチ  ロン四索  ドラ中

放銃したのは松清。

一万一万一万四万五万六万四筒五筒六筒七筒八筒中中  リーチ

待ちも打点も充分な形で、親の先制リーチに勝負を挑んだが、軍配は川崎に。

オーラス0本場には、ドラの一筒を暗刻にしてテンパイしていた藤井のチャンス手を潰す1,300オール。

1回戦は約60,000点の1人浮き大トップで幸先の良いスタートを決めた。

山本は耐えに耐えて2着をキープ。
アドバンテージはまだ十分に残しており、川崎を追いかける。
藤井は川崎への12,000点の放銃や、チャンス手を蹴られたりもあったが、眼は全く死んでいない。

川崎の好調を後ろからじっと見つめていたのは抜け番の藤島。
何を思い、何を感じていたのであろうか。

1回戦成績
川崎+41.3P 山本▲4.8P 藤井▲11.2P 松清▲25.3P

1回戦終了時トータル成績
川崎+71.3P 山本+35.2P 藤島+20.0P 藤井▲11.2P 松清▲15.3P

 

【2回戦】
抜け番・山本

満を持して藤島健二郎が登場。
起家を引き、東1局から以下の形でリーチに踏み切る。

四万五万六万六万七万八万三索四索六索七索八索四筒四筒  ドラ八筒

結果は流局。

そして、初戦から魅せ場を作る。

東4局0本場

二索二索二索一筒一筒二筒三筒三筒九筒九筒東東東  ドラ一万

このテンパイをしていた所に九筒を引き入れ、ツモり四暗刻の形に変化。

二索二索二索一筒一筒三筒三筒九筒九筒九筒東東東

しかし、藤島が欲しい一筒三筒はこの時点ですでに山にはなく、捌きに向かった藤井が300・500のアガリ。

まだ始まったばかりとはいえ、ここで役満が成就となれば局回しの上手い藤島の独壇場になっていた可能性も高い。
そんな手が入っていたことなど他の選手たちはもちろん知る由もなく、局は進んでいく。

南2局0本場

親の藤井がマンズの一色手。

一万二万三万五万五万白白  ポン北北北  ポン南南南  ドラ八索

そこにピンフ高め三色のテンパイを入れた川崎が八万を叩き切って勝負に出る。

二万三万一索二索三索九索九索一筒二筒三筒四筒五筒六筒  リーチ

どちらにも軍配はあがらずに引き分け。
藤井は1回戦のリベンジを果たしたかったところ。

オーラスを迎え、4者の点棒状況は以下の通り。
藤島 37,900
藤井 29,900
川崎 24,000
松清 28,200

初戦を白星で飾った川崎がラス目。
藤島としては川崎をラスにしたまま、1人浮きで終えたい。
その思惑通り、松清から2,000点をアガってしっかりと差を詰めた。

2回戦成績
藤島+21.9P 藤井▲1.1P 松清▲6.8P 川崎▲14.0P

2回戦終了時トータル成績
川崎+57.3P 藤島+41.9P 山本+35.2P 藤井▲12.3P 松清▲22.1P

 

【3回戦】
抜け番・川崎

1・2回戦と苦戦を強いられてきた一般参加の2人が、東場からリードしていく展開。
緊張もほぐれ、完全に本来の姿で打てていることが伺える。
逆に苦しんだのは山本と藤島。

南3局0本場
松清のピンズの染め手に、山本がドラの一筒もノータイムで放っていく。
山本は手牌に素直である。
中には少考する人もいるだろうが、自身も大物手。

二索二索二索五索六索六索南南中中  ポン白白白  ドラ一筒

だが、次に持ってきたドラの一筒をツモ切ると松清からロンの声。

一筒二筒三筒四筒四筒五筒六筒東東東  ポン西西西

山本は潔く「はい」と返事をした。
しっかり覚悟を持って攻めた結果である。

放銃は最小限に抑えつつも、ここまでジリジリと点棒を削られていった藤島。
しかし、これで終わらないのが今期の静岡を牽引してきた者の力。

17,000点持ちで迎えたオーラスの親。
4本場まで積み上げて、持ち点を37,800まで回復させてきた。
最後は藤井が1,000・2,000をツモアガリ、3人浮きで終局。
山本は手痛い1人沈みのラスとなってしまった。

3回戦成績
松清+23.7P 藤井+11.2(▲20) 藤島+6.4P 山本▲41.3P

3回戦終了時トータル成績
川崎+57.3P 藤島+48.3P 松清+1.6P 藤井▲21.1P 山本▲6.1

 

