文字サイズを小さくする 文字サイズを元に戻す 文字サイズを大きくする

新人王 レポート

一覧

第29期新人王戦 決勝戦観戦記 柴田 吉和

2015/09/18
執筆:柴田 吉和


第29期新人王戦 決勝戦。
前期よりニコニコ生放送での生映像対局となり、若手プロにとっては自分をアピールできる絶好の場である。
そして優勝者には、年度末に行われる麻雀グランプリMAXの出場権が与えられる他、十段戦・王位戦・麻雀マスターズのシード権、特別昇級リーグの出場権など、新人選手にとっては是が非でも優勝したいと思わずにはいられな特典が与えられる。

前日の激しい予選を勝ち上がった決勝進出者は以下の4名。(以下、敬称略)

100
予選1位通過:井上美里
東北本部所属30期生
最強戦2014全日本女子プロ代表戦 優勝
『東北にタイトルを持って帰りたいです。優勝目指してやるだけです。』

 

100
予選2位通過:平野良栄
東京本部所属30期生
『家族に応援してもらっているので、勝って恩返ししたいです!』

 

100
予選3位通過:弘中栄司
九州本部所属30期生
『まだ九州から新人王がでていない様なので、僕が優勝します!』

 

100
予選4位通過:土屋幸弘
静岡支部所属30期生
『応援して頂ける方が沢山いるので、期待を裏切らない麻雀を打ちたいと思います。』

 

所属は違うが、奇しくも30期生4名の決戦となった。
映像対局の経験がある分、井上が若干有利か!?他3者は映像対局を意識しすぎて、変にバランスを崩さなければよいと思っていたが、対局前は皆平常心を保ててリラックスできている様に感じた。

100

 

【決勝1回戦】(起家から井上・平野・弘中・土屋)

開局から、流局や1,000点など軽い手探りのアガリが続き、
東3局 親:弘中 テンパイ一番乗りは西家 井上

五万五万六万六万七万七万七索八索九索八筒八筒九筒九筒  ドラ九索

八筒九筒が各1枚場に切れている事もあり、手変わり待ちのヤミテンを選択。
すぐに南家 土屋もテンパイ

五万六万七万二索三索四索四筒五筒七筒八筒九筒北北

ピンフのみという事もあり、こちらもヤミテンを選択。
次巡、北家 平野が追いつき、ドラ2でリーチを打つ。

一万二万三万一索二索三索五索六索九索九索五筒六筒七筒  リーチ

本日初の本手リーチが入り、今日1日を占う意味でも誰がアガるか非常に興味深い捲り合いとなったが、土屋が四索を掴み平野へ大きい7,700点の放銃となった。

続く東4局、前局放銃となってしまった親の土屋に中盤テンパイが入る。

一索二索三索六索六索六索七索一筒二筒三筒七筒八筒九筒西  ドラ西

ドラの西単騎か、ソーズの3面張かでリーチ選択だったが、土屋は五索七索八索待ちの3面張リーチを選択。
一発・裏ドラがなく、素点が重要なAルールではドラ単騎リーチを選択しそうだが、親番という事もありアガリ易さを選択したのだろう。
とは言っても、ドラ単騎でアガリ逃しをしてしまった場合の痛さを考えてしまうと、その後の戦いでメンタルに影響が出てしまいそうなので、アガリ逃しが出る前に一刻も早くアガリたい所だ。
数巡後、テンパイが入った平野から八索が出て2,900点。土屋の初アガリとなった。西でのアガリ逃しもなく土屋もほっとした所だろう。

その後、南入してからも弘中が3,900点をアガったのが最高打点程の小場が続き、平たい状況でのオーラス。
南4局 親:土屋 ドラ二万
親番の土屋に13巡目、最高の五万を引き入れ待望のテンパイ

