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プロ雀士コラム

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インターネット麻雀日本選手権2018観戦記 櫻井 秀樹

2018/08/09
執筆:櫻井 秀樹


2018年7月15日

「数年に一度の酷暑」
「観測史上最短の梅雨明け」
などと言われるほど今年の7月は暑かった。
だがこの日は、外の暑さに負けないほどの熱い闘いが夏目坂スタジオで繰り広げられていた。

・選手紹介

前田直哉

 

 

今さら紹介の必要もないだろう。グランプリ・鳳凰位などタイトル戦の実績も豊富、連盟チャンネル御馴染の顔である。
前田は普段仕事をしている事もあり、ネット麻雀での稽古、調整をしている姿もよく見られ、ネット麻雀への慣れという部分でも不安は無い。

 
 

蛯原朗

 

 

プロ連盟若手のホープ。
モンドTVでの活躍が有名なところだが、実はネット麻雀でも強豪で知られ、プロ入り前に天鳳で十段まで到達したとか・・・※もちろんロン2のレーティングも上位
得意なフィールドで力を発揮したいと意気込みを語ってくれた。

 
 

orinzouさん

 

 

2015年のファイナリスト。
その年はダントツの水巻プロ(最高位戦)をASAPINさん(現在は最高位戦所属・朝倉康心プロ)が追いつめる、という構図で、最終戦はできる事も少なく悔しい決勝戦となってしまった。
一般ユーザー代表(ハンゲーム)で2度目の決勝は快挙!今年はリベンジなるか??

 
 

勝又健志

 

 

こちらも紹介は不要。
抽選による繰り上がりで決勝進出
ネット麻雀には向いているであろう論理的な麻雀頭脳と、繰り上がりの勢いで優勝を狙う。

 

 

場面は3回戦オーラス
解説の白鳥翔(トッププロ)が思わず感嘆の声をあげる
「この局がもしかしたら優勝をきめる1局となるかもしれないですね」

この半荘のオーラス時点で、トータルトップ目にたつorinnzouさんが3者のターゲットとなっていた。
ピンフをテンパイしていた勝又が、蛯原から出た三万を見逃し、ツモ切りリーチを打つ。
※ロン2ではツモ切り牌はグレーになり、ツモ切りリーチは明白であった。
狙い通りすぐに六万を掴むorinzouさん。自身もテンパイしていて、リーチ者の勝又のゲンブツマチ。
三万は直前に通り、九万は勝又が早くに切っている。
六万は見逃しでなければほぼ通る。
これは打ってもしかたない、いや打つ方が自然だろう。

ところがorinzouさんは上記全ての状況に甘えることなく、テンパイを崩してまわる。
オヤがノーテンで流局。勝又のマチも確認しつつのトップ逃げ切り。

この結果を経て、4、5回戦を危なげなく乗り切り、3年前の雪辱を晴らす優勝を決めることとなる。

トッププロ3者を相手に見事完全勝利ともいえる内容で打ち抜いたorinzouさん。
その闘いをふり返ってみよう。

 
 

1回戦
東1局
決勝戦の開局、可能であれば誰もが自らのアガリで幕をあけたいものだ。
決勝慣れしている、前田、勝又の両名はともかく、orinzouさん、蛯原は、心をおちつかせる意味でもまずはアガリを取りたい。

南家orinzouさんがわずか3巡目のリーチ。
これにそこそこ手になっており、安全牌もない勝又がトイツ落としで放銃。
ウラドラも乗って8,000のアガリだ。

 

 

いきなりの満貫でスタートした1回戦だったがその後は小さいアガリが続く。
オヤの連荘もほとんどない。
ただし満貫放銃スタートの勝又が、なんとオーラスまでの8局中5局放銃、という1人 苦しい展開。

オーラスを迎え、勝又以外の3者がトップを競るという状況に。

南4局
その勝又より8巡目のリーチ。
アガっても着順が変わることはほぼないが、これ以上の失点を防ぎ2回戦以降へ繋げる リーチだ。

 

 

しかしこの3メンチャンも空振り。
まわりながら粘ってテンパイをとった前田が、ノーテン罰でorinzouさんをかわし微差ながら1回戦のトップを決める。

1回戦結果
前田 +24.5P
orinzou +7.5P
蛯原 ▲6.2P
勝又 ▲25.8P

 
 

2回戦
またもorinzouさんの先行。
蛯原から、3,900、12,000、と立て続けにアガリ、東場のオヤ番を5万点近い持ち点でむかえる。
さらにオヤ番ではこのリーチ。

 

 

非常にいいリーチである。
四筒二筒と手出ししているため、良型が予測されペン七筒はやや盲点になりやすい。
しかも高打点ときており、子方はこれに飛び込むと相当堪えそうだ。

