特別昇級リーグ 決勝観戦記

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第12期特別昇級リーグ 決勝レポート

2012/10/30
執筆:西川 淳


第12期を迎えた特別昇級リーグ。
半年間8節に及ぶ最終節は盛夏、8月12日に四ツ谷道場にて行われた。
ちょうど同日、閉幕を迎えたロンドンオリンピック2012に歩みを合わせるように熱い戦いはクライマックスへ向かっていく。

決勝に駒を進めたのは、以下の5名。(最終節開始時スコア)

魚谷 侑未(25期生、C2) +149.1P
安村 浩司(25期生、C3) +132.7P
相沢 かおる(24期生、C1) +100.5P
森下 剛任(22期生、C3) +99.6P
福光 聖雄(23期生、C3) +65.8P

決勝は以上のポイントを持ち越して半荘5回を戦う。
今期17名のエントリー中、タイトルホルダーが実に7名。
特昇参加権利のある最上クラスC1からも4名と、レベルの高い凌ぎ合いが繰り返されてきたはずだ。
実際、第20期マスターズ奈良圭純、第27期十段位・堀内正人の実力者もまさかの途中敗退。
前日対局の第7節では、惜しくも決勝に残れなかった蒼井ゆりか、北野由実、一井慎也が最後まで粘りをみせ全員プラス。
逆に、上位3名はマイナスし、結果的に大混戦、4名ではなく5名による見ごたえのある決勝となった。

1回戦(起家から、相沢・森下・福光・安村)

暫定首位の魚谷は抜け番。

東1局、先手を取ったのは森下。

四万五万六万七万七万七万八万七索八索九索一筒二筒三筒 ドラ三万

いつも通り気迫を前面に出して力強くリーチに踏み切る。
遠く中部から、プロリーグだけでなくタイトル戦にも精力的に参戦する森下。
情熱と行動力もあり、最近特に公式戦での好成績が目立つ。

これを受けた安村。無理のない手順でほどなく追いつく。

四万五万六万四索五索八索八索六筒七筒八筒東東東

動向に注目したが、ここはヤミテンを選択。
その後四万を引き、すっとオリにまわった。
この局は森下が700・1,300をツモって終了。

東3局、南家、安村が2巡目でこの牌姿。

二万三万四万四万四万六万六万七索八索四筒五筒南南白 ドラ二筒

ここから打五筒。最終形は、

四万四万四万五万六万二筒二筒  チー一万 左向き二万 上向き三万 上向き  ポン">南南南 ツモ七万  ドラ二筒

魚谷を追いかける一番手の安村。
もちろんこれだけで押し引きや手順が正しいか否かは断定できるものではない。
ただ、安村が攻守双方において、「ぶれない自分の型」を有していることが、この開始2局で見て取れた。
前週に終了したプロリーグで、昇級ボーダーに少し足りず三連続昇級は逃したが、デビュー以来6期中5期プラスでまとめているのは伊達ではないのだろう。
特昇権利を有している安村の、このあとの戦いかたが楽しみになった。

南2局2本場、トップ目の南家、福光がドラの南を切ってリーチ。
これを叩いた相沢が応戦。

二索二索五索六索七索二筒二筒二筒六筒八筒 ポン南南南

ツモ切りが続くなか、相沢がツモった四索七索を入れ替えて切ると福光の手が倒された。

三万四万五万五索五索五索七索五筒五筒六筒六筒七筒七筒 ロン七索 ドラ南

5,200は5800。
四索をツモ切りならセーフ。

前週のプロリーグで、すでにB2への正規昇級が決定。
過去の特昇リーグ優勝他、圧倒的パワーを示す実績を残している相沢は、
このメンバーにあっても本命視される存在だといえるが、この放銃に象徴されるように、この日は牌の来方がしっくりしない印象が強かった。

結局、この半荘はこのアガリが決め手となって福光が1人浮きのトップ。
手痛い放銃があった森下と相沢がマイナスすることとなった。

1回戦成績
福光+24.1P 安村▲2.7P 森下▲6.7P 相沢▲14.7P

1回戦終了時
魚谷+149.1P 安村+130.0P 森下+92.9P 福光+89.9P 相沢+85.8P

2回戦(起家から、福光 ・森下・相沢・魚谷)抜け番:安村

1回戦で幸先の良いトップをとった起家の福光。
東1局の親。

六万六万六万七万七万四索四索四索三筒四筒六筒七筒八筒 ドラ八筒

この役ありテンパイをして、残り1巡にも関わらず、間髪いれずに「リーチ」の発声。
新人王に続き、各団体プロが多数参加した最強戦全日本プロ予選でわずか一席の代表を勝ち取ったこともある。
ワンデーでの勝負強さはこのような姿勢から来ているのかもしれない。
このリーチは実らなかったが、優勝への強い気持ちを感じた。