二万二万三万四万六万七万二索三索四索二筒三筒四筒五筒  ツモ五万

ヤミテンでも高め二万をツモれば8,000オールの手牌。五筒を打ってリーチを打つかヤミテンかの選択だと思ったが、土屋の判断は二万を切ってのリーチ!?
さすがにこの判断には驚いた。場の状況は染手や変則手の河になっている訳でもなく、待ちが悪い・薄いという事もない。これは正直、土屋の凡ミスだろう。
結果は、すぐに井上が300・500をツモアガリなので二万切りでも結果は一緒だったが、これが初めての映像対局からくる緊張・プレッシャーなのか。今後の土屋の戦いに不安を残しての終局となった。

1回戦は全体的に大物手が少なく小場が続いたが、細かくアガリを積み重ねた弘中のトップとなった。

1回戦成績
弘中:+16.1P 平野:+8.5P 井上:▲6.1P 土屋:▲18.5P

 

【決勝2回戦】(起家から土屋・弘中・井上・平野)

東1局から手がぶつかる。
1回戦トップの南家 弘中にドラが3枚あるチャンス手。

二万四万九万九万九万七索八索九索三筒四筒五筒北北  ドラ九万

三万が1枚切れで、マンズが悪くない待ちに見えるので即リーチに行く手もあると思われたが、好形変化を求めて役なしヤミテンを選択。
次巡に北をツモって打二万四万単騎の仮テンパイ。

同巡、西家 井上に高め三色のテンパイが入りリーチ。

三万三万六万七万八万六索七索八索二筒三筒四筒六筒七筒  リーチ

次巡、四万単騎の仮テンパイしている弘中が六万ツモで選択。

四万九万九万九万七索八索九索三筒四筒五筒北北北  ツモ六万

井上の河には七万が1枚切れているだけという状況もあり、弘中は北を切ってカン五万での追いかけリーチを選択。
この時点でのアガリ枚数は、井上3枚残り・弘中3枚残りと互角だったが、数巡後に井上が五万を掴み8,000点の放銃となった。
1回戦トップの弘中は、全4回戦と考えるとここで2連勝できればかなり大きなアドバンデージとなり優勝にぐっと近づく事ができる。
逆に他3者はかなり厳しい戦いとなってしまうので、弘中にはこれ以上リードさせてはならないという3者の心の中で見解の一致があったのではないだろうか。

迎えた、東2局の弘中の親番は、3者の思いが通じたかの様に、井上があっさりとタンヤオ・ドラ1の2,000点で弘中の親番を流す事に成功。

東3局 井上が親番を迎え、ここから反撃開始!

三万四万四万五万五万六筒七筒八筒中中  暗カン牌の背二筒 上向き二筒 上向き牌の背  リーチ  ドラ中

土屋も六万九万の高めピンフ三色のテンパイを入れていたが、15巡目に井上が六万をツモリ4,000オール。

東3局 1本場。井上が七対子のみを弘中からあっさり出アガリ、2,400は2,700点。

東3局 2本場 親:井上の手牌

二万四万五万六万八万九万二索四索六索七索七索八索二筒四筒  ドラ九筒

難しい手牌に見えたが、見事な手牌進行で6巡後テンパイし三色確定リーチ。

四万五万六万八万九万四索五索六索七索七索四筒五筒六筒  リーチ

これに勝負を挑んだのが、トータルトップ目の弘中。11巡目。

七万八万九万三索三索一筒二筒三筒四筒五筒六筒八筒九筒  リーチ

いくら打点はあるとはいえ、親リーチに辺七筒で追いかけリーチの勝負に出た!
井上・弘中共に、前半戦の山場と見ているのか、2人のツモり方にも力が入っていると感じた。
結果は終盤に、弘中が七万を掴み7,700は8,300点の大きな大きな放銃。

私は、「弘中に敗因があるとすればここか?」とノートに記した。

井上の連荘は続く。
東3局 3本場 親:井上の手牌

五万六万七万七万八万九万三筒三筒五筒六筒七筒東東  リーチ  ドラ六索

数巡後、高め東をあっさりツモり3,900は4,200オール。

次局、東3局 4本場は、土屋が500・1,000は900・1,400をツモアガリようやく長かった井上の親を終わらせる事ができたが東場が終わる頃、井上の持ち点は59,200点まで延ばしていた。