北家の前田も追いつくが待ちはヤマにはなし。

オヤのアガリかと思われたが、蛯原の粘りのテンパイ取りにより、七筒が食い流され流局。
ビックイニングとはならなかった。

 

 

それどころか、テンパイや積極的なアガリで点棒を積み重ねた勝又に、オーラス見事な 満貫でトップをかわされまたも2着。

 

 

やはりトッププロの壁は厚い!
しかしながら連続の2着で微差ながらトータル首位はorinzouさんとなる。

2回戦結果
勝又  +33.4P
orinzou +19.0P
前田  ▲12.1P
蛯原  ▲40.3P

2回戦終了時
orinzou +26.5P
前田 +12.4P
勝又  +7.6P
蛯原  ▲46.5P

 
 

3回戦
あとのない蛯原が奮起。東場で連続のアガリを決める。
このまま蛯原トップだと、残り2回がかなり面白くなるのだが。

東4局6巡目
南家のorinzouさんが下記のテンパイ

 

 

直前に西が切られており判断が難しい。
河も派手になっており、リーチすればおいそれとアガそうな白ではない。
ヤミテンかドラへのくっつきで打西か?トータルのポイントの兼ね合いもある。
少し時間を使いそうなところだが、orinzouさんはノータイムでリーチを選択。

なかなか勇気のいるリーチだ。これに牌も応える。
オヤに追いつかれヒヤリとした瞬間のツモ。大きなアガリとなった。

 

 

南場に入ってからも細かいアガリでorinzouさんがトップをキープ。
オーラスを迎えた段階で、2着蛯原とは6,100点差、3着勝又とは14,600点差。
また、ラスの前田もオヤ番のため、1、2回戦同様簡単には逃げきれない。

そして13巡目、冒頭の場面である。

 

 

アガリが発生しなかったためウラドラは見られなかったが、1枚乗っていれば勝又の目論見通りだった。
勝又の技を凌ぎきりようやくトップを守り切った。

3回戦結果

orinnzou +28.0P
蛯原  +7.9P
勝又  ▲8.6P
前田  ▲27.3P

3回戦終了時
orinzou +54.5P
勝又   ▲1.0P
前田   ▲14.9P
蛯原   ▲38.6P

 
 

4回戦
先程のトップでorinzouさんが有利な状況に。
ただ、優勝が近づき、自分の本来の麻雀が打てなくなってしまうと隙ができる。
経験の少ない者であればそのような状態に陥ってしまうこともよくある。
また、トッププロはその隙を絶対に見逃さない。

しかしorinzouさんはこの4回戦も全く変わらないテンポで、オリる局面はオり、押す局面はしっかり押して崩れることが無かった。

もちろん3者もorinzouさんからの直撃を狙うのだが、勢いなのか、点差からくる余裕な のか、なかなか点棒を減らしてくれない。

勝負を決定づけたのは、東4局。
前局、蛯原のリーチに押し切って3,900をアガっており、気分もツモも絶好。

 

 

わずか4巡でこのテンパイ。
リーチでもよいのだが、点差も考慮しヤミテン。非常に冷静である。
そしてツモ中とくれば今度は3面チャンでリーチ。

 

 

6巡で3,000・6,000のツモアガリ。勝負ありの瞬間だった。
この後も3者に点差を詰められることなく4回戦もトップで終了。
最終戦を前に優勝を手中とした。

4回戦結果
orinozou +33.1P
前田  +13.2P
勝又  ▲10.3P
蛯原  ▲36.0P

4回戦終了時
orinozou +87.6P
前田  ▲1.7P
勝又  ▲11.3P
蛯原  ▲74.6P

5回戦結果
orinzou +28.4P
勝又  +4.1P
蛯原  ▲6.4P
前田  ▲26.1P

最終結果
orinzou +116.0P
勝又  ▲7.2P
前田  ▲27.8P
蛯原  ▲81.0P

 

 

日も西に傾き、ようやく外の暑さもおさまるころ、今年のインターネット麻雀日本選手権も幕を下ろした。

昨年に引き続き、一般代表(ハンゲーム)ユーザーさんの優勝となったわけだが、これは決してプロが弱かったわけではなく、ネット麻雀のレベルが上がっているからといえよう。
決勝に2度残ったorinzouさんの麻雀もプロ顔負けの技術、試合運びであった。

orinzouさん,
リベンジおめでとうございます!

「名前の由来は「オリないぞ」という意味なのですが、最近はよくおりるんです(笑)」
と冗談交じりに話してらっしゃいましたが、しっかりとした攻め、また勝敗を決めた守備など、押し引きのバランスがとても素晴らしかったと思います。

おそらく今後も参加いただけると思いますので、3度目の決勝、さらには2度目の優勝を 狙ってほしいと思います。

来年も熱い戦いを期待しています。