対して、ここから始動の魚谷。
東1局1本場、

二万二万五万五万一筒一筒五索五索六索七索八索南北北 ドラ発

ここから打六索
普段はあまり七対子は狙わないという魚谷。
「ただし受けの七対子はやります」という持論を実践。
あきらかに牌勢の悪い立ち上がりだったが、丁寧に牌を絞りつつも組み立てていく。
この七対子はテンパイ止まりとなったが、この日何回も苦しい局面を七対子で切り抜ける。

東4局、相沢のリーチにノータイムで無筋を切り飛ばしテンパイ流局に持ち込んだ東家の魚谷。
続く1本場。またも面子を崩して七対子に向いテンパイ。

二万二万一筒一筒四筒四筒六筒六筒七筒七筒八筒八筒西

しかし、ここはヤミテン。
このあと、森下がリーチ。それに対して魚谷が追っかけリーチの図となった。

この2軒リーチを受けた南家の福光、少考の後に西を放銃。4,800は5,100のアガリとなった。

点数的には決定的なものではない。
だが、ツモ切りリーチが西を打ち出す理由のひとつとなったと福光も後に語った通り、魚谷の工夫が光った局面となった。
そして、振り返ると、この局こそ決勝そのものの大きなターニングポイントとなったかもしれない。

この直後から、魚谷が5本場まで積み上げ、持ち点も62,700点まで一気に伸ばす。
特に4本場の2,600は3,000オールのツモは作り上げた勢いを感じさせ、必ずツモるだろうと予感させるような強い内容であった。

そのまま魚谷は危なげなくリードを保ち、相沢がかろうじて浮きを確保した。
さすがは女流桜花、優勝に向けて好発進。

2回戦成績
魚谷+36.0P 相沢+6.3P 福光▲12.2P 森下▲30.1P

2回戦終了時
魚谷+185.1P 安村+130.0P 相沢+92.1P 福光+77.7P 森下+62.8P

3回戦(起家から、安村・森下・福光・魚谷)抜け番:相沢

引き続き序盤から加点し40,000点を超える好調の魚谷。
それに対して、各者南場で意地を見せる。

南1局は西家、福光。

一万二万三万七索八索九索七筒八筒九筒南南発発 ツモ南 ドラ四筒

この2,000・4,000。
南2局は東家、森下。

八万八万三索三索五索五索二筒二筒四筒四筒六筒六筒八筒 ロン八筒 ドラ八万

この12,000点。
森下はこのアガリにもみられたように、随所で構成力のある手順、精度の高い待ち取りを繰り返し、観戦者をうならせていた。
ただ、1〜2回戦の放銃が影響したのか徐々に制約も多くなり、この日は突き抜けるまでは叶わなかった。
この半荘、大接戦のオーラスまで持ち込み、トップを取ることが最後の見せ場となった。

一方、2回戦の抜け番中、目の前での魚谷の猛連荘をどう見たか、安村。
通常だと少々あせりそうなものだが、魚谷以下に置いていかれる苦しい展開でも落ち着いたもの。
東3局にチンイツのチーテンを入れず、南1局の最後の親番でも七対子に決め打ちポンせずと、重厚な自分の雀風を貫く。
そして南3局2本場、はじめて十分な形で鳴いた安村、値千金のアガリを静かに手元に置く。

八万八万三索四索五索九筒九筒 チー二万 左向き三万 上向き四万 上向き ポン白白白 ツモ八万  ドラ八万

この2,000・3,900は2,200・4,100をアガリ一撃で浮きにまわり、優勝レースに踏みとどまった。

3回戦成績
森下+14.8P 魚谷+5.7P 安村+3.5P 福光▲24.0P

3回戦終了時
魚谷+190.8P 安村+133.5P 相沢+92.1P 森下+77.6P 福光+53.7P

4回戦(起家から、安村 ・福光・相沢・魚谷)抜け番:森下

相沢が首位の魚谷との100P差程度をあきらめるような打ち手ではないことは、対戦したことのある人なら誰でも知っている。
東1局、北家の魚谷に対して、配牌からある孤立牌の北を最後まで手放さなかった相沢。
確固たる優勝への意志を感じる。
これが長い半荘の始まり。

