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プロ雀士コラム

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第1回リーチ麻雀世界選手権コラム

2014/08/19
執筆:池田晋作


※今回のコラムは、パリで活動されている日本人の方で、
第1回リーチ麻雀世界選手権で審判を務められた池田晋作さんに、
大会について、今回は特別に書いていただきました。(編集部)

 

「第1回リーチ麻雀世界選手権を終えて」

 

Q. 今大会で、運営(審判員)をされてみていかがだったでしょうか?

A. 昨夏、今大会の運営責任者から「1年後、⽇本人プロにパリに来てもらい、リーチ麻雀世界大会を開く!」と報告を受けた時、私は正直「⽇本人プロが、本当にパリまで来てくれるのか?」と疑いました。
一方で、この大会を実現できれば、ヨーロッパの麻雀愛好家にとってかけがえのない第一歩になると確信していました。

当初から、審判というよりは通訳が必要になると想定していました。
しかし1半荘目が終了した時点で、参加者全員がそれぞれの方法でコミュニケーションをとっていたので、麻雀そのものが「共通言語」になった瞬間を目の当たりにしたように私は感じました。
そういう意味で、私たちの役割は少なかったのではと思います。

ヨーロッパの人々、特に主催団体のフランス人にとって、ここまでの大規模な大会運営は初めての経験であるなか、⽇本プロ麻雀連盟の皆様から多大なるご指導、ご協⼒を頂けたことへの彼らの感謝の言葉が私に届いています。

 

 

Q. 審判員としての苦労話があれば、是非お聞かせ下さい。

A. 私たち審判員は、今大会のルールブック最終版を受け取ったのが大会1ヶ月前だったので若⼲焦りました。
今大会のルールは EMA(ヨーロッパ麻雀団体)のルールとは若⼲異なり、食いタンあり、食い替えなし、箱テン終了なし、途中流局なし、切り上げ満貫あり、⾚牌なし、順位点の変更
(10,000-30,000から5,00-15,000)、点棒の使用などが採用されました。

ヨーロッパ特有のル ールとして、「宣言の厳密化」が定められました。
海外では中国式麻雀の愛好家が多く、その方々が違和感なくリーチ麻雀に打ち解けられるよう、EMAのルールでは例えばロンとツモを「マージョン」と発声することを容認していました。
今大会では、このような誤発声を ▲1ポイント(▲1,000 点)と厳しく定めました。

さらに、大会全体として議論された「3秒ルール」は、私たちも相当頭を悩ませました。
これは基本として、上家が牌を捨ててから 自らのツモまで、3秒「間を取る」ことで他の選手が鳴くかを考えられるというルール設定です。
これもヨーロッパ特有で、「他の選手の捨牌を⾒て、自らの手を⾒て、鳴くかを決める」まで非常に時間を要する方が多いことから、瞬時の意思決定ができない選手を考慮したルールとなっています。
しかし、このルールを採用することで、別の問題も発生するのではという意⾒もあり、審判団で何度も議論を重ねましたが、ルールブックから消されませんでした。

大会2ヶ月前からルールブック最終版を受け取るまでの間、私を含めた⽇本人審判員3人で、このような細かい確認作業を進めてきました。彼らは、私たち⽇本人の手を借りず、⽇本のプロ麻雀リーグやその他一般的なルールに至るまで、ルールに関する情報をできる限り多く集めて翻訳し、ルールブックを作り上げました。
今後、このルールブックが世界共通となり、初心者にも読んで頂くことを⾒据えれば、⽇本では常識もしくは暗黙の了解となっていること、例えば、「送りカン」や「コシ」について、ルール上用語を定義すべきではと審判⻑に申し⽴てしましたが、理解されませんでした。

朗報として、2〜3年後の次大会に向けて大会運営委員会が発足されましたので、⽇本プロ麻雀連盟はじめ多くの団体様からのご指導、ご協⼒のもと、今後より精度の⾼いルールブッ クができることを期待しています。

 

 

Q. ヨーロッパのリーチ麻雀について、どのような印象をもたれていますか?

A. 彼らは、本当に研究熱心です。
リーチ麻雀と出会うきっかけは、「アカギ」や「坊や哲」、「哭きの⻯」などの麻雀漫画に魅了された方が多く、「アカギ」の鷲巣麻雀に憧れ、⽇本から「鷲巣牌」を購入した方もいます。

彼らは、インターネットからあらゆる情報を集め、英語を基本言語としてヨーロッパ全体で情報を共有しています。
動画に関しても、YouTubeをくまなくチェックしているようです。

彼らは、⽇本で出版されている戦略本を読み漁りたいという願望が非常に強く、そのために⽇本語を勉強する方や⽇本から書籍を入手して、辞書片手に一生懸命読まれている方もいるそうです。