南入してからは、激しかった東場とは打って変わり、細かい点棒移動や流局が続きオーラス。
2回戦の始めから、頭を下げて嵐が過ぎるのをじっと待っていた平野にようやく手が入り始める。

南4局 親:平野
オーラスを迎え 井上:65,600点持ち、平野12,900点持ち

親:平野の手牌

六万七万八万二索三索四索四索五索二筒二筒三筒四筒五筒  リーチ  ドラ四筒

11,600点確定の本手が入ったが、ここは平野・弘中の2人テンパイで流局。

南4局 1本場 供託リーチ棒1本
平野が弘中からリーチ・ピンフの2,900は3,200点を出アガって連荘。

南4局 2本場
またしても平野が土屋から、白のみではあるが1,500は2,100点の出アガリ。

南4局 3本場
平野の1人テンパイで流局。

南4局 4本場
10巡目 親:平野の手牌

二万三万三万一索一索三索三索  ポン四索 上向き四索 上向き四索 上向き  ポン発発発  ツモ四万  ドラ四筒

中盤・打点は安いが親の連荘という事もあり、打三万でテンパイ取りがマジョリティと思えるが、平野の選択は打四万ツモ切りのテンパイ取らず!
この大リスクを背負った選択は微妙だなと見ていたが、次巡ツモ三万の大成功!

三万三万三万一索一索三索三索  ポン四索 上向き四索 上向き四索 上向き  ポン発発発

結果は、次巡四索をツモって加カン。リンシャン牌はなんと三索!4,000は4,300オールのアガリになってしまった!
余談になってしまうかもしれないが、平野が加カンできる四索をツモってくる前の井上の手番で、三万が切られている。連盟ルールでは大明カンは責任払いを採用している為、平野はこの三万を大明カンしていたら、現状トータルトップ目の井上から12,000点の直撃ができた訳である。タラレバではなく、大きくトータルトップを走る井上からの直撃チャンスがある以上、大明カンの一手ではなかっただろうか?4,000オールのアガリは当然嬉しいだろうが、12,000点の直撃がありえた事を弘中・井上は卓上でどう思っただろうか?
何はともあれ、この大きいアガリで平野は35,900点まで持ち点復帰。

南4局 5本場は、弘中がもう勘弁してくれと言わんばかりに、1,000・2,000は1,500・2,500をツモリ終局。井上の大きなトップで終了となった。

2回戦成績
井上:+35.2P 平野:+6.4P 弘中:▲15.9P 土屋:▲25.7P

2回戦終了時
井上:+29.1P 平野:+14.9P 弘中:+0.2P 土屋:▲44.2P

 

【決勝3回戦】(起家から平野・土屋・井上・弘中)

弘中が軽快にアガリを重ね迎えた東4局、自身の親番。
ここまでの持ち点 弘中:41,800点、井上29,300点

たたみ掛けたい親の弘中にドラ九筒のチャンス手が入る。リーチをかけて高めをツモれば6,000オールだったが、ここは慎重にヤミテンを選択。

七万八万九万三索四索五索一筒二筒三筒七筒八筒九筒九筒  ドラ九筒

この時、井上の手牌

三万三万四万二索三索三索四筒五筒六筒九筒  ポン白白白

今日1日を通じて、自分からアグレッシブに先手を取りにいくスタイルの井上だったが、今回はトータルトップ目・共通安全牌が少ないという事もあり、危険な仕掛けに映った。
まだ序盤という事もあり、井上から九筒が打ち出される弘中には最高の展開があるなと見ていたが、井上が三万をポンした所で、弘中が好き勝手進行させてくないと思ったのかツモ切りリーチ。
弘中には不運にも流局してしまうが、開いた弘中の手を見て井上に助かったと思い胸をなで下ろし、気を引き締め直した事だろう。

この様に東場の入りが不安定に映った井上だったが、そんな心配もあざ笑うかの様に南場は井上1人でアガリ倒す!