【4回戦】
抜け番・松清

川崎と藤島の一騎打ちになりそうな雰囲気を漂わせていた。
だが、残り3回戦。
まだまだ勝負の行方は誰にも分からない。

東場は藤島が局を回していく。
終始、小場で進んでいたが、川崎が南場の親で大きな2,600オールのアガリ。
僅差だがトップ目に立つ。

南2局1本場
今度は山本にツモり四暗刻のテンパイが入る。

三万三万三万一索一索一索二索二索一筒一筒一筒六筒六筒  ドラ六筒

1位通過で得たアドバンテージを全て失い、ここまで苦しい戦いが続く山本。
ツモに力が入るが、残念ながら祈りは届かなかった。

六筒は藤島の手に2枚。
二索は2枚とも山に残っていたが、どちらも王牌という結果に。
山本がテンパイを果たしたのは超終盤の16巡目だった。

藤井が23,700点持ちで離され、他3者のトップ争いで迎えたオーラス。
9巡目に八索を切った山本に藤井がロンの声。

一万一万七万七万八万八万九万九万七索九索一筒二筒三筒  ドラ七筒

藤井、僥倖の浮きへ。
対して山本は3回戦に続いての連続ラス。
トップは川崎。
藤島は29,800点で僅かに沈みとなり、川崎とのポイント差が開く結果となった。

4回戦成績
川崎+11.9P 藤井+5.7P 藤島▲4.2P 山本▲13.4P

4回戦終了時トータル成績
川崎+69.2P 山本▲19.5P 藤島+44.1P 藤井▲15.4P 松清+1.6P

 

【5回戦】
抜け番・藤井

この5回戦を終えた時点で、トータル最下位の者が途中敗退となる。
現在、下位に位置する3者は川崎・藤島とはかなり離されてしまっているものの、何としてでも最終6回戦へと進んで望みを繋げたい。
特に山本は正念場となる。

東4局1本場 13巡目
山本が七対子ドラ2のテンパイ。

八万八万四索四索七筒七筒八筒九筒九筒南白中中  ツモ南  ドラ南

山本は生牌の白ではなく、八筒待ちを選択。

配牌から白を抱えていた川崎だったが、その巡目に八筒を引く。
自身はピンフの1シャンテン。
今、通った白を安全牌とし、八筒をツモ切るかと思いきや、手牌に全く必要のない八筒を止めて山本の白に合わせる。
山本から気配が出ていたのであろうか。
その次巡、山本は八筒をツモって2,000・4,000のアガリ。
川崎の守備力が光る。

5回戦・南場。
放銃を回避した川崎に牌が味方する。

南1局1本場

わずか4巡目にして以下のテンパイが入る。

一万一万二万三万三万七索八索九索南南南西西

川崎は南家。
出アガリ満貫、ツモると跳満である。

ここに飛び込んでしまったのは松清。
しかも川崎がテンパイした次巡での放銃。
その時、顔色は一切変えなかったが、あとから聞くと「心が折れかけました」と正直な気持ちを吐露していた。

麻雀はポイントを持っている者が優位に働くケースが多いが、川崎は放銃してもすぐに点棒が返ってくる。

そして、ついに。
あの瞬間が訪れてしまう。

南2局。
親はトータル首位を走る川崎。
冒頭のシーンである。

途中敗退を免れたい北家・山本。
9巡目にリーチ。
その山本に対して、スッと無筋の牌を河に置く川崎。
追いかける南家・藤島の手牌は

一万二万四万四万五万五万八万八万九万東東西北北  ドラ七万

山本の河には一万がある。2枚切れ。
少考の末、藤島は打一万
無情にも川崎の手牌が開かれる。

二万三万七万八万九万一索二索三索九索九索一筒二筒三筒

川崎「ロン。18,000」

会場にいる誰しもが感じたであろう。
その場の空気そのものが一気に川崎優勝ムードへと変わった。

尚も続いた親番で、更にこの12,000を山本から討ち取る。

二万三万四万四万五万六万八万八万八万九万九万東東  ドラ西

痛恨の放銃となった藤島。
決勝を終えてから数日後、この時の心境をありのままに語ってくれた。

藤島「トータルトップ者が途中敗退逃れの山本のリーチに無筋を切ってきたのだから、テンパイが入ったと読むのが普通。都合の良い現物待ちが一万四万(前巡の五万ツモ切りから親には相当危なくなりそうとすでに思っていた)。一方で形上、こちらもメンホン七対子の1シャンテンで一万が2枚切れ…自己都合を優先した、最もヌルイ一打だったと思っています。実質あそこで勝負ありでした」

藤島健二郎は愚直な男である。

この放銃は仕方がないと感じる人もいるかもしれない。
ただ、藤島自身は目の前に出た結果と真摯に向き合うことを選んだ。
そして、頭を下げた。
結果至上主義の藤島らしいコメントであった。