⽇本人の私から⾒ると、彼らの多くはリーチ麻雀を「単なる戦略ボードゲーム」と捉えているように感じる時があります。つまり、攻防のバランスや4人の間の心理戦、点数差から生まれる駆け引きといった、リーチ麻雀の醍醐味を味わっている選手は、まだ少ないように感じます。
「誰がリーチをかけようとも、誰がテンパイであろうと、考えず予測もせず無筋で不要牌をただ切るだけ」という選手が今でも多いのが現状です。
しかし、今大会でTOP32に残った外国人選手は、より⽇本人に近い打ち方ができる選手が残りました。
単なる数字合わせや絵柄合わせではなく、河を読み危険牌を止め、無理にテンパイを維持せず一旦まわすなどの技術を身につけている選手もいて、短期間でここまで成⻑したのかと正直感心していました。

余談ですが、⽇本においては当たり前のエチケットやマナーは、まだ浸透していません。
例えば、卓に肘をついてプレーする、ツモ牌を一旦手牌に入れてから切り出す、オーラスの際に点数確認・告知しない…など、望ましいことではありませんが、これらは徐々に「ヨー ロッパスタイル」になりつつあります。

 

 

Q. それでは、レベルも含めて、日本と外国の麻雀の違いはどこにあると感じていますか?

A. 私個人の意⾒かもしれませんが、ヨーロッパの中でレベルの⾼い選手(=EMAランキングで上位)でさえも、誰が何巡目に何を切って、誰がどの牌をツモ切りしたか、誰が何シャンテンなのかを予測するといった「限られた情報から、相手を読み取る基本的な動き」はあまり感じられません。ですので、放銃を繰り返し崩れ始めると、感情的になり悪循環を止めることができなくなる方が多いです。

国⺠性という大きな視点から⾒ると、⽇本人は経験に基づく柔軟な発想と臨機応変さ、過去の失敗を必ず活かす、時に相手の打ち方に合わせるといった特性をもっているように思えます。
その点から考えると、外国人の方は⽇本の一般プレイヤーと比べても、過去の経験を活かすまでの「場数」が未だ少ないように感じられます。

 

 

Q. 現在、ヨーロッパでのリーチ麻雀の認知度はどの程度ですか? また、今後リーチ麻雀人 口は増えると思いますか?

A. 元々ヨーロッパでは中国式麻雀の認知度は⾼く、リーチ麻雀の歴史は各国の平均をとっても7〜8年ですので、認知度は⾼いと言えませんが、嬉しいことにここ数年で中国式麻雀の選手の中で、リーチ麻雀のほうが楽しいという方が徐々に増えてきています。ですので、今大会のような「プロに挑戦できる麻雀W杯」が定期的に開催され、出場権を獲得するためにEMA公式試合で⾼成績を残すといった目標があれば、各国でさらに盛り上がるでしょう。

昨年オーストリアで⾏われたリーチ麻雀ヨーロッパ選手権も、今後定期的に開催される予定ですので、この2つの大会が強く結びつくことを願っています。

認知度を上げるために、FFMJ(フランス麻雀連盟)は、毎年7月に開催されるJAPANEXPOにてブースを出しています。このような地道な宣伝も含め、「彼らなりの方法」で徐々に麻雀人口も増えていると実感しています。
さらに人口を増やすためには、「⽇本からの商材」の流入、例えば関連書籍の翻訳と書籍の増加、画やライブ感ある企画が必須と言えます。私も、リーチ麻雀をこよなく愛する一雀士として、リーチ麻雀の普及のためフランスにて大暴れする予定です。

 

 

Q. 最後に、海外で生活されている日本人として、リーチ麻雀という日本の文化についてどのように捉えていますか?

A. 正直に答えると、非常に特殊な文化だと思います。
先ほどもお話したように、リーチ麻雀は相手との駆け引きや4人との調和、少ない情報から予測して相手を読み取るなど、相手がいてこそ成り⽴つゲームだと思います。

一方で、ヨーロッパの方々の打ち方を⾒ると、個のゲームとなることが多いです。
外国では、相手の出方よりも、先ずは自分の主張を積極的に前へ出します。
その点が⽇本人と全く異なる文化だと、リーチ麻雀を通じて⽇々痛感しています。

ヨーロッパでも特に「寒さが厳しい国」では、たとえテレビゲームが発達しても、今でもアナログのゲーム=ボードゲームが主流です。それを象徴するかのように、スペインやイタリアの選手は少なく、北欧の選手が多いです。
フランス・パリは、年中⾬が降り比較的寒いので麻雀愛好家は多いですが、一旦太陽がでると「こんな天気が良いのに、部屋に閉じこもっていられない!」と言って、外に出かけます。

このように、リーチ麻雀がそれぞれの国の文化に普及・浸透するにはまだまだ時間がかかりますが、⽇本の文化の象徴である柔道や剣道、合気道が世界に広まったように、リーチ麻雀の醍醐味が伝わる⽇は必ずくると信じています。