その相沢が次局に満貫をツモれば、魚谷のリーチに対しては3者で完全ガード。
そして南場に入って親の安村が4,000オールをツモって魚谷がラス目になり、追う者にとって筋書き通りの展開に。

南1局は4本場まで。
その4本場に西家、相沢に強烈な手。
七対子のテンパイを組まずに仕上げた最終形

八索八索八索八筒八筒東東 ポン西西西 暗カン牌の背八万 上向き八万 上向き牌の背  ドラ西

ツモや高目八筒なら倍満まであるこの手。
魚谷も高目三色のタンピンリーチ。
ドラの西を鳴かせた福光はダブ南ホンイツのテンパイ。
観ていて非常に面白い息を呑む展開となった。
この局を制したのは魚谷。安目ながら3,900は5,100。

しかしこれで終わらない。
南2局は6本場まで。
後がない最後の親、福光
一瞬の隙を逃さず形テンを入れるなど、粘りに粘った怒涛の連荘。
5本場で決定的な手。

七万七万三索三索三索八索八索八索二筒二筒七筒七筒七筒

ツモれば一気に80P程度を縮める四暗刻で迷いなくリーチ。
成就しなかったが、雰囲気に溢れる素晴らしい時間となった。

結局、この半荘は相沢の渾身のフリテンリーチが実るなどして、相沢と安村が浮きにまわり、魚谷にラスを押し付ける。
計19局に及ぶ熱戦を経ていよいよ最終戦へ。

4回戦成績
相沢+17.1P 安村+8.1P 福光▲8.3P 魚谷▲16.9P

4回戦終了時
魚谷+173.9P 安村+141.6P 相沢+109.2P 森下+77.6P 福光+45.4P

最終5回戦(規定により起家から、安村 ・相沢・森下・魚谷)

対局開始が21:30。しかし疲れの色を見せずに卓につく各者。
それぞれ1つの順位で30P差程度の並びでスタート。
安村と魚谷が1回ずつリーチを打ち、共に流れた後の東3局。
森下が2,600は2,900オールをツモった次局が実質上のフィナーレ。

東3局4本場 

南家・魚谷
四万五万六万一索二索三索四索五索六索九索九索五筒六筒 ドラ発

西家・安村
二索三索四索五索六索七索五筒六筒七筒七筒八筒発発

共に快心の手順でのテンパイ即リーチ。
結果は、一発での魚谷の高目四筒ツモだった。

5回戦成績
魚谷+18.9P 安村+9.4P 森下▲7.3P 相沢▲21.0P

最終成績
魚谷+192.8P 安村+151.0P 相沢+88.2P 森下+70.3P 福光+45.4P

5位:福光 聖雄
「優勝を目指した打ち方をしました。魚谷さんを乗せてしまったのが悔やまれますが、また何回でも頑張ります」

4位:森下 剛任
「立ち上がりが悪すぎたなあ…また本場所でも頑張ります」

3位:相沢 かおる
「魚谷さんが強かったですね。でもしっかりやり通しました。Bリーグでも頑張ります」

準優勝:安村 浩司 ※C1リーグへ特昇
「課題もいろいろ見つかったし、今度はC1になるので、また頑張っていきます」

優勝:魚谷 侑未
「プレッシャーはあまり感じず、気合ものって良かったです。
これからもリーグ戦やタイトル戦が目白押しなので、良い結果がでるよう頑張ります」

優勝した魚谷は、本場所のリーグ戦でマイナスしたため、残念ながらB2リーグへの特昇権利は得ることができなかった。
だが、今回得た経験は非常に大きなものであろうし、対戦相手が揃って賞賛した対局内容は自信にもなったはずだ。
次回の特昇リーグにも参加予定で、上を目指す姿勢は崩れる様子がない。

ロンドンオリンピックでメダル寸前で涙をのんだ男子サッカーの清武選手は幼少時からこう父親に習ったと聞く。
「夢とは叶えるもの。叶わなければそれは努力が足りていないと言うことだ」
また、チームを率いた関塚監督は敗戦後こう語ったそうだ。
「この悔しさを忘れず、これからもっともっと成長していこう」

魚谷をはじめ、各々が何らかの「悔しさ」をみつけたことこそが、忙しい間を縫って、このリーグへ参加した者の収穫だろう。
少なくとも、「努力をしている人たちの素晴らしい決勝戦」だった。
この夏の決勝メンバーが、いずれ大舞台で更なる成長した姿を見せてくれるに違いない。