プロ雀士コラム

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戦術の系譜4 前田 直哉

2020/02/19
執筆:前田 直哉


第1回は滝沢プロでその次を頼めないかということで了承した。きっとミスターXみたいなシリーズかと思ってタッキーの回を読んでみると…超絶真面目な戦術の記事だった。残念ではあるが私もちょっと真面目に戦術っぽいことを書いてみようと思う。

手牌をよむとよく言うが、手牌はいろんなことからよむことが出来る。代表的なものだと捨て牌、手出しツモ切り、仕草、視線、等々さまざまなことから読み取ることが出来る。
だからこそ相手は捨て牌に工夫を凝らしたり、空切りしたりして相手のよみを絞らせないようにするのである。今回は相手の手出しツモ切りから得られた情報で枚数からの手牌よみの話をしたいと思う。

まず例えばリーチ者の手出しツモ切りから相手の手がこんな感じだと情報を得たとする。

牌の背牌の背牌の背牌の背 一筒牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背 牌の背牌の背九索
   マンズ            ピンズ         ソーズ

これだけでは情報が少なすぎて待ちまではわからないじゃないか。そう思う人もいるだろう。だが、もしこの情報が正しいのならばこのリーチは100%マンズ待ちなのだ。ポイントはマンズが4枚だということだ。4枚ということは頭2枚とリャンメン、カンチャン、ペンチャン。


一万一万五万六万 二万二万六万八万 二万二万八万九万

もしくは1メンツと単騎、ノベタン。


一万二万三万九万 一万二万三万四万

もしくはシャンポン。


一万一万九万九万

この形になる為、全てマンズ待ちになるのである。ただ例外なのは七対子の場合だが、七対子は捨て牌からある程度予測出来やすいので問題無いだろう。
この枚数の理論は7枚の時にも同じことが言える。更に7枚の場合は七対子であってもその色の待ちになる。したがって、1種類が4枚、もしくは7枚だと確信したらその色の待ちで間違いないと言える。同様に10枚でもそうなるのだが10枚だと確信出来る状況はなかなか無いのであまり気にしないほうがいいだろう。
実際ちゃんと見ていておおよその見当はついても、確信に至るケースはそう無いのだが、それでも見ておくことで確信出来る時は圧倒的に有利だと言える。

では得られた情報がこの程度だったらどうだろう?

牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背牌の背 牌の背牌の背九筒
        マンズとソーズ            ピンズ

マンズとソーズが何枚ずつなのか定かでは無い。この場合、相手の待ちまでは確定出来ないが、3枚のピンズは全て通るということがわかる。情報が少ない中でリーチに対してこの1種類だけでも全て押せるということはとてつもなく大きなメリットなのだ。これは6枚の場合も同様なことが言える。捨て牌だけ見ると裏筋だから切りにくいとか宣言牌のスジは危険だとか思うが、全く気にせず切ることが出来るケースもあるのである。

手出しツモ切りをしっかりと見て、手牌のどこから何が打ち出されたかを見て記憶しておくことはとても重要なことなのである。更にこれに捨て牌の情報も加われば、より精度の高い待ちよみをすることが出来るのだ。

私はとある企業の麻雀部の顧問をしている。力はそれぞれで上級者から中級者までさまざまだ。ある時、下家の手出しツモ切りと各種の枚数から待ちを予測する練習をしたことがあった。正直言ってかなり難しい課題だと思ったが、その中でもまだ経験の浅い男性が下家のリーチを受け、上家が切った六索に対して「ロン!」と言ったのだ。後ろで見ていた私はきょとんとした。なぜならその人の手牌はバラバラだったからだ。すると、リーチをしていた下家に対して「ロンですよね?」そう言ったのだ。実際に下家のリーチは三索六索だった。経験は浅いがしっかりと手出しを観察し、捨て牌から待ちを確信出来たのだ。この男性の中でこのリーチは三索六索待ちだと1点でよみ切れれば、他の牌は全て押せる。これがどれほど有利なことかは誰しもがわかるだろう。

ただ、今回の枚数よみは理牌していた場合の話ではあるが、ちゃんと理牌しない人でもある程度わかる場合がある。それが100回に1回でも有利になるのであればやらないよりもやったほうが良いに決まっている。勝つ為にはほんの数パーセントの積み重ねが大事なのだと思う。

ではどうしたら出来るようになるか?いきなり全員の手出しツモ切りを全て覚えるのは難しいだろう。まずは1人下家だけを見る練習からするといいだろう。下家の手の進行、どの辺が欲しいのかがわかれば牌を絞ることも出来る。そこから始めて下家が自然に見えてくると徐々に全体のことも頭に入るようになってくる。これは若ければ若いほど容易で、歳と共に能力は衰えていく。

相手の手牌をある程度把握出来るようになるとどう有利なのか?利点はたくさんあるが、例えば上家のリーチ者の捨て牌がこんな形だったとしよう。

北中九索 上向き白一索 上向き五筒 左向き

この捨て牌に対して自分の手がこんな形だとする。

一万二万三万五万七万九万六索八索八索二筒四筒七筒九筒九筒  ドラ八筒

完全な安全牌は1枚も無い。無いなら真っ直ぐ行くという選択もある。だが守備的に進めたい時、何を切っていくのが正解か?この時、他家の捨て牌と合わせると自分の目から七筒六索が3枚見えているとする。どちらもワンチャンスだが九筒はドラまたぎだ。ならば安全度も含めて八索を切ると「ロン」こんなケースを誰しもが経験したことがあるに違いない。何の情報も無いならこれは仕方ないとそう思えるかもしれない。

だが、他家の手牌をちゃんと観察し、ある程度形の予測をしていたならば全く違った結果になったりする。
例えば下家の手牌に五筒六筒七筒六筒七筒八筒のメンツがあると予測出来ていたならば、ドラまたぎであっても九筒はノーチャンスでより安全だということがわかる。この2枚が安全に打てるだけで放銃する可能性はだいぶ低くなる。

捨て牌をみることは勿論大事なことだが、もっと多くの情報を入れることは大きく勝ちに繋がっていくのである。
ただ、相手も手牌をよまれまいと、色々なことをしてくる。ならば更にその上を…と常に努力は尽きないものなのだ。