南2局 2本場 井上の手牌

四万五万六万七万九万一索三索五索七索三筒四筒五筒六筒  ドラ七筒

下家の弘中がピンズのホンイツ模様で難しい手牌進行に見えたが、ノーミスできっちり三色をアガリきる。

四万五万六万三索三索四索五索六索七索七索四筒五筒六筒  ロン三索

平野から5,200は5,800点のアガリ。

自身の親番、南3局では、平野から3,900点をアガって迎えた、
南3局 1本場 7巡目

一万一万七万八万九万三索三索三索四筒五筒白白白  リーチ  ドラ二索

2巡後にあっさり三筒をツモアガリ、2,600は2,700オール。
持ち点を47,300点まで加点する。

その後、弘中が1,300・2,600ツモアガリと3,900点を出アガって意地を見せるが、井上に迫るまでにはいかず3回戦が終了した。

3回戦成績
井上:+22.5P 弘中:+12.7P 平野:▲11.1P 土屋:▲24.1P

3回戦終了時
井上:+51.6P 弘中:+12.9P 平野:+ 3.8P 土屋:▲68.3P

 

【決勝4回戦】(起家から弘中・平野・土屋・井上)

日本プロ麻雀連盟の公式タイトル戦、最終戦規定により席順が決定。
トータル1位:井上 北家
トータル2位:弘中 東家
トータル3位:平野 南家
トータル4位:土屋 西家

トータルトップ井上と2位弘中の差が、38.7P。これは仮にトップラスの関係を作れたとしても、22,000点程の差をつけなくてはいけないので非常に厳しい数字と言える。
平野に至っては井上と47.7P差。トップラスで32,000点程の差である。
井上は安い手でも局を1つ1つ潰ぶしていけばいいが、条件のある3者はある程度の高い手を作りつつ親番を死守しなければならない。
そんな、東1局 弘中の大事な親番で早速、試練が訪れる。

4巡目に西家の土屋から先行リーチ

三万四万五万七万八万九万一索二索三索四筒五筒九筒九筒  リーチ  ドラ三万

このリーチを受けて次巡、弘中が追いつく

三万四万五万五万六万九万九万七索八索九索六筒七筒八筒  リーチ

弘中がこの2,600オールをツモれれば、井上を沈める事ができ着順の並びも作れる為、逆転優勝に向けて一筋の光が見えたかと思ったが・・・結果は無情にも弘中が三筒をつかみ3,900点を放銃と厳しいスタートとなった。

東3局 ドラ白 北家:井上の手牌

一万二万三万五万六万七万五索五索七索八索九索白白  リーチ

このプレッシャーのかかる状況でも井上は強気にノータイムでリーチを打った。これが自分の麻雀を打ち切るという事なのだろうと感心した。
結果は、弘中から白が打たれ8,000点のアガリ。
このアガリが実質ゲームセットとなるアガリだった。

 

第4位:土屋幸弘
『終始、手が入らず苦しかったですが、皆さん強かったです。静岡リーグで出直してきます。また来年挑戦したいですね。』

第3位:弘中栄司
『受けに回ることが多くつらかったです。来年は新人王戦に出れる最後の年なんで、来年こそは必ず新人王取りたいです!』

第2位:平野良栄
『途中で注意力が途切れてしまうなど、未熟な所がありました。映像対局が初めてだったので、この経験を生かして、来月のチャンピオンズリーグ決勝頑張ろうと思います。』

優勝:井上美里
『素直にうれしいです。東北の先輩が2名、決勝に残ったことがあったが取れてなかったので取ってこいと言われてました。まだまだ未熟ですが、今後とも応援宜しくお願いします!』

今回の第29期新人王戦は井上美里プロが新人王に輝いた。
女性の新人王は、第21期の仲田加南プロ以来の8年ぶり3人目の快挙である。
ニコ生解説で紺野プロが、井上プロは女流桜花のAリーグにすぐに上がってくるとおっしゃっていた通りの圧勝劇だった。
第29期新人王 井上美里プロ、おめでとうございます!

100