プロ雀士コラム

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戦術の系譜2 滝沢 和典

2019/12/23
執筆:滝沢 和典


打ち筋にこだわりを持った期間が長すぎたせいか、それとも対戦相手のデータがない状態で、作業のような麻雀を繰り返したせいか、いずれにしても思考放棄のような麻雀が成長を止めてしまうと感じたことがあります。
麻雀プロの対局には様々な舞台がありますが、その多くは短い期間で勝敗が決まり、ほぼ一定のメンバーで行われます。
そんな環境で優れた成果を収めようとした時に、微差の損得を極めるのも一つの手段ですが、相手のデータを知り、そのために対策を練るのもまた戦術ではないかと私は考えます。

第1回では結果が良く出た、言わば自慢のような局を取り上げましたが、やはり失敗した局の方が学びがあります。
今回は12月16日のМリーグ第1戦、私が大敗を喫した局について書きたいと思います。

【データを逆手に取られた】
東1局 ドラ五万
東家スタートの私は、少々強引なリーチをかけて圧力をかけようとしたところ、南家の前原選手の攻撃を受け満貫放銃となりました。

 

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東2局は親番の前原選手が西家黒沢選手に12,000の放銃。

東1局のリーチの是非はさておき、続く東3局の選択がこの半荘の一番のポイントとなりました。

1回戦 東3局ドラ三筒
私の手牌は非常に悪く、とても戦えそうではありません。運よく形式テンパイがとれるかどうかといった感じです。

 

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10巡目に前原選手が三万をカンチャンでチーして打四筒とすると、
それに連動して近藤選手がカン四筒赤五筒含みでチーします。

前原捨牌
九万 上向き一万 上向き西中二万 上向き二索 上向き
四索 上向き一万 上向き八索 上向き四筒 上向き

近藤捨牌
南北一万 上向き四万 上向き九筒 上向き八万 上向き
九万 上向き九筒 上向き三万 上向き二万 上向き五筒 上向き

近藤選手、前原選手、両者の仕掛けともに手役は絞りきれませんが、前原選手はタンヤオなど役が確定している仕掛けで、ソーズ以外に多くの筋が打たれている近藤選手は役牌がアンコになっているか、役牌2つのダブルバックか?仕掛けを受け、第1感はどちらかであろうと予測していました。

すると13巡目、37,000持ちの黒沢選手からリーチが入ります。
そのリーチを受けた前原選手は少考の後、手出しで打白
おそらく勝負に値する手格好ではなく、アンコもしくはトイツの白を打って迂回したものだと判断しました。
先に前原選手の手牌の答え合わせをしておきます。

 

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対して親番の近藤選手は、無筋の打八筒一筒と連続で無筋を押していきます。

まだ東3局ではありますが、トップ目のリーチは自信がある待ちであったり、さらに盤石なトップに立つため高打点を決めにいくなどのパターンが非常に多いです。
曖昧ではありますが、前原選手からもテンパイ気配を感じており、白手出しによってその手役が役牌だったことを確認できたと同時に、近藤選手が役牌関連だった場合、残されたパターンは発のシングルバックのみ。

それを踏まえて、親とはいえ無筋を連打した近藤選手の手牌のパターンから役牌が放銃となるケースは消去していいと思いました。

安全度の高い牌を打ち出していると、偶然にも形式テンパイを取れるイーシャンテンになります。

 

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瞬間、上家から打ち出された七筒はチーテンを取れる牌、打ち出すのは1枚切れの発
一瞬手が止まってはいますが、頭の中は先に書いたように処理されています。
東1局の失点もあり、点数的に当面のライバルである前原選手との点差を詰めるという意識も後押しし、打発とすると、これが近藤選手に12,000放銃となります。

 

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単なる形式テンパイ、しかも流局までテンパイをキープできるかどうかわからない価値の低い手牌で、最低5,800が見えている仕掛けに放銃。はっきり言って超甘い放銃です。

SNSで「こういった打牌こそ叩くべきだ」と自身でも発信しました。結局は自分が楽になるための発言かもしれません。しかし、そうでもしないと色々な人に申し訳ない気持ちになったのが理由です。

ただ、これについて近藤選手がその常識を崩して勝負所に持ち込んだことを称賛する声が上がってほしいとも思います。
打った私にそこまでの信用度がないのも要因のひとつですが、そういった声が少ないと「麻雀の見方」がまだまだ浅いなと、近藤選手の凄さを、卓上の圧力の掛け合いを理解してほしいなと思うし、観戦している人をその段階に導くのもまたプロ側の仕事なのかなと考えます。
リスクを負って、相手をミスリードした近藤選手にとっては言わば会心の一撃です。仮に黒沢選手の自身のあるリーチに近藤選手が飛び込んでしまった時には、また逆に低い評価を受けてしまうこともあるかもしれませんが、敢えてそこにトライした近藤選手の思考を拾っていくことも忘れてはいけないと思います。
今回は、本当にデータ通りなのか?それを探る段階を飛ばして楽をしようとした私の完敗です。大げさではなく、本当にフラフラになってやっとの思いで対局を終えました。

【おまけ】
トップ目、黒沢選手のリーチはこちらでした。

 

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この対局では黒沢選手が80,600点持ちのトップで終了。私はМリーグワースト記録となる箱下32,800点の4着で終了となりました。

先ほどのSNSで、ついでに(あの人普段何食ってんだ…)と呟いたところ、黒沢選手が所属するチームの公式アカウントから返信が…

 

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ご、ご丁寧にありがとうございます!
くぅーーーーーーーーっっ