一方、最終戦に望みを繋ぎ、そして優勝の可能性を最後まで追いかけて戦い続けた山本だったが、オーラスにも藤島へ8,000の放銃をしてしまい、あえなくここで途中敗退となった。

5回戦成績
川崎+35.7P 山本▲28.5P 藤島▲19.8P 松清P+12.6

5回戦終了時トータル成績
川崎+104.9P 藤島+24.3P 松清+14.2P 藤井▲15.4P 山本▲48.0P

 

【6回戦】

いよいよ、最終戦。
残った4名での最後の戦いが始まった。

川崎は充分すぎるほどのリードを築いている。
2番手・藤島との差は80.6P。
藤島は前期静岡リーグ決勝で暫定首位との59.8P差をあわや捲るかという場面も魅せたが、今回はその時より更に20Pも差が開いている。

優勝への死角はないように思える。
だが、麻雀は最後の最後まで何があるか分からない。

起家は藤島。
反撃の狼煙とばかりに、東1局からリーチ攻撃を仕掛ける。

一万二万三万五索五索六索六索七索一筒一筒五筒六筒七筒  ドラ南

ここにドラ2で仕掛けを2つ入れていた川崎だったが、大きなリードを味方に無筋を切り飛ばす。
そして、当たり牌である高めの七索を掴まされる。
だが、打たない。

今回の決勝で幾度となく当たり牌をビタ止めしてきた川崎。
何かが見えているのだろうか。

同1本場
藤島、ドラがアタマの両面リーチ。
しかし、松清が

二万二万四万五万六万三索四索五索三筒三筒四筒五筒五筒  ドラ東

これで追いかけ、すぐに2,000・3,900のアガリ。
残された2回の親番のうち1回を早々に失う。

その後も満貫以上の手が入り続ける藤島。
だが、いずれもアガリまで結びつかない。

東3局1本場

一万二万三万四万六万七万八万九万一索二索三索六索六索  ドラ五筒

同2本場

三万三万三万四索四索四索六索六索七索八索五筒六筒七筒  ドラ四索

東4局4本場 供託2

七万七万一索一索北北北  ポン五索 上向き五索 上向き五索 上向き  暗カン牌の背二筒 上向き二筒 上向き牌の背  ドラ二筒

南入。
最後の親番を迎える藤島。
大きく息を吐く。

東場から流局が続き、6本場まで積まれるもラストチャンスを掴むことができず、自身の親も流れる。

川崎にとっては一番大きな壁を超えた。
あとは目の前に用意された優勝への道筋を、一歩ずつ確実に進むだけである。

そして、終局。

川崎義之が完勝ともいうべき内容で、優勝を飾った。

最終戦成績
川崎▲12.9P 藤島▲1.8P 藤井+21.3P 松清▲6.6P

全トータル成績
川崎+92.0P 山本▲48.0P 藤島+22.5P 藤井+5.9P 松清+7.6P

 

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たった1人にだけ与えられる「優勝」という栄光。
今回それを手にしたのは川崎。
静岡リーグ2度目の戴冠は確かな実力があってこそ。
新たなるステージでも、この実績を胸に挑戦して欲しい。

山本は本命視する声もありながらも、途中敗退という悔しい結果で幕を閉じた。
だが、彼は必ずまたこの舞台に戻ってくる。いや、戻って来なくてはならない。
それは本人が一番よく分かっていることだと信じている。

松清さんと藤井さんは最後まで仲間たちの応援を背負って戦い抜いた。
道中、後ろでずっと見守ってくれていた戦友の存在に改めて感謝していることだろう。

そして、藤島。
優勝した川崎へ向けた拍手が巻き起こる中、おめでとうという言葉と共に手を差し伸べて握手を求めた。
悔しいはずである。
負けて尚、その大きな背中を示してくれた。

今回の決勝観戦記。
従来の観戦記に比べると、麻雀以外の部分にスポットを当てて書かせて頂いた。

放送対局が主流である現代の麻雀界。
放送がない故にあの日あの場所にいなかった方々の為にも、もっと麻雀の内容に触れるべきなのでは…と悩みに悩んだ。

だが、戦いの模様を時系列で並べるより、この静岡リーグの魅力を読んで下さっている皆さんにほんの少しでもお伝えしたいという想いが強かった。

良いか悪いかはわからない。

ただ、この決勝観戦記を最後まで読んで下さった方々の中に
「静岡リーグ面白そうだな」
「次の機会に出てみようかな」
と感じて下さった方が、たった1人でもいてくれたら心から嬉しく思う。

静岡リーグはプロと一般参加の垣根を超えた舞台。
そこには敷居など一切ない。
真摯に麻雀と向き合い、思いっきり麻雀を楽しむことが出来る。
そんな場である。

これからも麻雀ファンの皆さんと共に作り上げていく静岡リーグであることに変わりはないだろう。